今年もまったり更新していきますので、よろしくお願いします。
さて、今回のお題は【猫と戯れるはべにゃんとそれを見守るぐだマシュ】
ハベトロットの最終再臨時の台詞を参照すると分かり易いかも……
それに付随したかは分からないけど……はい、二部六章アヴァロン・ル・フェ
攻略後の閲覧を推奨します。
暗くはないんだけど、ボディーブローが入るかもしれないので、一応
最初は4000文字程度を想定していたんだけど……気が付いたら増えてた
新しいサーヴァントであるハベトロットを迎え、諸々の準備(レベル上げ等)を終えた私は、マイルームでマシュを待つ時間潰しとして、ハベトロットと話をしていた。
「マシュは僕の一推しの花嫁だね。ひと目見た時に、ビビッときたのさ!……でもその話をすると、マシュはちょっと悲しそうな顔をするんだ。なんか僕したのかなあ……」
妖精國のハベトロットと大切なやり取りがあったんだろう。きっと、似たようなやり取りが出てきたことで思い出したんだろう。どんなやり取りかは分からないそれはそれとして、マシュのことを気にいってくれたのは大いに歓迎すべきところだ。
「ねぇねぇ、マスター。君が住んでいた街が知りたいんだけど……」
……住んでいた街、か。それにしても、随分と遠いところまで来たなぁ。
「……ちょっと記憶が曖昧だけど、大丈夫?」
「……もしかして、聞いちゃいけなかった?」
……ハベトロットはよく見ているね。まさか気付かれるとは思わなかったけど。
「大丈夫大丈夫。ただ、最近は色々あったから忘れていることも多くてね」
「そっかぁ……じゃあさ。もし、カルデアのシミュレーションで再現できるとしたら……興味あるかな?」
それは……考えたこと無かった。素材獲得の為にシミュレータを使うことは多々あったけど、そんな風にも使えたね。そういえば。でも、どうやって再現するんだろう。
「そうだね。でも、そんなこと出来るんだろうか」
「うーーーん……言ってみたはいいけど、僕だとやり方が分からないや。変なこと聞いてごめんな」
だよね。おや、扉を開ける音が。多分、マシュが戻って来たかな。
「先輩、ハベトロットさん。紅茶を持ってきました」
お、フォウ君も一緒だ。
「マシュ、ありがとー……それじゃあ、砂糖、砂糖っと」
「ミルクもありますよ。どうしますか」
「欲しいなー」
「フォウフォーウ!」
あれは多分、僕の分は無いのか、かな?
「フォウさんにもミルクは用意していますよ!」
「フォウ!」
「先輩はどうしますか」
「折角だから貰おうかな」
さて、今は休憩時間だ。何をして過ごそうか。
「先輩、トランプは如何でしょうか」
「何だい、それ。遊び道具なのかい?」
ああ、そう言えば最近は触っていなかったね。丁度いい、久々にやろうかな。さて、何のゲームをしようか。
「それじゃあまずは、ババ抜きをしましょう!」
「フォウ!」
ババ抜き、神経衰弱、七並べ……色々なゲームをやっている内に、そろそろ眠る時間となっていた。
「もうこんな時間ですね。片付けも終わりましたので、また明日会いましょう!」
「お休み、藤丸。しっかりと寝るんだぞ」
「フォウ……」
二人とフォウ君がマイルームを後にする。うん、最後に筋トレしてから寝ようかな。
先輩は誰よりも前向きで、辛いことがあっても他の皆には見せない強い人です。最近は笑いながら何でもない、と言って誤魔化すことが多くなったのが最近の心配事です。ジャックちゃんもマスターが笑わなくなった、と言っていましたし……ゆっくり過ごす時間も先輩に必要だと思うのです。
「なぁ、マシュ」
どうすればいいんでしょうか。私に何か出来ることはないでしょうか。今、ハベトロットさんに呼ばれましたか?
