GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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久々です。今年初投稿です。


1-6 再び、硝煙立ち込める世界へ(1)

AR小隊の4人は電脳空間(セカンダリレベル)で、ペルシカのアバターから次に行われる作戦の説明を受けていた。

 

「あなたたちにお願いしたいのは、S09地区の鉄血の占領区画へ潜入し、[リコ]と呼ばれる署名のある経歴及び研究データを回収して、16LABに送り返す事よ」

 

 ペルシカは任務内容を説明しながら、作戦開始の集合地点をマーキングしたS09地区の地図データを表示する。

 

「鉄血の占領区画の潜入……」

 

 M4は緊張した面持ちでつぶやく。彼女、ひいてはAR小隊にとって初めての敵地での作戦であり、その声音には不安が混じっていた。

 

「占領区画内の作戦かぁ……たくさん解体(バラ)せそう!」

 

 SOPⅡは愉快そうに笑う。彼女のメンタルの中では恐れより、敵を破壊して生体パーツを集められる喜びの方が勝ったようだ。そもそも、不安が頭にないのかもしれない。その様子を見てAR-15はくぎを差す。

 

「馬鹿。潜入任務なんだから、隠密に行動しなきゃいけないのよ」

「む~、わかってるよう。隠れて解体(バラ)せばいいんでしょう」

 

 どうやら、SOPⅡが暴走しないよう見張らなければならないようね、とAR-15はため息をつきながら思った。

 

「作戦では、彼女……指揮官が現場の指揮をとるわ」

 

 ペルシカの言葉にM16は眉を上げて反応する。

 

「指揮官……あの人か」

「それなら安心ね。あの人間はM4より頼りになるわ」

 

 AR-15の発言に、苦笑いを浮かべるM4。性格の問題もあるかもしれないがM4の指揮能力は人間の指揮官より劣る。作戦効率を考えれば、指揮官の配置は妥当だった。

 

「作戦開始は一週間後の未明。それまで、模擬訓練を行って備えてね。頼んだわよ」

 

 ペルシカの指示に、AR小隊の4人は各々、肯定の返事をした。

 

 

 

 

 

 ──一週間後 16LAB 屋内演習場

 

 人形の戦闘訓練、演習は電脳空間(セカンダリレベル)で行われることが多い。しかし、実際に身体を使っての実弾射撃、小隊の連携行動がとれるかどうかも重要である。この屋内演習場では、コンテナや柱などの遮蔽物を設置して、実際の戦闘を模した訓練、演習が行われる。

 男──グレイヴが走る。それを追ってAR小隊のAR-15とSOPⅡが射撃する。銃弾は当たらず、グレイヴは柱の陰に入った。

 

「くそ!当たらない!」

「落ち着いてSOPⅡ!このまま制圧射撃!」

 

 M4とAR-15とSOPⅡは柱に集中して射撃する。グレイヴが柱から出てこれないよう、動きを制限する。

 

──M16姉さん、グレネード!──

──ああ!──

 

 M4の通信による指示で、M16は閃光手榴弾のピンを抜き、柱に向かって投擲した。閃光手榴弾で標的を無力化し仕留める戦法だ。手榴弾は空中で弧を描きながら飛んでいく。

 しかし、3人の射撃の間隙を縫って、柱の陰からグレイヴが射撃した。その銃弾は信じられないことに空中に浮かぶ手榴弾に当たる。

 轟音と閃光。

 空中で閃光手榴弾が爆発する。至近距離ではなかったが、強烈な音と光が、AR小隊の面々の聴覚と視覚をくらます。

 その隙をつき、柱からグレイヴがAR小隊に向かって跳躍した。文字通り飛びながら、両腕のハンドガン──P220で射撃する。

 

「きゃっ!?」

「わわわっ!?」

 

 弾丸はAR-15の胸部に命中、戦闘不能になる。衝撃で後方に倒れたAR-15に、SOPⅡは巻き込まれ、下敷きになった。

 グレイヴは着地し、目線を地面から上に向ける。その視界には目を右手で抑え、揺らぎながら立つM4が写る。

 

──M16っ──

 

 M16の姿を見失う。その時、グレイヴの全身に悪寒が走った。

 いつのまにかグレイヴの左側に回りこんだM16が、ダミーナイフを手に取る。

 M16が即座に行動できたのは、閃光手榴弾の爆発する直前に、M16は耳と左目を手で覆うことで被害を最小限にしていたからだ。

 M16はグレイヴの潰れた左目側に、高速の刺突を見舞う。が、それを上回る速度でグレイヴの左手が、M16のナイフを持つ腕を掴んだ。

 

