MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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皆様、たくさんのメッセージありがとうございます。
色々と考えてパス付きにしたのですが、一旦解除しますね。

ワールド高校対青道の試合は、「 」が日本語で『 』が英語の表記となります。



第五十話

「それでは青道高校が先攻、ワールド高校が後攻でよろしいですね」

「はい」

「決勝戦にふさわしい素晴らしいゲームを期待しています」

 

 試合開始の直前、神宮球場のベンチの裏では各高校のキャプテンである翔と結城が主審達と試合についての話をしていた。

 主審の言葉に返事をして、お互いに握手を交わす。

 お互いに睨み合っているが、それは試合の前だからであり、決して憎しみを持っているというわけではないのはその場にいる誰もが理解していた。

 

 それぞれの更衣室へと戻り、そして荷物を持つと結城は入り口からグラウンドへと向かいながら全員に気合を入れる。

 

「いくぞぉ!」

「おおぉ!」

 

 結城の言葉に返事をした青道メンバーはワールド高校よりも先にグラウンドへ出ると、そこには満員となった神宮球場の歓声が待っていた。

 

「来たぞ!」

「青道ナインだ!!」

「今年こそ甲子園へ行けよ!」

 

 ここは日本であり、名門である青道が来ているということもあり、応援の声は青道一色であった。

 しかし、それはワールド高校がグラウンドへ来たことによって掻き消される。

 

「あ……あれが〝黒船〟」

「本当に一年生だけなのかよ」

「てか、同じ高校生にすら見えねえよ……」

 

 ワールド高校のメンバーの威圧感によって、球場内は静まり返っていた。

 青道メンバーと比べても明らかに体の大きさが違い、鍛え上げられた肉体の質も明らかに違うようであった。

 

「…………本当に勝てるのかよ……」

 

 誰かがポツリと漏らした声ですら神宮球場内に響き渡っているように聞こえた。

 そしてそれに答える者は観客には誰もいなかった。

 そう、()()には──。

 

「俺達が勝ぁ〜〜〜つ!!!」

 

 突然大声がしたので、全員がその声の主を探すと、そこには青道高校一年生の沢村がいた。

 すぐに先輩の倉持によって「耳元で大きな声出すんじゃねぇ!」と顔を掴まれたり、他の三年生にも叩かれたりしていたが、沢村の声によって萎縮(いしゅく)していた青道ナインにも活気が戻ってきていた。

 

「哲、()()やるか」

「……そうだな」

 

 結城の音頭で青道メンバーはベンチの前に集まり、円陣を組んで全員が胸に手を当てていた。

 そして、結城がゆっくりと息を吸う。

 

 「俺達は誰だ──!?」

 「王者青道!」

 

 「誰よりも汗を流したのは──」

 「青道!」

 

 「誰よりも涙を流したのは──」

 「青道!」

 

 「誰よりも野球を愛しているのは──」

 「青道!」

 

 「戦う準備は出来ているか!?」

 「おおおお!!」

 

 「我が校の誇りを胸に! 狙うは全国制覇のみ! 行くぞぉぉ!!!」

 「おおおおおおお!!!!」

 

 

 最後の掛け声とともに全員が空へと手を掲げる。

 この声はベンチ入りしたメンバーからだけでなく、スタンドからも大きな声が聞こえ、ワールド高校が出てきたことによって出てきた()()()()()()()()()という空気を払拭させるものであった。

 

『ヒュー! やるねぇ』

『日本ではああいうのが流行っているのか?』

『……まぁそんな感じかな』

 

 ワールド高校側は青道高校を見ていたが、すぐに興味を失ったかのように集合が掛かるのを待つ。

 そして、試合開始の挨拶のため、ホームベースに全員集まるのだった。

 

『それではこれより全国高等学校野球選手権東東京大会の決勝戦を始めます』

『よろしくお願いします!』

 

 

 

     ◇

 

 

 

 一回表、守備はワールド高校。

 マウンドでは吾郎が不敵な顔をしつつ、寿也とピッチング練習をしていた。

 そして、青道ベンチの前では監督の片岡をの前に全員が集まっていた。

 

「いいか、相手は〝黒船〟なんぞと呼ばれているが、同じ高校生だ。この暑さには必ず参ってくるはずだ。

追い込まれるまでは甘い球以外は絶対に手を出すな。三振を恐れずに狙い球を絞っていけ!」

「しゃああああ!!」

 

