圧巻の一言でしたね。展開的にも始終クライマックスということもありましたが、あっという間に終わってしまった、という印象です。
言峰と士郎の共闘、士郎がアーチャーが追い越す場面、士郎VSヘラクレスセイバーオルタVS士郎・ライダー……
見所しかないじゃないですか。普段、あまり映画を見る方ではないのですが、もう一回観に行こうかな……
バトルの所は映画館でしか感じられない臨場感がありますので、一度は観に行ってみては如何でしょうか。
最近は映画館もコロナ対策という事で、座席も前後左右は空けるようにしていたり、元々空調機能も備わっている所もあるので、思った以上に快適に観ることが出来ますよ。
……さて、HFを観て、衝動的に書きたくなったのが以下になります。
エンディングの入りが完璧なんだけど、何あれ?
そんな私は今【春はゆく】をリピートしてます。
さて、今回は映画のエンディング以降の二人の春を想像しながら作りました。
……桜の一人称がしっかり出来ているか(士郎もとても難しい)一抹の不安がありますが、それでも良ければご一読下さい。<m(__)m>
──いつか冬が過ぎて新しい春になったら……二人で……花を見に行こう
その約束は今年もまた果たされ、真冬に降り積もる雪のように、時を重ねてゆく
──春が来た
この季節になると、決まってお重箱に料理を詰めて桜を見に行く。それが、私と先輩のちっぽけな、だけど大切な約束。弱くて、身勝手な私を守ると言ってくれた、誰よりも強い先輩が私にくれた、持ちきれない程の幸せと抱え過ぎた罪の証。
「桜、そろそろ行こうか」
「はい、先輩」
今年も料理を詰めた重い荷物を先輩が持ち、私がレジャーシートを持って家の鍵を閉めた。先輩がくれた眩しい世界の中で、私は先輩の横に立つ。
「悪いな、桜」
「いえ、先輩の方が重い荷物を持っているんですから、この位は任せて下さい」
「そう、だな。料理の腕も洋食では叶わないしなぁ。それに和食の腕もそろそろ危ないか」
洋食にはそれなりに自信がある。ライダーにも姉さんにも好評だ。だけど……
「そ、そんな事はありませんよ。まだまだ教えて欲しいことは沢山あるんですから!」
和食特有の食材に関する知識や調理方法など、まだまだ先輩には届かない。
「そ、そうか。なら、俺も面目躍如、かな」
頬を人差し指で掻く先輩の横顔が愛おしい。
──その日々は夢のように、温かく
「そういえば……ライダーは後から来るんだっけ」
「はい、バイト先から少しだけお手伝いして欲しい、と言われちゃったみたいです」
「あんまり遅くならないといいな、ライダー」
「ああ、それでしたら大丈夫です。確かに残念そうにはしていましたけど、長くはならないから先に行っていて欲しい、と」
「何だかんだでライダーも楽しみにしているからな、毎年」
「はい」
人前に出ることを好まないライダーだけど、この日は私達の約束の場所へ一緒に向かう。そうして、料理を少し摘まんだ後は本を読むことが多い。だけど、その年の春、花を見に行く日は別だ。不意に、一陣の風が私達を撫でる。
「──あ」
花びらを散らした春の暖かい風が、長かった冬を想起させる。生きていて良かったと感じたことなど、先輩と過ごした時間以外で無かったけれども。それでも、寒かったあの日々はもう過去のこと。空は今日も青く、降り注ぐ日差しは先輩のように暖かい。
「今年も満開ですね」
「そうだな。今年も満開だ」
気が付けば、集合場所の公園に着いていた。
「桜、士郎」
「こっちよ~、士郎、桜ちゃん」
一足先に来ていた姉さんと藤村先生が私達を呼んでいる。
「行こう、桜」
「はい」
──私達は重い扉を開くようにゆっくりと歩く、変わる季節を踏みしめるように
空を埋め尽くすように咲いた満開の花は、今年も変わらずに咲いている。そうして今年もまた、1年が始まるのだ。
「いやぁ~、やっぱり春は花見よね。桜を見てビールを一杯、桜ちゃんと士郎の料理を食べて更にもう一杯。くう~、酒を飲む手が止まらないぜぇ~」
「もう出来上がってるよ、この虎は……」
「し~ろ~、ビール頂戴~」
「はいはい」
藤村先生らしいと言えば藤村先生らしい。先輩が呆れた顔でお重箱から料理を取り出せば、空になったプラスチックのコップにビールを注ぐ。
「聞いてくれるぅ~。最近ね、私を見る皆の視が日に日にさぁ……」
苦笑いを浮かべながら、先輩は藤村先生の愚痴を聞く。
「桜、私にも貰えるかしら」
「はい、姉さん」
藤村先生程のペースではないが、姉さんも同様だ。
「……これ、桜が作ったの?」
「あ、分かりましたか?」
「……うん、あの家みたいに優しい味がする。とても美味しいわ、桜」
