本話と次話だけ日本語が「 」、英語が『 』となります。
「誰だお前達は?」
ユニフォームに身を包んだスキンヘッドの生徒に話し掛けられる翔達。
「あ、あはは! 僕らは道に迷っただけなのですぐにかえ──」
「俺達はワールド高校の野球部だ。お前はここの野球部の選手なのか?」
翔が話を誤魔化して退散しようとしたとき、吾郎が翔の前に出て話を遮る
「ワールド高校って……あの……?」
スキンヘッドの生徒はワールド高校の名前を知っているのか、一瞬だけ驚いた顔をする。
しかしすぐに真顔に戻り、「事前に連絡はしているのか?」と質問をする。
「いや、してねーよ。ちょっと見に来ただけだかんな」
「吾郎君! まずいって!」
『あいつら何話してるんだ?』
『えっとね、吾郎が無許可でここに入ったって正直に話しているところだよ』
吾郎を止める寿也。メリッサから事情を聞いたジュニアも吾郎の言動に頭を押さえていた。
無断で偵察に来たということが分かったスキンヘッドの生徒は、警戒しながら眉間にシワを寄せる。
「
「いや、ちょっとくらいいーじゃ──もごもごー!」
「あ、はい! そうですよね! お邪魔しました!」
目だけを合わせて頷いた翔と寿也は、吾郎の口と身体を押さえてそのまま帰ろうとする。
しかし、それはもう遅かった。
「……丹波、何をしている」
「監督!」
丹波と呼ばれたスキンヘッドの生徒は、オールバックにサングラスを掛けて威圧的に歩いてくる男性の方を向く。
(……やっぱり怖いな。監督だって知らなかったら、どこかの危ない人だって言われても信じちゃうよ)
青道高校野球部監督である片岡鉄心。表面上は非常に厳格で冷酷に見えるため、周りから誤解を受けることもあるが、野球部の生徒からの信頼は厚い監督である。
「実は……ワールド高校の生徒が無断で偵察に来たようで……」
丹波から話を聞いた片岡は、吾郎を取り押さえている翔達を睨みつける。
「
「いえ、その……」
いくら翔達でも片岡の迫力に押され、何も言えなくなる。
しかし吾郎だけは違った。
「なんだよ、おっさん! 固いこと言わないでちょっとだけ練習を見せてくれよ」
「お、お前、監督に!」
翔達を振りほどいた吾郎の物怖じしない態度に丹波が切れそうになるが、片岡に「丹波!」と一言だけ言われすぐに大人しくなる。
「お前は本田吾郎だな?」
「え? ああ、そうだけど」
「……帰れ。無礼者に見せるものはない」
片岡は吾郎に対し、冷たく帰れとだけ伝えて丹波とともにグラウンドへと帰ろうとする。
しかし吾郎は諦めようとしない。
「別にいいじゃねーか! 減るもんじゃねーし!」
片岡の肩を掴み、練習を見せるように要求する。ここまで来たらもう翔達でも止めることは難しかった。
翔はどうにでもなれと思い、片岡に提案をする。
「それではこれではどうでしょうか? こちら側でピッチャーを一人出します。その球をそちらの選手が打つという対戦方式では? それならお互いにとって損にはならないはずです」
「…………」
正直に分の悪い提案であった。青道側がわざわざ練習を中断してまでそれをやる必要はない。
しかし甲子園出場を目標しているのであれば、決勝戦になるかもしれない相手の実力を間近で見ることは考え方によってはプラスにもなり得るためこの提案をした。
片岡は少し考え、翔の提案を受け入れる。
「……分かった。だが今回だけだ。もし次があれば正式に抗議させてもらうぞ」
「はい。ありがとうございます」
翔は素直に頭を下げる。寿也に促されて吾郎も頭を下げ、メリッサに通訳してもらっていたジュニアも同じタイミングで頭を下げた。
丹波だけは納得していない顔だったが、片岡が決めたことなのでそれ以上は何も言わなかった。
「グラウンドへ案内する。そこでウォームアップを済ませておけ」
片岡はそう言うと、翔達をグラウンド内へと連れて行くのであった。
◇
「結城、クリス、小湊!」
片岡はグラウンドに入るとすぐに結城達を呼ぶ。
小湊は二人おり、弟の春市は最初自身が呼ばれたかと思ったのだが、残りのメンバーの名前を聞いて兄の亮介であることを理解し、その場から動かない。
呼ばれた三人は片岡の元へ走っていき、事情を聞いていた。
「一体何だぁ!?」
「誰だ、あいつら?」
「俺知ってます! あいつらは横浜シニアにいた──」
口々に翔達のことを話す青道の選手。
翔達は気にせずグラウンドの端でアップを始める。
(へぇ……あれが今年から出来たっていうワールド高校の……なんか面白そうじゃん!)
