日課の筋トレも終えてマイルームでのんびりした時、マシュがお菓子を持って部屋へ遊びに来た。それとトコトコと歩いてきたフォウ君も。どうやら、お菓子作りをしたサーヴァントからお裾分けをして貰ったらしい。
「これ、誰が作ったの?」
「意外なことに、渡辺綱さんです!」
「フォウ!」
「バレンタインの時に作って以来、色々なことにチャレンジしているらしいね。この前はパウンドケーキを作っていたって、金時から聞いたよ」
「何と言うか…意外ですね」
あの人、生前ではあまりやらなかった何かを作ることが楽しいのか、プランターにも足を運んだことがあったな。それから、邪魔しないように料理を作っている所を見ていたりとか。まぁ、今まで出会ったサーヴァントの中で一番ギャップを感じたのは……ある海賊2人なんだけど。さて、折角マシュが遊びに来たんだし、本じゃなくて別のことをしようかな……えーと確かこの辺に。
「マシュ、折角遊びに来たんだし、トランプでもやらない?」
「はい、先輩。お付き合いします。それじゃあ何で遊びますか?」
そうだね、2人で遊べるゲームなら……
「スピードにしよう!」
「フォウ!」
そうして3戦行い……3戦全勝。うーん、1敗くらいすると思っていたんだけど。
「うう~~……」
そろそろ、違うゲームに変えようか。
「マスター、すみません。少し教えて……それは何の遊びですか?」
そこに、徴側と徴弐がマイルームへ遊びに来た。後で話を聞いた所、端末を使って撮影する方法を知りたかったらしい。
「カードを使ったゲーム……確かトランプ、だっけ。あまり知らないけど、色々な遊びがあるらしいね」
急ぎの用事が無ければ、だけど……
「折角だし、2人もやっていく?」
「そうですね。急ぎの用事でもないですし。私もやってみます」
「お姉ちゃんがやるなら、私もやるよ」
何よりトランプは、2人より3人以上で遊ぶゲームが多い。どうせなら大人数でやった方が楽しいと思う。
そんな経緯から、トランプを4人で遊ぶ。トランプは古くからある遊具故に、様々な遊びがある。ババ抜き、ジジ抜きを始めとして、大富豪、七並べ、フォウ君のし……じゃなかった、ぶたのしっぽだ。それから神経衰弱……と自分とマシュの提案で様々なゲームで時間を過ごす。そうしてよく知られているゲームを一通り終えた所で時計を見ると、1時間以上も時計が進んでいたことに気が付いた。と、同時に。
「……そう言えば、喉が渇きましたね」
マシュに言われて、自身も喉が渇いていることに気が付く。マシュと自分だけならば、1人で取りにいけるはずだ。フォウ君は寝ているから無くても大丈夫かな。
「マシュは何を……」
飲みたいのか、と言い終える前に。
「じゃあ、次のゲームで負けた人がお茶を用意するのは如何でしょうか」
徴側からそんな提案を受ける。
「よし、やるからには負けないよ」
そう意気込むのは徴弐。横を見れば、マシュも乗り気なようだ。さて、そうするとどんなゲームで勝敗を付けるか……が大きなポイントだ。
「最初にやった大富豪……は順位がありましたけど、一発勝負だと違う気がしますね」
「それでは徴側さん、徴弐さん。ババ抜きは如何でしょうか」
「でも、最初に枚数少ないと有利じゃない。どうせなら、最初は皆同じ条件がいいかな」
ババ抜きは勝負として面白みに欠ける、そんな徴弐の意見も踏まえると。
「そうなると……マスターはどんなゲームがいいと思いますか」
短時間でできるゲームであること、逆転要素があること……確か、そんなゲームがあったはずだ。
「じゃあ、ドボンはどうかな?」
ドボンのルールをざっくりと言えば、トランプでやるUNOだ。最初のカードの枚数や役札こそ違うが、ある程度の人にはこれで通じるのではないだろうか。最も、聖杯から与えられる知識にUNOがあるかは知らないけど。
簡単に説明し、1度練習してさぁ本番……で勝負を始めたものの。
「リーチ」
「では、こちらはどうですか?」
徴側が出したカードはジャック(11)……あれ、順番が逆さになるから次は自分では?
「あ……上がりです」
あっさりと上がってしまった。あまりにスムースだったので、徴弐がこちらをジト目で見る程に。しかし、勝負は勝負。徴弐も直ぐに切り替えてゲームへ戻る。その後、一巡して次のターン。マシュの残り手札は2枚。
「リーチです!」
次は徴側の出す番だけど、ハートのエースだから……
「ああ、飛ばされてしまいました……」
徴弐のカードは残り2枚。こうなると、枚数的に次はマシュが上がるかな?
