MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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何人かからご質問のメッセージを頂いていたので、ご回答いたします。

【質問】
ワールド高校側の描写がないのはなぜですか?

【答え】
敢えてです。色々と察していただけると幸いです。
もしくは推測していただけると嬉しいです。



第五十五話

 四回裏。降谷はきっちりと三人で仕留める。しかし、ここまで全力投球を続けていた彼にとってはほぼ限界と言ってもよかった。

 

「降谷はここまで……ですね」

「ああ。丹波に伝えろ。次の回から行くぞ!」

 

 片岡は降谷に五回までは投げてほしかったのだが、佐藤兄弟が執拗に降谷の球数を投げさせるように動いたこともあって、目標の回に到達することなく降板する。

 この試合は総力戦となることを覚悟した片岡は、川上と沢村にも肩を作っておくように指示をした。

 そして五回表の青道高校の攻撃。青道ナインはベンチの前に集まっていた。

 

「どうだ、本田のボールは?」

 

 片岡の問い掛けに口々に答える。

 

「やはりストレートは速いですね」

()()()()()()()()()()()()()()というのが、唯一の救いですね」

「────!?」

 

 増子の言葉に対し、片岡は何かに気付く。

 

「マネージャー! 今日の本田は変化球を何球投げた?」

「は、はい……えっと、今日投げたのはチェンジアップの()()だけです!」

 

 今大会に記録員としてベンチ入りしているマネージャーの藤原貴子の言葉を聞いて、片岡は推測を立てた。

 

「もしかしたらだが……何かの事情で()()()()()()()()()()()()()()()()()()のではないか?」

 

 その言葉に投手陣を初め、選手達の脳裏に浮かんだのは〝故障〟の二文字であった。

 

「ですが、もし故障だとしたらここまで投げて来ないのではないでしょうか?」

「ふむ、では別の理由があるのかもしれない。なんにせよ本田がストレートしか投げてこないのであれば、お前達にもまだまだチャンスは有る。

相手から貰った点数ではなく、自分達のバットで奪った点で勝利を掴んでこい!!」

「しゃあぁらあああ!!」

 

 片岡の(げき)にメンバーは気合を入れて答える。

 だが、ここからは楽勝だと思われていた青道がじわじわと追い詰められていくことに、まだ誰も気付いていないのであった。

 

 

 

 

「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」

「ぐっ……!」

「なんだよ、変化球投げてこないんじゃなかったのかよ……」

 

 この回の吾郎は何かを吹っ切ったかのような顔をして投げ込んでいた。

 フォーシームジャイロ、チェンジアップだけではなく、ツーシームジャイロを混ぜ込み、四番結城から始まる青道の強力打線に掠らせることすらさせなかった。

 そして五回裏の攻撃が始まる。

 

〈青道高校、選手の交代をお知らせします。ピッチャー降谷君に代わりまして、丹波君。降谷君は坂井くんと代わり、そのままレフトに入ります。〉

 

 丹波がピッチング練習をしているとき、その横を降谷が通り過ぎる。

 

「後は、お願いします……」

 

 通り過ぎざまに小さな声で呟いた降谷の声に、丹波は微かに笑みを浮かべる。

 丹波は真剣な表情で打席に入る六番打者のマキシマムを睨みつけるのだった。

 

 

 

「ショート!」

「アウト! スリーアウト、チェンジ!」

 

 丹波は降谷から引き継いだマウンドをきっちり三人で抑える。

 

「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」

 

 しかし、吾郎も前の回から六者連続三振を出し、青道にこれ以上調子に乗せないように抑えていく。

 そして試合が動いたのは、六回裏のワールド高校の攻撃であった。

 

〈一番センター、佐藤翔君〉

 

 丹波は九番のヤーベンを抑え、一死(ワンアウト)で上位打線が回ってくる。

 彼としてもここを抑えることが非常に重要になってくる。

 

「丹波ぁぁぁ! 打たせていけよ!」

 

 センターの伊佐敷から大きな声がマウンドまで届く。

 その声に小さく頷いた丹波は、振りかぶって第一球を投げた。

 

「ボール!」

 

 球はわずかに外に外れる。二球目も外れてツーボール。

 三、四球目をゾーンに入れるも、翔がバットに当ててファールとする。

 

(こ、こいつ、もしかして……)

