GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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黄昏の破壊者-3

1時間後、短い電子音が鳴り、データのコピーが完了した。

M4はコンピュータからメモリの接続を外し、メモリを懐にしまう。

 

「やっと終わったか」

 

M16はそう言って簡易ベッドに腰かけた状態から立ち上がる。

 

「SOPⅡ、戻って、終わったわ」

「待ちくたびれたよ~」

 

AR-15は外で雪遊びをしていたSOPⅡを呼び出す。再びコンテナ内部でAR小隊全員が集合したのを確認して、M4はペルシカに通信を入れる。

 

「ペルシカさん、こちらM4、データのコピー完了しました。これより帰投開始します」

『お疲れ様、回収地点にヘリを寄こしてるから、それで帰ってきてね』

「了解」

 

 通信を切る。

 

「やっと任務完了か、とっとと帰って一杯やりたいな」

「まだ終わってないわ、油断しないで」

 

 M16を注意するAR-15。

 

「ねえ、この死んでる人どうするの?」

「えっと・・・」

 

 M4はうんん、と唸りながら考え込む。結局、この座る男の死体が誰で、なんなのかわからず仕舞いだった。任務とはいえ、死体を見つけ、その死体の前で墓荒らしをしてしまったことに少し罪悪感を覚えてしまう。

 

「置いていこう、元々ここにいた奴だし、回収する意味がない」

 

 M16はそう言ってM4を諭す。

 

「一応、礼だけはしていった方がいいんじゃない」

「殊勝ね、いつも解体した鉄血からパーツ集めしているくせに」

「む~、私は人間をバラバラにするほど悪趣味じゃないよ~」

 

むくれるSOPⅡに充分悪趣味よ、と毒づくAR-15。

 死体の方を向き、M4は前に出る。

 

「ごめんなさい、そしてありがとうございました」

 

 死体に礼をするM4。他のメンバーも各々礼を伝える。

 その後、コンテナの外に出るAR小隊。

 

「それじゃあドアを閉め直すぞ、手伝えSOPⅡ」

「は~い」

 

 M16はSOPⅡとともにスライドドアに手をかけて、ドアを閉めようと力を入れる。

 だが、その時ボシュッと短い炸裂音と共に、シュルルと何かが空を切る音が鳴る。それが迫撃砲の発射音と弾頭の落下音であることをM4が青ざめながら直感する。

 

 「全員!さ・」

 

 散開、と指示を言い切る前に目の前で地面が爆発、衝撃と共に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 M4は衝撃で吹き飛ばされ、コンテナ内部の壁に激突、そのまま床にずり落ちる。

 

「ゴホッ」

 

 体を強打し、咳き込む。額から人工血液が滴り、床にポタポタと落ちた。

 

(ジャガー・・!?)

 

 四つん這いから立ち上がろうとしながら、攻撃してきた敵を推測する。ふと、誰かに衣服を乱暴に捕まれ、強引に立たされた。

 

「M4!起きて!鉄血よ!指揮を執って!」

「AR-15・・」

 

 AR-15に立たされながら、頭から垂れる血を手で拭う。そのあと、急いで自身のアサルトライフルの動作確認を行う。幸い、故障はしていないようで、マガジンを一度抜き、装填し直す。

 

「なんでこんなところに鉄血が・!?」

 

 疑問を口にしながら、指揮システムを起動、スキャンを行う。コンテナを遮蔽物にして、ドアフレームの右側にAR-15、左側にM4が陣取る。

 ヴェスピド10、リッパー10、ジャガー1。鉄血の占領区域から遠いとはいえ、これだけの数の敵に気づかず近づけさせてしまったことは油断に他ならない。M4は無意識に唇を噛みしめる。

 鉄血の部隊が一斉に射撃を行う。その攻撃はすさまじくコンテナの外壁に大量に着弾し、金属を叩き続ける音を響かせる。何発かドアから中に侵入して床や壁に音を鳴らす。射撃の勢いが弱まるタイミングを見計らい牽制して射撃を行う。が、ジャガーが迫撃砲弾を発射、コンテナ上部に命中し爆発、コンテナは大きく揺れ、射撃を阻まれる。

 

「鉄血のくせに小癪ね!」

 

 AR-15は愚痴りながら、射撃する。

 戦闘場所としてここは最悪だ。コンテナの周囲は開けた平地になっており、何本かの木がバラバラに生えているだけで、身を隠す遮蔽物が少ない。こんな場所での戦闘は数の多さが有利になる。唯一の救いはコンテナの頑丈さくらいである。完全に出鼻をくじかれた形になってしまった。

