MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿10日目です。
本話から英語が「 」となります。



第四十九話

「お前ら……俺達はとうとうここまで来た」

 

 ケビンはミーティングルームでワールド高校野球部員達の前で話をしていた。

 部員達は真剣な表情で話を聞く。

 

ワールド高校(うち)が出来てからまだ数ヶ月。優秀者を集めたうちは、どの分野でもまだこれといった結果を残していない。だからこそ……明日の試合に勝って、()()()()()()()()()()()()()()!」

「おおおおおお!!!」

 

 ケビンの言葉に選手全員が大声で応える。

 今までにない異様な光景に、メリッサもビクッと驚く。

 だが、すぐに彼女も笑みを浮かべる。

 

(盛り上がる(こうなる)のも仕方ないよね……だって明日は甲子園を賭けた()()なんだもん!)

 

 準決勝。ワールド高校は小川台高校に勝利し、決勝戦に駒を進めていた。

 そして明日は関東第二高校に勝利した青道高校との対決である。

 片岡との約束をきちんと果たすことが出来て、翔もホッとしていた。

 

「じゃあ最後に、キャプテンの翔からスピーチでもしてもらうか!」

「…………え?」

 

 明日の対戦のことを考えていると、ケビンが翔にスピーチをするように言い出す。

 いきなり話を振られた翔はポカンとしていたが、周りも盛り上がってしまって断れる雰囲気ではなくなったため、仕方なく前に出る。

 

「えー……っと、いきなりスピーチをしろと言われて戸惑ってるんですけど……監督(ボス)よりは短く話しますね」

 

 翔のジョークに周りから笑い声が出る。

 

「僕達は最初、何の纏まりもないチームだと思っていました。監督(ボス)の指示の下、五十試合も練習試合を組まされて嫌気を差していた人もいるでしょ?」

 

 再度周りから笑いが出てくる。ケビンは苦笑いを浮かべていた。

 周りの様子を見て、少しだけ場が温まったと感じた翔は真剣な顔をして話し出す。

 

「だけど、その五十試合を積み重ねていくうちに()()()()()()()()()()()()を実感した人も少なくないはずです。今では、僕達の中に国籍、人種、民族、言語、肌の色などで差別する人はいないはずです」

 

 最初、アルヴィン含めて何人かが何かしらの理由で差別的な言動を繰り返していた。

 それが原因で練習中、試合中、それ以外でも衝突を繰り返すことが多かったワールド高校野球部員達。

 

「これも()()()()()()というスポーツを通じて気付くことが出来たのだと思っています。だからこそ僕達は、僕達を成長させてくれたベースボールに感謝をし、その成長した姿を日本中に届ける必要があります」

 

 そこで言葉を区切り、間を置く翔。

 

「…………だからこそ明日勝って、その後もずっと勝ち続けて、ワールド高校の名前を日本中……いや、世界中に(とどろ)かせてやろうっ!」

「おおおおおおーーーっ!!!」

 

 翔のスピーチに部員全員が立ち上がって大声で返事をする。

 そのあまりの声の大きさと振動で、僅かだがミーティングルームが揺れてしまう。

 翔は盛り上がった場にホッとしつつ、寿也と目が合う。二人は笑い、頷き合うのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

『それではこれより全国高等学校野球選手権東東京大会の決勝戦を始めます』

『よろしくお願いします!』

 

 七月もそろそろ終わりを迎える暑い夏の日。神宮球場という舞台で全国高等学校野球選手権東東京大会の決勝戦が始まろうとしていた。

 〝黒船〟の異名を持つワールド高校の注目度はとても高く、各局がまさかの同時でテレビ中継をするという異例の事態になっていた。

 

〈とうとう決勝戦が始まりました! 本日は解説として、元横浜マリンスターズの茂野英毅投手にお越しいただいております! 茂野さん、よろしくお願いします!〉

〈はい、よろしくお願いします〉

〈いやぁ……〝黒船〟ワールド高校がまさかここまで勝ち上がってくるとは! この試合はどうなると思いますか!?〉

〈私はワールド高校が決勝まで来るのは順当だと思っていました。世界各国から有望な選手を集め、ジョー・ギブソンの息子や昨年のシニア全国大会で優勝した横浜シニアの佐藤兄弟までいるのですから。

