GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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大型ストーリーイベが始まりましたね。反逆小隊のスーツスキンください。


1-20 ようこそ、少女たちの前線へ

 ――執務室

 この基地の指揮官であるミラと後方幕僚のカリーナは、事務作業をしながら、会話している。話題はグレイヴとクルーガーとの会談についてだ。

 

「この基地に社長が来るなんて……グレイヴさんってそんなVIPな人なんですかね~?」

「そうかもね……」

 

 カリーナの話をミラは、自らの右手をじっと眺めながら生返事で返す。なにか考え事をしているだろうとカリーナは察した。

 

「どうしたんですか、指揮官様?」

「……ねえ、カリーナ。グレイヴさんってどんな感じの人だった?」

「えっ?うーん、そうですね……」

 

 質問されたカリーナは、グレイヴの初対面を思い返す。

 

「第一印象は無口でおっかなそうでしたけど……声の感じとか、スコーピオンさんやペーペーシャを心配していたので、誠実で優しい人かもしれないって思いましたね」

「……」

「でも左目の傷跡とかS09地区内で逃げてきたところからして、絶対カタギの人じゃないですよ……」

「そうね……今回の作戦も色々、不可解なことが多かったわね」

 

 そう言って、ミラは天井を見上げる。ギギッと、ミラが座る椅子の背もたれから音が鳴る。

 

「16LABの主席研究員であるペルシカさんからの依頼。しかも、救助対象はペルシカさんが指揮し、何らかの任務を遂行していたAR小隊の人形ではなく、ペルシカさんの客人ということ以外、素性がわからない男。グレイヴっていう名前も明らかに偽名っぽいし、怪しさしかないわね」

「そうですね」

「それにさっき握手した時、驚いたわ。すごく冷たくて固かった……体温なんてまるでなかった」

「実は人形とかですか?」

「それはないと思う……むしろ幽霊かな」

「幽霊?」

「あの人、なんだか生気がないというか……存在感が希薄というか……」

「ええ~。指揮官様って自称、霊感持ちですか?」

「書類、増やしましょうか?カリーナ」

「ごめんなさい、今夜は寝たいです」

 

 青ざめたカリーナを尻目に、ミラはまた自らの右手を見る。握手した時に触れたグレイヴの右手。

 ──気のせいだろうか。その右手から死臭が漂った気がしたのは……。

 

 

 

 

 

 ――基地・倉庫

 グレイヴとペルシカは、ミラがあてがった倉庫でクルーガーを待っていた。この倉庫は未使用であり、人気もほとんどない為、密会場所としてちょうど良かった。

 しばらくして、ヘリのローター音が倉庫の壁越しから聞こえ、更にしばらくして、こちらに近づく車のエンジン音が聞こえてきた。どうやら件の人が来たらしい、とグレイヴとペルシカは察する。

 車が近くで停止し、数分ののち、倉庫のドアが開く。入ってきたのは、眼鏡をかけた黒髪の女性と、その後ろに続く髭をたくわえ、右の頬に傷痕がある屈強な男性だった。

 

「久しぶりね、クルーガー。ヘリアン」

「すまない、待たせたようだ」

 

 挨拶はそこそこにして、男はグレイヴの正面に対面し、その後ろに女が控える。

 

(退役軍人か……)

 

 男の風貌と鋭い気配から、グレイヴは男の前職を察する。男もまた、グレイヴを観察していた。

 

「グリフィンの最高責任者、クルーガーだ」

「上級代行官のヘリアントスです」

 

 男と女──クルーガーとヘリアンがそれぞれ自己紹介する。

 

「グレイヴだ……救助の件、感謝しています」

「構わない。なんといってもペルシカから要請だ……貴様についても、色々と聞いている」

「……」

「ビヨンド・ザ・グレイヴ――200X年に活躍した、ネクロライズと呼ばれる謎の技術によって、人間の死体から造られた死人兵士……にわかには信じられん話だ」

 

 グレイヴはペルシカを睨む。ペルシカは居心地が悪くする。

 