「よし、これで上がり!」
と、思いきや、徴弐の手札からハートとダイヤのクイーンが。場に出されたカードがハートだったので上がれたようだ。
これで、マシュと徴側の一騎打ち。徴側が次に出したカードはダイヤの2。
「ううう……2枚引かないと、ですね」
マシュの手札は残り3枚、対して徴側の手札は2枚。このままだとマシュは負けそうだけど……どうなるだろうか。徴側がハートの8を捨てて。
「よし、これでリーチです」
リーチと宣言する。マシュがこのまま負けてしまうか……と思いきや。
「あ、それはドボンです、これで上がりです!」
場に出されたスペードの2、ダイヤの3、クラブの5。確かに合計が8だから、これで決着だ。
「フォフォフォフォ、フォー―ウ!」
何時の間にか起きてゲームを観察していたフォウ君が、ゴングを鳴らすように可愛らしく吼える。
「え!?あぁ、負けちゃいました~……」
「どんまい、お姉ちゃん」
「やりました、先輩!」
決着がついたのでトランプを集めていると、お茶を持ってくるために徴側が立ち上がる。
「それじゃあ、私がお茶を淹れてきますね」
すると、伸びをしながら、マシュも立ち上がる。
「私も手伝いますよ、徴側さん」
「でも、負けちゃったのは私ですし……」
「四人分のお茶とカップを1人で持ってくる方が大変ですよ。だから、お手伝いします」
「……ありがとうございます。じゃあ、弐っちゃんはお留守番、お願いしますね」
「うん、分かった」
マシュと徴側がマイルームを出て食堂へ飲み物を取りに行く最中、それは起こった。
徴弐がおもむろに日記帳を取り出して今日のことでも書くのかと思いきや……突然、此方へ振り返った。
「…………」
そういえば、日記を書いていた時に自分が来ちゃって驚かせてしまったことがあったんだっけ。
「別に……気にしないよ?」
「フォウ」
フォウ君も同意見のようだ。こっちに擦り寄ってきたので、耳の後ろを撫でておこう。ところで、フォウ君はネコ科なんだろうか、それともイヌ科なんだろうか。永遠の謎である。
「あ、うん。それじゃあ遠慮なく……忘れない内に、と。トランプのゲームで負けた時のお姉ちゃんの表情が守りたくなるほど可愛い……よし」
その時もこうして徴側のことを書いていたんだっけ。
「そういえば、マスターと一番付き合い長いサーヴァントがマシュなんだっけ?」
「フォウ!」
「うん、そうだけど……何か聞きたい事が?」
「ああ、付き合いが長いなら、私みたいにマシュのことを日記に書いているのかなと思ったんだけど……」
そう言いながら徴弐が部屋を見渡す、何か思うことがあるのだろうか。
「この部屋、長く使っている割に荷物が少ないね」
確かに。置いてあるのもバレンタインの時に貰った人形三銃士、ヴイイ、クーちゃん、アポロン……の他には、トランプや図書館で借りた書籍データ端末程度。
改めて言われてみれば、部屋の広さの割に物がない。まぁ、フォウ君の遊ぶスペースが広いと考えれば、あまり気にならないんだけど。強いて言えば……
「あー……うん、色々あるんだよ。その、マイルームに戻ったらサーヴァントの誰かが寝ているとか、マイルームで待ち伏せされていて、戻った時にそのサーヴァントの用事に付き合うことになる、とか」
「フォウ、フォーウゥ……」
悲しいことに、これにはもう慣れてしまった。救いと言えば、マイルームに入った瞬間にそれが分かることだろうか。後、寝ている時に入ってくる者はあまりいないことか。あ、でも鬼系のサーヴァントや道満だったらちょっと怖い。
「えぇ……それは、どうなの?」
「徴弐も徴側のベッドでやっていそうな気もするけど……」
「だって、家族だよ。別に不思議じゃないでしょ。マスターで言えば、マイルームにマシュが遊びに来ていても、フォウがベッドで丸くなっていても気にしないでしょ。それが、何時ものことなんだから」
「それもそうだね」
言われれば、自分にも覚えがある。朝か夕食の後、どちらかの時間帯では必ずマシュとは顔を合わせている筈だ。
「でも、幾ら付き合いが長いとはいえ、サーヴァントがベッドに潜り込んでいるのは……」
「だけど止める手段が無いんだ。霊体化してしまえば、誰でも簡単にマイルームに入れちゃうからね……」
「フォ、フォーゥ……」
「……そっか、ごめん」
徴弐が遠い目をして黙ってしまった。心なしか、フォウ君も遠い目をしているような……うーん、まだ二人は帰って来ないだろうし、何か別の話題を出した方がいいかな。
「そう言えばその日記、毎日書いているの?」
「当然だね、お姉ちゃんが可愛くない日なんてある訳ないだろう……ふと思ったんだけど、マスターやマシュは日記が無くても、可愛いポイントを言えたりするのかな?」
そりゃあ、自慢の後輩だからね。
「それは勿論」