──はぁっ!?──

 

 腕を掴まれ、動きが止まったM16の腹部を狙って、グレイヴは右手のP220の銃撃する。

 しかし、流石はAR小隊の中で歴戦の古兵であるM16である。動きを制限されている中、身体を器用に捻らせ、ステップを踏んでかわす。だが、M16もこの至近距離では、アサルトライフルの取り回しの悪さ故に、上手く照準をつけられない。もたつけばやられる。防戦一方だ。

 M4も閃光手榴弾の影響が抜け銃口を向けるが、グレイヴとM16がもみ合って射線が重なるので射撃できない。それでもグレイヴだけを狙い撃とうと、グレイヴとM16の周囲を動いて回る。

 M16もまたM4の動きに連動して動き、グレイヴだけが撃たれるように誘導しようとする。しかし、グレイヴもさせまいと、自らも動き、時には掴んでいる16の腕を引っ張り、M4に射撃して牽制する。

 グレイヴとM4、M16が攻防を繰り広げてる中で、グレイヴがM16の腕を離し、距離を取った。突然、解放されたM16の動きが一瞬止まる。その直後、銃声が響く。

 

「いたっ!?」

「ああっ!?」

 

 銃声はいつの間にか復帰していたSOPⅡからだった。M4と同じく、グレイヴを狙い撃とうとしていたが、グレイヴはSOPⅡの射撃タイミングを読んでM16から離脱。SOPⅡは誤射(フレンドリーファイア)してしまった。

 

「──やったな!」

「!?待って、SOPⅡ!」

 

 グレイヴにしてやられた屈辱で、頭に血が上ったSOPⅡがグレイヴを追う。M4は制止の指示は、SOPⅡには聞こえていない。

 グレイヴを追いながら片手で射撃するSOPⅡ。グレイヴはそんなSOPⅡの射撃をかいくぐり、奥にあるコンテナに身を隠した。

 

「逃がすかぁ!」

 

 隠れたグレイヴを追って、SOPⅡはアサルトライフルの銃口を向けながらコンテナの陰へ身を乗り出す。

 その瞬間、銃声が鳴り、SOPⅡが膝をついて倒れる。その銃声はSOPⅡが体を出したタイミングで放たれた、グレイヴの銃撃によるものだった。

 

「っ──」

 

 倒れるSOPⅡを確認して、コンテナの前でM4は動きを止めた。

 既に3人が戦闘不能になり、残っているのはM4ただ一人。手練れのグレイヴに無策で挑む訳にはいかなかった。

 M4は片手でアサルトライフルの銃口をコンテナに向けながら、腰に巻いたジャケットを解いて左手に取る。そして、コンテナの方へと走り出す。

 M4は走る速度を緩めないまま左手に持ったジャケットを、SOPⅡが撃たれたコンテナの陰へと投げる。銃声と共に投げたジャケットが撃たれたのを横目で確認して、M4はコンテナの上に飛ぶ。ジャケットはグレイヴの注意を引く為の囮であり、その隙をついてコンテナ上から狙い撃つのがM4の目論見だ。

 M4はコンテナ上に着地し、グレイヴがいるであろう物陰に銃口を下方に向け──戦慄した。そこで見たのは、右手のP220を撃ったジャケットの方に向けたまま、左手のP220をコンテナの上にいる自身に向けるグレイヴの姿だった。

 

──まずっ──

 

 放たれる弾丸。咄嗟にM4は身体をよじってかわす。なんとか直撃は避けたが、バランスを崩してM4はコンテナの上に倒れ込んでしまった。

 立ち上がろうとするM4。しかし、いつのまにコンテナの上に登っていたグレイヴにそれは阻まれしまう。M4を見下ろしながら、グレイヴは銃口を向ける。

 勝敗は決した。

 

 

 

 

 

「負けたぁ~!くやし──あっいたっ!」

「悔しがるのはいいが、お前は私を誤射した事と、一人で突撃かましたことを反省しろ」

 

 M16は注意と共に、げんこつをSOPⅡに見舞う。

 

「ブツブツ……」

 

 AR-15は最初に戦闘不能に陥ったことが相当悔しかったのだろう。独り言を唱えながら、反省と今後の対策を延々と行っている。

 M16に叩かれた頭に手を当てながら、SOPⅡは、

 

「わーん!M16がぶったよグレイヴー!」

 

 グレイヴに助けを乞いに行く。グレイヴはそんなSOPⅡの頭を優しく撫で、SOPⅡは嬉しそうにはにかんだ。

 

