---今日は珍しく主人公が単身で任務に赴く。討伐対象は中型アラガミ2匹。ここ最近新人が続々入ってくる時期であったものだから、なぜ一人での任務なのか関連性を疑ってしまうところであろうが、特に深い理由は無いようだ。戦闘の腕も上達している。神機もそれなりに強化されている。もう中型2匹程度は一人でも苦戦する相手ではない。
「ーー 帰還用のヘリの到着まで少し掛かります。もうしばらくお待ちください。」
アキノからその指示を聞くとその場に脱力したように腰を下ろす。苦戦しなかったとはいえ体はそれなりに疲れていた。すっかり休憩ムードに入ってしまいあまり動きたくなくなる。
その瞬間、背後から聞き覚えのある咆哮が響いた。休まる暇もないとはこのことか。"イーター"だ。奴から恨みを買ってしまったのか、こちらを捕食せんと猛ダッシュで一直線に接近してくる。さきほどの休憩ムードから切り替え神機を強く握り臨戦状態にこちらも入るが、その瞬間主人公にある不安が頭をよぎる。
(前回の戦闘はヴィクトル隊長と二人がかりでやっと退けた。それをいま一人で戦ったらどうなる?)
しかしそんな不安もお構いなしに奴はもう目の前まで来ていた。ここまで来たらもうやるしかないとばかりに、主人公はシールドを構えて一旦防御態勢に入る。だがイーターの全速力の突進はそのシールドと主人公の技量で受け止めることは到底できなかった。自身の体が宙を舞うように吹っ飛ばされる。あの巨体と発達した手足からくるスピードとパワー。その勢いに乗った突進は想像より遥か上の破壊力だった。浮いた体が地に落ちる。その衝撃の痛みに耐えながらも体勢を立て直そうとするが、奴はそのわずかな時間すらも与えなかった。もう既に目の前にいる。口を大きく開き、本能的かつ無慈悲に喰らおうとする。主人公は慌てて手にしていた神機を開いた口の中に突き刺そうと抵抗する。しかしその抵抗もむなしく、神機はその口で噛まれ止められた。そこからイーターはそのまま神機を首で強く引っ張りだす。
主人公の腕から激痛が走る。
たまらず主人公は自分の腕が引きちぎれるその瞬間を悟り、神機を手放してしまった。イーターは自分にとって邪魔な神機を取り除くと、その神機は後ろに放り投げる。そして改めて大きく口を開く。そこにはこちらに恐怖を植え付けるかのように、鋭利な牙が並んでいた。
主人公(!!...)
主人公は、全てが終わるその瞬間を覚悟した。
しかし間一髪のところでロングブレードの神機がその口を阻んだ。黒を基調に金を織り交ぜた、高貴さを感じさせる神機。
ヴィクトル隊長か?いやしかしそこにいたのは、背丈こそヴィクトル隊長とほぼ同じであるが黒い制服に身を包んだ茶金髪の男。
???「大丈夫か!君!」
主人公は頷く。その男がフェンリルの別部隊の神機使いだということは一目で分かる。
主人公(なんで別部隊の人間がこんなところに?)
その男が神機で阻んだは良いものの、それを奴は咥えて振り払った。しかし自分のように神機だけ振り払わたというわけではなく、かといってただ本人ごと振り回されているというわけでもない。振り回されていても体勢を常にキープしながら好機をうかがっていた。イーターがそのまま投げ飛ばそうと口を開けたその瞬間を男は見逃さなかった。投げた勢いを体の回転で受け流し、そのまま裏拳のように口の中を確実に、しかし力強く突き刺した。舌を貫き通した強烈な一撃。さらに間髪入れずその神機を抜き、俊敏な動きでイーターの横へ回り、
???「フゥ...。」
集中して構えた。その瞬間見たことも無いような黒と赤の稲妻が神機の周りを走る。
そのまま目で追えぬスピードにの前ステップで急所の横腹に一撃を与えた。それだけではない。どこからともなく先ほどのステップの軌跡に出現した空気の玉が破裂し、さらに追撃を喰らわせた。
「グオオオオオオアアアアアア!!」
かなり効いたのか、イーターは一目散に逃走していった。
???「なんなんだ、あいつはっ...。」
主人公の絶体絶命の危機はこの男によって助けられた。
???「あのアラガミならもう大丈夫だ。あのダメージではしばらく襲ってくる気にはならないだろうさ。」
そう言って手を差し伸べた。その手を引っ張り立ち上がる。
ジュリウス「俺はブラッド副隊長の、ジュリウス=ヴィスコンティという者だ。よろしく。」
主人公はこくりと頭を浅く下げる。
ジュリウス「俺は任務の為にこの地に赴いていたんだが、...まさか君一人であれと戦っていたのか...?」
主人公は戸惑う。
主人公(さっきの戦闘は一瞬かつ一方的だった。戦っていたと言えるのだろうか。)
ジュリウス「...?」
ジュリウス「...そうか、まあいい。」
話を切り返す。
ジュリウス「いきなり図々しくしてしまってすまないな。でももし君がまたあの状況に立たされるかもしれないと思うとつい...。」
ジュリウスは端末を取り出す。
ジュリウス「もし、何かあったらブラッド...いや、俺に連絡してほしい。連絡さえくれればすぐにでも駆け付ける。」
そう言って端末の通信番号を渡した。その後耳の無線機に手を当てる。
ジュリウス「俺だ。.....ああ。.....いや道中で新種のアラガミに遭遇した。....いや正確にはこのカザフスタンでしか確認されてないものかもしれない。とにかく凄まじいパワーだったんだ。それ以外にも何か 上手く言い表せないが得体のしれないものを感じた。......とにかく俺としてもあれを野放しにするわけにはいかない!ここは俺一人でもっ!............"あれ"がまだ残っていることは分かってる!!だがっ!!」
"あれ"を口にした瞬間ジュリウスの表情や口調が静かだが険しく、熱くなったのが分かった。
ジュリウス「...分かった今すぐ戻る。現地の神機使いの方には申し訳ないが、今はそっちが先決だ。それくらい分かってるっ...!」
無線を切った。
ジュリウス「長話になってしまったな。さっきの連絡の件だがあまり助けには...」
主人公はそれでも全然良いと首を振る。
ジュリウス「...フッ、そうか、ありがとう。出来ればもう少し君と話したいが、俺もすぐに帰還しないといけないんだ。また今度会ったら色々聞かせてくれ。じゃあな。」
ジュリウスはそのまま去っていった。こちらにも迎えのヘリが到着。支部へ帰還した。
あの人がなぜ"ブラッド"を"俺"に言い換えたのか。"あれ"とはなにかいちいち引っ掛かって離れなかった。
翌日、翌々日と普通の任務が続いた。
あちらへの通信も音沙汰は無い。向こうにとっても迷惑であろうから自分からというのは控えていた。しかしその夕方、一通のメールが届く。その内容は
「突然のメール失礼する。実は君に同行をお願いしたい任務があるんだ。その作戦地点はカザフスタンから大分離れたところにあり、ヘリでなければ向かうことは出来ない。一旦夕方にカザフスタンの~~で落ち合おう。これがなんとも不躾なお願いであるのは承知している。だがそれでも、君には必ず来てほしい。勿論、相応以上の報酬は支払うし、道中のアラガミも全て俺が相手をする。だから、頼む。もう頼れるのは君しかいない。」
この文面でよほどのことであろうと察する。あの時の恩返しと手助けの意味も込めて、すぐに出撃の準備をする。幸いにも受付のアキノも、神機管理の職員も不在。不自然なまでに"抜け出す"には容易い状況だった。
しかしながら、神機の扱いや戦闘能力において彼は超一流だ。共闘しても足を引っ張らないようにするのが精一杯。となると手伝いと言うのはなんのことだろうか。
そんな疑念を持ちつつも主人公は集合場所に赴いた。
そこには既にヘリが着陸している。後部席にはジュリウス一人。その顔はこの前と比べて暗く、どこか儚さを感じさせる表情をしていた。後部席に乗りこむとローター音を響かせ目的地の方角へと飛ぶ。
ジュリウス「そうだ、目的地を言い忘れていたな。今から向かう先は、"聖域"と呼ばれる場所だ。」
暗い表情のままジュリウスが口を開く。
主人公(聖域。話にだけは聞いたことがある名前だ。1年前になんらかのいざこざがあり、その果てにできた場所らしい。しかしその成り行きなど、詳細は当事者のみが知っている。)
