ドラゴンボール 新たなHOPE! -もうひとりの戦士-
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〈さて、ようやく序盤が終わったところですが、今のところまでで感想はいかがですか、茂野さん?〉
〈そうですね。ワールド高校はさすがといったところでしょうか。一番の佐藤翔君は降谷君から連続ヒットを打っていますし、何よりも初回の攻撃は実力の高さを見せつけられたといったところでしょう〉
〈なるほど! それでは青道高校についてはどうでしょうか?〉
〈攻撃に関しては、本田君に完璧に抑えられてしまっていますね。ただ、降谷君のピッチングは素晴らしいですね。これでまだ一年生ということは、先が本当に楽しみです〉
〈その通りですね! これから四回表の青道の攻撃に入りますが、序盤の投手戦から変わってくるのでしょうか!? この後も引き続きお楽しみください!〉
三回が終わった段階でスコアは1-0。初回にワールド高校が先制してからは投手戦となっており、あまり動かない状況となっていた。
二回裏、三回裏と降谷は翔以外を三振に抑え、吾郎は初回に倉持を出塁させた以外はボールを前に飛ばさせることはなかった。
「球数は?」
「……六十五球ですね。佐藤弟に粘られたせいで、球数が思った以上に増えてしまっています」
片岡とクリス、御幸はベンチで降谷の状態を確認していた。
降谷は沢村の手厚い介護──降谷からはウザいと言われていたが──のお陰もあり、水分を摂り過ぎずにアンダーシャツを着替えたりして少しでも体力を温存できるようにしていた。
「後輩がここまで頑張ってんだ」
「それなら先輩として意地をみせてやらなきゃね」
ベンチから出ていくのは、一番の倉持と二番の小湊亮介。
降谷におんぶに抱っこの状態で試合が運ばれているのは流石に良くないという思いもあり、上位打線から始まるこの四回表の攻撃に勝負を仕掛けようとしていた。
〈四回表、青道高校の攻撃。一番ショート、倉持君〉
倉持は初回と同じく左打席に入る。今の彼に出来ることは、少しでも一塁ベースに近い場所からスタートをすることだけである。
しかし、倉持の足の速さはワールド高校側には既に警戒されていた。
「な、なんだあの布陣は!?」
ワールド高校の守備位置を見て、観客だけでなく倉持本人も驚いていた。
(ちっ。これは舐められているのか、それとも警戒してくれているのか分からねぇな)
ワールド高校の守備位置はファースト、サードがバント警戒の前進守備。
ショートとセカンドが少し深く守り、レフトとライトが三塁と一塁の少し後ろに守る。そしてセンターも二塁ベースのやや後ろといったところに立っていた。
これは吾郎のピッチングを中心として組み立てられた、
バントはファースト、サードで処理をする。強い打球が飛んできてもセカンド、ショートと外野陣で処理をする。
そしてポテンヒットすら許さないようにセカンド、ショートがやや深く守り、センターも二塁ベースのやや後ろを守るようにする。
ライトとレフトはファーストとサードのカバーをしつつ、各塁を空けないように守っていた。
「な、なんであんな守備の仕方してんだぁ!? 外野に飛ばせばランニングホームランじゃねえか!」
「……
伊佐敷があまりに露骨なシフトに対し、怒りを
吾郎のジャイロボールを外野まで運べる選手など限られてくる。そして、倉持にはそれが出来ないという判断を寿也は下したのだった。
(俺が打てないと思ったら、大間違いだっ──)
倉持は吾郎が投げた初球を振るが、それは適度なスピードでコントロールされた外角へのボール球だった。
しまったと思ったときにはもう遅く、倉持はボールを引っ掛けてしまい、ショートゴロとなってしまった。
「くそっ!」
倉持は悔しそうにベンチに戻っていったが、片岡が無表情で待ち構えていた。
「……倉持、完全に今のは
「──ッ」
「あのシフトの本当の意味は、お前を少しだけ力ませることと冷静さを失わせることだ」
「……あ…………」
片岡の言葉に倉持は何を言いたいのか気付く。
「あのシフトを取らされれば、何が何でも外野まで運んでやると力が入る。そうすることで余計な力が入り、冷静さを失うことで、球数が少なくアウトを一つ取れるということだ」
「あのキャッチャー、相当の策士ですね」
片岡の話に、クリスも同調する。