 

 ここでクリスの脳裏に降谷のことが思い浮かんだ。寿也と翔は徹底的に降谷の球数を増やし、疲労を蓄積させることを考えていた。

 それを丹波相手にも行おうとしているのではないかと。

 その予想は()()()()()()()()()()

 

「おおおおお! センター前ヒットだ!」

 

 翔はセンター返しをして、塁に出る。この対決で丹波に投げさせた球数は十五球。

 クリスは何回も敬遠しようとボールを外したのだが、きちんと外しきれずに翔にファールとされてしまっていた。

 そして二番のケロッグが進塁打を放ち、二死(ツーアウト)ランナー二塁という場面で、回ってきてほしくない打者が続くこととなった。

 

〈三番サード、ジョー・ギブソン・Jr.君〉

 

 ジュニアを出塁させれば、寿也まで回ってくる。なんとかここで抑えておきたかったのだが──

 

「ギブソンJr.がタイムリーヒットで一点返して、またランナー二塁になったぞ!」

「ここでワールド高校の主砲の登場だ!」

 

 ここは無理するところではない。四番の寿也に打たれる可能性を考えるのであれば、敬遠することも一つの手だった。

 だが、()()()()()()()()()()()ということが、彼らの冷静さを少しだけ奪ってしまっていた。

 

「丹波」

「……ここは勝負か?」

 

 クリスはマウンドへ行き、丹波の様子を伺う。

 そして彼の顔を見て、まだ気持ちは折れていないと確信したクリスは丹波の問いに頷く。

 

「そうだな。まだ点数はリードしている。ここは思い切って勝負してもいいかもしれない」

「分かった」

 

 ホームへと戻っていくクリスを頼もしそうに見る丹波。

 お互いに怪我に苦しめられた経験もあり、お互いの気持ちも分かり合っているようだった。

 

 打席に入り、構える寿也。

 セットポジションから丹波がストレートを投げる。

 

「ストライク!」

「おお! 初球インコースに投げるとは強気なリードだねぇ」

 

 内角に投げられたストレートを寿也は見送り、ワンストライクとなる。

 

(佐藤兄と同じく、何球も粘ってくるに違いない。ストライク先行で仕留めるぞ)

 

 クリスのサインに丹波は頷く。

 これが()()()()()()だということに気付きもせずに、外角にストレートを投げ込んだところ──

 

「右中間、行ったぞ! 追え!」

 

 寿也はストライクが来るのを待っていたかのように外角のボールを流し打ち、右中間へと飛ばした。

 クリスはマスクを脱ぎ、ホームでタッチアウトにするべく右中間へ飛んだボールの行方を追っていた。

 

「くそがあぁぁぁぁ!!」

 

 ボールを捕球した伊佐敷がバックホームするも、すでにジュニアはホームインしており、寿也は二塁まで悠々と到着する。

 伊佐敷からのボールを受け取ったクリスは悔しそうに歯噛みしていた。

 

(くそ、やられた……)

 

 降谷が投げていたときの翔と寿也の粘り。これは降谷の体力を消耗させるためというのは当たっていたのだが、別の目的もあった。

 それは次の投手が出てきた時に、同じくスタミナ消費をさせると()()()()()ためであった。

 翔が粘れば、同じ方法を取ってきたと思ってしまうのも無理はない。

 

 そのあと寿也に対し無駄球を投げさせずにストライク先行になってくれれば、それを打つ。

 もし敬遠を選択するようであれば、同じくスタミナを削る作戦に戻す。

 ここは全くの偶然だが、四点という点差も彼らの冷静さを奪ってしまう一因にもなっていた。

 

 この回は次の打者の吾郎を抑えることが出来たが、これで6-3。

 少しずつ追い付かれ始めているという感覚に、青道高校は恐怖を感じ始めていたのだった。

 




いつも本当にありがとうございます。
感想、全て拝見しております。きちんとご返信したいのですが、なかなか返す時間が取れずに申し訳ございません。
質問やご指摘に関してはなるべく先に返すようにはします。
ですが、温かい皆様のお言葉の方が私としては嬉しいです。

評価をお願いする際に一言コメントをお願いしていますが、そこも素敵な言葉ばかりでこれからも頑張ろうという気持ちになれます。
これからもぜひよろしくお願いいいたします。
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