MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!



第六十話

「翔! 甲子園出場おめでとう!」

「うん、ありがとう」

 

 メリッサと翔は甲子園出場が決まり、二人で帰っていた。

 吾郎と寿也、ジュニアが学校に置き去りになっているのはメリッサが強引に二人きりになろうと画策した賜物である。

 

「こんなに早く約束守ってくれるなんて、嬉しいな……」

「……ん? メリッサ、なにか言った?」

「ううん! 何でもないよ!」

 

 メリッサがぼそっと話したこともあり、翔には彼女の喜びの声は届いていない。

 だがメリッサが喜んでいる風なのは翔も気付いているため、悪いことではないのだと判断していた。

 

「そういえばさ」

「ん?」

「甲子園出場してこれだけ注目されてるんでしょ? もし優勝なんてしたら、翔とかどうなっちゃうのかな?」

「まぁこういうときは大抵ピッチャーとか四番とかが注目されることが多いから、吾郎君とか寿也が中心になるんじゃないかな? あとはギブソンの息子ってことでジュニアもあり得るよね」

「……はぁ。翔ってこういうところあるからなぁ」

 

 メリッサはあからさまにため息をつく。

 

「え、僕何か変なこと言った!?」

「……ううん、別にいい。とりあえず他の女の子が言い寄ってきても相手しちゃダメだからね!」

「他の女の子って……」

 

 メリッサは翔がこれ以上周りに注目を浴びるということに対して懸念があるわけではない。

 その副次的効果として、翔の女性ファンが増えてしまうことを恐れていた。

 まぁ彼女自身が()()()()()()()()()()()として、今後全国区になるというのはまた別の話であるが。

 

 実はメリッサの心配はワールド高校野球部のメンバーのおかげで、そこまで大きくなることはない。

 なぜなら、メンバーにはジュニアやヴィクター、アルヴィンといった海外勢のイケメンもいるし、日本勢でも吾郎や寿也がいるため、翔が一人だけ群を抜いて顔が良いというわけでもないからだ。

 それでも恋心というものは人間を不安にさせることも多い。

 

「僕にはそんなに寄ってきたりしないし、大丈夫だよ。それよりもジュニア達のことを心配してあげたほうがいいんじゃないかな? 今でも校門にファンの女の子達がたくさん来てるし」

「むーっ! お兄ちゃんは別にいいの! ……なんで分かってくれないかなぁ?」

 

 翔はメリッサのアプローチになかなか気付かない。

 メリッサのことを妹のように扱うことも多いため、一緒に住んでからも彼女はむくれることが多かった。

 今もその状況である。

 

「ま、よく分からないけど、お腹空いたね! メリッサ、何か食べたいものとかある?」

「…………はぁ。焼肉でも食べに行く?」

「え、メリッサどうして僕の食べたいものが分かったの!?」

「翔がそう言うときはいつも焼肉じゃない」

「え、そうだっけ?」

「そうよ……ってもういいわ。行くなら早く行きましょ。いつものところでいい?」

「うん、早く行こう! みんなは──」

「──呼ばなくていいの! うるさくなるし!」

「はいはい。分かりました、お嬢様」

 

 翔はメリッサを宥めようと、彼女の頭を撫でる。

 子供扱いされているのは分かっているのだが、それでも好きな人に頭を撫でられること──好きな人にというところが大事──に悪い気分になるわけもなく、少しだけ顔を赤らめて大人しくなる。

 そして、すぐに手を離されたメリッサは「あっ」と名残惜しそうな声を出すのだが、

 

「ほら、早く行こ!」

 

 そう言って差し出された翔の手を微笑みながら握りしめて、行きつけの焼肉屋へと向かうのだった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「青春しているねぇ」

「ちょっと、吾郎君! 覗きとか趣味悪いよ!」

うちの妹(メリッサ)の頭を撫でて、手を繋ぐとか……許せん!」

「ジュニアも! 今飛び出していったら二人の邪魔になるでしょ!」

「寿也! 離せ!」

 

 置いていかれたと思われていた吾郎、寿也、ジュニアは翔達の後ろをコソコソとついて回っていた。

 吾郎はただの野次馬として、ジュニアは大事な妹を傷物にされないか心配になって、寿也は二人のお目付け役として。

 最初、寿也は吾郎達を放っておいて、一人で家に帰ろうと思っていたのだが、今となってはついてきて正解だと思っていた。

 

「なんだあいつら、付き合ってるのか?」

「いやいや、あの感じはまだまだこれからってところじゃないのか?」

「メリッサちゃん、いいなって思っていたのに……」

「ふん、なんで俺まで……」

 

 翔達のことを付け回していたのは吾郎達だけではなかった。

 家や寮に帰ったと思われたワールド高校野球部のメンバー全員がコソコソとついてきていたのである。

 

「アルヴィン! そんなこと言うならついてこなきゃよかっただろ!」

「こいつらに無理やり連れて来られたんだろうが!」

「アルヴィン黙れ。翔達を見失ってしまうじゃないか」

「……監督(ボス)!? いつの間に!? というか、なんで監督(ボス)まで来てるんですか!」

「『不純異性交遊』というのが日本ではいけないんだろ? 野球部顧問として、確かめに来ただけだ……面白そうだし」

「思いっきり面白そうって言ってるじゃないですか! ……くそ、なんで俺がこんなところに」

「ほら、あそこの焼肉屋に入っていったぞ! 俺達も中に入るぞ!」

「うっす! ゴチになります!」

「…………自分で食った分は自分で出せよ」

 

