「マスター……おや、居ないのか」
数多のサーヴァントを従える我がマスターだが、普段の姿は数多の英霊を従えるというより一人の友人として、家族として共に過ごしている。だからだろうか、俺のようなホムンクルスにも良くしてくれている。有り難い限りだ。そんなマスターからマイル―ムに来て欲しいと呼ばれたので来てみたはいいが、どうやら別件で外しているようだ。数多の英霊に好かれる稀有な我がマスターのことだ。きっと他の英霊と話しているのだろう。
「……よし」
ならば、待つことにしよう。幸い、読みかけたまま放置された本が数冊部屋に散らばっている。時間が余れば、それを読みながら待てばいい。
マスターのマイルームに置かれた数冊の本を纏めていると、あるタイトルに目が奪われた。
【ニーベルンゲンの歌】
「──これは」
かの大英雄、ジークフリートの伝説だ。今、自分がこうして居られるのは、全てあの大英雄のお陰だ。万感の思いで息を吐く。何しろ、そのジークフリートもこのカルデアに居るのだ。また出会える時があるなど、それこそ奇跡と言えるだろう。例え、あの時の大英雄では無いとしても、ジークフリートであることは変わりない。
気を取り直して、数冊の本をタイトルが見えるように机へ置き、椅子へ座る。
──思ったより、マスターの戻りが遅い。
気がつけば、ニーベルンゲンの歌を手に取っていた俺だが、目的はマスターからの呼び出しだ。探しに行こうかとも思ったが、それではマスターと入れ違いになると考えて踏み止まる。ふと、マイルームの扉からマスターのベッドへ目を移す。
「──ん?」
よく見ると、ベッドの下に一冊の薄い本が落ちていた。
「俺としたことが、見落としていたか」
拾ったそれは、マスターの日記だろうか。タイトルも何もない、だけど使い込まれた形跡のあるそれは、長い間大事に持っていたことが分かる。きっと、このカルデアにて出会った様々な経験、英霊やマスターとして勉強したことをこのノートに書き残しているのだろう。大変、勤勉なマスターだ。
「我がマスターは──」
大英雄、ジークフリートをどう思っているのだろうか。この部屋にあるということは、最近ニーベルンゲンの歌を借りたのだろう。ならば、最後の頁に載っているのではないか。大英雄、ジークフリートについて話し合いたい、そんな軽い気持ちでノートを開き──人間の新しい一面を知った、いや、知ってしまった。
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「──はー、思ったより時間かかっちゃった」
ジーク、待っているだろうな。まさか、赤いオカンから部屋の整理がなっていない、と捕まるとは。確かに、最近は忙しくしていて、部屋の片づけをサボっていたのは認めます。けれど、30分もの説教は疲れるのです、何だかんだ掃除してくれたり、美味しいご飯を作ってくれるのは本当に有り難いけど。ああ言えばこう言うあの無銘の英霊は、アーチャーでありながら別の何かではないかとよく思う。
──料理人のサーヴァント?母度の高いサーヴァン……いけない、それは別の何かだ、忘れよう。
人を待たせていると聞いて、詫び代わりのお茶請けをスムーズに用意してくれたのは流石である。
「ごめんねジーク、待たせちゃったね」
「──」
何かを読んでいる。憑きものが付いたように、何かを、真剣に。
「ジーク?」
嫌な予感がする。最近は、忙しくて部屋の整理も出来ていなかった。それに、つい先日赤いオカンが整理をしたばかりだ。タイトルが見えるように置かれた本が数冊。借りてきた本はあれで全てだ。では、あれは何だ。
そ、それにしても、ジークから返事が無いのも珍しい。恐る恐る、ジークが何を読んでいるか覗き込んで──
「い、いい、いやぁあああああああああ!」
硝子の心が砕け散りそうになる。それは、それだけは誰にも見られたく無かったというのに……!
「マ、マスター……来ていたのか。済まない、気が付かなくて」
驚きながらも謝ってくるサーヴァント、ジーク。気兼ねなく話せるサーヴァントの彼に見られてしまうとは……不覚!
「そうだ、マスター。一つ言っておかなければならないことがある」
畏まって何を言うのだろうか。待たせてしまったことだろうか。予め机に置いておいたお陰で被害を受けなかったお茶請けだろうか。しかし、ジークは私と秘密のノート、そしてタイトルが見えやすいように置かれた本に目を向けていた。
「かの大英雄、ジークフリートは」
ああ、彼は今、私に晩鐘の鐘を鳴らそうと言うのか、無自覚のまま。次に口を開く時が怖い、瞬きのようなこの一瞬が、永遠のように感じられる。
──汝の首を断つか。
ハッ、私は今、何を考えた。サーヴァントであり、友人でもあるジークがそんなことを言う訳が……
「マイルームでも、このノートに書かれたように、同じクラスメイトとしてマスターに甘い声、というものを掛けているのだろうか」
おお、神よ、どうして私にこのような試練を……いや、神霊いるんだけど。いけない、こういう時は、柳生さんに倣って……我が心はふ、浮動。し、しかして自由に、自由に在らねばならぬ。
「それと、他のサーヴァントも同じように言っているのだろうか。この【カルデア高校、私と七色のサーヴァント!】にはそう書いてあったが。もし、他のサーヴァントもマイルームで言っているのならば、俺もその甘い言葉、というのを言わねばならないな。いや、しかし、俺にはルーラーが……」
──死告天使
ああ、あの鐘の音が聞こえ、
「マスター、どうしたんだ。マスター」
この後のことはよく覚えていない。
──令呪3画を使ってコンティニューしますか?
いや、そんな選択肢あったらとっくに選んでいるわ!
実は、これが初めての二次創作だったりします。
人物描写の練習になりそうなので、もしこんなお題で何かを書いてほしい……そんなことがあれば感想欄までお願いします。m(_ _)m