ジュリウス「いや、正確にはもともと聖域"だった場所"。...いまはその名前で呼べるほど、綺麗なところじゃない。」
ジュリウス「すまん、君にはちゃんと説明しておくべきだった。順を追って説明するよ。」
ジュリウス「終末捕食という存在を知っているか。この話をするにあたって、まずこの存在を知っておかないことには始まらないくらい、重要な存在だ。」
ジュリウス「"この世界"にとっても。」
ジュリウス「終末捕食というのは、アラガミがこの地球上の生物全てを喰らいつくし初期化された後、生命を再分配するという人類の終末理論だ。それを起こすには特異点と呼ばれる特殊なコアをスイッチとして、濃度の限りなく高いオラクル細胞に触れさせて起動する必要がある。」
ジュリウス「理論と言っても実際、それが過去に"起こった"のだから、もう単なる理論とは呼べないだろうが。再分配というが、言い方がどうであれそれは、人類の滅亡に他ならない。だが1年前俺はとある方法で、その終末捕食を起こす為に利用されていたんだ。」
ジュリウス「しかしそれを起こす既のところで、俺の所属する部隊、ブラッドによって阻止された。一度起動した終末捕食は、何か特別な"例外"が無い限り止めることは出来ないんだ。では一体どうやって止めたのか。」
ジュリウス「それは起動した終末捕食に対して、もう一つの終末捕食を生み出し、互いをぶつけて相殺し合うというやり方を実践したんだ。いや、相殺とはちょっと違う。これによって二つの終末捕食は世界から隔離され閉ざされたその内側で、永遠に互いを喰らい続けるという反応になったから。完全に止めたことにはなってないんだ。」
ジュリウス「そしてその閉ざされた内側というのが螺旋の樹という場所。だから俺は、螺旋の樹の中で無限に生まれるアラガミと、無限に戦い続けた。だがこれで人類の危機が永久的に免れると思えば、それも苦じゃなかった。だがその時間は、長くは続かなかった。」
ジュリウス「そんなある日ブラッドに、リヴィと言う少女が接触してきた。彼女はブラッドに助太刀する応援、そして俺を救助する為のカギだったんだ。解決の糸口が見えるや否や、ブラッドは螺旋の樹へ突入作戦を開始した。でも途中まで順調だったその作戦は、突如として困難なものとなったんだ。」
ジュリウス「元々俺を利用して終末捕食を起こさんと画策していたのは、"ラケル博士"という人物だ。彼女はその野望を果たす為、最終的には終末捕食の生贄となって死亡した。...しかし彼女は"保険"を掛けていたんだ。事前に用意した、彼女の肉体を再び生成させる装置。さらに部下であった研究員の色情を利用し、装置の運び屋として操る手筈も整えていた。しかも彼女の肉体は確実に死んだはずなのに、なぜか意識だけはこの世に存在していた。その非常策は、こちらも感心してしまうほど一寸の狂いもなくすべて上手くいった。その結果、彼女の肉体は完全に復活を果たし、再び終末捕食を起こす一歩手前まで進めた。だがそれも、ブラッドによって再び打ち砕かれたんだ。俺を取り巻いていた終末捕食の力も同時に解決した。ブラッドの、まさに奇跡とも呼べる力によって、俺から離れて独立して物となり、活性化しない極限まで緩やかな状態へと変わった。もうあと数百年は起きないと言えるまでにな。それに伴い螺旋の樹も崩壊、残った緑豊かな大地こそ、"聖域"なんだ。」
.....
ジュリウス「フフッ、ちょっと話が長すぎたか?」
ハッ
と顔を上げる。主人公は話の途中でうとうとしてしまっていた。
しかしジュリウスは少し微笑み、
ジュリウス「いいんだ。続きはまた後で話す。目的地までもう少し時間はあるし、そのまま寝て構わない。」
ジュリウスの言う通り少し眠ることにした。
ジュリウス「おい、目的地だぞ。」
そう言われて目を開ける。
ヘリから真下を見ると、カザフスタンとあまり変わり映えしないような荒野が広がる。
正面に何か見える。
既に10数km先の距離ではあるがその存在感故に目視は出来た。
白い特異な形状の巨大な樹に覆囲われたフィールド。
主人公(あれが聖域か...。)
主人公(...本当に聖域なのかあれ?)
ジュリウスの聖域だった場所という表現は正にその通り。一見白い樹に囲われて綺麗なイメージを持つが、その囲いの中を覗いてみればどうだ、聖域という名前が嫌味に聞こえてしまうほどそこは荒れ果て、草木一本も生えないような大地が広がっている。それだけじゃない、さらにその中から一匹の咆哮が聞こえる。たった一匹...遠すぎて朧気にしか見えないが、黒い大型のアラガミが確かな存在感を放ってそこにいる。
主人公(まさかいつぞやに言っていた"あれ"とは...!)
ジュリウスもさっきまでとは目の色が変わる。
ジュリウス「降下するぞ!戦闘準備!」
まだ聖域まで距離があるにもかかわらず降下の指示が入った。その理由を問うまでも無くジュリウスが答える。
ジュリウス「これ以上近づいたらあのアラガミの攻撃に晒される!ここからは徒歩で行くしかない!大丈夫だ、道中のアラガミなら俺がやる!」
確かに地上からの侵入であれば、あの樹の囲いが死角となって攻撃を受けない。言われるがまま降下し、聖域への"突入作戦"を開始した。
道中までの戦闘では言葉通りほとんどのアラガミをジュリウスがすべて受け持った。主人公は安全な後方から援護に徹するだけで良い。ただそれには絶対に生き残らなければならないという前提がある。聖域に辿り着く前に戦闘不能やKIAにでもなれば元も子もない。自分の身を最優先に考え聖域までひたすら進む。ジュリウスのお陰で意識することもなく済んでいるが、ここら辺のアラガミの強さは今まで戦ってきたそれとは数段格上だった。小型、中型の群れだろうが1匹1匹が確かな戦闘力を持っている。そうなるとついジュリウスの方を心配してしまうが、本人は息一つ切らしていない。それは神機の高い性能のお陰でもあると言えばあるが、一番の理由はやはりジュリウス本人の実力に他ならない。これまで同じ状況、いやそれ以上の過酷な戦いをを幾度となく経験したかのように、慣れた剣捌きで倒し続けていく。
その戦況を維持したまま聖域まで1kmも無い距離まで近づいていた。
主人公は言われずとも分かっていたことだが、聖域での任務というのはあのアラガミを討伐することだ。だがあのアラガミとの戦闘はとてつもない死闘になる。それはジュリウスと共闘する前提の上でだ。あの存在感はそこまで感じさせるのだ。だがその覚悟はとうに出来ていた。だが、ジュリウスにはその前に聞きたい疑問は山ほどあった。
聖域はもう目と鼻の先。ジュリウスはここへ来てすべてを話す。
ジュリウス「そうだ、あの話の続き。...まだ一番大事なところを話していなかったな。」
ジュリウス「聖域がまるで別物のように荒れ果ててしまったわけ、あのアラガミの存在、そしてほぼ初対面だった君に対して手伝ってくれとお願いした理由。君がこの危険な任務を承諾してくれた以上、その全てを聞く権利はある。」
ジュリウス「全ては、...3か月前の出来事から始まったんだ。」
ジュリウス「俺を命がけで救ってくれた、リヴィと言う少女の話を覚えてるか?彼女は、ありとあらゆる神機に適合できる特異体質の持ち主なんだ。だがその反面、適合の副作用によって肉体には凄まじい負荷がかかってしまう。いや、負荷がかかるなんてかわいいものじゃない。別の神機を無理やり使うたび、彼女の寿命は少しずつだがすり減っていく。彼女が俺を救ってくれたのは、そのことも承知の上でだった。いや、俺の救助任務を遂行するずっと前から、肉体を酷使してまで数々の任務をこなしてきたんだ。その寿命をどこまで削っていったのか、彼女自身も覚えてないだろう。だがその原因である余分な偏食因子も、俺を救助した時のある力によって解放されたんだ。もう不安も任務へのしがらみも無い。これからはブラッドの一員として幸せな毎日を送れる。そうして実際そんな日々を送ることが出来た。こんな日々がずっと続くと良いなと、誰もがそう思ってたよ。」
ジュリウス「だが現実はそんなに甘いものじゃなかった。」
----ジュリウス救出作戦成功から8カ月後.....
