何とか真っ暗になる前に帰れそうかな。この間は寄り道しちゃってお母さんに怒られたからなぁ…。
お昼に稚さんと別れた後、私の家に辿り着いてゆっくりくつろいでたら、お母さんに今日も御使いを頼まれた。でも今日はショッピングモールじゃなくて、商店街への御使いだったから寄り道する事なく帰ることができた。
それにしても、昨日知り合った稚さんとまた出逢うなんて思ってもいなかったな。しかも、その人が目の前で路上ライブをしてた人だったなんて。
歳が近い男の人とはいえ、知らない男の人と話すのは抵抗があったのに、何故か稚さんとは自然と会話が出来た。何でだろう…やっぱり第一印象が印象的だったからかな…。
稚さんのギター、かっこよかったなぁ…演奏もすごく上手だったし。でも、演奏の時のかっこよさとは違って、今日公園で写真を撮ってる時は無邪気な子供みたいに楽しそうにしてて、隣で見てて微笑ましく思っちゃった。
稚さんと一緒にいた時間を思い出していると見慣れた道路まで来た。後10分ぐらいで着くかな。その時、背後から稚さんではない、知らない男の人の声が私を呼び止めた。私は急に声をかけられたことにびっくりしてしまった。
「おい、お前。」
「ひゃっ!…な、何ですか…?」
男の人はずっと私の事を見下ろしてくる。鋭い眼差しで動きを止められてるような気分だった。怖い…。
「お前も––」
「ひっ…!」
この後何か良くない事が起きると本能的に察した私は咄嗟にその場を逃げ出す。
「はぁ…はぁっ…!」
私はあの人に捕まらないように必死に走る。持っていた買い物袋を置き捨ててあの人から逃げる。男の人は逃げたのを確認したらすぐに追いかけてきた。やっぱり速い…!性別による差もあるが、そもそも私の足が速いってわけでもないからこのまま直線上にいるとすぐに捕まってしまう。
「助けて……っ助けて…!!」
私は全力で走りながら必死に助けを求める。だけど走り続けた疲れと、追いかけられている恐怖心から大きな声が出ず、押し殺したような声しか出なかった。どうしよう…このまま…捕まっちゃうのかな?
考えたくもない未来を思いながら私はただひたすらに逃げる。
◇◆◇◆◇◆
「そういえば真里ちゃん、最近どう?美容師のバイトの調子は。」
「ふーっ、ふーっ…。」
「え?んー、いつも通りだよ。特に不満は無いし。まぁ、強いて言うなら相変わらず店長は厳しいけど。」
「ふーっ、ふーっ…。」
「そうなんだ。たっくんはどう?最近何かあった?」
「ふーっ、ふーっ…。」
「もう、拓海!ふーふーうるさいよ。」
「真里さんが悪いんじゃないですか!晩ご飯を鍋にするから!」
「それは拓海が変なこと言うからでしょ?」
「あー、もう!2人とも子供みたいな喧嘩はやめて!」
圭太郎さん、一言余計な気がするけど…気にしないでおこう。結局、晩ご飯はカレーライスの予定だったが僕が地雷を踏んだようで、それで鍋に変わってしまった。僕は極度の猫舌だから、熱いものの殆どが冷ましてからか常温にならないと食べれない。
引き続き、鍋から寄せた具を冷ましてると圭太郎さんから再び質問された。
「それで、最近何かあった?」
「最近…ですか、路上ライブはしましたね。」
「拓海一人で?」
「そうですね、最初は恥ずかしかったんですけどやってくうちにだんだん慣れていきました。」
「へぇー!聴いてみたいなーたっくんのギター。」
「時間が合えば聴かせますよ。」
時間が合えばなんて言ったけど、僕は学校あるしその後もやることあるから…圭太郎さんもクリーニング屋の仕事もしているから中々時間が合わないんだけどね…。
まぁ、でも今度路上ライブする時に呼ぶのも悪くないかな。
『–––––––。』
「えっ…?」
「どうしたの、拓海?」
今…何か聞こえたような…。
………気の、せい?
『––––––て…』
やっぱり…誰かの声が聞こえる。僕は昔から聴覚が特殊で、耳を澄ませば何の会話をしているか聞くことができる。一応言っておくと悪用はしたことない。
「たっくん、どうしたの?」
「しっ、静かにして。」
『––––けて…!』
『––すけて…』
この声…まさか……!!
『助けて…!!』
声の正体に気付いた僕は、椅子が後ろに倒れる勢いで立って玄関を飛び出す。圭太郎さんと真里さんは急に飛び出た僕を呼んだ。
「ちょっと拓海!どこ行くの!?」
真里さんの僕を呼ぶ声を聞き流してヘルメットをかぶりながら外に停めておいたバイクに乗り出す。キーを回しエンジンを入れ、ハンドルを回してバイクを進ませ徐々に速度を上げる。
倉田さんもうちょっとだけ耐えて…。
今、助けるから!!