気恥しくなって目を逸らしてしまう。横目で見ると、姉さんも同じだったらしい。顔を赤くしていた。間桐に引き取られてから過ぎ去ってしまった時間を取り戻すことは出来ないけれど、これからは姉さんとの時間も大切にしていきたい。
「……まだありますから、食べますか?」
「そ、そそ、そうね。折角の桜の料理だし、ね。もう少し、頂こうかしら」
──今年もまた、良い一年になりますように
暫くして、公園に見慣れた人が目に入る。
「おや、もう始まっていましたか」
「ライダー、もう用事は終わったの?」
「はい、桜。それとこれを」
ここへ来る前に買ってきたのだろか。すると、姉さんに絡んでいた藤村先生がにゅっと、こちらに顔を見せる。
「あ、ライダーさんじゃな~い。それでぇ、桜ちゃんに渡した物はなぁに?」
期待一杯の視線から逃げるように、ライダーが私の方を向いて答える。
「バイト先からの差し入れです。急に来てもらったから、とお酒を頂きました」
「さっすが、ライダーさん。桜ちゃん、桜ちゃん、それじゃあ一つ頂こうかな~」
「昼なんだし、あんまり飲み過ぎるなよ、藤ねえ」
先輩はため息をつきながら、藤村先生と便乗した姉さんにお酒を注ぐ。
「ライダーはどうする?」
「そうですね、まずは料理を頂いてから、貰ったお酒を頂くことにします」
「分かった。それじゃあどれから食べる、ライダー?」
満開の花に青い空、そうして隣にはライダーが、姉さんが、そして、あなたがいる。
──今日もまた、私は生きていく。償えない影を背負ったまま、あなたの側で
太陽が西に傾き始める頃、私達は長い階段を昇って、柳洞寺へ足を運んでいた。
「衛宮に桜さん。今日もお参りですか」
「よぉ、一成。まぁ、そんな所だ」
「こんにちは、柳洞さん」
軽い会釈をする。
「衛宮は勿論だが、桜さんもお変わりないようで何よりです」
水の入った水桶と柄杓が二つ、登って来る間に入れてくれたのだろう。それを有難く頂戴する。
「行こうか、桜」
「はい」
本堂の伽藍を外れた所にそれは在った。これは私の罰。贖えない罪を背負いながら、日常を謳歌する私への罰だ。そう、それは聖杯戦争で行方が分からなくなった多くの方を纏めて弔う公営墓地だ。お線香を焚き、石碑に水を掛ける。一部枯れた花があったので、それを新しい花に挿し替える。
「──……」
時折、思い返すことがある。もし、私がアンリマユに同調せずに堪えることが出来たなら、これほど多くの方を殺してしまうことは無かったのではないか、と。もし、私が居なければ、間桐では無かったら、と。
「……くら、桜!」
「……は、はい」
包み込むように握られた両手を見る。これから私は生ある限り、贖い続けるだろう。あの時は私が死ねば全てが終わる、と思っていたけれども。
「大丈夫、俺はここに居るから」
──それでも私の側にいて、私の幸せを願う大事な人たちが此処に居る
何時までそうして居たのだろうか。気が付けば、空は橙色から深い青の色に変わりつつあった。
「ありがとうございます、先輩」
あなたが側にいてくれる。たったそれだけで、私の世界は色を取り戻す。それなのに、これ以上にない程幸せなのに、どうしようもなく苦しいのだ。
「ご心配、お掛けしました」
喜びも苦しみも等しく、私とあなたの手のひらで溶けて逝く。例え、自分が原因では無かったとしても、自分がしてしまった事を戻す事は出来ないのだ。
「……大丈夫か?」
大丈夫か、と言われれば今は大丈夫かもしれない。だけど、また何時か。自分のしてしまった事に耐えられなくなるかもしれない。
「……お手入れも終わりましたし、帰りましょうか。先輩」
それでも、あなたは側にいる。私を守る、と言ってくれた。
「分かった。帰ろう、桜」
正義の味方になる、と言ったあなたの夢を壊してしまった、あなたの体を壊してしまったにも関わらず、あなたはそれでも手を取って帰ろう、と言ってくれた。だからこそ……
──私の側に入れてくれるあなたの側で、今日も幸せと罪を想い続ける
……気付いた方は気付いたかもしれませんが、【春はゆく】の歌詞をかなり意識して作っています。
出来れば1番、2番と順々に作りたかったのですが、それは私の構成力不足でしょう、ぐぬぬ。
凜が桜に幸せ? と聞かれ、桜が幸せだと答えていますが、それと同様に罪の意識を持っているのではないかと思います。
常に反芻しているか、と言われると違うと思いますが、幸せだけどそれと同様に奪ってしまった事に対して人一倍抱えていくのではないか、とも思います。
その為に士郎や凛、ライダーが居るから前に進んでいけるのだ、と。