「こら、グレイヴに甘えるな。グレイヴもあまり甘やかすなよ」

 

 M16の注意にグレイヴは微笑んだ。

 

「しっかし、なんでナイフを止められたんだ。完全に死角のはずだろ」

「ああ──それは私も気になりました」

 

 M16の疑問に、M4も追従する。

 

「私も上から狙いましたけどバレバレでしたよね。なんでわかったんですか?」

「……気配……気配がした……」

「気配……ですか?」

 

 些か信じられない様子で、M4はグレイヴに問い直す。グレイヴは頷く。

 

「大した気配探知だよ、まるでグレイヴには高性能なセンサーでもあるみたいだ」

 

 M16はグレイヴを称賛する。

 グレイヴが目覚めてからAR小隊と合流して一月以上が経った。最近ではペルシカへの協力とは別に、グレイヴはAR小隊の訓練を手伝うようになった。

 グレイヴの戦術人形を超えた死人兵士の肉体の強さ。またグレイヴの持つ射撃技術、戦闘の経験は、AR小隊──M16を除く実戦経験の浅い3人──にとって学ぶことは多かった。

 射撃技術以外に今回のような模擬戦を行って小隊の連携の確認、また単体で高い戦闘能力を誇る鉄血人形のハイエンドモデルの仮想敵として、グレイヴはうってつけの訓練相手だった。

 グレイヴにとっても、AR小隊の訓練に付き合うのは利するものがある。長い眠りから目覚めたばかりで、鈍ってしまった実践の勘を取り戻す事。それと同時に、彼女達が少しでも生き残れる確率が上がるならば、自らの持つ闘いの技術と経験を授けることは本意だった。

 訓練に付き合ううち、グレイヴとAR小隊は打ち解け合っていった。M4にとってはあの一件以来、M16とペルシカ以外の頼れる大人、SOPⅡは甘えてもいい人間となって、グレイヴに懐いていった。AR-15は冷たい態度を崩さないが、高い戦闘技術を持つグレイヴを認めており、グレイヴから貪欲に技術を吸収しようとしていく。M16はM4達の相手をしてくれるグレイヴに感謝している反面、M4が頼ってくることが減って少し寂しいと思ってしまっていた。

 グレイヴとM4達と模擬戦の反省会の最中、M4にペルシカから通信が届いた。

 

「ペルシカさん?……はい……了解しました」

 

 通信を切り、M4はグレイヴの方を向く。

 

「グレイヴさん──ペルシカさんが血液交換をするから、研究室に来いと」

 

 定期的な血液交換が必要な身体を持つ死人兵士のグレイヴ。今日はそれを行う事をグレイヴは思い出す。

 頷き、研究室に向かっていくグレイヴ。その後ろ姿にM4は声を掛けた。

 

「──グレイヴさん」

 

 振り向くグレイヴ。

 

「あの……いえ、なんでもないです……」

「……?」

 

 何故、呼ばれたのかグレイヴにはわからなかったが、怪訝な顔をしてグレイヴは屋内演習場を後にした。

 

 

 

 

 

「M4。グレイヴにこれから任務に出る事を言おうとしたの?」

「そんなつもり……ではないけど……」

 

 AR-15の指摘にしどろもどろに答えるM4。そんなM4にM16は釘を刺す。

 

「駄目だぞM4。いくら戦えるといってもグレイヴは私達やグリフィンの戦いとは無関係だ」

「うん、わかってます。M16姉さん」

 

 初めての鉄血の占領区画内の任務。内心の緊張から、無意識にグレイヴに縋ろうと声を掛けたのかもしれないと、M4は思った。

 自身の心の弱さに自嘲し俯いたM4の肩に、M16は手を置く。

 

「大丈夫さ。任務が終わればまた会える」

「……はいっ、M16姉さん」

 

 M16の励ましに、M4は顔を上げる。

 必ずみんなで任務を達成する。

 決意を新たにして、M4、AR小隊は準備に取り掛かった。

 




補足、あとどうでもいいこぼれ話
・グレイヴが模擬戦で使用していたP220
SIG SAUER P220。アニメでグレイヴの殺し屋時代に使用していた銃のデザインがこれらしいです(もしかしたら違うかも)。

・グレイヴの戦闘技術に興味を持つM4とAR-15
特にM4は棺桶(デス・ホーラー)の武器術、AR-15は両手持ちの二挺撃ちの技術に、何故かわからないが異常な関心を見せ始めている。ナンデダロー
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