タマモキャットって、普通にキッチン組だよね。……と言う事はこれから増やさないといけない、ということだよね。
マジかー、一つの会話考えるだけでも意外と時間を喰うんだよな、キャット。
常識的かと思えば、突拍子もない事をいい、されど時に真理を突く……汝、ネコとは和解せよ。
うーん、ナマモノ感を出すのが難しい。
あ、今回のは過去のを見直していたら筆が乗ったので、書くがままに書いています。
BOXガチャ──それは多くのマスターが血走った眼でひたすら同じクエストをこなし、集めた券でひたすらBOXに納められた景品を引き当てては、戦力であるサーヴァントをひたすらに育成するという……傍から見れば何かの病気に罹ったのでは、と思われる奇行である。特に、召喚されたばかりのサーヴァントはその奇行に訝しんだ視線を送るのだが、疲れ切った眼で「今、今頑張らないと、後が辛いんだよ……」と泣きそう、かつ覚悟が決まった眼で言われてしまっては、すごすごと引き下がるしかない。後の説明は、居残り組のサーヴァントやマシュが説明する事が殆どだ。そして、マシュはマシュでマスターの様々な作業を見送る事しか出来ず、かと言って一人休むことに気が引けているようだ。ミーティングなどの予定が無ければ食堂に居る事が多くなった。
そんなマスターが周回続きの生活に浸っていた早朝、目を覚ましたマスターが目を擦りながら食堂に入ってくる。
「いや~今日も周回日和だねエミヤ」
「そんな日は存在しない、と言いたい所だがこの時期は、な。それはそうと、きちんと食事を取りに来たのはいい事だ。これを食べるといい」
「え……これって」
私が渡した食事を見て、マスターが顔を歪める。
「君の事だ。APがオーバーしていたら、此処に足を運んでなどいないだろう。ならば、食事時くらい、ゆっくりすることだ。本来は過度な周回など認めるつもりなどないのだが……ロビンフッドの【顔のない王】を使った追跡や清姫のストーキングスキルを利用した追跡すら振り切った上、そのまま周回に向かう君を見てしまっては、な。力を入れるのは分かるが、体を壊しては何の意味もない」
あの時は本当に驚いた。只の人間の執念が英霊を凌駕する……万に一つはそんな事もあるかもしれないだろう。それが勝利の為ではなく、素材の獲得に発揮されるとは予想も出来なかったが。
「……はい、はい。面目ありません。それじゃあ、いただきます」
渡された食事を見て一度嫌な顔を見せたマスターだが、私の忠告が効いたのか素直に受け取った。酷い時はそのまま逃げだそうとするから、山場は過ぎたのだろうか。まぁ、そんな事をさせない為のメニューでもあるのだが。そんなマスターの様子を見ていると、次の訪問者がこの食堂にやってきたのが目に入った。
──エミヤのおかんめ。
そう呟けたら、どんなに良かったか。そんな事を言ったら間違いなく耳に入れられるだろうし、追加メニューが入ることが間違いなしだろう。あえて、食事に時間が掛かるものを用意してくるとは……山場は越えたからいいけれど、この時期だけは手軽に食事を取りたかったのに。
──だからこそ、久し振りの和食とは……ズルいにも程がある。
渡された皿は五つ。お味噌汁とご飯、主菜と副菜二つというザ・和食の構成だ。
「いただきます」
まずはお味噌汁。カルデアに来てからはめっきりと食べる機会が減ってしまったが、偶に食べるお味噌汁がどれだけ美味しい事かを思い知った。具材はシンプルにネギと豆腐、味噌汁を一口含めば、味噌と共に僅かに魚介の香りが鼻を通っていく。いつもながら美味しいのが憎い。これでは、ゆっくり食事をするしかないじゃないか。
次に副菜。一つはキャベツを使ったサラダのようだ。温めたことで緑の色が濃く見えるキャベツを塩昆布とツナで和えたのだろうか。口に含むと、ワサビのツンとした香りが良いアクセントになっている。これではご飯が欲しくなってしまう。たまらずお椀を見ると、そこに盛られていたのは白米……と思いきや玄米だった。確か、エミヤが言うには栄養価のバランスが非常に良いのだとか。そう言えば、作り方にコツがあるとか言っていたような気がしたが……他にも何か忘れているような。
「……?」
玄米を一口含んだ時、お椀の近くに紙が掛かれたメモ書きに気が付いた。
──マスター、玄米はよく噛んで食べないと消化不良を起こす可能性がある。幾ら周回続きの日々が続いているとは言えど、体調は崩したくないだろう?
