紅蓮纏いし死神(仮タイトル)   作:螢司教

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こっちの作品、全然進まないなぁ…


炎を纏う死神

放課後…

 

朝の一件以来、奇妙なほどに何も起こらなかった。

いつもはそこらへんをさ迷う浮遊霊とか、学校裏にいる地縛霊とかも見なかった。

 

疑問に思いながら帰路につこうと靴を履いていると、後ろから力強く背中を叩かれた。

「おうっ⁉」

思わず変な声が出てしまった。

「ハハッ!変な声~」

何だ、摩耶か。こいつは相変わらずというか…

「大丈夫か?さっきから、てか昼くらいから変な顔してるけど?」

…うそだろ、無意識の内に顔に出ていたのか!何とか言い訳を考えなければ…!

「何だ~?まさか私に恋したとか?きゃ~!恥ずかしい!」

…ふむ、さっきも思ったがやはり相変わらずだ。

「そんなわけないだろ。また違うことについてさ。」

「えっへへ~分かってるって、冗談だよん 本気だと思った?」

摩耶は少し残念そうな顔で言った。

 

 

帰り道は、夏ということもあってかまだ明るかった。

摩耶の提案によってコンビニに寄り、キンキンに冷えたアイスを食べた。

爽快な気分だった。

 

しばらくして摩耶と別れたあと、家に食材が殆ど無いことを思い出したので、少し道を戻って近所のスーパーに行くことにした。確か今日は豆腐の特売日だったはずだ。晩飯は麻婆豆腐にするかな…

 

その最中だった。

 

ダンッ!

 

…この音は……

 

「フン、やっと来たな小僧」

 

後ろには、ただならぬ雰囲気を醸し出している異形なる者が立っていた。

 

やはり悪霊か!しかし何か違和感を感じる…

大方やつらは見つければすぐに捕まえにくるが、こいつは違う。

こちらを観察している…?

目線を逸らさずにひたすらこちらを凝視してくる。

その蛇のような鋭い眼光は、生存本能に警鐘を鳴らした。

そして僕は逃げる構えを取りながら後退を試みる。

 

その刹那、悪霊が血に飢えた狼の如く追いかけてきた。

すぐさま後ろを向き全力疾走した。

運よく体勢を低く構えていた為、すぐにトップスピードに到達した。

しかし距離は離れるどころかむしろ縮まるばかりだ。

結果、走った意味も虚しく悪霊に捕まってしまった。

ムム…捕まるのは初めてだな…

って思っている場合じゃない!一刻も早く逃げないと!

僕はその手から逃げるためにもがく。だがその行為は逆に束縛をきつくするだけだった。

「がっ……」

苦しさのあまり声が漏れでる。

しかも悪いことにこの道は夕方になると人が全然見当たらなくなる。

被害が増えないのはいいが、今回ばかりは助けが欲しかった。

「それ以上抵抗するなら、腕を折るぞ?」

そう言うと悪霊は更に力を込めてくる。

腕だけではなく体全体から骨の軋む音が聞こえてくる。

視界がぼやけてきた。もう、ダメか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が遠のいてから、僕は自分が小さい(といっても小学一年生ぐらいである)頃の夢を見た。

 

母親が僕を起こしに部屋まで来る。しぶしぶ起きて母と共に階段を降りると、父親にまだおかあさんに起こされているのかと茶化された。

 

懐かしいなぁ…………

 

 

瞬きをすると、景色が変わった。

 

今度は和やかなものではなく、残酷なものだった。

場所は自宅の庭。目の前には血塗れの死体が二人分。

僕はその赤い元人間を見下ろし、茫然としていた。

すると横に黒い影が現れた。ボロボロの黒いフードを羽織っているが、新しい傷まみれの巨体は隠しきれていない。

影は僕の頭に大きな手を乗せ、外見からは感じられない優しい手つきで撫ではじめた。

ふと見上げると、影は口を動かしているものの何を話しているのかは分からない。

 

 

そして、映像がぼやけはじめてきた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

…………………熱、い………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、目がぼやける…

やつの力が緩んだのか…?それとも、単に時間が…?

だとしたら何分経った…?いや、まず場所を…

体があまり動かせなかったが、力を振り絞って辺りを見回す。

どうやら移動はしていないようだ。だが違和感が残っていた。

辺りが暑い、いや熱すぎる!

キャンプファイアに近づいた時みたいに熱い!

さらに周りを観察してみる。

見慣れた住宅街、人がいない公園、燃え盛る炎…

 

 

 

 

 

 

炎?