 M4は射撃を行いながら、あることを思い出す。

 

「M16とSOPⅡは!?」

 

 突然の戦闘で頭から抜けていた2人の安否を確認しようとツェナープロトコルで通信を行う。

 

『私は大丈夫だよ!M4!』

「SOPⅡ!?良かった!ダメージは!?」

『そんなにない!けど、ごめん!銃手放しちゃった!』

「ええっ!?」

 

 通信しながら、少しだけ頭を出してSOPⅡのいる方向を見る。距離20mのところで生える木に背中をつけながら銃弾の嵐から身を守っている。SOPⅡは手を上げてみせる。SOPⅡから見て右側、10m程のところに彼女の愛銃が雪の上にあった。遮蔽物がなく回収に行けば狙い撃ちされるだろう。

 M4は舌打ちする。SOPⅡの40mm榴弾を頼りにしていただけにだ。

 ふと、視界の左端に見慣れた黄色が見える。M16だ。彼女はコンテナから5m程の位置にいたが、遮蔽物がないところで身動きがとれず、雪と地面でできた斜面に仰向けで寝そべった状態を保ち、敵の弾幕をなんとかやり過ごしていた。

 

「M16姉さん!」

「私に構うな!敵に集中しろ!少しずつでも敵を削れ!」

 

 M16はM4を注意しながら、右手で持ったアサルトライフルを寝そべった状態で撃つ。敵を視認していないうえに片手での射撃は精度が落ち、効果が薄い。

 M16の射撃場所から位置を特定した鉄血兵は、集中砲火を行う。弾幕で雪と地面の斜面が削れていく。

 

 ピシュン

 

「くっ!?」

 

 M16の右腕に銃弾が掠る。

 

「M16姉さん!」

「M4!不用意に身体を外に出さないで!あんたまでやられるわよ!」

「でもM16姉さんが!!」

 

 M4を制止するAR-15。

 再びジャガーの迫撃砲から榴弾が発射される。今度は、コンテナ近くの地面に着弾、爆発する。直撃はしなかったが、爆発の衝撃で飛び散った土混じりの雪がM16にかぶる。やられるのは時間の問題だった。

 M4の脳裏に最悪の想像がよぎる。自分はリーダーなのに鉄血の占領範囲外での任務であるからと楽観視し、データ収集中に索敵を怠って、小隊を危機に陥らせた。そして、自分のせいでM16姉さんがやられてしまう。メンタルが恐怖と悔恨に支配され、思考を鈍らせ、まともに指揮がとれない。自分は人の命令に従って行動する人形なのに、仲間を助ける人形のはずなのに、助けてほしいと強く願ってしまう。

 

「M16姉さん!!」

 

 強く叫ぶ。その時、自分の後ろで何かが軋む音を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 最初に異変に気づいたのはAR-15だった。銃声と爆発の音に混じって、後方で、けたたましく音が鳴り響いている。見ると、あちこちの計器のメーターが振り切り、コンピュータが今まで聞いたことがない音量でガリガリと何かを書き込んでいる。データのコピー中に見ていた人影が映るモニターはピピピと音を出しグラフには大きな波形が波打ち、棒グラフの数値は乱降下と急上昇を繰り返す。

 

(なにかのシステムが起動してる?)

 

 視線を思わず右に移し、この日最大の衝撃がAR-15を襲う。戦闘中でありながら、ありえない光景を前にして彼女の思考は停止した。

 取り乱すM4だったが、固まっているAR-15に気づいて、そちらを見る。彼女にしては珍しく口を半開きにして目を見開いて自分を見ている。否、自分の後ろを見ている。そして、自分の後ろから金属がこすれる音とガタガタと何かを揺らす音が鳴っていることに気づく。

 

(な、なに・・)

 

 後ろをゆっくりと振り返る。そして驚愕した。信じられないものを見た。

 そこには手で椅子の肘置きを強く掴み、体全体を震わせながらも、ゆっくりと全身全霊の力を込めて立ち上がる死んでいたはずの男の姿。

 男の残された右目が開かれる。虚ろさを残しながらも、それでもなお強い意志を瞳に宿して、“死神”が再び覚醒めた。




ええ、今回の話はアニメ版Gungraveの17話のパク・・オマージュです。
次回で序章は終わる予定です。
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