GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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何も情報がないと思っていたGungrave G.O.R.Eの新しいトレーラーがいつのまにかあったので観て、ゲームはバカゲーだったことを思い出しました。


1-13 蠍とマトリョーシカ

「ん……」

「あ!ペーペーシャが起きた!」

「・・あ・・・スコーピオン・・・?」

 

 再起動したPPSh-41(ペーペーシャ)は、まどろむような意識と揺さぶられる感覚のなかで、スコーピオンを見る。

 

「右足はどう!?だいじょうぶ!?」

「あ・・・し・・・」

 

 視界もまた不明瞭ながら、PPSh-41(ペーペーシャ)は視線を自らの右足の方に向ける。彼女の右足の膝から先はもがれ、その周辺の人工皮膚は、損傷でひび割れていた。

 

「い・・・つ」

 

 自らの足の損傷による痛みと共に、PPSh-41(ペーペーシャ)のメンタルが記憶を呼び起こす(ロードする)

 

「あれ・・・私・・・鉄血にやられて・・・」

 

 意識がなくなる直前、スコーピオンと共に鉄血の追撃から逃げ、敵が放った榴弾の爆発に巻き込まれたことを思い出す。それと同時にペーペーシャは自身が誰かに背負われていることにようやく気づく。

 PPSh-41(ペーペーシャ)は恐る恐る視線を上げ見たものは、眼鏡をかけた見知らぬ男の横顔だった。

 

「……わ、わ、だ、誰ですかっ!?」

「そのおじさん、グレイヴっ!私たちを助けてくれたの!」

「……」

 

 男──グレイヴに代わり、スコーピオンが紹介する。PPSh-41(ペーペーシャ)を横目で見たグレイヴは軽くうなづいた。

 

 

 

 

 

 3人がたどり着いた場所は、市街地から離れた森林地帯にあった無人の廃家だった。その家の二階に身を隠し、3人は腰を落ち着ける。

 グレイヴは屋内で見つけたまだきれいめなタオルを拝借し、PPSh-41(ペーペーシャ)の壊れた右足に巻く。

 

「だ、大丈夫です!もう血は止まってますから!?」

 

 遠慮するPPSh-41を無視してグレイヴは手早く応急処置を済ませる。グレイヴとしては、たとえ人形とわかっていても、痛々しい()を放置するのは我慢ならなかった。

 

「あ、ありがとうございます」

「……」

 

 PPSh-41(ペーペーシャ)のお礼の言葉にグレイヴは微笑を浮かべる。横にいたスコーピオンは不思議そうな顔でそれを眺めていた。

 

「グレイヴって変なの。あたしたち人形だから、そんなことしなくていいのに」

 

 スコーピオンの言葉に少し困りながら、スコーピオンの頭を撫でる。

 

「む~、そんなことされたって嬉しくないよぉ。子供じゃないんだから」

 

 そう口にしながら少しだけ顔を赤くするスコーピオン。いわゆる照れ隠しだった。

 微笑を浮かべていたグレイヴは、床に座り込む二人の近くにしゃがむ。

 グレイヴはペルシカから、今回の作戦で、AR小隊以外の人形の存在を聞いていない。それ故に状況の確認を行いたかった。

「お前たちはなに──」

「スコーピオン!」

「──スコーピオンとペーペーシャは何をしていた?」

「ええっと……」

 

 PPSh-41(ペーペーシャ)は迷った。このグレイヴという素性がわからない男に情報を伝えていいのかわからなかったためである。

 スコーピオンがそんなPPSh-41(ペーペーシャ)の様子を見て察する。

 

「ああ、大丈夫だよペーペーシャ。グレイヴはAR小隊の救援なんだって」

「AR小隊の……?じゃあ、AR小隊と同じエリートせん……術……人形?」

 

 PPSh-41(ペーペーシャ)は、グレイヴから人形特有の信号が出ていないことに怪訝な顔を浮かべる。

 

「そうなんだよ~、グレイヴって人形じゃないみたいなんだよね。でも見てよ、グレイヴの持ってる銃。でかすぎだよ」

「おっ、おっき~……見たことない銃ですけど、なんて銃ですか?」

「あとさ、その吊るしてる重そうな箱なに?新しい武器?」

「……」

 

 PPSh-41(ペーペーシャ)とスコーピオンからの問いに、今度はグレイヴが困ったように笑う。それと同時に最初にした質問から話がそれていることにグレイヴは気づく。

 グレイヴは視線で訴える。

 

「む~、あとでちゃんと答えてもらうからね」

 

 スコーピオンはむくれる。むくれるスコーピオンに代わってPPSh-41(ペーペーシャ)が答える。

 

