生前は刀の手入れを欠かさなかった私ですが、最近あることで悩んでいます。それは……
「このジェットパック、一体どうやって手入れをすればいいのでしょう」
そう、ヒロインXXさんから(強制的に)頂いたジェットパック、これの手入れが分からないのです。あの人に頼もうにも、結構テキトウだからなぁ。はぁ、この前のバレンタインで少し飛ばしてしまったし、点検をしておきたいのですが。どうせサーヴァントだから問題ないと言う人もいますけど、これ外付けですからね!?
「おや、オキタ・J・ソウジさん。顔を沈めて、どうしましたか」
おっと、この体に改造した方が現れましたよ。くっそう、この体になってから快調なのは認めますが、ノッブにはひたすら笑われるし、土方さんには沢庵とも、誰かのおっぱいを視る目でもない、よく分からない目で見られるし……散々です。とは言え、ちょうど出会えたのは好都合です。
「実はジェットパックの点検をしようと思いまして……ただ、説明書が何処にもないので、自分で出来るか分からないんですよね」
「それでしたら、取り付けてしまった責任もありますので、私もお手伝いしましょう。幸いにして、ここに説明書が……あれ、何処に行った?」
悪い方では無いのは分かりますが……このいい加減さはどうにかならないものなのでしょうか。
「え、えーと」
「ま、まぁ何とかなるでしょう。確か、何かあった時の為に説明書は残していた筈ですので。いざ、改造室(オペルーム)へ!」
このままでは、ヒロインXXさんみたいな新たなパーツを取り付けられるに違いない。何とかして脱出を……ちょ、ちょっとジェットの調子がですね。
「じ、自分でやりますから……だ、大丈夫ですよ?」
「それだったらいいのですが……?」
……バスン
「……へ?」
「オキタ・J・ソウジさん、ジェットから煙が!」
まさか、こんな時に限ってジェットの調子が……!
~~改造室(オペルーム)にて~~
ギュイイイィィィィン、ガガガガガガガガッ!!
「これ、本当に大丈夫なんですかー!?」
「ええ、きっと大丈夫です。この説明書によれば……」
「きっと、きっとって言いました!?」
ウイィィン、ウイィィィン
「あ、この説明書、ジェットパックじゃなくて、炉心のM・DRIVEの方でした」
「ちょっとぉ!? やっぱり、この人に頼むんじゃなかった!!」
「まぁまぁ、問題無かったのですから気にせず進めましょう。折角ですから、全体的に確認して見ますか」
「だ~れ~か~……」
~~改造室(オペルーム)にて、点検終了~~
「改造室(オペルーム)に説明書が在って、本当に良かった……」
ああ、何事もなく点検が終わって、本当に良かった。生きてるって素晴らしいです。
「ギャラクシー・セル・ドライブも動力源のよく分からないエネルギージェムも問題なし、炉心のM・DRIVEも快調でしたよ」
あの、動力源何て言いました?
「強いて言えば、ジェットパックを一時的に最大出力で稼働させた位ですね。まぁ、あの位ならこちらで言うスピード違反に取締される程度のこと。機体には殆ど影響しないでしょう」
「心配ないと言っても、私の生命維持が掛かっているんですがぁ!?」
「ノッブに聞いた、コフッ、が無いだけいいじゃないですか」
ノッブに私の病弱スキルを聞いている、だと。
「その件については、かつてないほど絶好調ですが!」
くそう、このままではノッブのライバルポジションすら奪われてしまうのでは?
「ところで、どうして今日は点検しようと思ったんですか」
む、急に踏み込んで来ますね。この人は。まぁ、隠すほどでもないので話しますか。
「……何かあった時はどうしても気になってしまうんですよ。快調だったので暫く忘れていた、というのもありますが。実は、少し前にユニヴァースで話題になっているというお菓子があると聞いて買い出しに行っていたんです。その時、少しジェットで飛ばしていたこともあって点検したいな~、と」
「あ~、私も銀河有数の名店で予約していた品物を急いで取りに行っていましたからねえ……ハッ」
ヒロインXXさん、頭に電流が走ったような顔をしていますが……
「もしや、オキタ・J・ソウジさん。バレンタイン、バレンタインですね」
ずずい、と距離を埋めてくるヒロインXXさん。
「私もデザイン含めて1からチョコを作って貰いましたから、お互い様ですね。マスター君には大き過ぎない、と微妙な目で見られましたが。二人で食べれば問題なし。もしかして、私と同じく銀河銘菓店でチョコを買った、ということでしょうか」
く、この余裕。これがお姉さん属性、というやつですか……!
「ま、まぁそんな所です。因みにヒロインXXさん、何処でチョコを作って貰ったんですか。来年以降の参考にしたいのですが……」
因みに、土方さんには沢庵を買いました。【スペーストシゾー考案】と表紙にありましたが、まさか、ねえ?
「ああ、あそこですよ。〇〇〇〇、幸いネームレスレッドが懇意にしていたことと、普段は使わない銀河宇宙の権力を使って頼み込んだ結果、予約に成功しました。残念ですが、あそこは高いですし、新参者のオキタ・J・ソウジさんでは予約が難しいんじゃないかな、と」
確か、確かあそこは、並みのサーヴァントでは門前払いを喰らうという、あの!?
「うわぁぁぁん、聞いた私がバカでしたー!」
「そういえば、オキタ・J・ソウジさんはマスターへ何を買ったんですか?」
「は、この流れで聞きますか?」
何なんだ、相変わらず何なんだ、この人は。
「……恥ずかしいことに、美味しいお店を知っていても、仕事が忙しくて行く時間が取れないんですよ。私も私で、何かしらの特異点で地球に来る時以外はカップ麺生活が多くて……」
見る見る内にヒロインXXさんの顔が沈んでいく。あぁ、これがマスターの言っていた【疲れたOL】という属性でしたか。
「成程、そういうことでしたら。実は最近有名になったあのお店で……」
おや、ヒロインXXさんも知っていたらしい。少し目に光が戻って来た。
「あそこでしたか。風の噂では、流離のシェフが考案した品が女性に大人気、とか。まさか、ネームレスレッドじゃあ無いですよね、あはは」
ネームレスレッドって誰だろうか。名無し、赤……誰だろう。
「少し前まではコスモヌードルが私の主食でしたが、最近はコスモカレーも出てきていましてね。これがまた、キャンプの時に食べると……」
恍惚の表情を浮かべていますが、インスタント食品が主食って、大丈夫なのでしょうか。いや、仮にもサーヴァントだから問題ないのか。
「そ、そうですか」
「ええ、実は太古の昔に失われた幻の料理、カレーライスがユニヴァースでも再現されましてね。他の店でも出るようになりましたが、元祖の味を再現にはまだまだ時間が掛かるのだとか。それはそうと、こっちの食堂にもいるネームレスレッドのカレー。どうも、彼のカレーから懐かしい味がします。どうしてでしょうか」
初めて食べる時は抵抗感がありましたが、食べて見れば老若男女が好む食べ物なのは納得です。偶にノッブの配下やインドの方々が暴走するようですが。因みに、土方さんは福神漬けの代わりに、沢庵と一緒に食べます。
「そうだ、折角です。今からネームレスレッドに頼んでみましょうか」
「は?」
「さぁ、善は急げと言うでしょう、行きますよ、オキタ・J・ソウジ!」
この人、いつも突発的なんですよねぇ。そう言えば、土方さんの沢庵が切れそうでしたね。ついでに、あの台所の守護者にお願いしておきますか。