いつも通り、アラガミ討伐の任務を遂行したブラッド。
終末捕食の問題が完全に解決された今、それからのブラッド一行は純粋にゴッドイーターと言う一種の"職業"として、何の危機感も無くアラガミを次々に討伐していった。任務をこなし、くだらない話をしながら極東支部へ帰還し、ご飯を食べて、各々好きなことをして寝る。ときどき聖域で農業もこなして。命を懸けているとは思えない、そんな安定した日常が続いていた。やがてそれが自分たちにとって"普通"であると思えてしまうくらいに。
任務の帰り道、いつものように駄弁っているとリヴィの体調が悪そうな様子が窺えた。
ジュリウス「! 大丈夫か。」
リヴィ「うん、ちょっと体調が悪くてさ。」
ナナ 「リヴィさん大丈夫?」
リヴィ「ああ、大したことは無いが、ちょっと肩を貸してもらえるか?」
ロミオ「おいおい大丈夫かよ」
リヴィ「だから大丈夫だ。心配することじゃない」
肩を借りて帰還用の車両に乗り込むリヴィ。
シエル「その症状だとただの風邪のようですね。しばらく任務は休んで寝ていた方が良いかと。」
ギル 「ああ。風邪だったらそれが一番いい。変に動かれて皆に移りでもしたら結構困るからな。」
そんな話をしながら支部へ帰還。リヴィは自室で寝ることにした。
しばらく経ち、自室のドアから呼び声が聞こえた。
ジュリウス「リヴィ、入るぞ。」
ドアを開ける。
ジュリ「ウスもうご飯の時間なんだが、食べれそうか?」
リヴィ「いや....」
と首を振る。
ジュリウス「ならおかゆとかはどうだ?」
リヴィ「いや、今はあんまり食欲が湧かないんだ。」
ジュリウス「そうか。何か食べたくなったらいつでも言ってくれよ。」
ロミオ「そうだぞリヴィ!」
ジュリウス「!!」
開いた扉からみんながひょこっと体を出す。
ロミオ「何かあったら遠慮しないでいつでも言えよ!俺の場合、寝てる時でもトイレしてる時でも風呂入ってる時でも大丈夫だからな!」
ギル 「なかなか頼れること言うじゃねえか。」
ロミオ「いや、これ笑って欲しいとこ...なんだけど。」
ギル 「おいおい冗談で言ったのかよ。せっかくお前に男気が芽生えたと思ったのに。」
シエル「あの、ジュリウスさん。前に栽培を始めたパセリが、もう頃合いだそうです。明日収穫に行きましょう。」
ジュリウス「ああ。」
ジュリウス「それじゃあな、リヴィ。元気になったらパセリを使ったカレーでもみんなで作ろう。」
リヴィ「うん。」
ジュリウスがみんなの方向に立ち去る。
ナナ 「カレーにパセリって王道だよね!洋風って感じ。」
ジュリウス「そうなのか、知らなかった。」
ロミオ「そういえばなあジュリウス!さっき俺が後ろから話しかけた時ビックリしてたろ!」
ジュリウス「い、いや、あれは」
ギル 「確かにあの反応はちょっと面白かったよな。」
ロミオ「だよな!いやーギルも最近俺と気が合うようになってきて嬉しいよ」
ギル 「お前が色々振り回すからだろう!?」
そんな話をしながらみんなで食堂へ向かっていく。ジュリウスもその話に笑みを浮かべながら、次の聖域での栽培計画に期待を膨らませていた。
ふと、なにか違和感を感じリヴィの部屋の方を振り返る。
ジュリウス(...風邪か。だが風邪にしては症状が重、いやただの心配し過ぎか。)
ジュリウス(リヴィは心身ともに強い人間だ。例え風邪より重い病気だったとしても、また乗り越えてくれるだろう。)
そう思いながら前を向いた。
それから次の日、また次の日と、前日まで予想もしていなかった任務の量と栽培していた野菜の収穫が重なり、みんな2日ともくたくたの様子だった。リヴィに顔を合わせる暇も体力も無かった。また、そうでなくとも極東支部の誰かしらが見舞いに行っていたから。
翌日、もう治っている頃だろうとジュリウスがリヴィを訪ねに来た時、すでに自室にはいなかった。
ジュリウス(もう寝込む必要も無いくらい元気になったのか)
ジュリウス(いや、まさか.....!!)
なぜか思考が焦りだした。自分が想像していた最悪のケース、もしかしたらその現実を眼前に突き付けられる寸前のとこまで来ている。そんな気がしてならなかった。冷や汗と寒気がする。ジュリウスは誰に言われるでもなく医務室の方へ真っ先に走り出した。
ジュリウスに芽生えた予感というのは、言い換えれば二つの可能性だ。
一つは、ジュリウスの願い通り体調が良くなり、もう自室で寝込む必要が無くなったということ。
もう一つは、リヴィがもう手の打ちようが無いくらいの状態にまで陥っていること。それはつまり残り少ない寿命の限界、死がもうすぐそこまで来ているということ。
リヴィは血の力によって偏食因子の影響や身体的負担からはとっくに解放されたはずだ。後者の可能性なんて考えたくも無かった。だがもし、本当に死ぬ間際にいたとしたら、せめて最後に言葉を交わすくらいのことはさせて欲しかったのだ。
ジュリウス(もしこれが単なる思い違いだったら...、医務室のドアを強く開けたところでその中に誰もいなかったとしたらっ...、その時はそれをいくらでも笑い話にしてくれればいい!だからっ、死なないでくれ...!)
