青き蝶達は華麗に舞う   作:アポーパイ

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第六話 戦士φ's

 

 

 赤き光を放ち、闇夜を照らしながら目の前の敵を見据える戦士ファイズ。静かに歩を進め、灰色の蜂の怪物との距離を詰めていく。対して蜂の怪物は、恐れることなく雄叫びを上げながら勢いよくファイズに襲いかかる。

 

「ッグラァァァ!!」

 

 籠手に備わっている針をファイズの顔に突き刺そうとするが、ファイズは腰を落とすと同時に怪物の腹部に二発、正拳突きを喰らわせる。

 

「ふッ!」

 

「グォッ…!」

 

 相手を怯ませた隙をついて、今度はファイズから攻撃を仕掛ける。地面を蹴り勢いをつけてさらに腹部に膝を打ち込ませて怪物を後方に吹き飛ばす。

 

「ッラァ!」

 

「グァァッ!!!」

 

 立ち上がりながら地上戦だと敵わないと悟った怪物は背中にある羽を高速で羽ばたかせて空中へと移動する。両腕の針を立てて、ファイズに突進をする。ファイズは突進を横に回転しながら回避する。

 対抗してファイズも別の手段で攻撃を行った。変身する際にベルトに装着した携帯を取り出し、携帯のジョイント部分を60度折り曲げる。すると不思議なことに携帯から銃の形状へと変形した。その状態で特定のコードを入力する。

 

"1-0-3-ENTER"

 

《SINGLE MODE》

 

 音声が鳴ると、ディスプレイに表示されている銃の様な絵とコードが光り出す。そして、携帯のアンテナであった銃口を飛行している怪物に向けて、側面のトリガーを引き光弾を数発発射する。見事に怪物の胴体に火花を散らしながら全弾命中し地面に墜落する。

 

「グゥゥゥ…グハァッ!」

 

 ファイズは墜落を確認して、光弾銃を元の状態に戻してベルトに着け直す。怪物は膝をついてファイズに話しかける。すると、街灯に照らされる怪物の影が元の人間の姿で裸の状態へと変わる。

 

「グッ…貴様…何者なんだ…?」

 

「…高校生だよ。ちょっと特殊(・・)なね。」

 

 怪物の質問に答えるとファイズは身体を横に向かせて腰を落とし肩の力を抜いて、右足に重心を乗せて相手の出方を窺う。やっとの事で立ち上がった怪物はやけくそ気味に叫びながらファイズに殴り掛かる。

 

「ふ、ふざけるなァァァ!!!!」

 

 怪物は徐々にファイズとの距離を詰めていく。ファイズは微動だにせず、怪物が接近してくるのを待つ。そして、怪物は後数歩で届くという手前で踏み込み右ストレートを打ち込み、ファイズも動き出し右足を上げてカウンターの蹴りを喰らわせる。

 

「ッラアアア!!!」

 

「ハァッ!!」

 

 緊迫した空気の中、二人は微動だにしなくなった。怪物は、一瞬何が起きたかわからなかったが視線を動かしていくと、どういう状況であるかを理解する。自身の拳はファイズに一歩届かず、ファイズのカウンターはしっかりと自分の胸部に命中した事を確認し––––自分の負けを理解する。

 

「ウ…アァ…。」

 

 怪物だったものは灰の塊と化して、ファイズの足元に掠れた声と共に静かに崩れていった。彼らの灰化はすなわち死を意味する。人間の死よりも残酷で、人であった体のどの部分も残す事なく、消滅してしまう。ファイズは彼の死を確認すると、携帯を取り出し『CALLED』キーを押す。すると、赤いラインが発光してファイズから元の拓海の姿へと変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い…」

 

 私は灰色の怪物と謎の姿に変身した稚さんの戦いをバイクの後ろから傍観者としてずっと見守っていた。恐れる事なく、慣れた様な動きで圧倒し怪物を倒した。その光景はまるで、朝に放送されてる様なヒーロー番組のようで、一瞬現実的じゃないって思ったけど目の当たりにして理解が追いつかなくなっている。

 さっきの人…怪物は何だったのか、稚さんは何者なのか。今の出来事に対する様々な疑問が頭の中を駆け巡らせていると、稚さんが話しかけてきた。––––目の前で。

 

「倉田さん?おーい、倉田さーん?」

 

「ぁっ、うぇっ!?」

 

 稚さんは、私の顔と稚さんの顔が同じ目線になるようにしゃがんで手を振っていた。思ったよりも顔が近くてびっくりしちゃった。

 

「ごめんなさい、ちょっと考え事してて…」

 

「…そう、だよね。知りたいよね、さっきの怪物や僕の変身した姿の事。」

 

「……」

 

 私はゆっくりと首を縦に振る。すると稚さんはスマホを取り出して画面を私に向けた。スマホの画面には何かの建物の外観を撮った写真が映し出され、よく見ると看板に『ラドリオ』と書かれている。

 

「明日、倉田さんも学校あると思うから、放課後このお店に来て。僕のバイト先。明日ここで話すよ。」

 

「は、はい…」

 

「さぁ、帰ろう。もう夜も遅いし、送って行くよ。後ろに乗って。」

 

「ありがとうございます…」

 

 送って行くと言った稚さんはバイクに跨り私も早くバイクに乗って……ってえぇ!?