「何ですか、ハベトロットさん」
「さん付けしなくていいんだぜ~……じゃなくて、マスターの住んでいた街について、何か知っているかい?」
行く機会があれば、是非行ってみたいのですが……今の状況ですし、伺うことも出来ないのが残念です。
「実は私も知らなくて……ごめんなさい」
「フォウ……」
おや、フォウ君も何処となく寂しそうですね。
「いや、マシュが謝る必要はないさ。でも、興味はあるんだろう?」
「はい。先輩がどのように過ごしてきたのか、どんなものが好みなのか、もっと詳しく知る必要がある、と常に思っています」
将来的には、アイコンタクトだけで戦闘、炊飯、掃除、談話が出来る関係になりたいと思う、マシュ・キリエライトです。
「お、おう……そういえばさ、僕と同じ大きさの色んな発明しているサーヴァントいるじゃんか」
「ダ・ヴィンチちゃんでしょうか」
「そうそう。いやさ、今の話をダ・ヴィンチちゃんにしてみたらどうかなーって思って」
成程、それはとてもいいアイデアです。
「いいですね、善は急げと言いますから、今からダ・ヴィンチちゃんの所に行ってきますね!」
「フォウ!」
「い、今からかい!?まぁいっか。マシュ、僕も気になるから一緒に行くよ」
勢いでダ・ヴィンチちゃんの部屋まで来てしまいましたが、よくよく考えればお休みしていても可笑しくない時間だったことに今更ながら気付ついた。ど、どうしましょう……。
「あ……」
「ちょっと入るぜ~、ダ・ヴィンチちゃんはいるかい?」
「ハベトロットさん!?」
まさか、迷いなく入られるとは……
「おや、マシュにフォウ君、それとハベトロットじゃないか。どうしたんだい、こんな時間に」
今は休憩の時間だったのか、ゴルドルフさんが作ったフィナンシェを摘まみながら、紅茶を飲んでいたようだ。
「ほら、マシュ」
「おや、マシュからのお願いかい?」
「はい、実は……」
そうして私はマスターの住んでいた街について、その風景だけでも見てみたいという勝手な要望をダ・ヴィンチちゃんに話す。
「マシュが何かを頼むこともそうそうないからね、私に任せたまえ。毛色は違うが、似たような依頼をゴルドルフ君からも請けていたからね。それと一緒に開発してしまおう!」
「いいんですか!?」
まさか、私の無理なお願いを聞いてくれるなんて……!
「私は万能の天才、ダ・ヴィンチちゃんさ。出来ない事なんて無いのだよ。私に任せて、マシュはゆっくり休むといい」
「でも、そうするとダ・ヴィンチちゃんの休む時間が……」
「私は気になったことはやってみないと気が済まない性質なのさ。それに、ゴルドルフ君から請けた依頼も私の休息に関係ある。まさに一挙両得というやつさ」
ダ・ヴィンチちゃんの言葉に強がりは見られない。ならば、ここは大人しく休んだ方がいいのでしょう。
「分かりました、楽しみにしていますね。それから、あまり無茶はしないでくださいね。お休みなさい、ダ・ヴィンチちゃん」
「ああ、ゆっくり休むといい」
──二日後、バイタルチェックの時間になった。
最近異聞帯攻略で後から思えば無茶ばかりしていたこともあり、いつも以上に入念な検査となった。とは言えど、もうお互いに慣れたものだ。ムニエルを始めとしたカルデアスタッフ協力の元、いつも通り検査は終了した。
「よし、今日のチェックはこれで終わりだね」
「うん、お疲れさまだ。それじゃあ着替えて大丈夫だよ」
検査を終えて普段の礼装に着替えようとした時、普段は見掛けないものが小テーブルに置かれていたことに気が付いた。さっきまでこんなものあったかな。
「ダ・ヴィンチちゃん。これは何?」
……聴覚を診断するあれかな?
「ああ、それかい。私の新しい発明品さ。体を休めながら過去の記憶を抽出する代物さ。まだ試作品だけど、中々の出来さ」
「凄いね。そんなものまで作れるんだ」
つまり、思い出さなければ良かったハロウィンも、これがあれば思い出せた、と。
「万能の天才だからね、私は。と言っても、精度が低い部分もあるからそこが今後の課題かな。私もさっき使ってみたんだが、いい感じに疲れも取れるんだ。良かったら、試してみるかい?」
そういえば、最近は会議中もうとうとしている時がありますよ、とマシュから言われたんだっけ?
