実は、お題を受けたタイミングはお題4と同じです。
まぁ、4の方は加筆修正しなくていいか、と投稿した訳ですが、こちらは少し加筆修正しました。
微小特異点発生の報告を受けて、僕達は数名のサーヴァントと共にレイシフトを起動した。だが、特異点の原因をロマニだけではなく、天才のダ・ヴィンチちゃんまで見つけられない、と来た。結局、この微小特異点は時間が経過すれば自然と消えるものと判明したので、直ぐに戻ってくるように言われると思っていたのだが、ゆるふわリーダーであるロマニが偶にはのんびりと外の景色を見ていくといい、と言って滞在を許可してくれた。最近、寝付きが良くないことを相談したからか、気を使ったのだろうか。折角なので、護衛のサーヴァントを残して、他のメンバーには食料調達をお願いした。保管技術は現代の方が優れているし、ダ・ヴィンチちゃんも居る。一度採集すれば、プラントを使って育てることも出来るかもしれない。
「いやぁ、いい天気だ。こういう日の昼寝は最高だねぇ、マスター」
護衛に残したのは、最近召喚したランサーのサーヴァント、ヘクトール。今は槍を枕にして横になってだらけているが、第3特異点ではその強さを嫌と言う程思い知らされた。
「確かにいい天気だ。温かいけど湿気てないから、いい昼寝日和になりそう」
「とか言いながらマスター、筋トレしているけど暑くないの?」
「そりゃあね。けど、マスターとして出来ることは少しでもやっておかないと」
そんなヘクトールがため息をつく。
「頑張るのもいいけど、休むのも仕事だよ。いざという時に何も出来ないようじゃあ、俺のマスターとして合格は出せないなぁ」
のらりくらりとした言葉だが、防衛線を得意とした英霊が言うと一段と重みが増す。いつもならやんわりと帰還を促すロマニもあっさりと滞在を許可したし……やはり、気を張り過ぎているのだろうか。
「そうそう、日頃から無理しがちなんだから、偶にはゆっくり休まないと、な」
そこまで言われたら休むしかない。──うん、折角の昼寝日和なのだ。体を大の字にして寝てみよう。
「分かった。何かあったら起こしてくれる?」
「了解だ。それじゃ、オジサンもだらだらしようかねえ」
それから10分位の時を置いて、マスターがすやすやと眠りにつく。
「それにしても、敵だったマスターに召喚されるとはねえ」
薄っすらと、その事を覚えていた。目的を果たすため、エウリュアレを奪おうとして、その矢に射抜かれたことを。その後、このマスターが幾つの別れを経たのか分からない。
「難儀なもんだな、最後のマスターってのは」
特別な力もない、只の予備扱いだった子供が最後のマスターとして戦わなければならないとは。召喚当初は周囲の大人に憤慨したものだが、彼らは彼らで必死に彼を援護していることは直ぐに分かった。そして何より、そんな状況においてもこのマスターは前を向いている。例え、それが虚勢であろうとも。それでも前を向くというのならば、それでいい。サーヴァントとして、何処までも力になるだけだ。
「さて、ダラダラしたかったんだけどねえ」
僅かに羽ばたく音が耳に入り、音を立てないように立ち上がる。
「久し振りに休めているんだ。さっさとお帰り願おうか」
音の発生気配の先にいた敵を見る。見た所、小型のワイバーンが一体のみ。此方に気が付いているとは言え、距離は結構ある。それに、此処からなら衝撃も届かないだろう。
「さて、運が悪かった、と思ってくれ」
標的確認、方位角固定。
「吹っ飛びなぁ!」
マスターが目を覚ます事無く、ワイバーン退治は幕を閉じた。
レイシフトから帰還後、他のサーヴァントによる収穫を確認した。流石は森の賢者とも呼ばれたロビンフッド、林檎(金とか銀じゃないよ)や木の実、香草、薬草などがかなり採れたらしい。他にも、肉、魚、塩の調達。オマケにワイバーンの肉も取れたらしい。今夜は食堂担当のサーヴァントは大忙しだろう。ロビンフッドに同行していたマシュも、彼の仕事振りに興奮していたようだ。一時期は昏睡状態に陥ったこともあり、随分と心配を掛けてしまった。だから、今日のレイシフトでも別行動する、と言った時は不安げな顔をしていたが、終わって見れば楽しそうにしていた。マシュには、丁度いい気分転換になったと思う。
「そう言えば、ヘクトール」
一つ、気になっていたことがあった。
「何ですかい、マスター」
「暫く寝ちゃっていたけど、何も無かった?」
誰がワイバーンを狩ったのか、だ。今回同行したサーヴァントは5騎。ロビンフッド、マシュ、クーフーリン(術)、ヘクトール、ダビデ。後々思い返すと、本当に微小特異点修復に必要な面子だったのだろうか。よくよく思い出してみると、今回のメンバー選定はダ・ヴィンチちゃんが主導だった気がする。
「いんや、マスターの手を煩わせる事は何も無かったよ」
恐らく、ワイバーンを倒したのはダビデではなく、ヘクトールだ。けど、それを大っぴらにしたくないのだろう。
「なら良かった。敵が居る中で一人のんびり休んでいたら、流石にロマニから怒られちゃうからね。それはそうと、一人で見張りを任せきりにして、ごめん」
一瞬、ヘクトールの目が大きく開く。
「ああ、そんなこと。オジサンは気にしないよ。何しろ、サーヴァントは寝なくても問題ないからねえ。それはそれとして、ダラダラはするけどね」
思わず、気の抜けた声が出てしまう。まぁ、どうせならダラダラしたいのは俺も一緒か。
「マスターとして頑張るのもいいが、暢気に楽しく、それで生きていけたらオジサンは満足だからねぇ。だらしない者同士、ダラダラしようぜ~」
ヘクトールの言う通り、俺は気を張り詰めていたのかもしれない。だったら、その言葉に乗っかろう。
「そうだね。今度ダラダラする時は、ロマニやダ・ヴィンチちゃんが来ないように見張りよろしくね」
「了解了解、と」
皆がくれた貴重な機会だ。明日も頑張ろう。