 

「…?どうしたの?」

 

 稚さんは、その場で固まっていた私を首を傾げながら呼んだ。な、何でそんな平気なんですか!送って行くってことは…ふ、二人乗りだよね。まず、バイクにも乗ったことすらないのに、しかも二人乗りってことは必然的に身体は密着しちゃうわけで……。なんて考えててもお構いなく、稚さんは私にヘルメットを渡してきた。

 

「はい、ヘルメット。」

 

 でも確かに、さっきの状況を考えるとこんな事考えてる場合じゃない。稚さんのバイクに乗って送って行ってもらうほうが安全だし、お父さんお母さんに心配はかけない…

 ……は、恥ずかしいけど大人しく乗るしかない、か。

 ヘルメットを着けながら私は決心した。

 

「あ、ありがとうございます。し、失礼、します。」

 

 ゆっくりと脚を上げて、稚さんの肩を使わせてもらいながら後部座席に上手く跨る。

 

「それじゃあ、僕の腰をしっかり掴んでて。曲がる時は僕と一緒に身体を傾けてね。」

 

「わ、わかり、ました。」

 

 私は色んな意味で心の準備をして言葉の通り、稚さんの両腰をしっかりと掴んで稚さんの背中と少し密着する。

 

「よし、それじゃあ行くよ!」

 

 その言葉と共に、稚さんはハンドルを回して私達を乗せたバイクを走らせた。最初はゆっくりと走り、広い道に出ると違反にならない程度に徐々にスピードを上げて行く。

 その間、振り落とされそうで怖くなってしまい、腰じゃなくて稚さんの背中に抱き付くようにしがみついていた。羞恥心すら忘れるほどに怖かった。私は転倒する恐怖に耐えながら、稚さんのバイクに乗り自分の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、特に何も起きる事なく家に着いた。が、ふとスマホを見たらお母さんからのメッセージと不在着信でいっぱいになっていた。よくよく考えてみるとまた夜遅くに帰ってきちゃったし、そもそも御使いの途中で、買った袋事襲われたところに落としてきちゃったし。お母さんにどう説明しようか稚さんに相談して、稚さんに助けられたという事実だけ述べた。勿論、怪物の事や稚さんの姿は言っていない。困惑させるだろうし、多分信じてはくれないと思うから。それで、何とか誤魔化すことができた。

 とりあえず、今日は稚さんと待ち合わせ。確か…ラドリオっていう喫茶店で昨日のことを聞く予定、今はその喫茶店に向かおうと学校を出ている最中。もしかして、稚さんってずっとあんな怪物と戦ってたのかな…。な、なんか、私今まで凄い人と会話してたって思うとちょっと緊張してきた。

 

「おーい、倉田ー!」

 

「あ、透子ちゃん。」

 

「倉田、よかったら今から一緒にそばクレ食いに行かね?遅れてくるけど、二葉も行くってさ!」

 

 後ろから声をかけてきたのは透子ちゃんだった。今日はバンド練がないから遊びに行こうって誘いに来てくれたと思うんだけど……でも、稚さんと待ち合わせしてるから、今日は断っておこう。ちなみに、そばクレというのはそばクレープっていう、名前の通りそばとクレープが組み合わさった食べ物の略称…らしい。私は食べた事ないんだけどね…。

 とりあえず、透子ちゃんにはちゃんと断っておかないと。

 

「ごめんね、今日は私も用事があって行けないんだ。」

 

「そっかー。ま、そういうことなら仕方ないか。それじゃアタシ一人で行ってくるかー。じゃあ、また明日な!」

 

「うん、また明日ね。」

 

 別れを告げて透子は校門を出て行った。私も早く向かおうと、校門を出て稚さんが待っている喫茶店へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……」

 

 月ノ森の校門から出ていくましろの様子を、遠くから見守る一人の男。彼は彼女の動向を探るべく後を追う。

 

〜♪

 

 携帯が鳴り出し、不明としか書かれていない画面を見てすぐさま電話に出る。

 

「…もしもし。」

 

『はぁ〜い、例の件はどうなっていますか?』

 

 相手の声は女性。まるで子供をあやす保育士のような独特な喋り方で男と会話する。男は聞き慣れたようで冷めた返答する。

 

「昨日お前が知らせてきた、ファイズ(・・・・)と接触したっていう女のガキを追ってる。」

 

『あら、ちゃんと責務を果たしてるみたいでおねぇさんすっごく嬉しい!…しっかりファイズさんの正体を暴いてきてね?後、ベルトの奪還も忘れずに…おねぇさん期待してるから。』

 

「……」ピッ

 

 

 

 男は女性との通話を切り、携帯をしまってましろの尾行を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ファイズ、お前を見つけて仲間達の無念を絶対に晴らさせてやる。」

 





今回登場した怪物

ハニービー???
女王蜂の命に従う忠実な僕。仲間との集団戦闘を得意とする。単体の能力はそれほど高くなく、個々での戦闘は不向き。


オリジナルの怪人を登場させてみたのですがいかがだったでしょうか?
そういえば蜂の怪人登場してないなぁってふと思って出してみました。ちなみに一応説明すると、ハニービーはミツバチです。後、説明にもある「女王蜂の命に従う…」という事は?


今回戦闘シーンが少し短めでしたが、次回の戦闘からは長めに取る予定でございます。また、Morfonicaの一人、桐ヶ谷透子ちゃんが今回一瞬出てきましたが今回の謎の男との対決以降、透子ちゃんだけでなく他の
メンバーとも絡みを深くしていくつもりですのでお楽しみしていただければと思います。

また、活動報告でもお知らせしましたが、更新日時は日曜日の時刻は不定期とさせていただきます。詳しくは活動報告の方へ飛んでいただければと思います。

それでは、失礼します。


Open your eyes for the next φ's!



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