 

 

 

 

 

 

 

慌てて視線を戻すと、目の前が火の海だった。

後ろから何か聞こえる。慌ただしい声だ。

そこには家から出てきたらしい人がパニックになっている。

 

「か、火事だぁ!火事だぁぁ!!」

 

よく見ると公園からはみ出ている木に火がついている。

どうやら本物の炎のようだ。

 

 

「よう、大丈夫か?」

 

前から声が聞こえた。

 

「全く後をつけてみれば…ほんと悪霊からモテるな」

 

こんな冗談吐くのは摩耶しか思い付かない。

だが目の前にいたのは黒いフードを纏った影だった。

死神だ。

だがいつも見る死神とは雰囲気が違う。

身体に、手に持つ鎌に炎を纏っている。どうやら出火元はこの死神らしい。

だが、こんな死神は見たことないぞ!?もしや死神の姿をした悪霊か!?

だがその影は僕を守るように構えている。

不思議に思いながら見ていると、先ほど僕を捕まえた悪霊が飛びかかってきた。

それに呼応するように死神は鎌を振るい、攻撃を弾いた。

よく見ると悪霊の片腕がない。この死神に切り落とされたようだ。

成る程、これで僕は助かったのか。

 

「ヌガァァァァァ小賢しい!この死神め!」

長い間防御されているのか、とても苛立っている。だが死神も息切れしている。とても長い間が経っているようだ。

「深草くん!動けるか!」

!?なぜ僕の名前を!?まぁそんなことはどうでもいい!

「は、はいっ!」

僕は聞こえるように大声で返事する。

「よし、だったら下がってな。」

 

僕は声に従い、後ずさる。

 

「よし、これで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー本気が出せるー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神が構えた瞬間、鎌から大きな炎が生まれでる。

「我が鎌は神の力を宿せし逸物!銘を、『八咫烏』!この刃を以て人に仇なす悪しき魂を、神の炎で浄化せん!」

鎌から身体全体に炎が纏われていく。

危機感を感じたのか、悪霊は顔をひきつらせながらも必死に仕留めようと飛びかかってくる。

「グソガァァァァァァァァァァァァ!」

先ほどと速度が違う!いくらこの死神でもあの速度と威力は防げないだろう!

悪霊の手が死神の頭を的確に捉え、殺意に満ちた一撃が届こうとした瞬間、

 

 

 

 

 

 

周りを揺れていた炎が悪霊の身体を、すんでのところで空中に縫い付けた。

「んぬぁぁぁぁぁ!」

あまりの熱量に耐えきれず、悪霊は苦悶の声を上げている。

死神は構えた鎌を回す。

「朱雀よ、神の御使い八咫烏を通し、清らなる炎を我に。」

死神が詠唱すると、回している鎌から炎が更に現れ円を描いた。

炎陣 (えんじん )!

そう唱えると、炎の円が悪霊と死神の間に固定される。黒い影は炎の円から鎌を取り大きく構え力を溜める。

悪霊に狙いを定め、そして、

 

大断炎(だいだんえん )

 

振りかぶった鎌が対象を真っ二つに切断し、焼き尽くす。

「ヴぉぉぇぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!?????」

何とも言い表しようのない絶叫が耳をつんざいた。だがそれも次第に小さくなり、悪霊だったものに安らぎの表情が生まれる。

死神はすぐさま人差し指と中指を立て、

「日の国全ての神よ、天照の神よ。この魂に永遠の安らぎと太陽の道を照らしたまへ」

詠唱する。同時に周りを包んでいた炎が嘘のように消えた。

 

 

 

 

 

 

 

僕は唖然としていた。

いつもと違う狂暴性を持つ悪霊。炎を纏う死神…

あらゆる情報が混雑し、処理仕切れない。

「大丈夫か?」

意識が戻り、声の主の方を見る。

「良かった。どうやら大丈夫そうだな」

女性の姿をした死神は笑顔で安否を確認する。顔の半分を隠す長く刺々しい前髪や鋭い目つき、そして若干女性にしては凛々しい声とは裏腹に、優しい声音と整った綺麗な顔が見せる笑顔に胸を撫で下ろした。

だが僕は思わず

「あ、あんたは…?」

冷静を装おってもやはり動揺を隠せなかったらしく、御礼よりも質問で返してしまった。

彼女は少しの沈黙のあと、後ろを向き少し前進する。

お、怒らせてしまったかな…?

だがそんな様子もなく、

「君に伝えることがある。明後日またここに来てくれ。君が知りたいことを全て教えよう。」

と僕に伝える。

「さっきのことを含めてな」

彼女は茶化しながら、顔だけ振り返りこちらに笑顔とウインクをし、親指を立て炎に包まれ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー自宅にてー

今日は散々な目にあった。

まぁあのあと豆腐のセールに間に合って美味しい麻婆豆腐が作れたから気分は良いが。

しかし彼女は、死神は気になることを言っていたな…

僕が知りたいことを教える、か…

だが、まだ心の準備ができていない。何を知らされるのか…でも知りたい気持ちもある…そこで僕の探し求める物があるかもしれない…

心の中で葛藤する。

 

「母さん、父さん…僕は、どうすればいいのかな?」

 

彰は居間に立て掛けた写真を手に持ち、そう呟いた。

 

 




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