実は昨年に書いていたもの。
今上げないと投稿するタイミングを確実に失うので投下。
本当は、三人が見た夢とかを書きたかったんだが……
「先行舞台として到着したはいいが……」
一昨年はホノルルとハワイが合体したルルハワ、昨年はラスベガスだった。今年も素晴らしい都市だろう……そんな想像していた私達が見た光景は、見渡す限りの緑と湖だった。
「しかし、これは参った。せめて、どんな場所か分かっていれば良かったのだが。これでは、折角のアロハが栄えないではないですか」
「それには同意しよう、ガヴェイン卿。しかし、我らの役割はマスターが安全に過ごせる場所の発見と周囲の散策です。我ら三騎であれば、大抵の敵は払うことが出来るでしょう」
「そうだな、ランスロット卿」
無事に特異点へ到着し、周囲に敵が居ないことを確認した三人は手に持っていた武器を仕舞う。
「まずは、マスター達の拠点になり得る場所を探しましょう。行きますよ、楽しいトリスタン」
「私は哀しい──このような場所では曲を聞かせる相手が居ないではありませんか」
何故、三人がアロハのまま出撃してしまったのか、それは度重なる夏の魔力に中てられた……のだろう、きっと。生前にはっちゃける場が少なかったからとか、そんな事ではないはずだ、きっと。しかし、そんなアロハな三騎士でも彼らは円卓の騎士。幾度の行軍で鍛えられた彼らの健脚が、それを見つけるのは時間の問題だった。
「ふむ、これはコテージか。マーリンや他の魔術士が来れば詳しい事は分かるだろうが、拠点としては十二分か」
「しかし、問題は中です。そこに危険があってはマスターも安全に過ごすことが出来ないでしょう」
「そうだな。ガヴェイン卿、トリスタン卿。まずは中を調べることにしよう」
気配がない事は分かっていたが、三人は一応の警戒をして散策を行う。しかし、何が起きる事も無く、室内の散策は終了した。内装はサーヴァントやマスターが数人で屯しても問題ないほど広いラウンジ、キッチンなどの水回り、二階には大所帯でも問題なく泊まれそうな個室が複数、と。しかし、それだけの施設が人気の無いこの場所にあることが少々気がかりだった。
「このような場所で、此処まで揃っているものなのか?」
「……時代の違いはあるかと思いますが、卿の意見に同意ですね。ラスベガスやルルハワのような都市であれば兎も角、秘境と呼べるような場所でベッドに水道などがしっかりと通っている……このような事があるのでしょうか」
「ですが、これ程の拠点は他に無いかと。他の先行部隊が到着次第、直ぐにこの場所を伝えた方が良いですね」
「違いない」
ふと、窓から覗く太陽を見れば、天高く昇っていた。
「もうこんな時間か。簡単なものだろうが、食事にするか」
三人が取り出したのは、先行部隊に渡された食事で、カルデアのキッチンを預かる赤い人が監修したものだ。数分程度で仕上げているのを見たランスロットはそれを簡単な料理と言ったが、赤い人が監修した数分程度の食事は彼らが数分で出来るような料理とは比較することすら。
「……美味い」
「ふむ、これにマッシュとエールがあれば言う事なしですね」
「……私は哀しい。草花のような色鮮やかな食事を味わう機会がサーヴァントになってからだったとは」
三人はコテージを出た後、湖畔などを散策していたサーヴァントを発見する。
「……と言う訳で、この辺りにマスターがレイシフトしたならば、其処にあるコテージへ」
「了解した。それで、これから貴方達は何処へ?」
「ええ、三人で森へ行こうかと。貴方達の話だと狂暴化した獣がいるとか。それでしたら、調査ついでにマスターが来る前に少しでも狩っておこうと思いまして」
すると、集まっていたサーヴァントの1騎であるジェロニモが口を開く。
