MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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第七話

 横浜リトルの入団テストに合格してからというもの、平日は学校が終わって家に帰ったら宿題をして吾郎と野球をする。

 家に帰ったら、夜ご飯を食べてお風呂に入り、中学生で習うレベルでの勉強をする。

 そして、土日は横浜リトルの練習に参加をして、家に帰ったら勉強をするの繰り返しである。

 

「翔くん、寿くん。横浜リトルの練習はどんな感じなの?」

「んー、やっぱり練習は厳しいよ。さすが神奈川の強豪チームだけはあるよ」

「だね。僕らも吾郎君と毎日野球やっていなかったら、ついていけていなかったと思うな」

 

 誘ったときは興味がないと言っていた吾郎でも、横浜リトルの練習がどんな様子なのかが気になるようで、キャッチボールしながらの雑談はリトルチームの話が多かった。

 吾郎の入った三船リトルの話を聞くと、すごい嫌そうな顔をして愚痴を言ってきた。

 人数が足りなくて潰れてしまいそうなこと。数少ない練習時間も、今のままでは少年サッカー団に取られてしまうことなどだ。

 

「でね、ひどいんだよ! せっかくいじめから助けてやったのに、お礼も言わずにいじめっ子について行っちゃうんだぜ!」

「あー、そうなんだ。まぁ……でも気持ちは分かるかもしれないなー」

「え、どういうことだよ?」

 

 吾郎の発言に対して、いじめられっ子の味方をするような発言をした翔に対して、少し怒りを滲ませて吾郎は尋ねる。

 寿也もまさかそんなことを言うとは思っていなかったのか、少し驚いた顔をしている。

 

「ああ、ごめんごめん。別に吾郎君が悪いなんて言っていないよ。お礼を言わなかったのは確実にその子が悪いんだよ」

「じゃあ何の気持ちが分かるの?」

「えっとね、そのあといじめっ子について行ったってところかな。その子からすると、吾郎君はまだ友達でも何でもないんだよ。

まだ関係性が出来ていない状態だからね。いじめっ子の方が今まで一緒にいたっていう関係もあるし、今後もしかしたら1人になってしまう不安とついていかなかった時の報復が怖かったっていうのもあったんじゃないかな?」

「じゃあ助けなければ良かったの?」

「そうじゃないよ」

 

 翔は吾郎に対して丁寧に説明をする。

 寿也も黙って聞いているので、翔は一旦キャッチボールをするのをやめて話すのに集中する。

 

「必要なのは”関係性”さ。信頼を積み重ねていくことで、相手と上手くいくことって多いんだよ。

吾郎君がいじめから助けたってことは本当にすごいことだよ。誰でも出来るわけではないからね。

だからこそ、その子は今揺れていると思う。吾郎君を信頼していいのか、それともまた新しいいじめっ子になってしまうんじゃないか? って」

「俺は小森をいじめたりなんてしないよ!」

「僕らは分かってるよ。吾郎君はそういう格好悪いことをする人じゃないって。でもその……小森君? はまだ吾郎君のことを知らないわけでしょ?

だから揺れているんだ。もし吾郎君が自己満足で助けるだけって思っていないのであれば、諦めなければその子にも伝わると思うよ」

 

 翔の言葉に吾郎は何かを考えている様子であった。

 吾郎の考えがまとまるまで翔は黙って待っていた。

 

「……実はさ、俺の前に小森を助けようとした女がい──」

「──()()()……でしょ?」

「う……お、女の子がいてさ。その子と言い合いになったってのがきっかけなんだよね」

「そっか。きっかけは何でもいいと思うよ。でもその女の子も優しいんだね。1番初めに声を上げるなんて勇気がいることだもん」

「……そうだな。そうだよな!」

「でも気を付けて。その女の子はきっとまた小森君がいじめられた現場を見たときに助けようとすると思う。そのときにいじめっ子から仕返しがあるかもしれないから。

吾郎君には言う必要ないと思うけど、そのときは必ず味方になってあげてね」

「分かった! 翔くんありがと!」

 

 吾郎はすっきりした顔になって改めてキャッチボールを再開した。

 翔としても原作知識を使って少しでも良い状況に持っていけるのであればと思ってアドバイスをしている。

 そんな()の姿を見て、尊敬をした目で見ている寿也()がいた。

 

(翔はすごいなぁ。たまに抜けているけど、僕なんかとは大違いな気がする。何でも出来るし、考え方も大人な気がするし。双子なのに何でこんなに違うのかなぁ……)

 

「寿也」

「え……? 何?」

「僕と寿也はちゃんと似ている双子だよ。寿也が思っている以上に僕は寿也に助けられているし、寿也のことを弟として尊敬しているからね」

「……悔しいなぁ。何でもお見通しなの?」

「ふふふ。なんとなくだよ。そこは兄の特権としておいてくれたまえ」

 

 寿也が卑屈になりそうなときに、いつも声を掛ける翔。なんとなく分かるだけだが、的中率が100%なのは双子だから出来ることなのであろう。

 吾郎は何回もこの光景を見ているため、慣れたものだが、兄弟がいることに対して羨ましいとも思っていた。

 その後、家に帰ってから茂治と桃子に弟をねだっていたが、その姿は2人が結婚してから何回も見られていたのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「よし! 全員集合!」

「「「「「「「はいっ!!!!」」」」」」」

 

 入団して少し経った頃、横浜リトルの練習グラウンドで監督の樫本に呼ばれて集まるメンバー。

 五・六年生は整列も綺麗でまるで軍隊のように並んでいる。

 四年生はまだ慣れていないため列がズレたりしているが、そこは半年もすれば直るので樫本は特に何も言わない。

 

「新四年生が入って慣れてきたと思うので、これから紅白戦を行う! まずはレギュラー対控えの五・六年生。次に控えの五・六年生対新四年生。最後にレギュラー対新四年生だ。

控えの五・六年生は、紅白戦の結果によってはレギュラーになるチャンスでもあるから、気を引き締めていくように!

