気ままな短編集(二次創作)   作:久遠の語部

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お題:色々終わった後、カフェを営むぐだ男とマシュ(だったと思う。原文が消えてた……)

設定:ぐだ男とマシュの年齢は30歳前後
外見:ぐだ男は見た目に大きな変化なし
ぐだ男:料理/コーヒー担当
マシュ:紅茶とケーキ担当
バイト(イメージ:ぐだ子)の子が軽い口調で話せます。

実は、お題を頂いた時期は本掲載のお題2と同じ時期です。
ただ、まぁ。行間というか、文字数制限やスレへの投稿形式もあり当時は色々すっ飛ばしました。そんなこんなで、こちらは加筆修正を色々した為、投稿がこんな時期になりましたとさ。




お題6:星が語る御伽話(gland order)

──満天の星々が貴方の行く宙を照らしますように

 

そんな謳い文句を掲げた一軒の店が、人通りのあまり多くない丘の上にある。曰く、宙とは人が追い求める星なのだ、とマスターの知り合いが言っていたらしい。私には、未だによく分からない。ただ、そんな私でも分かることがある。そこは、星を見るカフェなのだ。と言うのもこのカフェ、店長の拘りから天井がガラスで出来ており、夏の大三角形や冬の大三角形を目当てにやってくる客もいる程なのだ。そんな事情から、遅くまで営業する時がある。酷い時は日を跨ぐ直前まで営業していることもある程だ。そんな時間までバイトをした日は、決まりとして泊まらせて貰っている。今日はそんな日だった。

 「いつもありがとうございます」

本日最後の客である、常連の老夫婦が店を後にした。ようやく、ようやく今日の仕事は終わった。置時計を見れば22時を超えて30分ほど、こんなに遅い時間だと、帰りに少し不安が残る。

 「リツカさん、今日は泊まりますか?」

 「お願いします。それにしても、いいんですか。お代とか渡せていないですけど」

 「いいんですよ。それを言うなら、リツカさんは泊まった翌日はお店の清掃を欠かさずしていますよね」

マスターの相方であるマシュさんは、店長の藤丸立香の妻だそうだ。とても初々しい反応をするが、二人の動きはベテランそのもの。営業中は熟年夫婦のように息が合っているのだが、偶に若々しい様子を見せることがある。不思議な人だ、と我ながら思う。

 「リツカさん、そろそろ夕食が出来るからテーブル拭きをお願い」

 「了解です、マスター」

更に不思議なのが料理を作っているマスターだ。年齢に合わない、深い落ち着きを見せる方だ。体のあちこちに擦り傷があるものの、ヤから始まる家の出ではないらしい。しかも、英語を始めとして様々な語学や料理に知識があると来た。どんな過去を送ったら、こんな方になるんだろうか。そんな事よりお腹が減った、今にもお腹と背中がくっつきそうだ。しかぁし、マスターが振る舞う料理は固定客がいるほど美味しいのに、それを無料で頂けるのだから、大変だとしてもこのバイト先は続けられる、と言うものよ。

 「テーブル拭き終わりましたマスター。そして、お腹がペコペコです~」

 「はいはい、今盛り付けているから席に座って待っていてね」

ぐぅぅぅぅ~~

は、恥ずかしい。まさか、お腹の音で返事をするなんて。あまりの恥ずかしさに、顔が林檎になりそうだ。少しでも恥ずかしさを誤魔化そうとしてテーブルへうつ伏せた時、不意にこの店で面接した時を思い出す。

 

──マスターはバイトで稼いだお金を何に使いたいのか、なんて聞いてきたなぁ。本当に、何で話そうと思ったんだろうか。

 「へぇ、世界中を回ってみたい、か」

 「……はっ、い、今のは忘れて下さい!!」

 「いいね。手の届かない夢だから、手の届かない夢だからこそやってみたいんだね、きっと。いいよ、そういう子は仕事もしっかりしてくれるだろうし。それじゃあ、今度の土曜日から入って貰おうかな」

恥ずかしい思いこそしたが、いい方向に転がったのだ。今はそんな事よりご飯の時間よ、リツカ。美味しそうな匂いが近くに迫り、反射的に顔が上がる。前を見れば店長が用意した、2つの料理が私の卓に置かれた。

 「戴きます……と言いたい所だけど問題だ。この料理はムサカとラタトゥイユと呼ばれているんだけど……何処の料理だと思う?」

それにしても、この人のレパートリーは何処まであるんだろうか。幾つもの有名料理店で修業したに違いない。体の傷とか見るに、多分違うんだろうけど。さて、パッと見た感じでは、片方はグラタン、もう片方は夏野菜の煮込みをパスタに盛り付けた感じだ。何となくイタリア料理と答えそうになるけど……ああ、ダメだ。そんなことよりお腹減った。

 「ほらほら、リツカさんもお腹すかせていますから、早く頂きましょう」

 「ああ、マシュ、そうだね。作ったからには、美味しく食べないと」

この声は私のお腹を救う天の声だ。早速、両手を合わせて戴きます。ラタトゥイユと呼んだ料理を一口。あ、夏野菜だけじゃなくて、にんにくとオリーブオイル、鷹の爪のパンチが効いている。パスタも乾麺のはずだけど、食感がもちっとしている。その上、ピリッとしつつも夏野菜の旨味が吸った麺なのだ。これはフォークを絡める手が止まらない一品だ。