「そうですね。折角ですから」
「分かった。それじゃあ、これを耳に付けて貰えるかな。よし、時間は1時間に設定して、だ」
「……あ、れ?」
ダ・ヴィンチちゃんが時間を設定した瞬間、何か、急に、眠気が……
「元々はゴルドルフ君が一向に休む様子を見せない私に対して、直ぐに眠れるようなものを作ってでも休むようにしろ。そうでもしなければ、新しい開発も思うように進まないぞ、と言ったのが発端でねぇ」
……それ、じゃあ。
「安心して、藤丸君。休む時間は1時間に設定した。それに、だ。マシュから最近は君が休めていないのではないか、という不安……もとい相談を受けたんだ。マシュには心配を掛けたくないだろう。だから、休んでいくといい」
──それが、意識が途切れる前の最後に聞いた声だった。
──所定時間ヲ経過シマシタ。スリープモードヲ解除シマス。
「やぁ、突然ではあったけど休めたかい。藤丸君」
「あ……ダ・ヴィンチちゃん」
まさか、電源が落ちたように意識が落ちるとは思わなかった。それにしても……思いの外すっきりしたかも?
「試すような形になっちゃってごめんね。それでしっかり休めたかい?」
「ええ、それは……それと、懐かしい夢を見たような……」
今はもうあまり思い出せなくなった、カルデアに来る前までの頃だったような……
「ああ、それはちょっと理由があってね。三日ほど経ったらマシュとハベトロットを連れてシミュレータ室に来てくれないだろうか」
どうして、マシュとハベトロットを?
「……分かり、ました」
「何、新しい訓練とかじゃないんだ、楽しみにしていたまえ」
「?」
何をするつもりだろうか。
──三日後、マシュとハベトロットを連れて、ダ・ヴィンチちゃんが指定したシミュレータ室に入る。隣を見れば、マシュとハベトロットがそわそわしているような気もするけど……何をするつもりなんだろうか。おや、シミュレータ室に備わっているモニターからダ・ヴィンチちゃんの顔が。
「よし、皆集まったね。それじゃあ、始めるよ!」
おや、いつものシミュレータ室に入力された情報は……何処だろう、ここ。
「ここがマスターの故郷、ですか」
「……あ」
カルデアへ連れていかれる前までに通っていた高校か。ただ、どうも記憶があやふやな部分があるみたいだ。校舎の色とかグラウンドの色に僅かな揺らぎが見える。
「へぇ、こんなことも出来るのか、凄いなダ・ヴィンチちゃんは」
「フォウ!」
「完全な再現とまではいかなかったけどね。だけど、その辺りも上手にカバーするのも私の手腕あってのことさ」
本当に久しぶりに見た高校は、何処か自分にとって遠い場所のように思える。そして、先生も同じ学生の姿もない高校はどうしても……人気のない廃墟と変わらないと感じる自分もいた。
「十分凄いですよ、ダ・ヴィンチちゃん。ありがとうございます」
「?」
何でマシュがダ・ヴィンチちゃんにお礼を……確かに、この再現はダ・ヴィンチちゃんがやったものだけど……あ。
「気が付いたかい、藤丸君。実は君には言っていなかったんだけど、マシュとハベトロットが君の過ごした街を見てみたい、と言っていてね。私がやっていた発明の機能に併せて作ったんだ。黙っていてごめんね」
「ああ、そういうことだったんですね」
ようやく、どうしてこうなっているかを理解した。なら、案内を……と思ったけど、校舎の中には入れそうにないね。
「あれ、この先には入れそうにないですね。そう言えば、学校ですけど先生や先輩と同じ学生の姿も見えないですね」
「そうだよな、これだけ大きい建物なら何十人どころか、何百人もの人が通っていても不思議じゃないよな」
きっと、それはシミュレータだけの所為ではないと思う。高校の景色も、今見ている景色と比べれば……
「うーん。そこはシミュレータの再現性に課題があるかもしれない。私の方で調整してみたんだけど、藤丸君が意識していない部分や情報量が少ない部分の再現が難しくてね。それがこれからの改善点だね」
思わぬタイミングでダ・ヴィンチちゃんのフォローが入る。
「それでも、たった1時間寝ているだけでここまで再現できるのは凄いよ、ダ・ヴィンチちゃん」
「ふふふ、お褒め頂き光栄だとも。とは言え藤丸君。この発明にはまだまだ改善点がある。今後のバージョンアップを楽しみにしていたまえ」
「へぇー、僕が生きていた頃にはこんな高い建物なんて無かったけど、学校って所以外にも現代にはあんな建物が建っているんだなぁ……」
ハベトロットが物珍し気に周囲を見ている。……そう言えば、ハベトロットは異聞帯のハベトロットでは無いんだったね。そりゃあ、見たこと無いから物珍しい訳だ。
「……ここで先輩と同じ年齢の学友がケイローンさんのような授業を受けるんですね」
これは、マシュに誤解されかねない。訂正しなければ。
「いや、あそこまでは厳しくないよ。まぁ、授業の内容を聞き逃していたら、テスト期間になって必死こいて勉強する羽目になるんだけど」
「それじゃあ、先輩はどんな学生だったんですか。テストの対策は日頃からコツコツやるタイプですか。それとも、一気に対策するタイプだったのでしょうか」
そういえば、昔の自分はどうだっただろうか。今は出来ることをなるべくやってからやろうと努めているけれど……
「そういえば、一夜漬けタイプだったかなぁ」
「そうだったんですね。先輩はテスト範囲も一晩でおさらいが出来たんですね、凄いです!」
マシュ、そんなに期待されても何も出ないよ?