◆◇◆◇◆◇
「はぁ…はぁ…。」
もう、どのくらい走ったんだろう。私がいた住宅街から離れた公園まで来ていた。足はもう限界がきていて走れなくなって歩くのも辛くなっていたが、ひとまずあの男の人から撒くことはできた。だけど、家からだいぶ遠い場所に来ちゃった…。ここから家に向かう途中に見つかったらどうしよう。
とりあえず急いで、お母さんに連絡と110番通報もしないと…
「見つけたぞ。」
「ッ!?」
そんな、撒いたと思ったのに…!とりあえずまた逃げないといけないと思ったが足が竦んで動けなくなっていた。
恐怖から、目からは涙が溢れ出て体の震えは止まらず声ももう出せなくなっていた。
「安心しろ。お前も、もうすぐ俺たちの仲間になる。」
男の人の言っていることがわからなかった。
でも、確実にわかるのは私の人生がもうすぐ終わりを迎えることだった。
ようやく目指す目標が出来たのに……。
ようやく皆と一緒に進めたのに…!
もうダメなんだ。
諦めかけたその時。
私と男の人の間に一つのバイクが横切り男の人の姿が見えなくなった。私は、今何が起きたのかわからなかった。だけど、聞き慣れた声を聞いたその時、私の目の前の暗闇から一筋の光が広がったような気がした。
「助けに来たよ、倉田さん。」
「お、稚、さん…?」
稚さんだ。稚さんはバイクから降りて私に手を差し出してくれた。私は彼の行動に応じて手を握って立ち上がる。バイクで隠れていて見えなかったが男の人は少し離れたところで転がっていた。稚さんが何かしたのだろうか…。
「…ど、どうしてここに?」
稚さんは、私の居場所を知らない。近場に居たとしても私の助けを呼ぶ声は小さくてとても聞こえるものではなかった。それなのに、どうして…。
彼は私の瞼から流れる涙を拭った。細くて長い、男性とは思えないほど綺麗な指。私はこの状況下で、拍子抜けした声を出して少し赤面してしまった。
「ふぇ…?」
「倉田さんの声が聞こえたからね。」
わ、私の声が…?しかしその理由を考える暇もなく、
男の人は突然叫び出した。
「貴様ァ…邪魔をするなァ!!!」
声を荒げる男の人に異変が起きる。テレビやおとぎ話、空想の中だけかと思っていた認識が全て裏返った瞬間だった。
顔は謎の生物が浮かび上がり、彼の全身は変化した。
五体の面影は残っているが、人の姿はもうそこには無く全身が灰色で両腕の甲には鋭利な針、背中には禍々しい羽、頭部は鋭い顎と虫のような触角が生えていた。
まるで蜂のような姿の異形の怪物となった。
「ひっ!?」
私はその変化を見て、少しおさまっていた震えがまた止まらなくなってしまった。だけど、稚さんが私を隠すように手を伸ばす。
さっき、助けに来たって言ったけど…まさか、あの怪物に立ち向かうの…!?そんな…幾ら何でも無茶だよ…!!
稚さんは私の顔を見て心情を感じ取ったのか、安心させるように笑顔で声をかけてくれた。
「大丈夫だから、倉田さんは下がってて。」
そう言って稚さんは、バイクに取り付けられていた銀色のアタッシュケースから何かを取り出した。それは、ベルトの様なものと小さな箱の様な物だった。
◇◆◇◆◇◆
拓海は謎の男だった怪物を見据えながら腰に特殊な形状の銀のベルトを巻き付け、手に持っていた小さな箱を開く。その箱は、2000年代に流行したガラパゴス携帯電話、通称「ガラケー」と同じ形をした端末を握っていた。拓海は親指でテンキーの「5」を三回入力してエンターを押す。
"5-5-5-ENTER"
《STANDING BY》
するとクールな電子音声と共に待機音声が繰り返し鳴り響く。
そして、拓海は端末を折り畳み天高く掲げ言葉を紡ぎ、ベルトに突き立て左側に倒す。
「変身!!」
《COMPLETE》
その音声とともに、拓海の身体にはベルトを中心に赤いラインが光輝きながら身体中広がる。そして赤い閃光が拓海の全身を包む。
後ろに隠れているましろと、目の前の異形の怪物は眩しさで目を隠す。そして光が収まり腕を下げると拓海の身体も変化を遂げていた。
漆黒のボディに、白銀のアーマー。
赤く光り輝き身体中に伸びるライン。
頭部はギリシア文字の『Φ』を思わせるかの様な形をして、円状に広がり闇を照らす黄色の
彼の姿は大昔に救世主と謳われた戦士と同じ姿をしていた。
大昔の戦士をかつて人々はこう呼んでいた。
『ファイズ』
本作の要の一部であるファイズが、登場致しました。
BanG Dream!×仮面ライダーファイズの物語がいよいよ開幕です。
これにより、新たにタグを追加させていただきます。
また、通常の小説だと思って閲覧してくださっていた方がいたら申し訳ございません。
クロスオーバーでは無い小説もいつか、書いてみたいなとは思っていますのでご了承頂ければと思います。
それでは、失礼します。
Open your eyes for the next φ's!