「それじゃあ、改めてルール確認だよ。今回の裁判では、妄崎サンを殺害したクロを見つけてね。議論の後、投票でクロを決めて、合ってたらクロ1人がおしおき、間違えてたらクロ以外の全員がおしおきで、クロは晴れて卒業だよ!」
「それでは、議論スタート!」
モノケンのいつもの口上を聞き終わって、佐島くんが口を開く。
「さて…何から話したらいいのかな」
「まずはアリバイじゃないですか?」
芥原さんが不思議そうな顔で佐島くんに尋ねる。僕はそれを否定した。
「いや、違うよ芥原さん…今回は深夜の犯行だから、みんな眠っていたはず。つまり、全員にアリバイがないんだ」
「ややっ!?そう言えばくぐはらも寝てました!ピーちゃんと漬物をお腹いっぱい食べる夢を見てたですよ」
その夢ははたして楽しいんだろうか…?
「強いて言うならアリバイがあるのは、笑至くん達だね」
「ええ」
僕の言葉に笑至くんが応じる。
「ボク達は時計塔の同じ部屋の中で3人で寝ていましたから。互いのアリバイは証明できます」
「でも、3人が共犯だったらそれはアリバイにはならないよね。むしろ人数が多い方が見張りとかができるし良かったんじゃないかな?」
「人数が多いことが必ずしも犯罪の成功に繋がる訳ではありません。多ければ多いほど足音などで見つかるリスクも高まりますしね」
佐島くんの反論に笑至くんが応じる。
「それに…ボク達は貴方達のお陰で絶対的なアリバイを手に入れることが出来ました。感謝しますよ、佐島くん」
「…感謝されるようなことをした覚えはないんだけどなあ」
佐島くんの目にふっと冷たい光が宿った。
「モノケン。用意したアレをみんなに見せてもらってもいいですか?」
「はいはーい!あ、先に言っておくけどコレは捜査中に笑至クンに頼まれたヤツだよ、みんなに巨大スクリーンで動かぬ証拠を見せろってね!
それではどうぞ!」
モノケンがそう言うと、大きなスクリーンがモノケンの背後に現れ、ぱっと映像を映し出した。
草むらが映っていて、右上には時間が表示されている。ちょうど昨日の夜だ。
「僕達が置いた、監視カメラ…」
「はい。貴方達がご丁寧にもボク達の行動を監視してくれたので、動かぬ証拠を手に入れられました」
モノケンが映像を早送りしていく。
午前1時。2時。…そして3時。4時。
次の日の朝になるまで、足どころか、何かの影さえ映ることがなかった。
「………」
モノケンが映像を消し、再び笑至くんが話し出す。
「これで信じていただけましたか?ボク達3人は昨日の夜、一切外出していません。出入口はここしかありませんから、ここ以外からの脱出はできませんよ」
「と、時計塔って窓がついてませんでしたか…?」
荒川さんがおずおずと聞く。
「あれは2階分の高さですから、あそこから下りたら怪我をしてしまいますよ。それに、どの道あそこから下りても寄宿舎に行く時に監視カメラに映ってしまいますからね」
「そ、そうですよね、ごめんなさ…あっ!えっと、なんでもないです……」
荒川さんが僕の方を見て恥ずかしそうに俯いた。あの時の約束、ちゃんと覚えてくれてるんだ。
「そういう訳だから、寄宿舎の中にいた誰かが犯人ってことね」
揚羽くんがそう言ってみんなを見回す。根焼くんは見られた瞬間にあっかんべーをしていた。すごい度胸だなあ…。
「寄宿舎の中で1番妄崎さんの部屋に近いのは…掃気さんだね」
「もこ…そんなこと…してない……」
掃気さんがふるふると首を横に振った。
「ずっと…ねてた…」
「掃気さんが、体格差のある妄崎さんを殺害できるとは思えないな」
佐島くんが掃気さんを援護するように言う。
「それに、あの釘バットを振りかざせるほどの腕力が女子にあるとは思えないよ」
「そっか、そうだよね…」
釘バットを使って殺害したのはほぼ間違いない。女子のみんなは犯人の候補から外してよさそうだ。
「となると、寄宿舎にいた男はボクと佐島と宗形だね」
根焼くんがそう言うと、みんなの視線が一気に僕達に集まった。
「この中で1番寄宿舎に近いのは宗形さんだよね?」
「うん、そうだけど…」
「昨日僕の部屋で僕が目が覚めるまで待ってた後、宗形さんはどこに行ったの?」
「え…!?じ、自分の部屋に戻ってそのまま寝たよ」
佐島くんは、僕を疑っているのか…!?
「ふうん。それを証明できる人は?」
「…いない、けど……」
「現時点で夜時間に部屋から出たってはっきりわかってる人は宗形さんしかいないよね。君が1番寄宿舎から出て倉庫の釘バットを取りに行ける可能性が高いんじゃないかな?」
「っ……」
「へー、なんか怪しいなぁ、宗形〜お前が殺ったんじゃないの?」
言葉に詰まってしまった僕を根焼くんが追い詰めるようにからかう。揚羽くんが僕を見定めるようにじっと見つめ、掃気さんや荒川さん、月詠くんも僕のことを不安げに見ている。
みんなが、僕のことを疑ってるんだ…。
「で、でも、僕には妄崎さんを殺す動機なんてないよ…!」
「動機なんて、今までも分からなかったでしょ。今は誰に犯行が可能だったかっていう話をしてるんだよ」
苦し紛れの反論も、すぐ佐島くんに論破されてしまう。
「………」
どうしよう。みんなと同様に、僕にはアリバイを証明することができない。一体どう反論したら……
「…宗形さん。貴方が自分を犯人ではないと思うのにそのアリバイを証明できないのなら、貴方以外が犯人である証拠を提示したら如何ですか?」
途方に暮れていた僕に声をかけてきたのは笑至くんだった。
「僕以外が、犯人の証拠?でも、アリバイがないのにそんなの見つけられっこないよ…」
「アリバイだけが殺人の証拠ではありませんよ。むしろそれは相手の犯行を確定するためのものでしょう?そうですね、例えば…遺体を調べていて見つけた証拠、とか」
「…遺体の、証拠…」
「ええ。今の貴方なら、自分の無罪を証明する力は十分にあるはずですよ」
笑至くんの言葉に僕は頷く。彼だけは、僕を信頼してくれている。僕を信じてくれている。
時間がない。全員が殺されないためにも、早く自分の疑いを晴らして、真犯人を見つけ出すんだ…!