そんな思いを走らせながら、医務室が目前のところまで来ていた。そのまま勢いに任せてバァンとドアを強く開ける。
ジュリウス「ハァ....!」
ジュリウス「!!」
そこに待っていたのは紛れもなく、受け入れたくない方の現実だった。
ベッドの上で横たわっているリヴィと、付き添いの医者が数人。
リヴィの容態は酷く悪化していた。死んでいなかった、というのが唯一の救いか。だが依然として酷な状況であることには変わりなかった。室内に響く強い音を立ててドアを開けたというのに、医者の誰一人としてそれを不思議に思わなかったというくらいには。
ジュリ「リヴィッ!!」
ベッドに駆け寄る。リヴィの意識は無かった。
医者 「ジュリウスさんですよね!とりあえず落ち着いてください!説明なら別室でしますので!そこでブラッドの皆さんもお待ちしております!」
ジュリ「!? なに?」
別の診察室に移動したジュリウス。そこにはブラッドの全員が神妙な面持ちで椅子に座っていた。医者が画像を用いて説明する。
医者 「リヴィさんの容態はさっき見た通り、凄く危険な状態にあります。見た目だけでは分かりませんが、生命活動を維持するのもやっとなくらいに体が弱り切っているのです。」
医者「その原因は彼女の特異体質によるもの。もっと言えばそれを酷使し過ぎた結果です。」
ギル「ああ、彼女は任務中に他人の神機を扱ったりしたのがしょっちゅうあった。俺らと出会うより前にも、そんなことを何度もやり続けていたという話は聞いている。余分に取り込まれた偏食因子のせいで寿命が縮む一方だとな。」
ロミオ「ああ。で、でも!俺の「血の力」で今まで溜め込んできた偏食因子も全部消えたんじゃなかったのか!?てことは寿命の話もそれで解決出来たってことだよな!?」
医者「私たちもいままでそう思ってました。確かに体内の過剰な偏食因子が全て消え去ったことで、これ以上は寿命が削れるような心配は無くなりました。ですが失われた寿命までは元に戻らなかったんです。」
ロミオ「じゃあリヴィは!?」
医者「"来るべき時"が、来ようとしています。もってあと1週間...。」
シエル「嘘でしょ...。」
ロミオ「.......。」
ガタッ
ロミオ「ふざけるなよあんたあ!!」
ギル「ロミオ!」
ロミオは椅子から立ち上がり医師につかみかかろうとする。それをギルたちがなんとか抑えつける。
ロミオ「リヴィにこのまま死ねってのか!?医者だったらなんとか出来ねえのかよ!!」
ギル「おいロミオ!!お前だって薄々気づいてたろ!!」
ロミオ「何が!?」
ギル「体が普通の人間に戻ったところで、寿命が元通りになることにはならないってことはよ!!」
ロミオ「うるせえよ!!知った風なこと言ってんじゃねえよ!!」
ギル「俺だって同じだ!そうだと気づいていながら、心のどこかでそれを受け入れられなかった!!」
ロミオ「!!」
ギル「だから俺は今まで逃げてたんだよ!こうして言われるまで向き合うことができなかった!!頭の中で無かったことにしてな!!そうして毎日楽しい日々を送ってたんだよ!!」
ロミオ「......っ!」
ギル「ハア...もう現実に向き合うときなんだよロミオ...!このまま逃げても現実は変わりはしねえ。」
ロミオ「.........っ。」
数時間後の夕食。ブラッドの誰一人として料理の半分も食べられなかった。飯が喉を通らない。
ナナ「ごちそうさま...。」
ジュリウス「ああ...。」
ナナ「みんな、あのね。」
シエル「ん?」
ナナ「さっき、ギルが現実と向き合えって言ってたでしょ。」
ナナ「でも私、どう向き合ったらいいか分かんなくってさ。」
ギル「実は俺もそうだ。具体的にこれからどうしたらいいかまだはっきりしない。」
ナナ「うん。でも私思ったんだ。リヴィさんをこんな空気のまま死なせたくないって。」
ロミオ「え?」
ナナ「だってそうでしょ?みんな暗い顔してたら、リヴィさんも罪悪感が湧くと思うよ。せめてリヴィさんに最期まで明るい気持ちのまま天国まで送ってあげようよ。」
ロミオ「うん....まあ...。」
ロミオ「でも、どうやって?」
ナナ「それはまだ思いついてないけど。」
ジュリウス「?...ちょっと待ってくれ、電話だ」
電話番号の主は、アイザック・フェルドマン局長。彼とリヴィの関係は特別なものだ。リヴィは彼を実の父親のように慕い、彼はリヴィを実の娘のように愛した。
ジュリウス「フェルドマン局長。実はリヴィさんの容態が...ええ、もうご存じなんですね。」
ジュリウス「でしたら最期までリヴィに付き添ってあげては下さらないでしょうか。リヴィもその方が....、え?どうしてです?」
ジュリウス「そんな、せめて一回でも時間を縫って会ってはくれませんか。...ええ、ありがとうございます。...ところで局長、今どこにいるんですか?...え?、ええ、では。」
通話を切る。
ギル「局長はなんて?」
ジュリウス「リヴィの寿命のことで連絡してきた。向こうは全て知っているようだった。しかしこっちに向かう時間がまるでないほど忙しいらしい。電話越しでもやけに騒がしかった。俺がどこにいるのかと聞いても答えてくれなかった。」
ロミオ「それでも一応一回は会ってくれるんだろ?リヴィに。」
ジュリウス「ああ、一回。それもほんの十数分だけだ。」
シエル「なんで...。」
ジュリウス「わからん。だが局長もリヴィを温かく送ってやれと言っていた。それはリヴィ自身の願いでもあると。」
ロミオ「リヴィが?」
ジュリウス「ああ、数日前、俺たちがあの容態を風邪だと判断していたあの日、本人だけは気づいていたらしい。死ぬ前にせめて、うんと楽しく過ごしたいと、局長に話していた。」
ギル「そうなのか....フッ」
シエル「ギル?」
ギル「なら尚更、落ち込んでなんていられねえな。」
ロミオ「ああ、最後まで楽しい気分にさせてあげようぜ!」
ナナ「そうだね。」
ナナ「で、みんな何か思いつかないかな?ゲームでも、遊びでも、パーティーでもなんでもいいからさ。」
ジュリウス「パーティー...?」
ナナ「ジュリウス?」
ジュリウス「みんなでカレーを作る約束がまだ残ってたことを思い出してな。」
ナナ「じゃあそれで決まりじゃん!」
ロミオ「じゃあさっそくリヴィを...て今日のあの感じだと無理か。」
ギル「今日が無理でも、リヴィの体調が良いときにやればいい。」
ジュリウス「そんな日が、あるんだろうか。」
ギル「暗くなっちゃ駄目って言ったろ。大丈夫、そんな日はリヴィが生きてる間に必ず来る。俺らはとにかく信じ続けるぜ。」
ジュリウス「ああ、そうだな。」
それからブラッドのみんなでカレーパーティーの準備をした。いつ何時でもすぐにでも始められるように。
それから一日、二日、三日とリヴィが目を覚まさないまま時だけ過ぎていった。だがブラッドは、リヴィがこのまま目を覚まさないんじゃないかとは決して思わなかった。その日をただ信じて待ち続けた。
1週間後、リヴィが目を覚ましたとの連絡を受け、ジュリウスたちは医務室へと向かった。
扉を開けようとしたそのとき、向こうから扉が開いた。その先にはリヴィが立っていた。目の前の彼女は、もって今日で死ぬのだということが嘘に感じられるくらいに、ピンピンしていた。
ロミオ「リヴィ...」
リヴィ「それじゃ行こうか。」
ジュリウス「あ、ああ。」
あまりにもいつもと変わらない様子に少し動揺する。だが今はそれを気にする時ではない。
そのまま聖域へと直行した。リヴィはその間にも普段通り、みんなと楽しそうに話し、笑顔を浮かべている。
聖域に着くと、すぐさまパーティーが始まった。ブラッドたちに、リヴィがもうすぐ死ぬのだという不安や悲しみや焦りなど無い。ただいつも通りに、いやいつも以上に楽しい時間を過ごした。もうメインのカレー作りも終わり、ゲームもやり尽くし、パーティーの行事としては完全に終わりを迎えようとしていた。だがもちろんブラッドのみんなは、これを終わらせる気なんて無い。パーティーが終わろうと、リヴィが死ぬその時までずっと遊んでいたかった。だが"来るべき時"はやってくる。
