一応、閲覧には第二部六章クリア済みを推奨します。専用ボイス的な意味でね。
汎用ボイス、専用ボイスを一通り確認して気付いたのですが……やっぱりアヴァロン・ル・フェで関わっていない者の専用ボイスは無いようですね。
……ということを踏まえて、こんな感じになりました。
「こんにちは。キャスターアルトリアと申します。実のところ、サーヴァントというのはよくわからないですが、魔術なんかでお役に立てると言うなら遠慮なくお使いください。え?魔術は「なんか」じゃない?……うわぁ、こっちの世界じゃそうなんですか?」
そうして召喚された私はマスターの案内を終えた後、他の人に話を聞きながらカルデアがどういう存在かを少しずつ知っていった。
魔術師と呼ばれる人たちがいること。彼らにとって私たちの存在は兵器であるらしいこと。マスターという人たちはそれを使い、世界を救う存在であるということ。
……同時に、マスターという存在が如何に重要かを知り、心底心が痛んだ。だって、私はただ喚ばれただけの存在だったから。
──あんなにボロボロなのに、どうしてまだあなたは戦うのか。
メディアというサーヴァントからカルデアの話を聞いている傍ら、そんな思いに駆られる。まぁその思案も……
──セイバーと同じく金髪で、小柄でぇ、キリッとはしていないけど、素朴な村娘の精一杯の晴れ姿。フフフフフ。その姿もとても似合っているけれど、もっと可愛らしい服なんかも着せてみたいわ……
私の脳裏にちょっとした危機を知らせる鐘が鳴る。うん、これは不味い。
「あ、ちょっと。まだ話は終わってないわよ」
早々に逃げ出すことにした。
「お話、ありがとうございます。色々と分かりましたので、一旦失礼します!」
「待―ちーなーさーいー……」
何とか逃げ切れたけど……あの人、とんでもない魔術士だ。今は上手く巻いたけど……魔術を使われたらどうやって逃げようか。
私のレベル面での強化が終わり、ようやく私は自分と言う存在を把握した。ブリテンの守護を定めとする者。あの少女ではたどり着かなかった、そう在れと願われた姿。そんな私でも僅かですが、能力が上がる……不思議なこともあるようだ。
「よしっ!」
そうして、ようやくスキル強化も終わった。これで成長が打ち止めになるかと思えば残念だが、なればこそ。十全に力が振るえるということなのだろう。
「ありがとうございます。ようやくこれでスキル強化が終わりましたね、お疲れさまでした。早速、クエストに行きますか?」
「うん、色々と確認したいこともあるから、同行よろしくね」
マスターの努力はこうして実り、私はマスターと共に周回を共にする毎日となった。何もすることが無いよりはいいけれど……毎回毎回スキルを放つだけの作業というのはどうなのだろうか……と思っていたが、流石は歴戦のマスターだった。他のサーヴァントが宝具を放つだけで直ぐに終わるのだから、多くの敵を相手にする場合は間違っていないのだろう。
今日も同様に、クエストを回るのだろう……そんなことを考えていた私だったが珍しくマスターが見当たらない。
「さて、この時間であればクエストに出掛ける時間で会ったような……」
そんな折、マスターが鬼気迫った形相でマシュと一緒に召喚ルームへ入る所を見掛けた。
「珍しいこともあるのですね、一体」
あのマスターが時折見せる、余りにも切実な顔をしていた。絶対に引いて見せる、と強い意志を持っていた。聞いた所によると、私の時もそうであったらしい。定期的に起こる発作のようなものだと諦めた顔をする者もいたので……それがどのようなことかが気になった私は召喚ルームに足を踏み入れる。
「マスター、こちらにいまし……」
「いよっしゃあ!」
……何か、いいことがあったらしい。その証左として、足元から虹色の光が零れている。さて、何が来るのだろうか。……そうして、光が止んだ時、私の中の誰かが叫んでいるような、気がした。
「セイバー、千子村正。召喚に応じ参上した。なんで儂がセイバーなのか疑問だったが、今なら多少は納得がいく。こうして喚ばれた儂(オレ)とは無関係ではあるが、ま、同じ顔で好き放題暴れたんだ。気の済むまでこき使ってくんな」
それから暫くして、マスタ―と共にクエストを回っていた私だったが、何故か暇が出来るようになった。何やら、新しいクエストの回り方を実践してみたい、だとか。色んな状況に合わせる、対応出来る集会の検討を始めた、らしい。最初はとても理解できなかったが。
しかし、それでは時間を持て余す。そのため、村正の手伝いをすることにした。
アルトリア・アヴァロンの私ではクエスト以外の縁は少ない筈だが、アルトリア・キャスターにとっては違うらしい。まぁ、鍛冶師なので、私も気になると言えば気になるが……どうせなら、縁の深い彼女の方がいいだろう。といっても、手伝いの内容は只の荷物運びだが。
「よし、こいつの調整は終わりだ。次の調整は、と」
よくよく思い返せば、スキルの育成が終わった後の私は毎回の如くクエストに同行していた。個人的な用事の手伝いをするのは、カルデアで初かもしれない。いや、初めてだった。
「よし嬢ちゃん、こいつを徳川の剣術指南様に持って行ってくれ。俺は別の仕事が入っているからよ」
「了解……って、嬢ちゃんじゃなくて、アルトリア・キャスターだぞぉ!」
この鍛冶師と話す時は、何故か旅を共にした時の姿(第2再臨)になる癖がある。そうした方が気軽に話せるからだと思っている。その一方で、この鍛冶師の一言には反射的に言い返したくなるの……何故だろうか。
「あぁっ?選定の杖だろうが、選定の剣だろうが、嬢ちゃんであることには変わらねぇだろう」
…………!