 こうして焼肉屋に突撃していったワールド高校野球部メンバー。

 この人数と全員の体格でバレないわけはなく、せっかくの二人きりの食事を邪魔されたメリッサは終始不機嫌であったが、このままの流れで甲子園出場を祝した打ち上げが開かれるのだった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「俺らの初戦は三日目か」

「ああ、相手は大したことなさそうだが、油断はするなよ」

 

 甲子園の抽選日。翔はワールド高校の代表として抽選に参加し、三日目の第二試合のくじを引いていた。

 

(海堂高校とやるのは……いつになるかね)

 

 翔は組合せ表を確認して、海堂高校と戦うには何回勝たないといけないかを考える。

 現時点ではまだいつになるかが分からないので、少しだけ気を引き締めたところで、隣には寿也と吾郎がいた。

 

「海堂とはいつ対戦するかな?」

「あんなやつらにはぜってぇ負けてらんねぇな」

「……うん、そうだね。でもそのために一つ一つを確実に勝ち上がっていこう!」

 

 海堂とは因縁があるため、チームとして優勝を目指すために負けられないのはもちろんだが、個人としても絶対に負けたくないという気持ちの翔と寿也。

 そこでふと思い付いたかのように吾郎が口を開く。

 

「……なぁ。海堂(あいつら)、以前も卑怯な真似をしてきたんだから、今回も似たようなことをやってきてもおかしくないよな?」

「確かに……翔、どうする?」

 

 海堂──中心人物は江頭──は翔達が中学時代に人道的にやってはいけない妨害行為をしていた。

 そのとき周りの力を借りたとはいえ、彼らに一泡吹かせた佐藤兄弟に対して負の感情を抱いていてもおかしくはない。

 だからこそ更なる妨害工作を試合外、もしくは試合中に行ってくる可能性を吾郎は示唆する。

 

(確かに……吾郎君も実際にやられているわけだしね……)

 

 原作でも江頭に一泡吹かせた吾郎に対して、彼は試合中にわざと接触するように指示をして吾郎を怪我させるということをしていた。

 その時は練習試合だからよりやりやすかったというのはあったかもしれない。

 しかし、本番でもやってこない保証はない。もちろん全国中継している以上、下手なことをしたら大問題になるが、江頭は今の地位に就けるだけの頭の良さを持っているのを翔は理解している。

 

「しょ、翔? 大丈夫?」

「ん? ああ、考えごとをしてたよ。いくつか考えられることはあるけど、それも僕らが油断しなければ大丈夫なことも多いから、まずは確実に一回戦を突破することに集中しよう」

 

 不安そうな顔をする寿也や吾郎に翔は笑顔で問題ないと伝え、今は目の前の試合に集中するように再度伝える。

 翔がそう言うのであれば彼らもこれ以上は何も言えずに引き下がるしかなかった。

 

(寿也も吾郎君も絶対に怪我させないからね……!)

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

『ゲームセット! ワールド高校、甲子園一回戦を突破しました!!』

 

 アルヴィン率いる第二レギュラーチームが先発して、一回戦を12対1という圧倒的な差で快勝した。

 勝って当たり前のようなすました顔をしているアルヴィンだが、全国大会での勝利にわずかに嬉しそうな表情を見せていた。

 

 

 続く二回戦、三回戦も吾郎とアルヴィンがそれぞれ投げることで、勝ち進んでいた。

 そして準々決勝に残った八チームのみで再度抽選を行う。

 

「……海堂とは準決勝か!」

「あと一回勝てば戦えるね」

「ああ、でも……」

 

 翔達は第一レギュラーチーム。順番でいけば海堂高校と対戦するのはアルヴィンの第二レギュラーチームであった。

 

「これって交代してもらえねぇのかな?」

「いや、無理でしょ。完全に私事なのに監督(ボス)がOKするわけがないよ」

 

 吾郎が思い付いたまま発言するが、寿也にあり得ないと一蹴される。

 

「……んー、そうだね。まぁよくよく考えるとさ、必ず僕らで倒さないといけないというほどのことでも無い気がしてきたのは僕の気のせい?」

「まぁ、そうだけどよ」

「そうだね。海堂はアルヴィン達に任せて、僕らは準々決勝に集中しようか」

 

 

 

 

 

 

『最後は本田君のボールがキャッチャーミットに収まり、三振! ワールド高校が準決勝進出を決めました!』

 

 順当にワールド高校は準決勝へ進出を決め、同じ日に海堂高校も勝利する。

 甲子園球場を出る際に、たまたま海堂高校とすれ違ったのだが、江頭は目を合わせることも無く去っていってしまう。

 それが逆に翔達への不安を煽ることになっていた。

 

「海堂との試合……本当に大丈夫かよ?」

「うん、僕も心配になってきた……」

「ま、まぁここまで何もないと逆に不安になるよね」

 

 準決勝当日の朝、いつでもアルヴィン達のフォローが出来るように準備をしていた翔達だったが────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『し、試合終了! ま、まさか海堂高校までワールド高校に破れてしまいました! 《黒船》を止められる高校はもう無いのか!? 決勝がより注目されます!』

 

 

 

 

 

 

 

 ────特に何も起こることなく、アルヴィンが二安打完封で海堂高校を抑えるのであった。

 もし翔達が準決勝に出場していたらどうなっていたかは誰にも分からないのだが、江頭がベンチに座ったまま何も行動を起こしていなかったのがより不気味に見えていた翔達だった。

 




遅くなり申し訳ございません。
昨年は途中から全く書けなかったです。
思い付いたものを文章にするのってここまで難しかったのかと思いました。

出来る限り頑張って書いていこうと思いますので、何卒応援をよろしくお願いします!
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