 「美味しいですね、これ。でも、どうしてお店で出していないんですよね?」

 「口に合ったなら良かった。そう言えばそうだね。日替わりのディナーで考えてみるか」

 「それじゃあ、今度グルメな友達連れてきますよ、マスター」

 「おっと、それじゃあ気合入れないとね」

一方、マシュさんはゆっくり味わって食べている。それにしてもマシュさん、本当に美味しそうに食べるなぁ。さて、もう一つのメインも食べるとしよう。ん、既にナイフで切り分けていたらしい。数切れあるムサカの一つを皿へ移す。ふむ、下からジャガイモ、ひき肉、ナス、ホワイトソース、かな。これらの層を一気に食べよ、ということか。お、これも何時もながら美味しい。ひき肉は先ほどのラタトゥイユの汁を使って炒めたのだろう。その酸味がムサカの味にパンチを与えてくれる。これには私の胃も歓喜の雄叫びを上げる。マシュさんも黙々と食べ進めているようだ。やはり、美味しいご飯は強い。

 

 

 美味しい食事を終えて、マシュさんが淹れてくれた紅茶を飲んでいた時、ふと、今日の事を思い出す。あれは、夕方頃だったか。

 「そういえば、マシュさん」

 「どうしました、リツカさん」

客の一人が店長たちの知り合いだったのか、随分と長話をしていなかったか。

 「夕方頃でしたっけ。何か、かすてら……じゃなくて、かるであとか何とかにいた人が来ていた時、結構話していたじゃないですか。昔の知り合いだったんですか?」

マシュさんの体調を気にかけていた様子もあったけど、何かあったのだろうか。もしかして、おめでたなのか。でも、お腹を見てもそんな様子は見えないし……ってあれ?

 「どう、しました。マシュさん。そんなに驚いた顔をして」

何か、変なことでも言っただろうか。

 「いえ、ちょっとマスターと出会ったことを思い出していたんです。──その昔、私もマスターも、そのカルデアに居たんです」

おお、店長の過去にはそんなことがあったのか。やたら人に好かれるし、色んな言葉を喋れる、と来た。大学の友人でもそんな友達は居なかったような……一体、ナニモン・ナンデスか。ム、だとしても少し違和感が。そう言えば、その人もマスターの事をあの時の最後のマスターが、とか言っていなかったか。名前でも呼んでいたけれど。

 「そういえば、仕事中は店長のことをマスターって呼びますけど、そのかるであっていう所にいた時もマスターって呼んでいたんですか?」

マシュさんが何かを懐かしむように、このカフェの名物である半球体の天窓から顔を覗かせる、満天の星空を見る。

──これはまさか、恋バナの予感か。甘ったるい反動が来るが、店長の過去を探る数少ないチャンスだ。耐えろ、リツカ。

 「……?」

だが、そんな私の予想とは裏腹に、マシュさんは愛おしそうに片手を握る。何か、大切なものを思い出しているかのように。

 「マシュ。どうしたの」

げ、店長が戻ってきた。ってあれ、マシュさん。突然、店長の手を握ってどうしたんですか。

 「どうしたの、昔のことでも、思い出した?」

この人たらしめ。この人が独身だったら、婚約者候補の引く手数多なんじゃなかろうか。

 「はい、カルデアにいた時のことを知りたいってリツカさんが」

 「ああ、それで」

不意に、マシュさんを見る店長の目が優しくなる。不覚にも、ドキッとしてしまった。

 「ねえ、リツカさん」

 「は、はい」

あ、マシュさんの目が怖い、怖い。

 「そういえば前に世界を回りたいって、言っていたよね」

どうして、今その話をするのだろうか。

 「実はね、不本意だったけど、俺にもあったんだ。まぁ、世界を回ったというよりは、過去の世界に飛び込んだって言うのかな」

……何、だって?

まさか私以外にもそんな奇特な人物が目の前に居たとは思わなかった。と言うか、過去の世界に飛び込む、とはどういう事なのだろうか、まるで分からない。

 「もう、あれから随分と時間が経ったんですね、マスター」

ってあれ、珍しい。あの店長がマシュさん以外の話で照れ臭そうな顔をしている。というか、マシュさんも照れ臭そうにしているぞ。どういうことだろうか。

 「そうだね、詳細は話すと不味いんだけど、御伽噺として聞くなら構わないよね?」

そうしてマスターが一度、大きく息を吸う。

 「──それは、未来の在処を求める旅路」

マシュさんが、マスターの片手を愛おしそうに握る。

 「その旅路の詳細を知る人も、話す人達は居ないけれど、確かにそこに在った物語」

マスターは何を話そうとしているのだろうか。だが、そんな思いとは裏腹に、私の耳はその続きを望んでいた。

 「──それが俺達のGrand Order」

 

──その物語と呼応するように、夜空の星々も一層輝いている気がした。

 

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