「そういうところだぞ、村正ァッ!」
そういうところだぞ、村正ァ!
──さて、村正からの預かり物を両手で持ちながらカルデアの廊下を歩きつつ、ふと思い返す。さて、どうして私が暇になったかと言うと……
「戦術の新しい可能性を模索してみる」
マスターがそう言って、敢えて不利な相性でクエストを行うという狂気に走ったからなのだ。私やマシュを始めとしたサーヴァント達も苦い顔を浮かべていたんだけど……心底参ったような顔で。
──本当にきつい場面は、相性有利程度では勝てないんだ。
ああ言われては、私も他のサーヴァント達も言い返せなかったのだ。
おっと、気が逸れた。今は村正のお使いをしっかりやらないと。
「徳川の剣術指南様……確か、やぎゅうたじま……イタ、やぎゅうさんでいっか」
──舌を噛んだ。ではなくて、マスターが前にりゅうたんと言っていたような気がする。だけど、あまり面識のない人に愛称はちょっとね。
変なことを思い出していたからか、気が付けば村正にこの剣の調整を依頼したお爺さんがいる部屋に到着していたようだ。
「あの、やぎゅうさんはいらっしゃいますか?」
「ここにおる。おや、お主は……村正殿の使いか、入るがいい」
「し、失礼しまーす」
──本人にはその気がないのだろうけど、とても威厳があるように聞こえる。
「こちら、村正さんが調整を終えた、と」
「どれ、少し見てみるか」
渡した剣を一度見たやぎゅうさんはスッと音もなく鞘から剣を抜く。その音すら置いていくような動きと、剣自体の美しさに思わず目で追っている自分がいた。
「この刀が珍しいか。だが、古今東西の英霊がさーばんととして集まるこの場では、如何なる武器の在り方も有り得よう。己の腕よりも太い剣を振るうものもおれば、己よりも長い武器を振るう者も然り」
「はい。それは分かっています」
「ならばよい。して、要件はそれだけでは無いのであろう?何用で代理を務めてまで、此処を訪れた」
剣術指南役というのは妖精眼でもあるのだろうか。私の考えを先読みして答えてくる。
「……それじゃぁもう少し、その刀を見させてもらってもいいですか」
「うむ。村正殿の仕事もまだ残っているだろう。心ゆくまで見ていくがいい」
私の考えが分かっていたのか、やぎゅうさんは本当に鞘と共に私に刀を渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
「うむ。私は暫く禅を組むが故、居ないものとして扱うがいい」
──自分のことなど気にせず、我が剣を見ていなさい。
その心遣いに感謝し、しっかりと見ていくとしよう。役目を果たした私は、どうしても作るモノが剣になってしまう性質だ。だが、そんな私だからだろう。彼らの武器は妖しくも美しい、と感じる時がある。見た目は私の杖と同じか細い位なのに、その切れ味と耐久性は驚かされる。何らかの神秘が宿っているのではないか、と思う程に。いや、サーヴァントの時点で神秘が宿っているんだろうけど。
気が付けば、それなりの時間をかけて刀を眺めていたことに気が付いた。時間としては10分くらいだろうか。まだ、村正は仕事をしているだろうけど、役目を終えたことを伝えにいかなければ。刀を鞘へ仕舞い、やぎゅうさんの隣に置いた時……
「ならば、あれを持って行くといい」
「へっ!?」
驚いた。この人、起きていたの!?
驚く私を置いて、やぎゅうさんはあるものを取り出した。
……濃い紫色のそれは何でしょうか。
「何、初めて見るだろうが、我々の国で食べられているすいーつなるものだ。今日の礼に持っていくがいい」
「ありがとうございます。村正に渡しておきますね」
「うむ。暇が出来た時はまた来るがいい」
今度、何か差し入れを誰かに作ってもらった方がいいだろうか。
そうして、羊羹を携えて村正の部屋へ戻る。そうすると、一仕事終えた村正が畳なる床で横になっていた。
「すみません、少し遅くなりましたが戻りました」
「おう、気にすんな……って、それは羊羹か」
村正もやぎゅうさんが渡してくれたこれに気付いたらしい。
「はい、やぎゅうさんから今日の礼だ、と言って渡してくれました」
「そうか。なら、ありがたく頂かないとな。嬢ちゃんも食っていくか?」
「え、いいんですか?」
カルデアの食事はそもそもが美味しいのだ。見知らぬ料理であろうとも、虫料理以外は喜んで口にしよう。
「あぁ、きっと儂が出向いちゃあ、その羊羹は貰えなかっただろ。それじゃあ、茶を淹れるから少し待っていてくれ」
マスターの気紛れで出来た休暇だったが、こういう時もいいのかもしれない。