ガタッ
リヴィ「.....!」
力が抜け落ちたかのように倒れる
ロミオ「リヴィ!!」
すかさずロミオがその体を支えた。
ジュリウス「....っ。リヴィい....!」
リヴィ「ハァ...大丈夫だよ皆、そんなに悲しまなくても...。」
リヴィ「私ね、今日一日凄く楽しかった...。ううん、今日だけじゃないね...。いままでブラッドと過ごした日々は...ハァ...毎日が楽しかった...。」
リヴィ「私の願い、叶えてくれてありがとね...。」
ロミオ「うぅ...っ、おい!まだ死ぬなよ!死ぬんじゃねえよ!!」
リヴィ「ロミオ....。」
ロミオ「こんな....こんな最期は.....。」
ブラッドのいままでの笑顔とは一変、皆その表情は悲しみへと変わった。
リヴィ「みんな...そんな顔しないでくれよ...。」
リヴィ「みんなが明るくいるのは....ハァ...最期まで、でしょ?」
リヴィ「最後までみんな笑顔のままでいよ?ほら、ニーって。」
ジュリウス「........っ。ああ...!」
みんなで笑顔になる。作り笑いだろうとなんだろうと、笑顔のままでいたら気持ちも明るくなった。そんな中ロミオが口を開く。
ロミオ「リヴィ!」
ロミオ「...今まで、ありがとう!」
リヴィ「うん!」
リヴィは笑顔でそう答えた。答えて、そして力尽きた。
リヴィの体を抱えたまま座り込む。しばらくの静寂が訪れる。静寂の中、鳥の声だけが響く。みんな始めは泣かない。例えば創りもののように、死んだ直後からわんわん泣くようなことは無い。ただ、誰も一言も発さない静寂が訪れた。だがその静寂は、いま何を失ったかを強く実感させる。逃れようのない現実に、悲しみが涙となってこみ上がる。そうしてみんな泣いた。涙を抑えられなかった。ジュリウスとギルは格好つけて涙を必死に抑えようとした。だが溢れ出る涙を抑えきれず、後ろを向いて泣くしかなかった。
死んだと思われていた仲間が復活し、誰一人として失わずにみんな幸せにゴッドイーターとして戦い続ける。そんな都合の良いおとぎ話は終わったのだ。
---------------------
主人公(.....)
ジュリウス「でも、これで終わりじゃなかった。」
主人公(...?)
ジュリウス「俺たちはあの後、リヴィの死体を聖域に埋葬した。」
ジュリウス「生命の象徴である聖域こそ、リヴィの墓に相応しいとみんな考えた。誰一人として反対する者はいなかった。」
ジュリウス「だがそれが"一番まずかったんだ"。」
ジュリウス「ゴッドイーターというのは、死亡すると偏食因子がしばらく体に残るらしい。極まれにそれでアラガミとなる者もいる。でもリヴィは違う。もし死亡しても、少なくともアラガミにはならないことは保証されていた。だがな...。」
ジュリウス「どんな偏食因子でも適合する人間の死体を、終末捕食が進み続ける聖域に埋めた。これは、前例のない例外だらけのことをしてしまったということなんだ。そしてこれが何を引き起こすか。当時の俺たちには想像すら出来なかった。」
ジュリウス「リヴィから消え去った過剰な偏食因子。あれは全部消え去ったわけじゃなかった。リヴィが生きるにあたっては全く影響がないほどの量は残ってたんだ。しかもその種自体はほとんど数を減らしていない。一種当たりの偏食因子の量を最小限まで減らし、コールドスリープのように細胞活動を停止させ生き延びていた。それが聖域の余りある生命力によって、2か月半と言う歳月をかけてリヴィの肉体の中で数を取り戻した。」
ジュリウス「そうした大量の偏食因子が集まりだし、一気に融合しだした。そうして未知の物質が生まれてしまった。」
ジュリウス「それは偏食因子とは全く違う別の何か。だがその物質の反応には見覚えがあった。」
ジュリウス「特異点。これに"似ていた"。」
主人公(特異点...。)
ジュリウス「研究者もさすがに驚いていた。さらにこの物質に対して彼らはこう言っていた。」
ジュリウス「これを分かりやすく言うならば"特異点として成長する初期段階のコア"だと。」
ジュリウス「それがどうやって成長するのかは知らん。だがもし成長を遂げれば特異点そのものになるだろう。研究者たちはこれを細胞分裂になぞらえて、"特異点の欠片"と名付けた。」
ジュリウス「リヴィの体の中に誕生してしまった特異点の欠片。今までどんな偏食因子も無力化し、アラガミが一切生み出されないと言われた聖域でさえ、これだけは例外だった。」
ジュリウス「特異点の欠片はリヴィの体に自発的な反応を起こした。その力でリヴィを蘇らせたんだ。」
ジュリウス「凶暴なアラガミとして。」
主人公「....。」
ジュリウス「2週間前、その情報はすぐに俺らに伝達された。みんな戸惑いや悲しみに暮れたまま、任務に駆り出した。あの聖域に。」
ジュリウス「偏食因子がほとんど空になった聖域は生命力を失い、荒れ果てていた。もう聖域とはとても呼べない場所に、彼女はいた。俺らを見るなり、アラガミの本能をむき出しにして襲い掛かってきた。」
ジュリウス「彼女は強かった。だが勝てない相手じゃない。ブラッド全員で本気になれば勝てるはずだった。」
ジュリウス「でも誰一人として本気になれなかった。」
ジュリウスの語気が強まっていく。
ジュリウス「みんな躊躇ったんだ...!目の前で戦ってるのはアラガミなんかじゃない...!紛れもないリヴィそのものなんだ!アラガミを討伐するんじゃない、リヴィを殺そうとしてるんだ!」
ジュリウス「俺やロミオが蘇ったときとは全く違う状況だった...!リヴィはもう...なんの救いにもならないアラガミとして生まれ変わったんだ。」
ジュリウス「みんな任務中はずっと肩に力が入らなかった。攻撃を躊躇った。当然だ!一度死んだ仲間を、今度は直接殺すなんて...。折角生き返ったというのに、一体何の皮肉なんだ!あんな形になるなら、あのまま眠ってくれたほうがまだ!」
主人公(あのまま生き返らないほうがまだよかったんだろう。)
ジュリウス「本気で向かうべきアラガミに対して実力の半分も出せなかった。その結果ブラッドは全滅。みんな一命こそとりとめたがいつ目を覚ますか分からない。ロミオの神機に至っては聖域に落として、そのままだ。」
ジュリウス「俺は幸運にも軽傷で済んだ。だが依然討伐任務は保留されたままだ。一人にしろ彼女は倒さなければならない。」
ジュリウス「ただ俺らが全滅したあの後も、どういうわけか彼女は聖域の外に出ようとしない。ただ聖域に近づいてくる人間を片っ端から攻撃してはいるが。」
ジュリウス「これはただの俺の思い込みかもしれないが、あれは彼女の意志がアラガミをあの場所に留めてるんだ。人間を喰らい尽くさんとするアラガミの本能に何とか逆らって。だがそれももう猶予が無い。情報ではあと3日ほどで外に飛び出してしまうと言われてる。」
ジュリウス「本当にあれが彼女の意志なら、これだけ苦しいことは無いはずだ...!彼女の意識が確かにある中で、アラガミの体で人間を殺し続ける。その光景、人間を傷つけ殺す感触、周囲から向けられる憎悪の目。それらは全て彼女の意識に刻みこまれていく。その本能を抑え続ける苦しみに耐えながら...。」
主人公(...。)
主人公(あれがリヴィの人間としての意志...。あながち思い込みでは無いのかもしれない。)
ジュリウス「俺たちが彼女を殺すのを躊躇ったのにはもう一つ理由があった。みんな、リヴィがアラガミになっておきながら、それでもまた人間に戻ってくれると心の奥で信じてたんだ。俺やロミオが生き返ったあの奇跡が、彼女にも起こるはずだと...。」
ジュリウス「だがそんなのはもうどこにも存在しない。だから俺がやるしかないんだ。もうアラガミとしての危険かどうかなんて問題じゃない。彼女を楽にさせるために...!」
主人公(そういうことだったのか。今までずっと疑問だったあのアラガミ、聖域のことは全て合点がいった。)
主人公(でもまだ...)