「ねぇねぇマスター、折角だから見える範囲を散策してきていいかな?」
「折角だから一緒に行くよ。マシュもどう?」
「はい、ご一緒させて頂きます」
さて、思わぬきっかけから昔の景色を見る機会が出来たけど……うん、こんな日常があったんだったね。そういえば、最近は色々なこと(イベントなどで)気を張り詰める日も多かったから、偶にはこうして昔を思い返すのもいいかもしれない。
校庭から校舎を一通り歩いて回ったところで一段落した時、ダ・ヴィンチちゃんからオペレートが。
「うん、再現性に課題があるけれど、急ごしらえで作った結果としては上々かな。他にも幾つかのパターンを抽出することに成功したけれど、そっちも見てみるかい?」
折角ダ・ヴィンチちゃんが作ってくれたし、見てみようかな。
「お願いします。それで、次の場所はなんですか?」
「次はね……これだよ」
おお……あっという間に風景が切り替わって……これは、公園?
「多分、日常的に通っていた場所なんじゃないかな。一部分は再現性に欠けるかもしれないけど、他と比べてよく再現出来ている筈だよ」
「すっげー、こんなに広い公園があるんだ。公園を出ない範囲で周囲を見てくるね」
おや、ハベトロットがテンション高めで公園を散策し始めたぞ。
「おや、あれは……」
ハベトロットが歩いている先に見える、1m程度の植物の隙間から姿を見せたのはキャット……ではなく、野良猫。あれ、シミュレータなのに動物が出てきたの?
「猫です、猫ですよ先輩!」
そういえば……野良猫が結構いたんだっけ、この公園。ああ、野良猫目当てによく公園に寄っていたような気がする。シミュレータとは言え触れるかなー……って。
「あ」
ハベトロットに向かってダッシュ、だと?
「わわわ、何だ君達。ここの猫、めっちゃ僕にまとわりついてくるなぁ。なんだよ〜、君たちも糸巻きに興味あるのかい?」
見た所、植物の所で屯していたんだろう。あっという間に猫たちに囲まれてしまう。その数は5匹。くそう、うらやましいぞ、ハベにゃん。
「裁縫道具を遊び道具には使いたくないんだけど……まっ、しゃあないか。いっくぜぇ~!」
糸巻きから飛び出した糸に飛びつく野良猫達、だけど生き物のように動く糸の前には勝てなかったようだ。
「はぁっ!やあっ!それぇっ!」
イルカのように跳ねる野良猫達は、完全に獲物を狙う目だ。
「ハベトロットさん、大人気ですね。少し様子を見て見ましょうか」
マシュと一緒にベンチに座り、ハベトロットが猫の家族相手に糸巻きで相手をする様子を見る。
「これが君達に捕まえられるかな~?」
幾度に渡って、糸巻きから射出された糸に向かって跳びつく野良猫たち。今度こそ糸を捉えるかに見えた跳躍だったが、その跳躍むなしく野良猫達は綺麗な着地を決める。しかし、まだまだ諦めてはいないようだ。にゃあと一鳴きした後、体が内に仕舞い、尻尾を振っていた。さながら、次からが本番だ、と言わんばかりの動きだ。
「やるじゃ〜ん!」
野良猫達の様子にテンションの上がったハベトロットが……
「にゃあにゃあにゃにゃにゃあ、にゃにゃにゃにゃー!」
糸巻きから糸を抜き、野良猫達の視線に入るように伸びた後、竿を引くように一気に糸が上へ伸びていく。視界に飛び込んだそれに思わず飛びついた野良猫達、掠りそうなところもあったが、結果を見れば皆外れ。
「そうだね。それにしても、ああして猫に絡まれていると、兄妹みたいですね」
「分かる」
こんな光景になるのなら、ゲオルギウスからカメラを借りて来れば良かった。小っちゃくて可愛いハベトロットがこうして猫と戯れている所を捉えることが出来たのに……!
