また、兄弟で一緒に。   作:日呉暮歌

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第1話

背中に、重い衝撃があった。

 

簡素と呼ぶことすらも贅沢すぎると思えるほど、擦り切れて汚い、寝台。

 

そこから、無抵抗で、何の受け身も取れないままに、転がり落ちていた。

 

立ち上がろうと、肩に力を入れる。

 

しかし、肩どころか全身が妙に気怠く、上半身を起こすことすらも出来ない。

 

せめて寝返りを打とうと、肩に無理やりに力を籠めようとすると。

 

吐いた。

 

てらてらと奇妙に輝く黄色い液体が、口から一気に吐き出された。

 

喉の奥がヒリヒリと痛み、醜く掠れた音しか発せなくなる。

 

「・・・が・・・ぁが、ぅぐ・・・」

 

息を吐くことすらも苦しく、口を閉じようとするだけの行為に対しても、身体が動いてくれない。

 

次第に全身は熱を帯び始め、顔は火照り、吐息も熱くなる。

 

これが何なのか、今の私の脳では、処理することが出来ない。

 

脳ですらも、機能することを面倒臭がっている。

 

視界は霞み、音も遠くなる。

 

意識は暗闇に誘われ、眠りに落ちるように―

 

私、ルバート・クログレイは、今までの思い出から離脱していった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

瞼の表面を、淡い光が叩く。

 

奥の眼球がくすぐったく、目を開いた。

 

ぼんやりとした視界の中に、淡い人影が見える。

 

「大丈夫か、ルバート?」

 

心配そうに尋ねてくる声に、ゆっくりと頷く。が、呼ばれた名前がしっくりと来ない。

 

「るばーと・・・?」

 

声の主は、私の名前を呼んでいるのだろう。

 

しかし、何故か「自分の名前を呼ばれた」という実感がなかった。

 

目は覚めているのに、感覚は浮遊している。

 

奇妙な気持ちだった。

 

まだ、生温い夢の中にいるかのようだ。

 

「るばーと・・・。それは・・・私の、名前ですか?」

 

尋ねると、声の主は、はっと息を呑んだようだ。声にならない音を、喉の奥に仕舞い込む呼吸音がした。

 

「ルバート・・・今・・・。何て、言ったんだ・・・?」

 

「・・・え・・・?」

 

突然、顔を両手で挟まれ、頭を持ち上げられる。

 

その衝撃で、視力が完全に復活した。

 

鮮やかな色彩が描くのは、陰鬱な狭い密室と―二人の男の姿。

 

一人は、私の頭を持ち上げている。

 

もう一人は、部屋の隅で、私をじっと見詰めている。

 

どちらも、知らない男だ。

 

「あの・・・。お二人は、どなたですか?」

 

問いかけると、二人の男は驚いたのか、全く同じタイミングで、身体をよじらせた。

 

それがおかしくて、思わず吹き出してしまう。

 

二人の男は、まるで珍生物を見るような目で、私を見詰めてくる。

 

どうやらこれは、尋常ではない事態のようだ。

 

笑いを引っ込め、私は、二人に尋ねた。

 

私自身が、一番、知りたいことを。

 

「あの・・・。私の名前は、何なのでしょう?」

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