よろしければご覧くださいませ。短編なので十話にもならない程度だと思いますが、なるべく中身が詰まった話に出来るようにしたいと思います。
ドラゴンボール 新たなHOPE! -もうひとりの戦士-
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ジュニアの犠牲フライで先制点を取ったワールド高校。
〈四番キャッチャー、佐藤寿也君〉
寿也が打席に入ると、先程とは逆に会場内が静まり返る。
〝黒船〟の中でジョー・ギブソン・Jr.よりも上位の打順にいる彼は、今までの試合でもその実力を示すように結果を出し続けていた。
(降谷、
クリスは寿也を最重要警戒人物として自身のリストに入れていた。
一振りで全てを変える男。それが出来る
事前の片岡とのミーティングでも「気軽にゾーンへボールを投げ入れるな」と指示を受けていた。
降谷はクリスの指示に納得出来ないような表情をしていたが、渋々頷く。
プライドが高いピッチャーは勝負をしていない状態で逃げるなど出来はしないのである。
しかし、降谷はまだ一年生。先輩の指示には従うしかない。
(まずは
クリスが出したサインは内角高めのボール球。顔に近い辺りである。
振りかぶって指示通り投げようとするが、「あっ」という降谷の声とともに投げられたのは、真ん中高めであった。
「ボール!」
寿也はボールを見逃し、再度構える。
クリスは降谷はたまに大きく外れるが、球は走っているからこのまま投げさせようと判断し、再度ストレートのサインを出す。
「ファール!」
内角低めに投げられたボールを寿也がカットしてワンボール、ワンストライクのカウントとなった。
そこから一球外したあと、降谷は丁寧にゾーンの内外と際どいところに投げ分けるが、寿也によってカットされ続ける。
そして十八球目──。
「ストライク! バッターアウト!」
寿也がボールを見逃して、三振となる。
バッターボックスからベンチに戻る際、寿也の口元が微かに笑っていたのをクリスは見逃さなかった。
(まさか……! わざと投げさせたのか……)
降谷を見ると、息を切らしながらユニフォームで汗を拭いながらベンチに戻るところだった。
まさか初回でここまで球数を投げさせられるとは思っていなかったため、内心で焦りを感じるクリス。
しかし時は止まってはくれないし、戻りもしない。
幸いなのは、ここでチェンジとなったことだけであった。
◇
〈二回表、青道高校の攻撃は四番ファースト、結城君〉
青道高校の四番である結城哲。彼は誰から見ても
吾郎もその威圧をきちんと感じ取っていた。
(先制点を取られたのなら、俺達のバットで取り返すまでだ)
結城は先制点を取られたことと、球数を投げさせられてしまった降谷を援護するためにいつも以上の気合を入れていた。
そんな彼に吾郎がワインドアップからフォーシームジャイロを投げ込む。
「ストライク!」
初球、ド真ん中に投げられたボールを結城は空振りする。
四番打者に対して真っ向から勝負を挑んだ吾郎に対し、観客や実況も盛り上がっていく。
〈茂野さん……こ、ここは真っ向勝負をしても大丈夫なのですか?〉
〈ええ、ここで攻めの姿勢で勝負が出来ない投手は甲子園でも活躍出来ませんよ。ランナーがいないのであれば、ピッチャーのエゴを出しても良いと思いますし、キャッチャーもその気持ちを汲んであげられる選手であって欲しいですね〉
茂野は「あくまでいち投手側としての話ですけど」と後置きし、それが全てではないとは話したが、それでも見ている側としては嬉しい内容であることは間違いなかった。
「ボール!」
内角高めと外角低めにボールを外し、カウントはツーボール、ワンストライク。
ここまでは全てフォーシームジャイロで投げ込まれていた。
(次は……変化球が来るか……!?)
カウント的にもそろそろ変化球が来てもおかしくないタイミング。
吾郎は振りかぶってボールを投げる。
「ファール!」
フォーシームジャイロをかろうじて当てた結城。
まさか一打席目で当てられると思っていなかったため、吾郎は驚いた顔をするが、すぐに嬉しそうな表情になる。
生粋のピッチャーである吾郎は、熱く燃えるような勝負が大好きなのだ。
追い込まれた結城。ここで予想外のことが起こる。
吾郎が寿也のサインに対して、何度も首を振っていたのだ。
そしてしびれを切らしたかのように、吾郎がボールを寿也に見せつける。
『No!
突然の吾郎の叫びに、神宮球場内が静かになる。
「い、今なんて言ったんだ?」
「ストレートしか投げないって言っていたような……」
「ほ、本気かよ、あのピッチャー!?」
吾郎の言葉の意図を理解した観客は、ざわめきが止まらなくなっていた。
主審に注意された吾郎は「へーへー」と日本語で雑に謝っていたが、先程の内容は結城にもしっかりと伝わっていた。
(ファストボール……ストレートしか投げないと言ったのか……? ──面白い!)
結城は勝負をしてくれるのであればこれ幸いとばかりに深呼吸をして気合を入れ直す。
青道ベンチでは御幸が「ワールド高校にも面白いピッチャーがいた」と笑い転げていた。
吾郎達が青道に侵入した時は、グラウンドで吾郎はある程度大人しくしていたため気付かれなかったが、遂に気付かれてしまったようであった。
寿也はため息をつくと、それ以上は何も言わずド真ん中にキャッチャーミットを構える。
観客からは「ほ、本当に勝負する気かよ……!」と声が出ていたが、寿也は完全に無視することに決めていた。
吾郎はニヤリと笑いながら振りかぶると、全力でボールを投げ込む。
(よし! 先ほどと同じタイミング──……)
完璧に捉えた。そう結城は思ったのだが、バットはボールの下を振り切っており、掠ることすらなかったのだった。
「ストライク! バッターアウト!」
「て、哲が……」
「ストレートだと予告されていたのに……」
まさか四番の結城が予告ストレートを空振りするとは思っていなかったため、青道メンバーは全員口を開けて驚いた表情をしていた。
これには監督の片岡も渋い顔をせずにはいられない。
その後、五番クリス、六番増子も同じく三振となり、青道高校は三者凡退でこの回も終えるのであった。
【小話:本田家族】
茂治
「吾郎のやつ……ギブソンと同じこと言ってやがるぜ」
桃子
「あら、ずっと
茂治
「かもな。ったく、わがままに育ちやがって、誰に似たんだか」
桃子
「それはもちろん……貴方だと思うけれど……?」
茂治
「な……!?」
桃子
「だってそうじゃない。何の相談もなしに今年いきなり引退を決めて、次は何やるか決めてないんでしょ? 亜美ももうすぐ小学校なのに、どうするのかしら?」
茂治
「うう……そ、それを言われると……」
桃子
「ふふ、冗談よ。あなたが一生懸命野球をしてくれたから、蓄えもまだあるし、次の人生はこれからゆっくり決めればいいのよ。私も精一杯サポートするから」
茂治
「も、桃子……」
桃子
「だから今は吾郎の甲子園が掛かった試合を一生懸命応援しましょ! 親子揃って甲子園でマウンドに立ったなんてことになったら素敵じゃない♪」
茂治
「そうだな! せっかく神宮まで応援に来たんだからな! 吾郎、頑張れ!」
亜美
「お母さん、