超特急論破 後編   作:鳶子

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非日常編4

 

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▹▸「これは負けられない戦いだ…!」

 

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▹▸「俺には殺害は不可能だ」

 

▹▸「管理棟の窓に飛び移るなんて出来ないからな」

 

▹▸「そして、それ以外に監視カメラに映らない方法はない」

 

▹▸「つまり、俺の犯行は成立しない…」

 

 

▹▸「お前の負けだ、宗形こむぎ!」

◎トレーニング

△揚羽の

□用の

✕ 長縄

 

▹▸【揚羽のトレーニング用の長縄】

 

 

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▹▸BREAK!!!

 

 

 

「揚羽くん。まず、君は持っていたトレーニング用の長縄の先端に鉤爪を結びつけて、それを管理棟の窓に向かって投げ、窓枠に引っ掛けた。そして、時計塔の窓枠にその縄を結び付けて、その縄をつたって、管理棟まで移動したんだ…!」

「………」

「君の身体能力なら、帰る時は管理棟から時計塔の窓に飛び移ることもできるはずだよ…」

 

「これが僕の推理だよ!」

「………」

揚羽くんは、きゅっと口を閉ざしたままだ。

「揚羽くん、何か言ってよ…!」

 

「…そんな必死そうな目で、純粋そうな目で俺を見るなよ……ああ、合ってるよ、それで」

「………」

 

「はいはーい!議論終了だよ!」

モノケンがタイミングを見計らったように告げた。

「ここからは投票に移りまーす!ひとりひとり、クロだと思う人に投票してね!あ、ちなみに投票を放棄した場合は死ぬからね」

いつもの口上が静寂の中で響き渡る。

「それでは、投票スタート!」

 

 

▹▸投票先を選んでください

 

▶揚羽凰玄

▷荒川幸

▷陰崎ひめか

▷笑至贄

▷片原桃

▷切ヶ谷小町

▷芥原芥生

▷佐島俊雄

▷スティーヴン・J・ハリス

▷掃気喪恋

▷月詠澄輝

▷照翠法典

▷根焼夢乃

▷野々熊ひろ

▷宗形こむぎ

▷妄崎しなぐ

 

 

僕は…揚羽くんに、票を入れた。

 

「それでは、投票結果を発表するよー!」

 

 

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「さてさて、投票多数によってクロに選ばれたのは揚羽クンでしたー!さあ、ワクワクドキドキの結果発表だよー!」

 

 

「今回、妄崎さんを殺害したクロは…」

上からモニターが現れ、みんなのドット絵がくるくると回り、

 

揚羽くんのところで止まった。

 

「"超高校級の軍人"揚羽凰玄クンでしたー!おめでとうございまーす!」

モノケンの威勢のいい声と共に、天井から無数のカラフルな紙吹雪が舞い降りてきた。

 

 

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✧ ✧ ✧

 

 

「…ボクのせいです」

裁判が終わってすぐに、笑至くんがそう言った。

「なんで?殺したのは揚羽なんでしょ?」

根焼くんが不思議そうに尋ねる。

「それでも間接的に殺害の動機を作ってしまったのはボクです。何とお詫びすればいいのか…」

笑至くんは不甲斐なさそうに唇を噛み締めている。どういうことなんだ…?

 

「…お前のせいじゃない」

揚羽くんがゆっくりと首を横に振った。

「俺が焦った。お前の言う通り待てば良かったんだ、これはお前らを信用できなかった俺自身の過失だ」

「でも、ボクがあの時に……いえ、事情を説明するのはボクであるべきでは無い。貴方に任せます」

「…ああ」

 

揚羽くんは裁判の時とは打って変わり、落ち着いた表情で口を開いた。

「俺は笑至から黒幕の正体は妄崎だって聞いた…まあ詳しい理由なんかは後で笑至に聞けばいい」

「なっ……」

「……」

突然の告白に僕は呆気に取られてしまう。

あの妄崎さんが黒幕?そんな、まさか……。笑至くんは、じっとしゃべらずに床を見つめている。その握りしめている拳に力が入っているのが、嫌という程わかった。

揚羽くんは、そんな僕達に構わず話を続ける。

 

「それを聞いた俺は、妄崎を殺せばこの胸糞悪い学園生活が終わるって思ったんだ。笑至は黒幕を倒す計画を練っていたが、そんな長い期間待ってもいられなかった。

…早くこのコロシアイが終わることが、小町の望みでもあったしな」

揚羽くんは、そこで1つ息を吐いた。

「それで、誰にも相談せずに妄崎を殺した」

 

「寝ているうちにあいつの寄宿舎に入ったが、バレて大声を出されそうになった。それで首を絞めて気絶させて、釘バットで殴った…あいつが確実に死ぬまで、何回も」

「……………」

「はは!だっせーの!実際コロシアイは終わってないし、お前は今から死ぬんだもんなぁ、お前自身の身勝手な焦りのせいで」

根焼くんが揚羽くんを嘲笑う。

 