「しょうがないじゃない……あなたについての情報を教えない訳にはいかなかった。グリフィンの部隊を動かしてもらうのはそうするしかなかったの」

「あまりペルシカを悪く思わないでくれ。こちらから貴様のことを聞いたのだ──貴様の素性については機密事項にしている。知っているのはここにいる我々と、AR小隊だけだ」

 

 グレイヴはため息をつく。知られてしまった以上、あとの祭りだ。

 

「AR小隊との模擬戦記録と作戦記録、うちの所属人形であるスコーピオンとペーペーシャの作戦記録は閲覧した……凄まじい戦闘能力を持っているようだな……我々(グリフィン)や鉄血の人形を超えるほどの──」

「──要件は?」

 

 クルーガーの言葉を遮って、グレイヴは本題に入るよう促す。ヘリアンは、口を挟んだグレイヴを睨むが、クルーガーは気にした様子はなかった。

 

「そうだな。単刀直入に言おう──グリフィンに入らないか?無論、戦闘員として」

 

 グリフィンへの勧誘。クルーガーの言葉に、ヘリアンは表情を曇らせる。やっぱりか、と思いつつ、ペルシカは成り行きを見守る。

 

「事情は知っているだろう・・我々は現在、暴走した鉄血と戦っている……」

「……」

「鉄血は非常に強力で、数も多い。現に我々は押され、いくつもの基地と多数の社員を失っている」

 

 グレイヴはS09地区を彷徨っている時の、廃墟と化した基地を思い出す。

 

「その中で、貴様の死人兵士としての戦力は非常に魅力的だ……放ってはおけない」

「……」

「無論、見返りは用意する──貴様の肉体を維持する為の人工血液の補給設備の用意、制御システムの復元。そして、浅葱ミカの所在の調査――」

「前二つは私の担当だけどね」

 

 ペルシカが不機嫌そうに口を挟む。

 

「すぐに返事しろとは言わん。このまま、16LABへ戻って──」

「……」

 

 グレイヴは無言で頷く。それが肯定を意味することは、疑いようがなく、グレイヴ以外の三人が驚く。その中のクルーガーは眉を動かす。

 

「……こちらとしては喜ばしいが、少し早すぎる返事だ。──理由を聞いてもいいか?」

「……」

 

 グレイヴは脳裏にAR小隊の面々、そしてスコーピオンとペーペーシャが浮かぶ。特にAR小隊の面々に、グレイヴは助けられ、関わってきた。そんな彼女(人形)たちが、人に代わり、苛烈な戦場で傷つき倒れる姿をグレイヴは見たくなかった。

 ──だから。

 

「……守る」

「なに?」

「守る為だ」

 

 ──守る。それこそがミレニオン。俺の生き方だ。

 

 

 

 

 

 会談は終了し、グレイヴだけが外へ出る。三人は話があると言って倉庫に残っていた。

 

「AR小隊の作戦記録と今回の対面でなんとなくだが察したよ──元々は殺しを生業にしていた男だろう。恐らく、非合法の……」

「そうなの?死人兵士の能力とかじゃなくて?」

「身体能力はそうだが、戦闘技術についてはそうではない。相当な訓練と経験が積まれているのを感じた……最も、射撃や動きが独特すぎる。軍隊出身ならあそこまで我流にはならん」

「クルーガーさん、よろしいでしょうか?」

 

 クルーガーの言葉に、ヘリアンが口を開いた。

 

「私はあの男をグリフィンに入れるのは反対です」

「……」

「あの男は危険です。詳細不明の兵器なうえ、恐らくですがIFF(敵味方識別装置)などなく、自由意志があります。もし、彼を入れるなら、人工血液の交換中止をちらつかせ──」

「無駄だ、ヘリアン。あの男にそんな脅しは通用しない」

「それは私も同感。今回のAR小隊を逃がした時に残ったのがいい例よ」

 

 クルーガーの否定に、ペルシカも同意する。

 

