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「…あのね、実はおにーさん、この学園から出る抜け道を見つけたかもしれないんだ」
久々にほとんどの人が食堂に集まってお昼ご飯を食べていた中、月詠くんが不意にそう言った。
「抜け道…?」
「うん。礼拝堂の奥に、隠し扉みたいなのを見つけたんだけど、1人じゃ行くのが怖くて…もしよければ、後でみんなで行ってみない?」
その言葉に、場はにわかに沸き立った。
「そ、それじゃあ、ここから出られるかもしれないってことですか…!?」
「月詠さんすごいです!お手柄ですよ!」
「みんな…おそと…でられる…?」
荒川さんに芥原さん、掃気さんが嬉しそうな顔を見せる。本当に外に出られるのかな…?
「それって、罠とかじゃなくて?」
佐島くんの一言で、みんながぴたりと動きを止めた。
「内通者の君の言うことは、あまり信用できないな…」
「…そう思うなら、貴方は来なければ良いんじゃないですか?」
贄くんが冷たい口調で言った。この二人の仲は一向に良くならないなあ…。
「内通者の言うことを疑ったりするのは僕じゃなくて君の役目なんじゃないの。黒幕を突き止めたいんでしょ?今のところ失敗しかしてないみたいだけど」
「彼が内通者だとまだ決まった訳ではありません。仲間の言うことは信じるべきです」
「へえ、自分でも怪しいと思ってるのに、この場になるとそうやって擁護するようなことを言うんだね」
「………」
「ちょっと、おにーさんのことで喧嘩はだめだよ…!」
月詠くんが慌てて2人を止めに入る。僕も加勢することにした。
「そ、そうだよ。とりあえず、月詠くんがせっかく見つけてくれたんだし、行ってみようよ」
「うん、じゃあそうしようか」
佐島くんはあっさり頷いた。一体なんなんだ…。
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お昼を食べ終えたあと、根焼くんを除いた全員が揃って礼拝堂へ向かっていた。
「根焼くんはどこにいるんだろう…」
「昼食にも来ていませんでしたね。彼のことですし、いつもの様にどこかをぶらついているのかもしれません」
贄くんはそう言ったが、どこか怪訝な表情だ。現状では彼が黒幕である可能性が1番高いし、不安は残るだろう…。
「きっとゲームセンターにいるですよ!くぐはらがパトロールしてる時にいつもそこにいましたから」
「確かに、根焼さんってゲームセンターによくいますよね…」
「ゲームは1日2時間って注意しても聞かないですよ!」
そんな会話を聴きながら、階段を昇って、4階に着いた。ここにも根焼くんの姿はない。そのまま奥の礼拝堂へと向かう。
例の重厚な扉を月詠くんが開けると、一度見た事のある純白の景観が視界に入ってくる。
ただ、一つだけ前と違うところは、正面の十字架の下に人影があった。
見慣れた白髪の少年が、パイプオルガンの上に腰掛けている。
「…根焼くん?」
「月詠、ご苦労さま〜。ちゃんと全員連れてきてくれたね」
「…うん」
隣に立っていた月詠くんが神妙な顔でこくりと頷いた。心なしか、少し怯えたような顔にも見える。月詠くんは、礼拝堂の電気を消すと同時に、後ろ手で重い扉を閉めた。
バタン、と大きな音がして、明るかった礼拝堂の中が薄暗くなる。
それだけなのに、なぜか嫌な予感がした。まるで、退路を絶たれたかのような。袋の鼠、という言葉がふと頭の中に浮かんだ。
「…騙してごめんね、みんな」
月詠くんが小さくそう言って俯いた。その言葉の真意はわからない。ただ漠然と、不安だけがこみ上げてくる。
「ほら、もっと近くに来なよー」
根焼くんがけらけらと笑いながら手招きしている。僕達はゆっくりと、中央へと歩み寄った。
彼はパイプオルガンの上からとん、と下りると、僕達に近づいてきた。例えるなら、これから気軽に世間話でも始めるかのようだ。
「それじゃ、タネ明かしといこうか」
「タネ、明かし…?」
「そう!このコロシアイの真実をオマエラに教えてあげるよ」
コロシアイの、真実?それを根焼くんが知っているのか…?
「それは、どういうことですか?根焼くん、どうして貴方がそれを知ってるんですか?」
みんなが不安そうに額に汗を浮かべる中、贄くんが、根焼くんにまったく怯まずに尋ねる。
根焼くんはその言葉を聞いて心から、楽しそうに嗤った。
「やだなぁ、そんなの。決まってんじゃん?」
「このコロシアイの首謀者は、ボクだからだよ」
…それは、悪魔のような笑みだった。