超特急論破 後編   作:鳶子

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(非)日常編2

✧ ✧ ✧

 

「………」

何度見ても、この研究教室の光景には嫌気が差す。

しかも、前に見た遺体に加えて、妄崎さん、揚羽くん、佐島くん"だった"ハート型のチョコレートまでもがそこに並べられていた。

「掃気さん、大丈夫?」

根焼くんが掃気さんを気遣うように声をかける。

「…だいじょうぶ」

掃気さんはゆっくりと頷いた。

 

「………」

照翠くんの遺体を、改めて見てみる。生々しかった血液はこの月日ですっかり乾いていた。

ナイフの傷と、殴られた跡。最初の時と変わったところは特にないように見える。

すると、贄くんが遺体を見ながら静かに言った。

「この暴行の跡は、男手なら素手でもできそうですが…女性となると、どうなんでしょうか」

 

「女の人では難しいと思います…こんなに力強く殴ったら、先に殴った方の手が怪我しちゃいそうですから」

荒川さんが控えめに返答する。

「……そうですよね」

贄くんはそれを聞いて頷く。何か勘づいたんだろうか…。

 

「…?」

他の部分も細かく見てみようと思って照翠くんの遺体を検分していると、額のところに何か傷痕のようなものがついているのに気づいた。

(これは…縫い跡…?こんなもの、最初に見た時にあったっけ……)

この痕のことは覚えておくことにしよう…。

 

更に部屋の奥の方を見てみようと思って足を進めると、床に何かが落ちているのに気づいた。

 

 

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(これは…何かの、欠片?)

何かを踏み潰されて割れたような黒い破片が、床に散らばっていた。前に来た時はこんなものなかったよな…。

とりあえず、いくつか大きな破片を拾ってポケットの中に入れておくことにした。

 

「あ、あの、ずっと思ってたんですけど……」

一通り部屋を見終えると、荒川さんがおずおずと声を上げた。

「別館にあるエレベーターって、本当に裁判場のためだけにあるんでしょうか…?」

「そうだよね…裁判場に行くためだけにエレベーターをつけるって、なんだか効率悪いと思うよ」

月詠くんがそれに同意する。

 

「じゃあさ、今のうちに別館に行っといた方がいいんじゃない?」

根焼くんの提案に従って、僕達は次に別館へと向かった。

 

 

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別館の壁は既に破壊され、エレベーターが剥き出しになっていた。そして、その横──今まで壁だった場所に、巨大な螺旋階段が現れていた。

 

「らせんかいだん……」

「…降りてみようか」

階段を降りていくと、なんと1フロアごとに何かしらの部屋があるようだった。

「この量は、3時間では調べ切れそうにないですね…思い切って当たりをつけた方がいいかと思います」

 

「当たりをつけるってどうやって?どれにしようかなとか?」

根焼くんがからかうように言った。

「どうしますか?こむぎくん」

贄くんが僕に尋ねる。僕は最初から、この人に決めてもらおうと思っていた。

 

「…荒川さん。どの部屋がいいと思う?」

「えっ…!?わ、私が決めるんですか…!?」

荒川さんは予想通りの反応を見せる。

 

「うん。君に決めてほしいんだ」

「で、でも私なんかにそんな重要なこと……」

「ううん、大丈夫だよ。自分の幸運を信じて決めればいい。もし間違ったとしても、誰も荒川さんのことは責めないよ」

 

「……わかりました」

荒川さんはこくりと頷いた。

「地下の、2階にします」

そう言って彼女はそこで足を止めた。目の前には小さな扉がある。

僕はゆっくりとドアノブを捻った。

 

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✧マップ解放✧

別館 地下2F

 

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「なんだ、これ……」

部屋の中に入ってみると、まず目に飛び込んできたのは腰の高さ程の、薄緑色の透明な液体が入った円柱型の容器だった。右端に8個、左端に8個並んでいる。

「なんか…あやしい……」

掃気さんが容器を不思議そうに覗き込んでいる。

 

僕も贄くんと一緒に覗いてみる。本当に綺麗な色だ…一体何でできているんだろう?16個という数も気になるな…。

 

 

 

「こむぎくん、これ…おにーさんは見終わったから、よかったら見てみてくれる?」

月詠くんが僕に声をかけ、部屋の中央にある長机の上に置いてあったパソコンの画面を見せてくる。

 

「このパソコンの電源は、月詠くんが?」

「うん、ちゃんと押したら点いたよ。おにーさんが読んでもよくわからなかったけど、2人が読めば何かわかるかもしれないからさ」

「…充電されていたということでしょうか。ありがとうございます、拝読しますね」

 

画面を見てみると、どうやらそれは、日記のようだった。

 

 

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「実験……?」

実験、上層部、被検体。怪しげな単語がずらずらと並ぶ。誰が、何について書いてるんだ…?

時間もないので、先を読み進めていくことにした。

 

 

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「何がなにやら、って感じだね…」

「そうですね……」

贄くんが画面をクリックして次のページに進む。そのページだけは、今までに比べて文章量が少なかった。

 

 

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「暴走……」

「被検体の中のどれかに、手の付けようがないような予測不可能な何かが起こった…ということでしょうか」

「この人が参加してたプロジェクト、っていうのが崩壊しちゃうぐらいのってことかな…」

「おそらく、そうでしょう。先に進めますね」

 

 

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「……充電が切れました」

贄くんがぱっとパソコンから目を離して言った。

「このタイミングで…」

「あれが最後のページでしょう。書いている途中に彼は事切れたと思われます」

「………」

ここには複数人の"職員"がいて、全員が『16番』に殺害されたということらしい…。

 

 

 

この部屋に特に他に見るものはなさそうなので、奥の部屋に進むことにした。

掃除用具入れと、机と椅子、テレビ台だけが置いてある殺風景な部屋だ。

 

手前にあった用具入れを開けてみると、そこには、金属製のバット1本だけが入っていた。

 

「なんでバットがこんなところに…?」

 

手に持ってみると…先端の方に、血を拭いとったような跡があった。

「……これって」

「…ひょっとすると、掘り出し物のお宝かもしれませんね」

贄くんが僕の意図を察したように頷く。重要な証拠品として覚えておくことにした。

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