これは・・・俺が真に覚醒者となる前の話。
――光――
それは普通の人なら希望にもなりえるかもしれない。希望の光と捉えるものも少なくは無いのだ。
「各員へ!現在、タルパ労働区にて部隊を6部隊に分け、調査ミッションを展開中!」
街の中を走る。耳元に若い女の子の声が聞こえる。その指示に耳を傾けながら所定の位置へ移動する。周りには同じような格好をした隊員達がいる。鎧を纏った兵士のような姿をして。
「各部隊、隊長の指示に従ってください。また、別動の後方部隊は住民の避難を最優先、また、視察団にはエメライン嬢がいます」
向かう先、視線を前に向けると金髪の騎士の女性と、黒髪の、巫女のような服を纏った女性が立っていた。
「見つけ次第、ただちに保護してください」
データを称号。間違いない。巫女服の女性がエメライン嬢で間違いない。確認すると、彼女の元へと行こうとする。
「止まれ・・・なんの用だ?」
・・・が、そうはいかず、大きな盾を持った騎士に絡まれる。惹かれるような金髪と、白い花の髪飾りが特徴的だった。
視察団を探している。そう短く答える。
「私は、視察団の護衛をしている。用件なら私が聞こう・・・エメライン様、良いですね?」
騎士が後ろを振り向くが、エメライン嬢は少し離れた所へ居た。
「またおひとりで・・・本当に、困ったお人だ」
ため息混じりに発したあと、彼女と俺はエメライン嬢の近くまで移動する。彼女の行く先には倒れている人が見えた。彼女は姿勢を低くして、倒れている人に声をかける。
・・・が、反応はない。いや、薄いと言った方がいいのだろうか。恐らく死んではいないのだろう。
「・・・時間です。エメライン様。労働区の視察はここまでにしてください」
「支援物資が行き届いていないのです。ここの皆さんを・・・助けなければいけません」
「その必要はありません。彼らは失われた世代なのですから」
「失われた世代・・・?」
「定食にも就かず、結婚もせず、子供も持たず、消費もしない。自らの意思で社会との関わりを絶ち、命を・・・人生を投げたもの達です・・・助ける必要など、無いのです」
・・・何も言えなかった。目の前で、同じ人間が侮辱されていると言うのに。他人事では無いのに。俺は彼女に、その事を否定できなかった。
貴族故の言い草だろうか。しかし、隊長が居たら・・・こんな奴は・・・
「随分な言いようだな」
その時、少し高めの男の声が聞こえる。声の主は黒のコートに身を包んだ青年だった。後ろには少女も見える。
騎士はエメライン嬢を守るようにして前に立つ。男は鋭い眼光で騎士を睨みつける。
「何者だ」
「そうだな・・・ファントム。とでも名乗ろうか」
「ファントムだと?次から次へと・・・」
「お偉いさんも学者先生も俺たちを救う気なんかないんだろ?だから見て見ぬふりをする」
「ちょっと兄貴、貴族に絡んじゃヤバいって、牢屋にぶち込まれちゃうよ?ここは抑えて、ね?ね?」
「お姫さん。教えてくれないか?民衆の血税は何に使われてる?あんたと陛下のロイヤルウェディングのためじゃないんだろ?」
「貴様・・・これ以上の侮辱は許さん!」
騎士の女が剣を抜こうとする。それと同時に、ファントムと言う男も腰に手を回そうとするが、その間にエメライン嬢の言葉が割って入る。
「あなたの怒りはごもっともです。この国は、多くの人を切り捨て、犠牲にしてきました。けれど陛下はこの流れを変えようとしています」
「フン・・・どうだか。だが、あんたの心持ちは理解した。で、お前はなんでまたここに?」
そう言いながら、今度は俺に視線が注がれる。俺は嘘のない範囲で。ここに光の異常が確認されたとだけ伝える。
「光の・・・!?」
「なら、すぐにここから退散したほうがいい」
「!?エメライン・・・様・・・?」
騎士が言葉に詰まる。しかし、視線の先には光に包まれるエメライン嬢がいた。まさか・・・。ファントムも何かに気づいたように構える。
「その光・・・まさか・・・!」
気づいた。が、気づいたからこそ遅かった。
「パーシ、走れ!ここから離れるんだ!」
その瞬間。エメライン嬢を包む光が大きくなっていく。やがてそれは、俺たちの意識すら飲み込むように・・・大きく広がっていく。
天から光が注がれる。それは、彼女にまるで罪があるかのように、一気に彼女に放たれる。
「エメライン様!こちらへ・・・!」
「ローラント・・・」
2人が手を伸ばす・・・が、その手は無常にも届かず、彼女は呆気なく光へと飲み込まれた。
「エメライン様あああああっ!!!」
彼女の声だけが響く。光は輝きを増し、俺たちは受け身を取る。思わず目を閉じ、開ける。
「エメライン様が・・・ああ・・・なんで、どうして・・・」
「エメライン様!?」
彼女は何かを決めたように身を委ね、その身体は光とともに宙を舞う。もう一度光が輝くと、そこに居たのは、姿を変えたエメライン・・・いや、
化け物の手が俺たちに伸びる。ここまでか・・・そう思った時、後ろから大きな人影が走って来て、俺の前に立つ。大剣を一閃させ、化け物を吹き飛ばす。
「死にたく無ければ言うことを聞け!そいつをつけてな!」
「あなたは!?」
「機動兵団のレオカディオだ!光に晒された者だけが!光を討てる!お前たちは・・・もう覚醒者だ!俺に続け!」
俺は目の前に落ちてきた大剣を拾う。ローラントと呼ばれた騎士は盾に装着されていた剣を抜き、ファントムは銃を手に取る。
その後のことは・・・覚えていない。