ジュリウス「そうだ、まだお前に頼んだ訳を話していなかった。」
ジュリウス「ブラッドが全滅した今でも、頼れる仲間は何人もいた。だが彼らもリヴィとの付き合いが長かった以上、同行には相当消極的だった。幸か不幸か、仲間の中にアラガミとなってしまった人間を躊躇なく殺せるような非情な人間は、誰一人としていなかったわけだ。そうなればもうリヴィと全く面識のない人物に頼むしかない。俺にそこまでのツテは無かった。フェンリル本部に直接頼み込むという手もあった。だがそうした日には、奴らはリヴィを組織的に、残酷に殺すだろう。」
ジュリウス「だから、また別の誰かが必要だったんだ。戦闘に加勢して戦ってくれなくてもいい。ただ、いざまた躊躇ったときに背中を押してくれる誰かを探してたんだ。」
主人公(...)
ジュリウス「改めて頼む...、リヴィを倒すのに...、協力してほしい...!」
そう言って深々と頭を下げた。
もうブラッド副隊長としての面子もへったくれも無い。
だが彼は自身の全てをかなぐり捨ててでもリヴィを助けることを優先する。
今までのクールさに秘めた熱い思いは溢れるほど伝わってきた。
当然とばかりに主人公はコクっと頷く。
ここから先の聖域。今まで主人公にとっては凶暴でおっかないアラガミとの命懸けの戦いとしか思っていなかった。だがジュリウスにとっては夢想との決別。そしてもう一度現実と向き合うための意味合いがあった。始めから戦うベクトルがまるで違っていたのだ。
聖域を一切の隙間なく囲んでいる樹々の中に、唯一人が入れるほどの隙間があった。そこが入り口。
ジュリウス「...行くぞ。」
中に入る。そこに広がっていたのは、草木一本も生えない見慣れた大地。そしてヘリの上からは見えなかったが倒壊したログハウス、農業を効率化させるのであろう機械も破壊された状態で散乱している。
そして正面にはやはり、
ジュリウス「君は下がってろ!援護を頼む。」
主人公はスナイパー神機の銃身を持ち出していた。この任務に呼び出したあのメールに、あらかじめそれを持って来いと書かれていた。
終末捕食を二度も止めたといわれているブラッドでさえも全力を出さなければ全滅するような相手。今の神機ではまず歯が立たない。それに実力的にもすぐに殺されるのがオチだ。その中でできることは、後方から射撃し細かなダメージを与えていくしかないということだ。
位置に着くと、ジュリウスは構え、目の前のアラガミをその目で睨みつけた。
ジュリウス「.....。」
ジュリウス「...せああああぁあああ!!!」
大きく掛け声を出し自分を鼓舞する。そうしながら真っ直ぐ走り、向かっていった。戦いは始まったのだ。
ジュリウスが前で近接戦に持ち込み、主人公は後方から狙撃する。
彼の躊躇いは完全に振り切れたようで、洗練された剣捌きと運動能力を遺憾なく発揮している。さらに前にも見た超人的な技を連発。これこそが彼の本気中の本気なのだ。しかも本気なのは実力だけではない。主人公のスナイパー神機のスコープ越しから見ても伝わるその気迫。これ以上ない覚悟と決意を感じる。怖いくらいに。
勿論主人公も負けじと弾を撃つ。全神経を集中して撃ち続ける。もし一瞬でも気を抜ければ、二人ともここで殺されるだろう。
あのアラガミの属性は、見た限り炎でも氷でも雷でもない。神属性だ。
光のような赤いエネルギーを変幻自在に操り遠距離攻撃を仕掛ける。
幸いにもアラガミの意識は今のところジュリウスに向いている。遠くの主人公に対しては相手にしないようだ。だが。
ジュリウス「来るぞ!」
主人公(!)
エネルギーによるブレス攻撃が真っ先に向かってくる。すかさず横転でかわした。
反撃しないものだと思って油断すれば一気に死に近づく。一瞬たりとも気が抜けない。そんな戦いが10分ほど続いた。
そうした死闘の末、アラガミは遂に地に伏せる。
だがまだ終わっていない。まだ生きている。弱点の腹部をその神機で全力で貫いて初めて決着がつく。
ジュリウスはアラガミのその弱点の前に立ち、剣で上から突き刺すようにその腕を上げる。あとはその神機を下に振り下ろすだけだ。今の彼なら何の躊躇いもなくできるだろう。
主人公(あとは躊躇いなく突き刺すだけ。背中を押すまでも無いだろう。)
カタカタカタッ
主人公(!?)
彼の手が震えている。あと一突き、あと1度だけその神機を振り下ろせばすべてを終わらせられるのに、それが出来ない。表情は悲しみに暮れている。さっきまでの気迫は見る影も無い。
主人公の声は距離も相まって届かない。すかさず彼のもとへにダッシュで向かおうとするその瞬間。
アラガミの腕が彼のその体を薙ぎ払い吹っ飛ばした。薙ぎ払ったというより全力で殴られたようなものだ。それをもろに食らい地面に倒れこむ。神機は手から離れ、そのまま彼の手の届かないところまで飛んでいった。
さっきの戦いで満身創痍に近い状態のジュリウスにこのダメージは酷く堪える。動けない。
アラガミは起き上がりトドメを刺しに行く。さっきのダウンは瀕死状態によるものでは無く、ただ一時的な行動不能状態に陥っていただけだったのだ。
しかしジュリウスに近づいたところでアラガミの目線は主人公の方に向いた。彼よりもそっちのほうを優先したのだ。
ジュリウス「逃.....げろ...。」
ここまで来てジュリウスを見捨てて逃げるという選択に、主人公は動揺する。
ジュリウス「お前のその神機じゃ奴に太刀打ちできない!逃げろ!」
背に腹は変えられないとばかりに、真っ直ぐさっき通った穴に向かって走る。しかし逃げるという選択はあのアラガミが許さなかった。
真っ先にあのブレスを弧を描くように
それをかろうじてダイブでかわしたが、退路は断たれてしまった。絶体絶命という言葉がこれほど似合うものもないくらい、絶望だらけの状況だった。
主人公(!!)
顔を上げるとその目と鼻の先に、神機が大地に突き刺さっていた。主人公のものでもジュリウスのものでもない。黒を基調にオレンジの刃を持ったバスターブレード。話に聞いたのが正しければこれはロミオのものだ。
ジュリウスから見れば、ただロミオの神機の前に倒れてしまったとしか思えない。まさかそれを使おうなどとは思ってもみない。
他人の神機を使うことは神機使いにとってタブーだからだ。それをすれば体内の偏食因子に異常が起きる。そうして時間がたてば確実に死に至る。
だが主人公は、一筋の希望を見出したように神機に手を伸ばす。
ジュリウス「おいまさか、やめろ!」
その神機の柄を何の迷いなく握った。
偏食因子が腕に纏わりつく。体中から耐えがたい激痛が走る。
やがてその偏食因子は腕だけでなく、全身にまで纏わりつく。
主人公(っ!!)
