「……嘘だ」
「そんな……」
その光景を見たスコーピオンと
グレイヴが先導し、必要に応じてスコーピオンに指示を出して、遭遇する鉄血のパトロール隊や哨戒する
逃亡を開始してから5日が経過し、ようやくスコーピオンたちが案内した基地に辿り着いたグレイヴたちを待っていたのは、廃棄され、荒れた基地の跡だった。
地面や建物の外壁や内部は、おびただしい弾痕や爆発痕があり、ここで激しい戦闘が行われていたことは想像に難くない。
スコーピオンはペタリと座り込んだ。
「ごめん……グレイヴ……」
「スコーピオンさん……」
謝るスコーピオン。そんな彼女の肩にグレイヴは手を置く。
案内したスコーピオンや
「これからどうしよう──グレイヴ……?」
「グレイヴさん……」
「……」
消え入りそうな声でスコーピオンはグレイヴに訊ねる。
グレイヴ自身にも、この先のことはわからない。だが、少なくとも、ここで立ち止まっている時間がないことだけはわかっていた。
「行くぞ」
「え……」
「まだ終わりじゃない……」
「……」
そう言ってグレイヴは歩き出す。スコーピオンはその背中を追った。
あれから更に3日が経過した。基地跡を南下し、新たな基地を探してグレイヴたちは夜のS09地区内を彷徨うように歩く。
現在の天気は晴れ。月がよく見え、地上が月明かりで照らされて見通しが良い。必定、敵からも発見されやすくなっているので、森林地帯や岩場の多いルートを通り、遮蔽物に身を隠しながら、慎重に進んでいた。
「きれいですね~」
「うん……鉄血の占領区域内じゃなければ、お月見しながらお菓子をつつくのもいいよね~」
「……」
既に8日が経過し、刻一刻と自らの活動限界が迫る。10日を過ぎてすぐ身体が動けなくなることはないと思いたいが、確実に逃亡に支障をきたす。このまま無計画にS09地区内を彷徨うべきか、グレイヴの中で迷いが生まれつつあった。
一度、グレイヴは昼間にスコーピオンと
そんな頭を悩ますグレイヴの頭上に、ピシャリと雷鳴がなった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
スコーピオンと
先ほどまで、月がよく見えていた空が暗雲に覆われ、雷を発している。雷で一瞬照らされる雲は、気のせいか黄色く濁っているように見えた。
急すぎる天候の変化に驚くグレイヴたちの頭上に大雨が降り注ぎ、身体を濡らす。その雨に打たれながら、スコーピオンの顔は急に青ざめた。
「グレイヴ、まずい!──ここ、イエローエリアだ!」
「……?」
グレイヴは聞き慣れない言葉に疑問を浮かべて、スコーピオンを見る。
「知らないの!?コーラップスで汚染された区域だよ!?呼吸するだけでも害なんだここは!」
スコーピオンは早口で説明する。
「私たち人形は大丈夫ですけど、人形じゃないグレイヴさんは……汚染された雨で……」
背負われた
絶望感に囚われる二人がグレイヴを見る。そのまま三人は固まった。
1分、2分と時間が経過していく。だが、予想した最悪の未来は起こらず、
「あれ……グレイヴさん……大丈夫なんですか?」
「……」
無言で、グレイヴはうなづく。信じられない様子でスコーピオンと
雨に打たれながら、数舜ののち、おもむろにスコーピオンは口を開いた。
「ねえ──グレイヴって何なの?」
「……」
「信号を発していないから人形じゃない……けど、
「……」
スコーピオンから溢れる疑問。グレイヴは自身の正体──死人兵士のことを伝えるわけにはいかない。また、信じてもらえるとも思えなかったため、口を噤んだ。かといって、このまま不安を抱えたままでいさせるのも、スコーピオンと
「俺は人間でも人形でもない……だが、お前たちの味方だ……それだけは信じてほしい」
グレイヴは自らの思いを語る。正直、誤魔化しているような気もしているが、それでも伝えずにはいられなかった。
沈黙が続いたあと──、
「……うん、信じるよ」
「私もです」
スコーピオンと
「グレイヴがいなかったら、あたしたちはとっくの昔にやられてた……それに、こうやって鉄血の支配地域のなかで、見つからずに逃げられてる。グレイヴのおかげだもん」
「スコーピオンさんは騒がしいから、すぐ見つかっちゃいますもんね」
「うるさいよ、ペーペーシャ」
スコーピオンと
「それにさ──私たちが寝てる間、グレイヴさんは隠れ家から離れましたよね?でも戻ってきてくれました」
「……」
気づかれていたとは思わなかったグレイヴはわずかに驚きながら、横目で
「動けない役立たずの私を見捨てなかった。だから信じます……最後まで」
「あたしもだよ」
そう言ってグレイヴを見る二人。その目は力強く、グレイヴを信頼していた。
「……」
グレイヴは、背負う
「この雨だったら、敵にも見つかりにくくなると思う──急ぐなら今だね」
スコーピオンの言葉にうなづくグレイヴ。
「……?」
「グレイヴさん、どうしたんですか?」
「……いや、行こう」
尋ねる
──S09地区、鉄血指令所
「見つけましたわ。何者かが通信信号を出している形跡がある。時間は──昼間の1100頃ね」
スケアクロウが偵察網に引っかかった信号を分析する。
「通信したのはあの男か?それともAR小隊か?」
「そこまではわかりませんわ──座標を送ります」
エクスキューショナーは、自らの電脳内に送られた座標を確認する。
「前にぶっ潰したグリフィン基地に近いな。生き残りか?」
「何者かが寄っただけとも考えられますわね。断言できませんが」
「もしあの男だったらどうすんだ?
スケアクロウがため息をつく。このエクスキューショナーは戦闘以外に興味がないのかと呆れていた。
「……エルダーブレインとエージェントが、男の姿を確認すれば、生体反応判定を無視して攻撃するように修正するそうです。聞いていなかったのですか?」
「わりぃわりぃ!楽しみすぎて忘れてたわ!」
スケアクロウは再度、ため息を吐いた。エクスキューショナーはそれを無視して、自らの愛刀を抜く。
「エージェントはぶっ倒すほどの男……本当に楽しみだ……」
エクスキューショナーは嗤う。その網膜に映されたのは、エージェントの戦闘記録にあった
補足
・廃棄された基地
ドルフロのゲーム本編で、第一戦域のストーリーでカリーナが、鉄血との戦闘が激しくなって、司令部をいくつも失っていることを発言しているところから引用。