それと新四年生は見て勉強するだけでなく、分からないことなどもどんどん聞いて吸収するように!」

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

(おお! 紅白戦か! レギュラーとも対戦できるのはすごい楽しみだね!)

 

 翔は入団して初めての紅白戦をすることにワクワクしていた。

 上級生からすると次の練習試合や大会に向けてレギュラーになるチャンスでもあるので張り切っている。

 四年生は余程のことがない限りレギュラーにはなれないので、試合の緊張感を味わうのと上級生に胸を借りることで良い経験になることから、この時期に紅白戦を行うのだ。

 

「それではまずはレギュラー対控えの五・六年生の試合だ! アップしたら、すぐに始めるぞ!」

 

 樫本がアップするように指示を出す。リトルリーグは1試合6回までで投球数などにも明確なルールがある。

 理由としては、これから成長する小学生を守るためであり、監督などの大人の事情で無理をさせないためでもあるのだ。

 

 アップが終わり、これからレギュラー対控えの五・六年生の試合は始まろうとしていた。

 樫本は中立を保つために審判をしており、各コーチが監督役をしていた。

 

「では始めるぞ。先行はレギュラーチームだ」

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 1回の表。レギュラーチームの攻撃である。

 バッターはショートを守っている伊達。小学校六年生だ。

 対する控えチームのピッチャーは菊地。同じく六年生で、入団当初からレギュラーのピッチャーとエースの座を争っている選手である。

 

「プレイボール!」

 

 菊地が振りかぶり、1球目を投げる。

 ストレートがど真ん中を伊達が見逃し、ストライクとなる。

 2球目。今度は投げたボールが曲がり、伊達は空振りをする。

 

「ストライク! これでノーツーだ」

 

 3球目は菊地が外角高めに外してボール。

 そして4球目。

 

(よし! ここで俺の得意の速球で勝負してやる!)

 

 菊地は得意球であるストレートを投げる。

 しかし、伊達はそれを待っていたかのように、バットを叩きつけるように振り、ボールに当てる。

 ボールはワンバウンドしながら高く上がり、菊地が捕球するも、その間に一塁ベースを駆け抜けていた。

 

「お! 出たぞ! 伊達の得意技”叩きつけ打法”!!」

「あいつはいつもあれで出塁するからなー」

 

 レギュラーチームのベンチから声が上がる。

 菊地はそれを見て、すごい悔しそうな顔をする。

 自分の得意球(ストレート)を狙い打ちされたのだ。悔しくないはずがない。

 

 次は2番セカンドの村井。

 バントが得意なたらこ唇が特徴の選手である。

 菊地は打たせまいと投げるも、堅実に送りバントを決められて一死(ワンアウト)、二塁となる。

 

 次の3番打者をファーストゴロで抑えるも、ランナーが進塁してしまい、二死(ツーアウト)、三塁。

 4番はサードを守る真島。

 速球に強く、高い実力の持ち主でレギュラーになってから4番を誰にも譲ったことがない選手である。

 

(くそ。真島に回る前にこの回を終わらせたかったのに……)

 

 菊地は軽く汗を拭い、左打席に立つ真島を睨み付ける。

 キャッチャーがサインを出し、菊地がセットポジションからストレートを投げる。

 しかし、力み過ぎたのかキャッチャーの手前でショートバウンドになり、キャッチャーは慌てて身体で受け止める。

 三塁にいた伊達がホームを狙うが、菊地もカバーに入ろうとしたので慌てて三塁に戻る。

 

 キャッチャーは「落ち着いていこう!」と菊地に声を掛けながらボールを投げる。

 菊地は受け取りマウンドに戻った後、落ち着くように深呼吸をする。

 そして、キャッチャーのサインを見て、セットポジションから内角に得意のストレートを全力で投げる。

 

 

 

 

 

 しかし────

 

 

 

 

 

 

 

 真島が待っていましたとばかりにバットを振り抜き、ボールは右中間を突き破り更に飛んでいく。

 菊地は打たれた瞬間に後ろを振り返るが、ホームラン用に作られた柵を越えていくボールを見て項垂れた。

 

(うわぁ。あれは内角のストレートを狙っていたみたいだな。4番のあの先輩、相当できるぞ)

 

「翔、今ホームランを打った先輩……相当上手いよね?」

「だな。あの人を抑えるのは相当苦労しそうだな。寿也のリードに期待をしよう」

「え! 翔も頑張ってよ!」

 

 真島のホームランを見て、レギュラーチームに勝つのは相当困難だと確信する翔と寿也。

 結局、レギュラーチームは控えチームに8対0のコールドで勝利した。

 お昼休憩を一回挟み、次の試合になる。お昼ご飯の間、翔と寿也はレギュラーチームをどう抑えるか、そして控えチームに勝つにはどうすればいいかなどをずっと話し合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……新四年生と控えチームの試合が始まる。

 




翔くんは吾郎が女性を「女」と言うことに対して矯正をしております。
当たり前ですね!

茂治と桃子は吾郎が小学校に入学してから数ヶ月後に入籍をしている設定です。

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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/
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