ジュリウス「確かにお前の神機では歯が立たない相手だ!でもだからって人の神機に手を出すなんてことは!」
主人公(....!)
ジュリウス「早くやめろ!戦うまでもなく死ぬぞ!」
咎めるジュリウスに、主人公はこう答える。
主人公「そんなことは分かってる!」
主人公「でもこれしか...方法は無い!!もうやるしか、無いだぁ!!」
アラガミが再びブレスを吐き出した。一直線に主人公の方へ。
もう直撃する一歩手前だ。だが死ぬ寸前までこようが、その神機を離さなかった。自分が生き延びるため?いやそれ以上に、この戦いに決着を付けたかった。ジュリウスやブラッドの頑張りを、ここまで来て無下にするのか?ここで逃げればリヴィだって何も報われない。そうだ。最初から諦める気なんてさらさら無かった。
主人公(.............っっ!!)
???「私を...殺せ...!」
主人公(!!!)
どこからか声が聞こえた。聞いたことも無い誰かの声が。だがその声の主はすぐに察しがついた。
ブレスが主人公を直撃した。その姿はブレスの勢いで見えない。
ジュリウスはもう亡き者となってしまったのだろうと。そう絶望し、うつむいた。だが。
ブレスが止んだその場所に、神機を構えた主人公の姿がいた。そう、ロミオの神機でガードしていた。
シールドの奥に見えるその瞳は、決意がこもったように真っ直ぐ、ギラついたものだった。
ジュリウス「適合した!?」
シールドを解き、神機を後ろに構え治す。その構えはゴッドイーターの典型的な構えではない。足は広げず、むしろ直立に近い。そしてアラガミを睨む。アラガミの、瞳の奥の奥が見えるくらいに目を合わせ続ける。
「ウォオオオオオオオオ!!」
アラガミが咆哮する。だが怯むことなく真っ直ぐ睨む。そのアラガミからも、現実からも一切目を背けてはいけない。そう、まだ戦いは終わっていない。もう一回。今度こそ終わらせるのだ。
こうして始まった戦闘。ロミオの神機は使いづらさを多少感じたものの、扱いきれない訳では無かった。ダメージも確実に通っている。
神機と自分を信じ戦い続けた。正面から切りあい、遠距離戦に持ち込んで撃ち合い、そしてまた近接戦を繰り広げた。
相手の動きや攻撃は大体分かっていた。さっきの狙撃でスコープ越しから行動を直接見ていたから。...もう何も意識することは無い。ただ直感で攻撃をかわし、この神機を叩き込む。
そうやってがむしゃらに戦った末、見事再びアラガミを瀕死状態まで追い込んだ。
先ほど彼がそうしたように、弱点の真横まで近づく。
主人公はジュリウスの方を向く。彼に確認するかのように。
ジュリウス「...お前が、終わらせてくれ...!」
その声を聴き、神機を振り上げる。
だがまたしてもアラガミの手が伸びた。彼女の最後の抵抗か。その手に掴まれ、握りつぶすかのように締められる。体中に痛みが走り、抵抗も出来ない。
勿論、それを黙って見ているジュリウスではない。しかし体がほどんど動かず、神機にまで到底手が届かない。
主人公(くっ...!!!!)
神機が無くとも、妨害できる手段はある。そう、ジュリウスはスタングレネードを取り出す。歯でピンを抜き、
ジュリウス「あああああああああああ!」
今持てる全力で投げた。主人公はそこに息を合わせるかのように目を伏せる。
スタングレネードは丁度アラガミの目の前で起爆し、その動きを怯ませた。すかさず主人公がその神機で、さっきまで自分を握っていたその手を斬りつけた。
「ウォアアアアアア!!」
ようやくその手の危険も無くなった。
今度こそ、ようやくトドメを刺して、終わらせるのだ。だが、それは主人公のするべきことではない。そう、彼が。彼が直接やらなければ意味が無い。
主人公は彼のところまで寄る。
そして彼のその目をじっと見る。憂うような、少し怒るような表情で。
ジュリウス「そうか...やはり俺が。」
主人公の肩を借り、彼は立ち上がる。そして重い足取りで彼女の方へ向かう。
再び彼女にとどめを刺すあの位置に立つ。
ジュリウス「もう大丈夫だ。一人で立てる。」
ジュリウス「それと、その神機を貸してくれないか?」
主人公(...?)
ロミオの神機を渡す。彼は何事も無くそれを持つ。
主人公(他人の神機を使うのはタブーのはずじゃ...。)
その神機で再び、大きく振り上げる。
だが、まただ。またしても躊躇ってしまう。
一度振り上げたその神機を、脱力したように下に戻してしまった。
ジュリウス「......っ!!」
その時、ざわっと風が吹いた。心地よいそよ風。風だけではない。少し葉や花びらも一緒に舞うのが見えた。なんの草木も生えないこの大地に...。気のせいだろうか?いや気のせいなんかでは無かった。倒れこんでいた彼女の下から草や花が広がっている。やがてそれは凄いスピードで広がっていく。
主人公(...これは!?)
広がっていく自然は、さっきまで無残に破壊されていたログハウスや農機具を元の状態へと戻していく。いや、それだけじゃない。
主人公(もしかしたらこれは...聖域の本来の姿だったのか!?)
その一面の光景は、これこそまさに聖域と呼ぶにふさわしい。足元に広がる大自然、心まで晴れるような澄み渡った空。そして二人の前に横たわっているのは一匹のアラガミではない。一人の少女だ。
主人公(そんな馬鹿なことが...!?)
ジュリウス「リヴィ!!」
心の底から嬉しがるようにその名前を口にし、しゃがみこむジュリウス。
そして彼女に触れようと手を伸ばす。
リヴィ「うう....!!」
ジュリウス「!!」
バッとすぐに手を引く。少女は痛みに苦しんでいる。彼は悲しい顔で少女を見るしか無かった。
リヴィは本当に人間として蘇ったのか?今までの躊躇いが遂に実ったのか?なんだか良く分からないけどとりあえず無事に生き返ったから良しってことなのか?そんな風には到底見えなかった。
ジュリウス「リヴィ...。」
彼女はそっと目を開ける。
リヴィ「ジュリウス、私はもう人間として生きれることは無いよ。」
リヴィ「人間として、私はあの時死んだんだ...。いま君の前にいるのは、ただの血に飢えたアラガミさ...。」
ジュリウス「でも...!!」
リヴィ「私はね、この聖域に近づいてくる人間を、見つけ次第殺していったんだよ...。何人も。でももしこの場で私を殺さなければ、あなた達も、そしてこの聖域の外にいるもっと多くの人間まで、死ぬことになるよ?」
ジュリウス「.........っ。」
リヴィ「ジュリウス...逃げずに現実を見るんだ。もう躊躇ってはダメだ。」
リヴィ「私も、今までずっと苦しかったんだ...。だから...もう楽にさせてくれ...。」
ジュリウス「.....っっ!!!」
3度目。もう一度突き刺すように振り上げる。手の震えはもうない。ただ、もう泣いてしまいそうなくらい悲しい顔になっている。
リヴィ「うん...それでいいんだ。」
リヴィは一瞬、ちらりと反対側を向いた。
主人公(!?いまなんでそっちを向いたんだ...!?誰もいないのに!!)