「貴方達に限っては、万に一つも無いかと思うが、どうか気を付けて欲しい。まだ調べられていないのだが、この土地は何かしら呪的な影響があるみたいだ」
「ご心配頂き、ありがとうございます。もし、何かあったら直ぐに声をお掛けしますので」
ジェロニモとの話を一度切り上げたガヴェインが、近くで曲を弾いているトリスタンと、もう一方で情報収集しているはずのランスロットを探そうとして……そのランスロットが呆然とした立ち姿で湖を見ているのが目に入った。
「──ランスロット卿?」
「ああ、ガヴェイン卿か。済まない、少し気になることがあってな」
そうして湖を眺める端正な顔は、眉が釣りあがっていた。
「貴方程の者が珍しいですね。もしかして、マシュ殿かガレスの事でしょうか」
「その二人も気になっている所ではあるが、目下の悩みは目の前の湖でな」
「湖、ですか。ああ、貴方は──」
「ああ、不思議なことにあの湖を見ているとな、私に囁いてくるのだ。この湖には決して入るな、と」
ガヴェインはその言葉で、ジェロニモが話していた内容を思い返す。
「……それは」
「ああ、もしかしたら我々が向かう森も同じかもしれん」
「なるほど、一層気を付けなければなりませんね」
トリスタンを回収した二人は、拠点となるコテージの場所を伝えた後、ジェロニモ達とは合流せずに深い森へ足を運ぶ。
──それがこの夏の最後の思い出になるとは、この時の三人は想像すらしていなかったが。
彼らが入った深い森は長い間、人の手が入っていなかったらしい。家の支柱にも使えそうな程に太い幹を持つ木々が、空からの恵みを奪い合うように天へと伸びていた。
「これ程の深い森が、この特異点では色濃く残されているのですね」
「そうですね、森とはこのように、人の手が無くとも逞しく生きることが出来るのですね。ところで、貴方はどう思いますか、ランスロ……ット卿?」
アロハを着ているにも関わらず、その端正な顔からは気難しい表情がありありと浮かんでいた。
「……ガヴェイン卿、トリスタン卿、この森について貴公らの意見を伺いたい」
「突然どうしたのですか、ランスロット」
「ジェロニモ氏とランスロットの予感が当たりましたか。戦っても勝てる相手ではありますが、これは撤退すべきかと。どうやらこの森も普通の森では無いようです」
「私も同意見だ。直ぐに撤退して……何だ!?」
──先程まで日は高く昇っていたはずだった。しかし、周囲を見渡せば辺りは真っ暗な闇に覆われている。そう、いつの間にか夜になってしまったのだ。平常時であれば、その程度の危機も物ともしない彼らだが、この特異点の夜は怪談から始まる恐怖の祭典。オオカミの遠吠えがあちこちで響けば、姿なき人影が跋扈する夜の森へ変貌する。気が付けば、近くで歩いていた筈の二人が姿を消していた。
「……ガヴェイン卿、何処だ。返事をしろ!」
如何に屈強な彼らであろうと、その法則に打ち勝てるものでは無かったらしい。
「──わ、たしは哀しい。今年は夏を……謳歌出来ないのですね」
「何処だ、トリスタン卿。私の声が聞こえるならば返事をしろ!」
終わらない夜は如何に強靭な彼らであっても確実に精神を消耗していく。
「ガヴェイン卿、今すぐ下山するぞ!」
しかし、下山を試みても同じ場所をループしているかのような錯覚すら覚える。
「この山、全くどうなっている……む」
ふと気が付けば、色の付いた煙が眼前に迫っていた。
「何だ、この靄みたいな煙は……」
そうして、ランスロットは信じられない人物を見た。
──馬鹿な……どうして彼女が、ここに居る?
「二度と会う事は無いと思っていたよ、────」
……こうしてアロハ三人衆は、深い森で短い夏を終えたのだった。
しっかし、5月に復刻されるとは思わなかった。弊カルデアはふじのんに石をねじられました。この痛みを忘れる為にも、早く新規ストーリーを見たいものですね。