「まだひと月くらいの付き合いだけど……グレイヴは直情的な人よ──自分が決めた事は絶対にやり通そうとする強さがある。自分で自分を縛るタイプなのよ、彼」

「なら、なお危険です。彼は我々の指示を無視して独断で行動するかもしれません。もし敵対するようなことになれば……」

「その危険性は理解できる。しかし、ヘリアン。今の我々の現状は非常に厳しい。その現状を打破できるのなら奴の力は必要だ。たとえ劇薬であっても……」

「クルーガーさん……」

 

 言いよどむヘリアンの横で、ペルシカは下を向いて俯く。その表情は少しばかり暗い。その変化に気付いたクルーガーは彼女に聞いた。

 

「どうした、ペルシカ?何か懸念でもあるか?」

 

 質問されたペルシカは顔を上げ、数秒経って口を開いた。

 

「懸念……そうね。心配ではあるわ」

「あの男が?奴の力は君が一番知っていると思ったが――」

「戦闘能力については何も心配なんてしていないわ……危ういのよ」

 

 ペルシカは、グレイヴが出て行った扉を見つめる。

 

「目を離すとどこかに消えてしまいそうで……何かきっかけがあれば、すぐに死んでしまいそうな……そんな危うさが」

 

 

 

 

 

 倉庫から出たグレイヴはグリフィンの基地内を歩く。太陽は沈みかけ、辺りを赤く照らす。グレイヴを出てきたのを確認したM4たち、AR小隊が彼に駆け寄る。

 

「お疲れ様です、グレイヴさん。話は終わりましたか?」

「……」

「なに話してたの?」

「馬鹿。そんなの私たちが聞ける内容じゃないわよ」

 

 SOPⅡの疑問に、AR-15が突っ込む。それに苦笑いを浮かべつつ、グレイヴが答えた。

 

「グリフィンに入ることになった」

「「「「えっ」」」」

 

 四人がハモる。驚きで固まる四人だが、最初に復帰したSOPⅡが表情を輝かせる。

 

「じゃあ……グレイヴも一緒に戦ってくれるの?」

 

 グレイヴは頷く。

 

「や、やったー!」

 

 SOPⅡは喜びのあまり、グレイヴに抱き着く。

 

「これからよろしくね!グレイヴ!これからも色々遊んでよ!」

 

  SOPⅡはグレイヴに抱き着きながら、グレイヴの顔を見上げる。グレイヴもまた彼女の頭を撫でる。

 

「グレイヴさん」

 

 M4が前に出る。不安げにグレイヴを見つめる。

 

「本当に……いいんですか?」

 

 M4はグレイヴの強さを身をもって知っている。しかし、S09地区での撤退の際に、殿を務めたグレイヴに感じた得体のしれない恐怖。その恐怖が彼女を不安にさせた。

 

「……」

 

 グレイヴは頷く。その目は強く、まっすぐにM4を見つめる。

 ――グレイヴとてこれからどうなってしまうのかわからない。しかし、ここで目覚め、彼女(人形)たちやこの時代の人と出会ったのは、何か意味や価値はあるはずだと、彼は思う。戦うことしかできない彼が、誰かを守ることができるのなら、そこに躊躇はない。それこそが彼の、グレイヴの生き方だった。

 

 

 

 

 

 ――鉄血・中枢

「グレイヴ?」

「そうよ。エクスキューショナーの作戦記録から知ったあの死体男の名前よ」

「グレイヴ……」

「エージェント。顔が怖いわ。まずは落ち着いて」

「……ええ、わかっています。あの男の対策も立てなければなりませんです。ご主人様のためにも」

「本当はあなたが殺したいじゃない、エージェント?こっぴどくやられてしまったんでしょう?」

「口を慎め、ドリーマー。今はやるべき仕事がたくさん残っています。……わたくしの私情を挟む余地はありませんわ」

「はいはい。AR小隊が回収した第3セーフハウスのデータの発見もしなくちゃならないし、仕事は山積みね。嫌になるわ」




チャプター1終わり。もっと早く書けるようになりたい。
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