「…………」
おかんの英霊が残したメモ書きは見なかったことにしよう。もう一つの副菜は納豆、とろろ、おくら……それらの食材が絹豆腐を覆うように敷かれた小皿。ネバネバ食材は体にいい、という奴だろうか。何れもご飯の供になり得るものの、豆腐とも相性がいい。カルデアに来てからエミヤが作った醤油瓶を添えているのが何とも憎たらしい。
「……先輩」
「あれ、マシュ?」
この時間に来るとは珍しい。
「おはようございます。エミヤさんから食事を頂いたので一緒に食べませんか?」
「うん、いいよ」
図ったのか、と思わず視線を向けそうになったが、流石に起きる時間を予測してマシュを呼び出すほどのあの男は悪趣味では無いだろう。そんな事をやりかねないおかんではあるが。
「今日は和食なんですね」
「うん、多分エミヤが図ったんだと思う。暫く周回しかしていなかったから」
「……そ、そうですね。近頃のマスターはとても鬼気迫る顔をしていましたから」
自覚はあったが、そんなに酷い顔をしていたのか。
「そんなに酷かった?」
「はい、締め切り間近に迫ったアンデルセンさんのような」
「あぁ……」
否定が出来ない。最近はようやく落ち着いたと言えど、暫く林檎生活が続いていたのだから。
「先輩、これは何と言う料理なのでしょうか」
そんな中、私がまだ手を付けていない主菜を指す。パッと見は豚の生姜焼きにも見えるのだが、使われている肉は鶏肉だったからだろう。
「多分だけど、甘酢で漬けたんじゃないかなぁ」
そんな予想を立てながら一口。うん、予想通りだ。度重なる周回に疲れた体に、甘酸っぱいタレが染み渡る。それと、お酢に漬けたからなのか、心なしかお肉が柔らかいような……そんな食べ物を持ってくる辺り、やはりあの英霊はクラス:アーチャーなどではなく、クラス:おかんの間違いではないだろうか。
「甘酢が効いていて美味しいですね、先輩。思わずご飯が進んでしまいます!」
ようやく落ち着いてきたし、今日くらいはゆっくりしようかな。
マスター達の様子をキッチンから伺うのは、エミヤ、ブーディカ、それとキャットである。
「おお、食事で釣ろう作戦は成功だな、チーフレッド」
「キャット君か。まぁ、前にもこんな事があったからな……」
何処か遠い目をするエミヤをタマモキャットが突く。
「何があったというのだ、一体。まさかご主人、かつては優秀なマスターというだけではなく、サーヴァントすら下したことがあったとでも言うのか」
「似たような所だ。サーヴァント相手に一歩も引かなかった、という面ではな」
ブーディカも同じことを思い返していたのか、苦笑いを浮かべるのみ。
「ところでチーフレッドよ、今日作っていた料理はいつも通り教授出来るのか」
「今回の料理は比較的簡単だからな。やり方さえ覚えれば、此処に居ないメンバーでも短時間で作れるだろう」
「それじゃあ、あまり時間が無い時でも作れるのか。相変わらずレシピの幅が広いねえ、君は」
エミヤを感心した様子で褒めるブーディカだが、当の本人は首を横に振るのみだ。
「いえ、私がこうして料理が出来るのは、知っている食材や調味料、それに調理機材があるからこそですよ」
「そうやって君はまた謙遜して~。あ、さっきの料理は私も気になるから、一緒に教えて貰おうかな」
「おぉ、ブーディカも気になるのか。では、チーフレッド。他の者が大勢来る前に教えるがよい」
「承知した」
こうしてまた一つ、カルデアキッチンに新たなレシピが追加されるのだった。
書き易い、書きたいと思ったものは案外筆が進むもの。しかし、n番煎じも良い所だ……