 青道高校対ワールド高校。各校とも相手ピッチャーをどう攻略していくかが鍵となると事前に報道されていた。

 青道高校にはMAX151km/hの降谷、140km/h台のストレートにキレのあるカーブを持つ丹波、サイドスローでリリーフの川上、球速自体はそこまで速くないがブレ球を使う沢村と多彩な投手が揃っている。

 ただ、安定感では不安があるため、各投手のその時の出来に左右されてしまうのが不安材料であった。

 

 ワールド高校はMAX153km/hの吾郎が先発。チェンジアップとツーシームジャイロを武器に過去の試合でも三振の山を築いていた。

 そして、一試合丸々投げきるだけのスタミナもあるため、いかに無駄球を投げさせつつ体力を削っていくかが攻めの課題となる。

 吾郎達〝第一レギュラー〟が出るときは、〝第二レギュラー〟のアルヴィンには基本出番はないため、本日の試合も吾郎が投げ切るであろうというのが周囲の予想であった。

 

〈一回表、青道高校の攻撃。一番ショート、倉持君〉

 

 吾郎を攻略するために出てきたのが、青道高校一番打者である倉持だった。

 スイッチヒッターである倉持は、()()()へと入っていく。

 右投げの吾郎のボールを見極めやすくしつつも、少しでも一塁に近い方を選んだということだったが、吾郎は特に左打者が苦手というわけでもないため、反応はあまり見せていなかった。

 

(一番打者が出来ることは……)

 

 倉持は吾郎の投げた球に対し、バントの構えを見せる。

 サードとファーストが前進してきたところで、バットを引く。

 

「ストライク!」

「……え?」

 

 倉持は審判の方を一瞬見たが、すぐに吾郎の方を向く。

 

(あの低さでストライクかよ……いや、今明らかに浮き上がっていたな)

 

 ボールの軌道は、翔に投げてもらった時と同じであると思い出す。

 それでも試合本番のボールになると、ここまで低い位置から上がってくるのかと戦慄した。

 吾郎の投げるボールの方が、質が上なのかとも思ったが、本番の試合のほうが本気で投げるのは当たり前だと思い、すぐに頭の中でジャイロボールの軌道を修正する。

 

 二球目、三球目とバントの構えからバットを引くというのを繰り返し、吾郎のリズムを崩しつつボール球を誘っていた。

 しかし、吾郎の表情は全くといっていいほど変わらなかった。

 

「ボール! フォアボール!」

「しゃあああぁ!!」

 

 フォアボールで出塁した倉持。

 寿也は無表情だが、少し強めに吾郎へとボールを投げる。

 ボールを受け取った吾郎は苦笑いを浮かべるが、すぐに次の打者へと意識を集中させた。

 

〈二番セカンド、小湊君〉

 

 次の打者は青道に侵入したときに翔が対戦した小湊亮介。

 なかなか嫌らしいことをしてくるというのは事前情報であり、倉持を一塁に置いた状況だとさらに嫌なバッターである。

 

(さて……と)

 

 亮介は打席に入るなり、バントの構えをする。送りバントをするつもりのようであった。

 

「セーフ!」

 

 倉持が明らかにでかいリードを取っており、吾郎は寿也の指示で一旦牽制をする。

 しかし、それでもリードは依然大きいままだったため、吾郎は無視することに決めてセットからボールを投げる。

 それと同時に倉持が二塁へと走り出す。

 

『スチール!』

「は、速いぞ!!」

 

 ファーストのマキシマムが叫ぶが、その頃には倉持はもう半分近くまで走っていた。

 誰もが倉持の盗塁は成功したと思ったのだが────。

 

「アウト!」

「なっ──!?」

 

 倉持がスライディングした時には、ショートのロイのグラブには寿也からのボールが入っていた。

 

「あ……あのキャッチャー、なんて肩してやがんだよ……」

「あの倉持が完璧のタイミングで走って刺されるなんて……」

 

 観客もどよめきが収まらなかった。

 吾郎のボールの速さもアウトを取れた一因だが、寿也の送球までの流れるような動き、そして肩の強さとストライク送球できる正確性があってのことだった。

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 結局、倉持がアウトになったという動揺を抑えられなかった亮介と伊佐敷は、吾郎に三振を取られてしまい、一回表の青道高校の攻撃は三者凡退で終わるのだった。

 




倉持が考えていることは分かるため、それなら今後のことも考えて寿くんの活躍の場を持たせればいいと吾郎は思ったのですね。
その思惑に気付いた寿也は、それでも敢えてフォアボールを出した吾郎に釘を刺すために強めに返球しました。
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