GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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1-12 救援

『来い……』

「あのバカっ……!」

 

 通信機から聞こえたグレイヴの声。公開チャンネルで響くそれを聴いたAR-15が毒づく。

 

「グレイヴ、大丈夫かな」

「さあ、信じるしかないだろう」

 

 SOPⅡとM16は会話しながら、全速力で雪が積もる森林地帯を駆ける。先導するM4は考える。

 

 ──何故、自分を犠牲に?まだ知り合って一月しか経っていない私たちに何故そこまでできる?なんで?

 

 M4から溢れるグレイヴの自己犠牲に対する疑問。答えの出ない問いに、M4は頭を悩ませる。

 

「わからない、って顔してるわね」

「えっ……?」

 

 M4はかけられた声の方を振り向く。声の主は、いつの間にか横にいたAR-15からだった。

 

「私も同じ気持ちよ……私たち(人形)をかばうなんてどうかしてるわ」

 

 疾駆する方向を見ながら、AR-15はその横顔は怒りで歪ませる。それは何に対しての怒りなのか、M4にはわからなかった。

 AR-15の声で我に返ったM4は首を振る。今は考えることは後回しにしなければならないと、自身に言い聞かせる。

 グレイヴを救援するために、一刻も早く撤退を完了させる。それが、今しなければならないことだった。

 

 

 

 

 

 

 頭部を砕かれた鉄血の人形兵が、膝から崩れ落ちる。グレイヴは、周囲に敵の気配がないことに気づき、銃を下す。どうやら今倒したのが、追撃部隊の最後の人形兵だったらしい。

 AR小隊の撤退する時間を稼ぐため、無線を開いた状態で、鉄血の部隊と交戦していたグレイヴ。いつ終わるかわからない戦いを続け、いつの間にか夜となっていた。

 廃墟の市街地にいるグレイヴの周辺には、大量の人形兵の残骸が散らばる。グレイヴも傷こそ修復機能で消えているが、衣服のいたるところに弾痕があり、激戦の跡が見て取れる。

 

「……」

 

 辺りを見回して警戒しながら、グレイヴはAR小隊は無事に撤退できたのだろうか、と思いを巡らす。囮として全ての敵を引きつけたつもりだが、他の追撃部隊がグレイヴの目をすり抜け、彼女たちを襲撃している可能性も否定できない。もしかすれば、分断され脱出できていないかもしれない、とグレイヴは思った。

 

 ──あえてこちらから攻め入るか。

 

 グレイヴにはヘリ内で確認した鉄血の占領区域を把握している。その記憶を頼りに敵陣深くまで攻め、間接的にもAR小隊の助けになれればいいかもしれない。

 あまりにも無謀な考えだが、彼を止める者はここにはいない。おもむろにグレイヴは足を進め──、

 

『!……誰かっ!助け……!』

「……!?」

 

 突如、無線から流れた声で足を止めた。

 無線を公開チャンネルのまま、開きっ放しだったことを失念していたグレイヴだが、そのおかげで何者かからの救援要請を受信することができた。

 どこから助けを呼んでいるかわからないが、明瞭に声が聞こえたことから、近くにいると判断したグレイヴは周囲に意識を巡らす。

 直後、ある廃ビルの上から、銃声が鳴り響く。

 その銃声がサブマシンガンによるものだと判断したグレイヴは、銃声のしたビルの方へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 ビル内の階段を駆け上がり、銃声のした階層にたどり着いたグレイヴは、気配を頼りに何者かがいるであろう一室へ向かう。

 部屋の中を見たグレイヴが目にしたのは、数体の鉄血の人形兵と、それらに囲まれる二人の少女の姿だった。

 即座にケルベロスを構えるグレイヴは、鉄血の人形兵を狙い撃った。奇襲により、背中から撃たれた人形兵たちはなすすべなく撃破される。

 

「え……?えっ……?」

 

 突然の出来事で、鉄血に囲まれていた少女のひとりがうろたえる。もうひとりの少女は彼女の後ろで倒れており反応がない。どうやら意識を失っているらしい。銃を下したグレイヴは彼女たちの元へと歩を進める。

 

「なっ──なんだお前!?新しい敵かっ!?」

 

 我に返った少女──M4やAR-15よりもやや幼く、金髪を髪飾りで左右に結った眼帯の少女──は、それには不釣り合いなサブマシンガンをとっさにグレイヴに向ける。

 

(Vz61……)

 

 少女の構えたサブマシンガンの銃種を確認したグレイヴは、ある確信をもって彼女へ近づく。

 

「く……くるなよっ!ほんとに撃つぞっ!」

「さっき通信をしたのは君か?」

「だったらなんだよ!?」

 

 グレイヴへの警戒を緩めない少女。構わずグレイヴは話す。

 

「AR小隊を知ってるか?」

「えっ……、おじさんAR小隊の知り合い?」

 

 グレイヴはうなづく。

 

「君はグリフィンの戦術人形だな?」

「う──うん、そうだよ……あたしはVz61スコーピオン」

 

 スコーピオンの自己紹介を聞いたグレイヴは倒れた少女に目を向ける。倒れている小柄な少女の傍らに、PPSh-41(ペーペーシャ)が横たわっていた。

 




補足

・前話で、グレイヴに無線を渡した理由
無線によって、救援のための送受信を行うために渡された。M4たちにとって、グレイヴによる公開チャンネルを使っての囮は全くの想定外だった。
が、自分の描写不足により、囮をやるために渡されたみたいになってしまった。反省。

・もし、グレイヴが通信を受信せず、単独で占領区域に攻め入っていたら……
向かってくる鉄血の部隊をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、ハイエンドモデルの何体かも撃破しているかもしれないが、死人兵士としての活動限界で、二度目の死を迎えているのは確実。
今回の話では、グレイヴは二体の人形を助けたが、グレイヴもまた間接的に助けられている。
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