「私たち、AR小隊が撤退する時に、M4さんに指揮されて殿を務めたんです」

「……元々作戦に参加していたのか?」

「ううん、あたしたちはここで待機してたんだ」

「こんな場所で……?」

 

 スコーピオンが話を続ける。

 

「あたしたち、前に鉄血を倒す任務を遂行してて……その時、みんなとはぐれちゃったんだ」

「撤退するのが遅れて……それで……」

 

 スコーピオンとPPSh-41(ペーペーシャ)が顔色を暗くする。グレイヴも察する。置いていかれたのだと。そうだとしても、グレイヴには解せないことがある。

 

「なら、何故待機していた?ここを離れられたはずだ」

 

 グレイヴの問いに、二人は困惑する。お互いに視線を合わせた後、スコーピオンがおもむろに口を開く。

 

「……わからなかった」

「……?」

「どうしたらいいか……わからなくなっちゃった」

「どういうことだ?」

 

 意味が分からなかった。撤退し、自力で拠点に戻る選択もできたはずだ、とグレイヴは思った。

 

「指揮信号が途切れて、指揮官の声も聞こえなくなって……しばらくは動き回ったけど……頭が真っ白になったんだ」

 

 グレイヴは驚く。それと同時に、ペルシカやM16から聞いた自律人形についての話を思い出す。

 北蘭島事件による人口減少で、労働力の大幅な低下は深刻な問題だった。そのため、人に代わり汚染地帯内の資源採掘と、それ以外の労働に従事させる為に、開発・実用化されたのが自律人形である。人以上の膂力を持つ素体と高度なAIにより、人から受けた命令・目標に沿って思考・行動する自律人形──、だが裏を返せば、沿う目標や命令がなければ、独立した行動がとれない弱さを持っているのだと。

 ペルシカからAR小隊の人形は特別だと言っていた。その時のグレイヴには『特別』の意味がわからなかったが、スコーピオンとPPSh-41(ペーペーシャ)に出会い、ようやく意味がわかった気がする、とグレイヴは思う。彼女たち(人形)はその見た目以上に幼い、一人だけでは歩くこともままならない赤子のような存在なのだと。

 

「……あのまま待機してたら、いずれは鉄血にやられてたと思います……でも、M4さんが指揮してくれたおかげで、こうやって戦うことができたし、AR小隊のお役にも立てて良かったです」

「……」

 

 傍目から聞けばAR小隊に利用されたと感じるが、PPSh-41(ペーペーシャ)自身にはそういった意識はないようだ。

 グレイヴはAR小隊と別れる前のM4の様子を回想する。自らが通り過ぎた道を振り返り、どこか物憂げな様子だったM4は、もしかしたら殿を務めた彼女たちに、そう指揮したことに対する罪悪感のようなものを抱いていたのではないだろうか。

 

「M4は……残ったお前たちを心配していた」

「!……そうですか」

「優しいだね、M4は」

 

 スコーピオンの言葉にグレイヴはうなずく。

 状況を理解したグレイヴは二人を見る。

 

「これからどうする?」

「「え」」

「これからどうしたい?」

 

 グレイヴの問いに頭を悩ます二人。グレイヴは聞き方を変えた。

 

「基地に……自分たちの拠点に戻りたいか?」

 

 息をのむ二人。少しの逡巡ののち──、

 

「帰りたい……みんなのところに帰りたい!」

「私も……戻りたいです!」

 

 力強い二人の言葉。その言葉に微笑みながら、グレイヴは手を差し出す。

 

「一緒に……ですか?」

 

 グレイヴはうなづく。

 

「でもさ、グレイヴって人形じゃないし、グリフィンにも在籍してないよね?一緒にいて大丈夫なの?」

 

 スコーピオンが懸念を言う。考えるグレイヴ。

 

「なら俺は遭難者だ。救助を頼む」

「ぷっ」

「ははっ!何その下手くそな出まかせ!?」

 

それを聞いたスコーピオンとPPSh-41(ペーペーシャ)は笑い出す。

 

「遭難者なら仕方ないな~……ならこのスコーピオンさまが助けてあげよう!」

「ふふふ」

 

 グレイヴの手をスコーピオンは掴む。やることは決まった。

 

 

 

 

 

──???

 

「見たかよスケアクロウ。あのエージェントのキレた顔。傑作だったぜ」

「真面目にしなさいエクスキューショナー。そのエージェントを倒した男を追うのが任務なのよ」

「ああ、わかってるぜ」

「……顔がニヤついてるわ、気色悪い」

「だってよ、あのエージェントを倒したんだぜ。あのエージェントを!」

「だから?」

「めちゃくちゃ強いってことだろ!なら闘えばすっげえ楽しいじゃねえか!」

「……先が思いやられるわ」

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