GUNGRAVE -OVER DOLLS-   作:ガロヤ

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ホワイトデーイベで、UMP40ドロップチャンスあるやったー(自分は深層映写が終わった後にドルフロを始めました)


1-2 好奇心

 グレイヴが目覚める10日前ーー

 

 

 

 

 ペルシカはAR小隊が連れて帰ってきた男を前にして、頭を抱えていた。

 AR小隊が鉄血の占領区域から離れたところでの任務中に、突然の鉄血の部隊の襲撃を受けた。それによって通信が途切れ、非常に心配していたが、再びM4から通信が繋がり、全員の無事を聞き安堵する。しかし、その次に聞いた報告でその安堵感が吹き飛んだ。

 任務中に発見した男の死体が、戦闘中に突然動き出し、鉄血の部隊を撃破したと。そして、その男を回収して現在帰還中だと。

 これを聞いたペルシカはうちの人形達に重大なバグが発生したのではないかと危惧した。

 なにかの冗談かとも思ったが、帰ってきたAR小隊とM16に担がれて運ばれた男を見て、これが現実なのだと痛感する。

 

「じゃあ、その男をここに寝かせて」

 ペルシカは指示を出し、男を人形用の修復カプセルに寝かせた。本来、人間用ではないが、ベッドとして使えるのがこれしかない。

 

「それじゃあ詳しく聞かせて、なにがあったの?」

 

 ペルシカは事の経緯の説明をAR小隊に求めた。

 

 

 

 

「……」

 

 説明を聞いたペルシカはあまりにも信じられない内容に黙り込んでしまった。

 コンテナで見つかった男の死体が動き出し、人間では扱えない2丁の巨銃と棺桶型重火器で鉄血兵を単独で撃退、また鉄血の最新の兵器の攻撃を浴びても無傷だった。

 荒唐無稽なつくり話ではないかと思ったが、そもそも人形である彼女達が自分に嘘をつけないことはわかっているし、行動記録を見れば一目瞭然だ。更には回収した男の装備の実物を見れば信じざるを得なかった。

 ペルシカは男の身体を触り確認する。弱々しいが呼吸と脈はある。だが体温が感じられないうえ、皮膚の表面が異様に硬い。

 この男の正体はなんなのだろうとペルシカは思案する。

 

(違法改造された人形?でもそれだったら人形が発する信号でM4達が気付くはず。ならE.L.I.Dの変異種かE.L.I.Dを利用した兵器?しかしコーラップス汚染反応はなかった。まさか軍やどこかのテロ組織が開発した人間を用いた生物兵器?でも軍とかから怪しい情報や噂話は入ってないしなあ)

「あのっ……ペルシカさん」

 

 ペルシカの思考はM4の呼びかけによって中断された。

 

「ああ……何?M4?」

「この人を……助けてくれませんか?」

 

 M4の口から出てきた言葉は男の助命のお願いだった。

 

「うーん・・・」

 

 ペルシカは頭をかきながら唸る。ペルシカの心の中でこの男の正体を探りたいという好奇心が芽生えている。が、不安要素もある。

 

「私は医者じゃないから、正直治療とかできるかどうか・・」

「でも、私達は修復カプセルで修復してるじゃないですか」

「人形と人間じゃ方法が違うわ、SOPⅡ」

 

 SOPⅡの言葉に応える。自律人形や人工知能の技術の研究・開発が専門であって医療は門外漢だ。人形の修復と人間の治療は違う。

 

「仮にこの男を治療できたとしても、私は反対です」

 

 そう言って反対の意見を出したのはAR-15だった。

 

「AR-15、なんで……」

「M4、あなたも見たでしょう、こいつの戦いを」

 

 M4の戸惑いの声を遮ってAR-15は答える。

 

「単騎で鉄血の兵器の攻撃を耐え続けてたうえに、全滅させた男よ。はっきり言って私達より強い。まるで噂に聞くE.L.I.Dみたいだったわ」

 

 低濃度のコーラップス液(崩壊液)に被爆した生物が成る形態の変異発症者。それをE.L.I.Dと呼称するが、その戦力は正規軍の主力戦車などの強力な兵器を用いてようやく死滅させられる程の化け物だ。過大評価かもしれないが、計り知れない戦闘力を持っていることは確かだ。