「フォウ!」
「折角だから可愛いポイントを教えてよ」
「そりゃあね。まず、マシュは言うまでもなく可愛い。今はご飯を美味しそうに食べるけど、始めの頃は人形みたいにあまり感情を出すことは無かったかな。だけど、色んな食事を食べていく内にどんどん表情も出てきたんだよね。その切っ掛けを作ったキッチンに居るメンバーには感謝しても足りない位だよ」
キャット、ブーディカ、エミヤ……大体食堂にいるメンバーはその辺りだけど、他の方も彼らに習うことがあるみたい。
「確かに、食堂のご飯美味しいよね。しかも、色々な地域に対応した食事を苦も無く作るんだからビックリしたよ」
「じゃあ、徴弐から見て、徴側の可愛い所は?」
何故か分からないけど、カチッとギアが外れたような音が聞こえた気がした。
「フォウ?」
何故か、フォウ君もそう感じたらしい。はて、何が原因なんだろうか。
「えーと……沢山あり過ぎて一気に出てきそうだ。お姉ちゃんが美味しそうにご飯を食べる所や寝起きの緩み切った姿。他のサーヴァント達とすれ違った時の凛々しい顔から出る、頬が緩むような柔らかい声……あのギャップが堪らないよね……」
「フォウ……」
徴弐のお姉ちゃん自慢はまだまだ続く。ああ、そういうことか。
「それから……マスターのマイルームにある鏡で顔の状態を確認していたお姉ちゃんが、突然入ってきたマスターを見て慌てて取り繕っている姿。あの顔は小さい頃、お母さんにやった悪戯が失敗した時を思い出したよ。小さい頃と言えば、マイルームにマスターが居ない時、象とフォウがじゃれ合っているのを見て、勝手に一人二役で、ぱお~んとフォウとフォーだけでアテレコしていた時があったんだけど……あの姿は人形遊びを思い出したね。小さい頃を思い出す可愛い所は他に……シミュレータ室でコンと一緒に日向ぼっこしている時の寝顔とか、勿論、可愛い時だけじゃなくて凛々しい時もあるよ。例えば、宝具を使っている時……あ、そう言えばお姉ちゃん。うっかりぱお~んと言っちゃう時があったんだけど……それを私が指摘したら、周囲を見渡して恥ずかしがる姿とか、本当に可愛いんだよなぁ……マスターは距離があるから見られないだろうけど、こればかりは僕の特権だからね。象と言えば、マスターの頭に象が上った時の姿を写真に撮りたいと言って、ゲオルギウスさんを慌てて呼びに行く時の様子とか、串に刺した3色のお団子を食べて頬を緩めている姿とか……あれ、どうしたの、フォウ、マスター?」
「フォ、フォウゥゥ……」
情報が、情報が……多い!
「いやぁ、一つずつ聞くのかな……と思っていたから沢山出てきて驚いだだけだよ」
「あ、その、ご、ごめん……」
さて、どうしようか。さっきより気まずくなったぞ。それよりも、自分もマシュの良い所を話せ、と言われたら……同じようになるのでは?
「うん、大事な人の良い所は色んな人に知ってもらいたいよね。知ってもらいたいし」
さて、何時までこの空気が保てるのか……早く、早く戻ってきて、マシュ、徴側。そんな
祈りが通じたのか。廊下からカチャカチャと音が聞こえてくる。もしかして、カップの音かな?
「先輩、お待たせしました」
……おや。1人多い?
「ただいま戻りました~……あ、弐っちゃん。もしかして私の話でもしていたのかな」
「はんなまー!ぼすぼすとマスターがいるって聞いたから、ワガハイも来た!」
おっと、途中で会ったのかな。まさか太歳星君がここに来るとは。
「はんなま。さっきまでトランプをしていたんだ」
「はんなまー」
いいタイミングで二人が戻ってきてくれた。容器を太歳星君が、飲み物を徴側が持っているみたいだけど……一つはティーポットだから紅茶かな。だけど、もう一つは何だろう。
「徴側、その緑色の飲み物はスムージー?」
緑色だから……ホウレン草かな。
「実は私が食堂の方にお願いをしまして。折角なので、現代のベトナムで飲まれているものを作れないか、と。すると、食堂にいる赤い男性……エミヤさん、でしたか。その方がアボカドでスムージーを作ってくれたんです。是非、マスターにも飲んで欲しいな~と思いまして」
「私も此方へ戻る前に少し頂いたのですが甘くて舌触りも良かったですので、先輩も気に入るかと」
マシュがそう言うのなら、遠慮なく頂こう。ところで、エミヤのクラスってやっぱり料理長の間違いじゃない?
「それはその……今更かと」
「それもそうだね、マシュ」
本人の前で言うと、苦手な食べ物か、健康の為と言って青汁辺りを追加されそうだけど。
「それでマスター、それで次は何して遊ぶんだ。ワガハイもやりたいぞ」
「そうだね。次は……」
今はそれより、このスムージーと次に遊ぶゲームでも考えますか。
うーん……形式段落ってどの辺りで打てばいいんだろうか?
意味段落ならいいんだけど、なぁ……