スポーツサングラスを掛けた青少年は、長身で細めのピッチャーの球を取っていたのだが、騒ぎを聞いて投球練習場であるブルペンから覗いていた。
「御幸……先輩……何してるんですか?」
「降谷、なんかおもしれぇことが起きてんぞ!」
はっはっはと笑いながら覗いている御幸に、降谷はどうでもいいから早く球を捕ってほしいと思っていた。
それを察した御幸が降谷に続けて話す。
「少なくともアイツは見ておく価値はあると思うがな。あそこにいる本田吾郎は、お前以上の速球を投げるピッチャーだぞ?」
「…………!」
御幸から自分以上のストレートを投げるピッチャーだと聞き、目つきが変わる降谷。
面白そうに覗いている御幸の後ろで、降谷は密かに闘志を燃やしていたのであった。
「あいつら何なんスか!? スパイですか!? そうなんでしょ!?」
「うっせーぞ沢村!」
沢村は外野で叫ぶが、三年生の先輩に叱られ「うぐっ!」と怯む。しかしどうしても気になるのか、タイヤ引きの練習に戻らずに立ったままだった。
翔はそんな沢村の表情を見て面白そうに笑っていた。
「そろそろ始めるぞ! 準備はいいか!?」
身体が温まったところで片岡がそれぞれの選手を呼ぶ。
全員が集まったところで、今回の趣旨の説明をする。
「今回はワールド高校さんの
片岡は
結城達には事情を説明してあるが、それは周りに言わないように口止めしていた。
「それで……そちらは誰が投げるんだ?」
「もちろん俺が──」
「僕が投げます」
吾郎が投げると言おうとしたとき、吾郎の前に出て自分が投げると言う翔。
「おい、翔! ここはどう考えても俺だろ!?」
「いいから吾郎君。僕が投げても問題ないですよね?」
「……ああ。では始めるぞ!」
片岡は少しだけ考えた後、翔が投げることを了承する。
横浜シニアの佐藤翔。今はセンターを守っているが、元々はピッチャーをしており、その実力は折り紙付きである。
しかし、結城達はそう考えていなかった。
「へぇ。エースが投げないなんて、舐められたもんだね?」
小湊亮介が少し不機嫌そうな表情を見せる。
ワールド高校で名前が知られているのはアルヴィンと吾郎のため、横浜シニアにいた選手であっても納得できるものではなかった。
それは結城やクリスも同じだった。
「おい! 翔!」
「今回だけは僕に譲ってよ。……お願い」
まだ突っかかってくる吾郎に、翔は人目もはばからず頭を下げる。
その姿に吾郎だけでなく、寿也やジュニア、メリッサも驚いていた。吾郎はそこまでされてもやりたいとは言えず、「いや、まあ……わかったよ」と渋々受け入れる。
(こんなチャンス二度と来ないかもしれないじゃん……! 絶対に譲れないよ……!)
翔はワクワクした気持ちを抑えきれないまま、マウンドへと上がるのであった。
む……難しいですね……。
登場人物の口調をなるべく原作に近付けているつもりなのですが、上手く言葉が作れず手こずってしまいました。
もっと頑張ります。