 口ごもるM4。

 

「あんたの指示で仕方なくここまで連れてきた。だけどあの時は運よく鉄血の方に向かっていたあの危険な力が今度は私達みんなに向かってくるかもしれない。そうなった時、あんたはどうするつもりだったの?」

「うっ……」

 

 AR-15の言葉に何も言い返せないM4。SOPⅡはオロオロしており、M16は黙って事の成り行きを見守っていた。

 ペルシカ自身も男の持つ戦闘力の危険性は不安の一つとしてもっていた。また、この正体不明の男を保護した場合、なにか良からぬトラブルをこちらにもたらす可能性もある。だから男を助けることには消極的だった。

 重くなった空気のなかでペルシカはM4に質問した。

 

「M4」

「は、はい」

「なんでこの男を連れてきたの?何か理由があるんでしょう?」

「えっと……」

 

 たどたどしくもM4は答える。

 

「確かにAR-15の言う通り、この人が危険なのはわかります」

「だったら……」

「でも、あの時この人が動き出して戦ってる姿を見て、私達を助けてくれたって思ったんです」

 

 M4はあの戦いの光景を思い出す。

 

「この人が外に出て、M16姉さんが鉄血の奴らに撃たれそうになった時、まるでかばうように前に出てくれた。そのあと、自分を盾にして戦って、最後は倒れた」

 

 そして倒れる前に男が見せた目。

 

「目を見たとき、不思議と怖くなくて・・変ですけど逆に安心したんです。だから・・この人はきっと信じても大丈夫だと感じました」

「感じた?そんな不明瞭な理由じゃ大丈夫な理由にならないわ、それに人形がそんな直感みたいなもので判断するなんておかしいわよ」

 

 AR-15は突っ込む。

 

「おかしいのはわかってる、それでも安心させてくれたこの人を信じたい、助けたい。でも私じゃなにもできない。だから、ペルシカさんの力が必要なんです、お願いします!」

 

そう言ってM4はペルシカに頭を下げる。

 それを見てペルシカは涙ぐみそうになってしまった。今まで控えめで臆病なM4が任務以外で、強く自分の意志を伝えたのは初めてだったからだ。M4を造ったペルシカは娘の成長を見た親のような心境になっていた。

 ここまで強くお願いされたら断りづらい。それにAR小隊を助けたこの男に恩義を感じるのも確かだ。ペルシカは意を決した。

 

「わかったわ、やれるだけのことはやってみる。ただし期待はしないでよ」

「!……ありがとうございます!!」

 

 顔を上げて喜びの顔を見せたM4は、再び音が出るのではないかという勢いで頭を下げた。

 

「みんなもそれでいい?」

「ペルシカさんがそう決めたなら、何も言わないさ」

「は~い、大丈夫です!」

「……了解」

 

 ペルシカの確認に、それぞれ返事をする。AR-15は不満そうだ。

 それを横で見てたM16がAR-15の肩に手を置いた。

 

「最悪、こいつが暴れたらみんなでここを逃げよう、な~に死ななきゃ問題ないさ」

「そうならないことを祈るわ」

「ごめんなさい、AR-15。みんなのことを心配してるから反対したんだよね」

「謝らないで、M4。もう決まったことだから、これ以上とやかく言わないわ」

「AR-15はなんだかんだ優しいよね~」

「うるさい」

 

 AR小隊の様子を見ながら、ペルシカは指示を出した。

 

「それじゃあ、みんなは修復に行って。あ、M4、コンテナのメモリデータをちょうだい。何か男について手掛かりがないか、解析してみるから」

 

 男についての相談が終わり、解散となった。

 

 

 

 

 

 

 AR小隊を修復に行かせた後、ペルシカの姿は夜深く、日を跨いでなお、研究室にあった。ペルシカの目は血走り、PCのモニターに釘付けだった。

 AR小隊が持ち帰ったコンテナのデータにはセキュリティのロックはおろか、パスワードも設定されていないずさんなものだった。そのおかげで解析はスムーズに行うことができた。問題はその内容、男の正体があまり衝撃的だったからだ。