「…返す言葉もないな。全ては俺の責任だ、せっかくのコロシアイを終わらせるチャンスまでもを消した。許されることじゃないのは分かってる」

「…はぁ?ふざけんなよ」

 

根焼くんは、初めて不快の色をはっきりと顔に表した。

「何最後だけいい子ヅラしてんだよ!お前は悪役のはずだろ!?なぁ!」

揚羽くんは根焼くんに胸ぐらを掴まれて揺さぶられると、不敵に笑った。

「お前がそうやって本性出して噛みついてるの、最高に笑えるな」

「ッ……!」

 

根焼くんは舌打ちして、揚羽くんを突き飛ばした。揚羽くんは綺麗な受け身を取って立ち上がる。

「俺は2人も殺した……処刑されるのは当たり前だ。お前らが罪悪感なんて覚える必要は無い。元々俺は、小町を殺した時に罰されたかったんだ。

…今死ねて、よかった」

揚羽くんは、そう言って静かに微笑んだ。

 

「…最期に言い残すこととか、あった方がいいのか」

何も言えず立ち尽くす僕達に、揚羽くんはふと思い出したようにそう言った。

 

「コロシアイを終わらせてくれ」

彼が言ったのは、ただそれだけだった。

 

 

「………」

「揚羽くんも準備ができたみたいだし、やっていきましょう!」

モノケンは快活に笑う。誰もその声を止めることはできない。

「それでは張り切っていきましょう、おしおきターイム!」

モノケンが、ボタンを叩いた。

 

▶あげはクンがクロに決まりました。おしおきを開始します。

 

 

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処刑執行の文字が現れた後、画面が切り替わると…揚羽くんは、たくさんのモノケン達に捕まり、手と足を釘で固定されて磔にされていた。

 

痛がる揚羽くんの前で、モノケン達が訓練された兵士のように横一列にきちっと並び、矢を構える。

…それは、見覚えのあるものだった。

 

一際大きいモノケンの合図と同時に、無数の毒矢が揚羽くんに向かって放たれた。

毒の効果が強いのか、揚羽くんは矢に刺されすぐに血を吐いた…顔はひどく青ざめていて、冷や汗がこちらからでも見える。

とても苦しそうだ…見ていられるようなものじゃない。僕は思わずモニターから目を逸らした。

次に僕が目を開けた時、揚羽くんは気を失っていた。

 

 

٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。

 

 

『あるうららかな春の日、わたしはいつのまにか眠り込んでしまい、夢のなかで胡蝶となり、楽しく飛び回っていた』

 

 

…目覚めると、そこは庭の薔薇園だった。さっきまでの苦しみはさっぱりなくなっている。

周りには揚羽蝶や紋白蝶、メイド達が日々世話をしていた美しい色とりどりの薔薇達が咲き誇っている。

 

…俺は死んだのか?

…いや、それかあの学園生活がそもそも夢だったのではないか。起きたばかりからか、頭がとてもクラクラする。

 

きっと夢だったのだ。早く小町に会いに行こう。最悪の悪夢だった。

 

…あれ、立てない。

 

おかしい、なぜ動けないんだ…。

 

 

『ところが、目が覚めてみると、わたしは紛れもなくわたしであった』

 

 

ふと気がつくと、周りには俺を囲むようにメイド達と父上、母上が立っていた。

皆俺を見て嘲笑っている。

 

な、何故だ?

俺はうまくやっていた、絶対にバレていない…!!!何故だ?嫌だ、嫌われたくない!!!

こ、小町、小町は?小町…ッ

 

 

「…キミが殺したじゃないか。」

 

 

薔薇の花弁が、一気に舞った。

 

 

 

٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。

 

 

揚羽くんは、とてもうなされていた。きっと悪夢を見ているんだ…。

すると、モノケン達が揚羽くんを解放した。

倒れ込む揚羽くんは、きっと物理的にも精神的にも相当のダメージが来ているのだろう、とても苦しそうだ…その後ろで、モノケンは釘バットを構えていた。

 

すると、先に揚羽くんがふらふらになりながらも起き上がり、両膝をついて腰に提げていた日本刀を抜いた。

そして、大粒の涙を流しながら日本刀を自分の首の方へ、

 

 

 

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真っ赤な大量の鮮血が蝶のように舞った。

胸元の純白が、真紅に染まっていた。

 

 

『夢が現実か、現実が夢か?そんなことはどうでもいい。大切なのは、舞い戯れている自分の生の楽しみそのものだ…もうキミにはそんなものないけど。』

 

胡蝶之夢 おしまい

 

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

それは、残酷で、凄惨で、どうしようもなく気持ち悪くて。

どうしようもなく、美しい光景だった。

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