それからしばらく、野良猫と遊んでいたハベトロットだったけどその時間も終わりに近づいてきた。ダ・ヴィンチちゃんの手筈でシミュレータの設定を元に戻す。名残惜しかったけれど、久し振りに懐かしい景色が見られて良かったと思う。
「いーじゃん、いーじゃん!僕気に入った!シミュレーションなのは残念だけど、いつか本当に遊びに行こう!その時は、親御さんにもご挨拶するからね」
「今日はありがとうございました。ダ・ヴィンチちゃん」
「いやいや、私も珍しいものが見られて満足だよ。やって見た甲斐があったというものさ」
そうして、3人とフォウ君でシミュレータ室を後にしようとして……
「そうだ。藤丸君、少しいいかな?」
何となく、予想が出来ていた。
「はい、マシュとハベトロットは先に戻って貰っていいかな?」
「おっけー、何かあったらいつでも相談してくれよ、皆のハベにゃんだからな!」
「そ、そうですか。それじゃあ、昼食を一緒に食べましょうね……それでは、失礼します」
二人とフォウ君を見送り、部屋には自分とモニター越しのダ・ヴィンチちゃんだけになった。
「ごめんね、呼びとめちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。それより、今回はマシュとハベトロットから頼まれたことだったんですね」
「そうだね。もしかして怒らせちゃったかな。そうだったらごめんね」
そこは別にいいんだ。ダ・ヴィンチちゃんも悪意があった訳じゃないし、何より……
「いえ、それはいいんです。正直、忘れかけていた記憶を思い出させてくれて、こちらこそ助かりました」
「……そうか、それなら何よりだ」
ふと懐かしい光景を見て、余計な一言が出てしまったか。
「大丈夫だよ、ダ・ヴィンチちゃん。まだ、戦える」
「……こちらが聞こうとしていたことを、君の口から答えてくれるとは思わなかったよ」
多分、そのことを聞こうとしていたんだろう、とは思っていた。やらなければいけないにしても、それを遂行できるだけの精神状況なのか。それを確認したいと思うのは当然だろう。以前なら確認してくれる人はいたが、その人は僕達の代わりに喪われた。
「あんな状態になった所長を助けなくちゃいけないし、マシュや皆がいる。だから、ここでもう出来ないと言うつもりはない」
「……………」
助けられなかった先輩がいた。愛した人と過ごしたい、という想いを踏み躙って先へ進んだ。敵対していると良いながら、最後まで助けてくれた先輩がいた。そして、全てをぶつけて……その上で、逃がしてくれた人がいた。
「そして何より、まだやり切っていない。あの人に胸を張って会えるくらい、出来ることをやりきっていない。だから、大丈夫」
「……そうか。正直に言えばマシュの頼みとは言え、君に見せていいか不安だったんだ。まぁ、前提として本人がいないとあの光景を映し出すことなんて出来なかったんだけど」
「もしかして……家を映さなかったのはわざとでしたか?」
「…………ごめん」
正直、助かった。まだ、胸を張って帰れると言えない。だから、まだ見るべきではないとすら思っていた。
「いえ、ありがとうございます。まだ出来ることをやりきっていないから、いいんです」
「……ありがとう。君がマシュのマスターで良かった。これからも、よろしくね」
元の場所に戻れるかは分からない。だけど、出来ることは確実にこなしていきたいと思う。それが、自分の存在と引き換えに、先に進ませてくれた人への恩返しだと思うから。
「はい。ダ・ヴィンチちゃんもよろしくね」
そして、モニターからの接続が切れたのでシミュレータ室を後にする。この先、どうなるかはまだ誰にも分からないし、何でこうなってしまったのか、それすらも分かっていない。だけど、それでも進んでいく、進まなければならない。
「……あれ、ダ・ヴィンチちゃん?」
「やぁ、さっきぶりだね、藤丸君。折角だからお昼を一緒にしようと思ってね。それに……」
ダ・ヴィンチちゃんは何処を向いて……
「先輩、そろそろ昼食の時間ですよ!」
「フォウ!」
ああ、そういうことだったか。
「分かりました。一緒に食べた方が楽しいですからね!」
さて、今日の昼食は何だろうか。