 “ネクロライズ”

 人間の死体に特別な処置を施し、蘇生と肉体を強化され、不死となった死人兵士。それがこの男の正体だったのだ。

 しかも、驚く事に、ネクロライズの技術は、記録によれば、199X年にすでに実用化され、処置を施されたこの男は、200X年に活動していたらしい。

 最初にこの内容を見た時のペルシカは眩暈のようなものを覚えた。いわばこれは人類の夢である死者の蘇生、そして不老不死の実現だ。

 しかし、この技術の主な目的は死体の再利用による戦力の強化・補充であることは容易に想像できる。命を冒涜する行為、神の領域を犯し、人道に悖る技術。

 

「これを作った連中は相当いかれてるわ」

 

 ポツリとつぶやく。しかし、ペルシカにはこの技術を開発した研究者・技術者をさげずむ思いはなかった。むしろ共感できたからだ。

 ペルシカはネクロライズの開発者に思いを馳せる。恐らく、この技術の開発者は技術の理論化をし、研究を行い、実用可能までの過程のなかで、多くの葛藤があったはずだ。倫理観、善意のタガ、命への罪悪感、自己嫌悪、幾度も自問自答を繰り返したはずだ。

 しかし、作り出した。多くの後悔を胸に秘めながら、好奇心に負け、実現させてしまった。文字通り人でなしとなった。

 ペルシカも、自分も同じ穴の貉だと思っている。ペルシカも好奇心に負け、倫理的に超えてはならない一線を越え、作ってはいけないものを造ってしまったからだ。

 「好奇心」。それは人類にとって進歩を促すと同時に、破滅をも促す劇薬だとペルシカは考える。

 人類が滅亡の危機に瀕することとなった北蘭島事件のきっかけが封鎖された遺跡に侵入した子供達による探検ごっこ、つまりは子供の抑えきれなかった好奇心によるものだろう。

 マンハッタン計画もそうだろう。一部の科学者は、原爆を時の政府によって、使用されることを恐れ、反対する思いを持ちながらも、原爆の開発を止められず、止まれなかった。そして使われた。研究を強制された者もいたかもしれないが、原爆を完成させれば、人類にとって深刻な危機を生み出すことを知りながら、研究・開発を行い、完成したものの効果を見てみたいと思う好奇心を持つ科学者・技術者も一定数いただろう。

 

「くくく……」

 

 ペルシカは思わず笑った。その笑みは今までの歴史の中でろくでもない結果を生み出した人間たちに対して、そして自分に対しての嘲笑だった。

 

「おっと、考え過ぎたかしら」

 

 ペルシカは明後日にいっていた思考を止め、気を取り直す。

 男の正体はわかったところで、データの中身を再度確認する。

 “ネクロライズ”についての概要は書かれていたが、その技術に必要な設備、資材、方法。要するに、死人兵士の製造方法はいくら探してもなかった。すっぽりと抜け落ちていた。

 しかし、反対に死人兵士の制御システムのデータ、また修復と定期的な維持の為の、血液交換の方法について詳しく載っていた。また、保管用に必要な設備の設計図もあった。

 

(恐らく、悪用されることを避ける為に製造データを消した。そして万が一この男が起動した場合の保険の為に、保管方法を残した)

 

 泥水のようなコーヒーを飲みながら、修復カプセルで寝ている男を見る。

 最初こそペルシカは乗り気ではなく、M4にお願いされた故に、この男の治療方法を探していたが、今は違う。

 今は、どんな危険が起こったとしても、この男ーービヨンド・ザ・グレイヴという死人兵士が動いているところを見てみたい。できることなら、話もしてみたい。

 ペルシカは思案する。グレイヴの血液交換方法は、コンテナのデータに詳しくあった。幸いにも自律人形の技術で代用可能なところもある。足りない資材やデータは、またAR小隊に依頼して、コンテナに回収に行かせればいいだろうと考える。

 

「人工血液って使えるのかしら」

 

 懸念の一つを口に出しながら、ペルシカはこれからの事を考えていた。

 




別タイトル「助けてペルえもん」の回。
何か困ったことがあったら、ペルシカにぶん投げていくことになるでしょう。
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