ただ、相手の青道高校も課題であった投手の質において、少しずつ改善されているという話を聞いています。それに青道高校は三年生までいるというのはでかいです。高校時代の二年の差は大きいですからね。

状況によるとは思いますが、この試合は乱打戦になる可能性も投手戦になる可能性も両方ありますね〉

 

 茂野は冷静に解説をする。昨年引退をした茂野は今年から解説などの依頼が増えており──ゆくゆくはコーチも考えているが──このまま解説の仕事を増やして生計を立てても良いのではと考えていた。

 いずれにせよ野球とは関わっていきたいとは考えていた。

 

〈そういえばワールド高校のピッチャーである本田吾郎君の父親である本田茂治選手とは、高校時代からのライバルだったとか?〉

〈…………ええ。高校では彼にエースの座を獲られていましたね〉

〈本田茂治選手といえば、あの痛ましい事故が思い出されますが、息子の吾郎君が野球を続けていることにはどう感じますか?〉

〈…………私としては嬉しいですね。このまま怪我なく、成長していって欲しいと思っています〉

 

 茂野は予想していたが、出されたくない話題を実況が悪びれもなく出したことに内心穏やかではなかった。

 これがテレビ中継で全国に生放送されていなかったとしたら、実況者を怒鳴りつけていただろう。

 しかし実況者はそのことに気付かず、話を続けていく。

 

〈それでは各チームのスターティングメンバーを紹介していきましょう!〉

 

◇青道高校スターティングメンバー

 

 1番:ショート 倉持

 2番:セカンド 小湊亮介

 3番:センター 伊佐敷

 4番:ファースト 結城

 5番:キャッチャー クリス

 6番:サード 増子

 7番:レフト 坂井

 8番:ピッチャー 降谷

 9番:ライト 白洲

 

 

◇ワールド高校スターティングメンバー

 

 1番:センター 佐藤翔 

 2番:セカンド  ケロッグ

 3番:サード ジュニア 

 4番:キャッチャー 佐藤寿也  

 5番:ピッチャー 本田

 6番:ファースト マキシマム

 7番:レフト ヴィクター 

 8番:ショート ロイ

 9番:ライト ヤーベン

 

 

〈両チームともに今までと大きく変わったところはないといったところでしょうか?〉

〈はい。決勝(ここ)まで来た以上、下手に変えずに試合に臨んだほうが選手もリズムを崩さなくて良いですし、それはお互いの監督も分かっているのでしょう〉

〈ありがとうございます! それではCMのあと、ワールド高校対青道高校の決勝戦をお送りしますので、皆さんチャンネルはそのままで! 先攻は青道高校からです!〉

 




3/20(土)、5:35 早起きしてこっそり追加しました。

【小話:CM中】

スタッフ
「……はいっ! CM入りまーす!」

実況
「いや〜、茂野さんこのあとも頼みますね!」

茂野
「…………」

実況
「あれ……? 茂野さん?」

茂野
「……あんたなぁ! 全国放送で本田の事件の話をしなくていいだろうが!」

実況
「え……え……?」

茂野
「あそこには当事者の息子達がいるんだぞ!? ギブソンの息子もいるってあんたが自分で言っていたじゃないか!」

実況
「で、ですが……私には真実を伝える義務が……」

茂野
「……そうかい。分かったよ。それならあんたとは一生仕事は出来ないな。受けた以上、この仕事は真剣にやらせてもらうがあんたがその考えを直さない限り、俺とその関係者は仕事をしないと伝えておく」

実況
「え……いや……その……」

茂野
「本田は生きていたし、ギブソンも謝罪をしてあの事故は終わったんだ。これ以上は()()()()()()()()()()()()ようなことはするな!」

実況
「…………す、すみませんでした」

茂野
「……ふん」

スタッフ
「し、CM明けます!」
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