超特急論破 後編   作:鳶子

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dialogue

✧ ✧ ✧

 

(着信音)

 

もしもし、南町探偵事務所です。ご用件は何でしょう?

 

『久しぶり、センセ。俺のこと覚えてる?』

 

……その声、もしかして…薊か?

 

『大正解!もう8年近く経つのに、覚えててくれて嬉しいよ』

 

…当たり前じゃないか。俺は君を探してこの研究施設までたどり着いたんだぞ。君は今どこにいるんだ?

 

『え?何それ、愛の告白?センセ、俺から誘った時は断ったクセに、いけずな男!』

 

一々茶化すな。そもそも君がどうして俺の電話番号を知っているんだ?

 

『そりゃあ知ってますよ。人間は嫌いだけど先生のことはそこそこ気に入ってますから。好きなヒトのことはなんでも知りたくなるものでしょ?』

 

はあ。俺のことを気に入ってる、とか…物好きな奴だな、相変わらず。

 

『自分を失職させて路頭に迷わせた教え子の安否が心配で、わざわざ全財産はたいて探偵事務所設立して、極秘の怪しい研究所まで突き止めた人に言われたくないね。やっぱり俺のこと好きなの、先生は』

 

…好きじゃない。教え子が行方不明になったらどんな教師でも探そうとするだろ。

 

『Aha,そののめりこみ方が異常なんですよねー。ま、教職より探偵の方が向いてると思いますよ。俺にはどうでもいいコトだけど』

 

本当に何の用だ?君が考えなしに俺に電話してくる訳がない。というかそれだったらもうちょっと早く電話を寄越せ。生きてるらしいと分かってはいたが、それでも心配してたんだからな。

 

『可愛い可愛い教え子ちゃんは、用がなかったら先生に電話かけちゃダメなんですか?』

 

………。

 

『OK,沈黙は肯定と受け取らせてもらうよ、センセ。最初で最後の電話なんですから、しっかり聞いてくださいね』

 

どういう事だ?君は今何をして……

 

『今から送信するメールに書かれている人物を明日の午前3時までに出来るだけ多く集めて、施設の門の前で待ってて。不審がった奴は無理に連れて行かなくていい…時間が最優先。午前3時2分47秒に門が開くのでそこから出て振り返らずに全員で走ってください』

 

……月詠みら、月詠みもざ、魅神入夏…知らない名前も多いが、笑至くんのお父さんお母さんに、俺の事務所の水音衣までいるじゃないか。薊、このリストは何なんだ?どうしてこんな仕事を俺に頼む?

 

『それは"必要な人"を年齢順に並べたリスト。先生に頼んだのは…俺が一番信用出来る人間は先生だから、かな?』

 

……。

 

『先生なら俺のお願い、ちゃんと聞いてくれると思ってさ』

 

…さっき"必要な人"と言ったが…誰にとって必要なんだ。君、ではないだろう。

 

『誰にとって、ね…あいたた、一番痛い所かも……勘が鋭いなあ、先生は。えっとね、俺の可愛い息子と娘のために必要なんだ』

 

…………君、結婚した…のか?そうだよな、君ももう20代だし、そんな年齢だよな……。

 

『んー…まあそうそう。そういう事にしておこう。万年独身貴族の先生には悪いんだけどね、俺は結婚したんだ。子供が産まれてからね、もう毎日てんやわんやで大変なんだよ』

 

…これ以上喋る気はないんだな。分かった。君の願いを聞くよ。明日の午前3時に門の前にできるだけ彼らを呼び集める。その代わり、こちらからも一つ質問がある。

 

『…なぁに?』

 

誰よりも人間嫌いのはずの君が、子供とはいえ、どうして他人のために動こうとする?

 

『……』

 

『それはね、』

 

 

『俺はあの子たちを誰よりも、愛しているからだよ。』

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