背中に、重い衝撃があった。
簡素と呼ぶことすらも贅沢すぎると思えるほど、擦り切れて汚い、寝台。
そこから、無抵抗で、何の受け身も取れないままに、転がり落ちていた。
立ち上がろうと、肩に力を入れる。
しかし、肩どころか全身が妙に気怠く、上半身を起こすことすらも出来ない。
せめて寝返りを打とうと、肩に無理やりに力を籠めようとすると。
吐いた。
てらてらと奇妙に輝く黄色い液体が、口から一気に吐き出された。
喉の奥がヒリヒリと痛み、醜く掠れた音しか発せなくなる。
「・・・が・・・ぁが、ぅぐ・・・」
息を吐くことすらも苦しく、口を閉じようとするだけの行為に対しても、身体が動いてくれない。
次第に全身は熱を帯び始め、顔は火照り、吐息も熱くなる。
これが何なのか、今の私の脳では、処理することが出来ない。
脳ですらも、機能することを面倒臭がっている。
視界は霞み、音も遠くなる。
意識は暗闇に誘われ、眠りに落ちるように―
私、ルバート・クログレイは、今までの思い出から離脱していった。
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瞼の表面を、淡い光が叩く。
奥の眼球がくすぐったく、目を開いた。
ぼんやりとした視界の中に、淡い人影が見える。
「大丈夫か、ルバート?」
心配そうに尋ねてくる声に、ゆっくりと頷く。が、呼ばれた名前がしっくりと来ない。
「るばーと・・・?」
声の主は、私の名前を呼んでいるのだろう。
しかし、何故か「自分の名前を呼ばれた」という実感がなかった。
目は覚めているのに、感覚は浮遊している。
奇妙な気持ちだった。
まだ、生温い夢の中にいるかのようだ。
「るばーと・・・。それは・・・私の、名前ですか?」
尋ねると、声の主は、はっと息を呑んだようだ。声にならない音を、喉の奥に仕舞い込む呼吸音がした。
「ルバート・・・今・・・。何て、言ったんだ・・・?」
「・・・え・・・?」
突然、顔を両手で挟まれ、頭を持ち上げられる。
その衝撃で、視力が完全に復活した。
鮮やかな色彩が描くのは、陰鬱な狭い密室と―二人の男の姿。
一人は、私の頭を持ち上げている。
もう一人は、部屋の隅で、私をじっと見詰めている。
どちらも、知らない男だ。
「あの・・・。お二人は、どなたですか?」
問いかけると、二人の男は驚いたのか、全く同じタイミングで、身体をよじらせた。
それがおかしくて、思わず吹き出してしまう。
二人の男は、まるで珍生物を見るような目で、私を見詰めてくる。
どうやらこれは、尋常ではない事態のようだ。
笑いを引っ込め、私は、二人に尋ねた。
私自身が、一番、知りたいことを。
「あの・・・。私の名前は、何なのでしょう?」