「投手戦になっているこの場面。一番打者としてやらなくてはいけないことはなんだ? 打ち気に
「い、いえ、違います」
「今やらなくてはいけないことは、必死に投げ抜いている降谷のためにお前達先輩がフォローすることだろう! あんな中途半端なスイングでワールド高校に勝てると思っているのか! お前たちもだ! 今まで振ってきたのはそんな中途半端なスイングなのか!?」
片岡がベンチで吠える。それを結城含め全員が俯きながら聞いていた。
「
「はいっ!!」
片岡の怒号に全員が立ち上がり、揃って返事をする。
そう。寿也としても、実は倉持の打席にその対応をされるのが一番嫌であった。
今まで全力でバットを振り続けた選手達が、
思い切り振り切られたときの打球スピードと打球の伸びは、中途半端に振ったときに比べて格段に違う。
倉持シフトではそうされた場合、万が一にも吾郎のボールに当たったときは内野を抜けていく可能性や選手がグラブで弾き、その間に倉持が出塁してしまう可能性が高かった。
だからこそ寿也はそうさせないために倉持が
〈二番セカンド、小湊君〉
亮介の打順になったとき、ワールド高校側は通常の守備位置に戻っていく。
彼に対して先程のシフトで守ってもデメリットのほうが多いという判断からである。
(まったく……
亮介は打席に入ると、どうやって攻めていこうかと悩む。
自分が出れば結城に打順が回る。そうすれば同点、もしくは逆転のチャンスが出てくるのだ。
吾郎は不敵に笑いながら、ワインドアップからジャイロボールを投げ込む。
「ボール!」
内角低めに投げられたボール球を亮介は見送る。
寿也が自分の表情や動きなどを観察しているように感じるが、それを気付かない振りをしてなるべく表情を見せないようにしていた。
「ファール!」
吾郎のジャイロボールを二球続けてカットし、カウントはワンボール、ツーストライクとなる。
(このままだとまた打てないかもしれないな……意表を突くなら──)
亮介は何かを思い付くが、寿也に観察されているのが分かっているため表には出さない。
そして四球目。吾郎が投げた瞬間に亮介はバントの構えをするが──。
『セーフティーバントだ!』
「あれ……? チェ、チェンジアップだ!」
亮介がスリーバントでセーフティーを狙った球で、吾郎はチェンジアップを投げてきたのだった。
バントを処理するためにファーストとサードが前に出る。
(このままバントをしても処理されてしまう──)
そう思ったとき、打席に入る前に片岡が言っていた言葉を思い出す。
そして亮介はバットを引くと、チェンジアップのタイミングに合わせて
『バ、バスターだ!』
『く、クソっ!』
亮介が打ったボールは突っ込んできていた一塁手のマキシマムの顔を横切り、一塁線上を強い打球で転がっていく。
「おっしゃぁぁぁあ! ナイスだ!」
「回れ回れ!」
亮介は一塁を蹴って、二塁へ、そして三塁へと走り込んでいく。
『そこまではいかせないでヤンスよ!』
ライトのヤーベンは転がっていったボールを捕ると、セカンドを中継し、三塁へ投げ込む。
「セーフ!」
「やった! 三塁打だ!」
亮介の機転のおかげで、
そして、次の打順の伊佐敷がスクイズをきっちりと決めて、1-1の同点とした。
ベンチに戻ってきた亮介と倉持の目が合う。
「亮さん、ナイスバッティングです」
「ああ、どっかの誰かさんが簡単に打ち取られちゃうからね。こっちも必死だったよ」
「うぐっ!」
「……冗談だよ。むしろそのお陰であの場面で
「亮さん……」
亮介は右手を掲げて倉持に手を合わせるように合図する。
それを理解した倉持は、笑顔で自分の右手を亮介の手に合わせてハイタッチをしたのだった。
そして、これからワールド高校のエースと青道高校の主砲の二度目の対決が始まろうとしていた。
【小話:青道一年生トリオ】
沢村
「……ナイスピッチ! これを飲め!」
降谷
「ん!」
沢村
「あー、待て! 飲み過ぎはよくない!! 半分にしとけ、半分に! その分風を送ってやる! ほれほれ!」
春市
「ちょ、栄純くん、それはやりすぎじゃ……」
沢村
「ん? 何!? アンダーシャツを替えたい? よし、俺が手伝って──」
降谷
「いや、やめて……」
沢村
「春っち! タオルで降谷の身体の汗を拭いてやってくれ! それも丁寧にねっとりと!」
春市
「え……」
降谷
「いや、やめて……」
沢村
「春っち! 早く!」
降谷
「ほんと……ウザイ……」