フェンリル極東支部の病室。負傷したブラッドは未だに目を覚まさない。
でも誰か、夢を見ていた。
大自然と幸せが広がる"いつも"の聖域。
ここは夢だ。リヴィが死んだことも、殺さなければならないことも頭の中から消えていた。
そうか、やっぱりいつもと変わらなかった。
でもいつものログハウスには、人はいない。
農場にも、人はいない。
いや、いる。
農場より遠く。開拓されてない草原の中に、人がいる。
誰かは一目でわかる。その顔を忘れないわけが無い。
ジュリウスと....リヴィだ。
リヴィは草原に倒れてて、ジュリウスは.....殺そうとしてる...?
なんで?ダメだ、そんなことは。
農場の中を走った。
はやく止めないと。なんでか分かんないけどジュリウスはリヴィを殺そうとしている。
なんでか??......いや、なんとなく分かってきた。...でも具体的になんなのか分からない。分かりたくない!!
その思いとは正反対に、走っていくうちにその理由を思い出していってしまう。
リヴィのすぐ近くまで来た。
あと少し走ればジュリウスまで手が届く。でも...。
ロミオ「...ダメだ!!リヴィ!!!」
その呼びかけに応じるように、リヴィは一瞬こちらを向き、フッと笑う。
あの時の笑顔とはまた違う。とても優しく、儚さも孕んだ笑顔だった。
リヴィ「みんな...。」
リヴィ「今まで、ありがとう。」
ザクッ.....
ロミオのその神機が、リヴィを貫いた。
聖域が...、現実に戻されるかのように荒廃した姿に戻っていく。そしてロミオの神機は、紛れもなくアラガミの弱点に突き刺されていた。
ジュリウス「うぁあああ。あぁあぁああああ。」
主人公(.......。)
ジュリウスは突き刺した神機を持ったまましゃがみこむ。彼のその顔は、もう見るまでもなく涙でいっぱいだった。
かつてロミオの神機で彼の命を救ってくれた彼女が、今度は彼の手によってその神機で殺された。あまりにも皮肉が過ぎる。
何の接点もない主人公ですら、その感情の渦に飲まれそうだった。
極東の病室に、一人の泣く声が響く。
慌てふためいた一人の医者は、すぐにその扉を開けた。
医者(........。)
ロミオ「うわぁあああぁぁああ。リぃぃヴィぃぃぃ。あああぁあ。」
その躊躇いは甘さではなく優しさだった。
ヘリで二人は帰還している。いや、主人公はカザフスタンの指定した場所で降りるつもりだ。
機内でジュリウスが口を開く。
ジュリウス「君、本当に、ここまでしてくれてありがとう。」
主人公はもうお礼は十分とばかりに、少し拒む。
ジュリウス「そうだ、あの聖域のこと、まだ肝心な話が抜けてたな。」
主人公(...??)
ジュリウス「終末捕食は、聖域のお陰で活動を限りなく遅らせてると話したよな。」
ジュリウス「なら聖域が崩壊した今、その終末捕食はどうなった?」
ジュリウス「聖域で抑えられなくなった終末捕食はその膨大なエネルギーを、終末捕食を起こさんとする地球の意志とともに、"なんらかの形で"外に逃げ出したんだよ。」
ジュリウス「幸運にも、その終末捕食は直接それを引き起こそうとはしなかったが。だがそのエネルギーが地球上のどこかに今もある以上、危険な状況だ。放っておけば、今とは言わずとも近いうちに引き起こされるだろう。俺がカザフスタンに来たのは、そのエネルギーを捜すためでもあったんだ。」
ジュリウス「君、何か心当たりは?」
首を振る
主人公(知っているわけが無い。)
ジュリウス「そうか。しかしお前も一人でカザフスタンで活動とは大変な仕事だろう。あそこにも最近かなりアラガミが増えているからな。そろそろフェンリルの支部もあそこに設置しようとするころなんだろうか。」
主人公(一人??)
主人公(いや違う!一人じゃない!コマンド部隊と、それにカザフスタン支部もある!)
ジュリウス「ん?コマンド部隊?カザフスタン支部?俺も一応活動している部隊は全て把握しているが、聞いたことが無かった。初耳だな。」
主人公(コマンドの存在を今まで知らなかった?新設されたばかりの部隊だったから?いやコマンド創設もカザフスタン支部設立も3年前のことだ。ジュリウスは必ず知ってるはずだ。)
ジュリウス「3年前に?いや、そんな情報はどこにも載ってない。どういうことなんだ?」
主人公(その存在が知らされていない?なぜ?)
ジュリウス「よく分からんが、お前にはコマンドという仲間達がいるんだな。........ならその部隊と君に、カザフスタンは任せて良いか?」
頷く。
ジュリウス「だがそのコマンド部隊、その存在が知られていないあたり、かなり複雑な事情を持ってるだろうな。何かあれば俺も手伝おう。この任務の恩返しとして。」
主人公は横に首を振る。
主人公(この任務を通じて学んだ。ブラッドがそうだったように、部隊での問題は無関係の他人がどうこうできる問題じゃない。だから、コマンドの問題は自分たちで考え、乗り越えていかなければ。そうじゃなければ意味が無い。)
ジュリウス「そうか。確かにそうだな。...コマンドのこれからの健闘を祈るよ。」
カザフスタンへ降り、別れを告げる。
主人公(これからコマンドで起こるであろう様々な問題に、ブラッドがそうしたように逃げずに立ち向かおう。)
そう心に決めた。
ジュリウスのもとに無線が入る。耳元の無線ではなく、ヘリに常備してあったものだ。
???「ジュリウスさん!一人で無線も取らずに行ったから心配してたんですよ」
ジュリウス「ああ、すまん。だが全部終わったよ。」
ジュリウス「ところでフラン、コマンド部隊というものを知ってるか?」
フラン「いえ、初耳です。」
ジュリウス「その部隊はカザフスタン支部という施設の中で活動しているらしい。」
フラン「そうなんですか。」
ジュリウス「俺はてっきりあの神機使いが一人で活動してると思っていたものだから、あの時間に集合場所に来てくれなんて約束を取り次いでしまったわけだ。」
ジュリウス「でも考えてみればおかしいものだ。」
ジュリウス「支部で部隊として活動しているなら、好き勝手に遠出することはあまり出来ないはずだ。少なくとも支部にいる誰かから、どういう用事で行くのか聞かされるものだ。そのとき見ず知らずの俺との用事なんて正直に答えれば、何かしら咎められるだろう。だからと言ってあの神機使いが平然と嘘を言える人間にも思えない。」
ジュリウス「なのにやけにスムーズに来たな。神機まで持ち込んで。」
フラン「.....。」
ジュリウス「"誰にも見つからずに抜け出す"しかここまで出来る方法は無い。偶然誰もいなかったのか?」
ジュリウス「......コマンドもカザフスタン支部の存在も知ってたな。知ってて根回ししたんだろう。」
フラン「......フッ、やっぱり鋭いですね、ジュリウスさん。」
ジュリウス「あれはどういう存在なんだ?ちゃんと教えてくれ。」
ジュリウス「お前まであれを隠してる理由が、俺にはよく分からない。」
フラン「知ってどうするつもりですか?」
ジュリウス「別にどうもしない。それとも、知っちゃダメか?」
フラン「ダメですね。」
ジュリウス「なに?」
フラン「コマンドの問題は、彼ら自身で解決するんです。あなたはあの神機使いにコマンドを託しましたよね。それでいいじゃないですか。」
ジュリウス「はあ...、ああ、もう分かった。だが...」
フラン「...?」
ジュリウス「"教えられる時"が来たら、教えてくれ。」
フラン「.....はい。」
第4章 完
パセリの花言葉は死の前兆