おかしい部分の指摘等、いつも本当に助かっています。
ありがとうございます。
今回は原作主人公が登場するので、続きはありません。
アトリアがエ・ランテルへと拠点を移した数日後……エ・ランテル冒険者組合に二人の男女が姿を現した。
男は、全身を黒い全身鎧と真っ赤なマントで覆った、背に大剣を二本も背負った戦士であり……女は黒髪黒目の珍しい、そして何とも美しい容姿の女性。
「冒険者として登録したいのだが。」
「は、はい!」
あまりにも凄まじい存在感にあてられてついどもってしまう受付嬢だったが、つい最近それ以上の衝撃を受けている彼女らに死角はない。
どもっていたのは一瞬で、テキパキと準備を整えた後、必要書類を提示した。
「ここにお名前と、受けたい試験ランクをお選びください。」
「試験ランク?」
「……あ、試験ランクというのは、これから先冒険者になった際のランクを決める試験の事です。最初にこの試験を選んでいただいて、クリア出来たランクから始まり、実力がついたら一つ上のランクの試験を自分のタイミングで受けて頂くというシステムになっております。」
「ほう。」
受付嬢はこの二人を見て案外、世間知らずなのだろうかと内心で首を傾げた。
二人はどこか名の知れた貴族お抱えの騎士であったか、あるいは遠い異邦の地からやってきたお忍びの有力者なのかもしれない。
そう勘ぐる受付嬢だったが、それを聞くわけにもいくまい。
仮に本当にそうだったとしても、正体を隠さなければならない程の理由がある。
冒険者に過去の詮索はご法度なのだ。
「試験は実力勝負の、小手先の技術やアイテム、武器、その全てを利用した総合の実力を試すものとなっており、職業ごとに別の内容の試験になっています。」
「(ほう。なんでも使っていいのか……てっきり試験用に木刀で……と言われるかと思ったが、この武器を使っても良いなら、恐らくは楽勝かもな。 ……無いとは思っていたが、筆記なんてあったら詰んでた。 いや、無いとは思っていたけどね、ほんとに。)……落ちたらどうなる?」
「希望したランクの一つ下のランク試験を受けて頂き、それでもダメだったらその下、それでもダメなら更に下、最終的に一番下の
「なるほどな。」
尤もそんな大層な鎧を着こなし馬鹿みたいな大きさ、もとい超重量の剣を二つも背負って涼しい顔(顔は見えないが)をしている時点で、その辺りの心配は必要ないだろう。
貴族のボンボンでそのどちらもがお飾りのものだったとしても、銅ランクくらいなら駆け出しの冒険者でもクリア出来る難易度になっているのだから。
「ではせっかくだ、一番上のランクを希望しよう。ナーベもそれでいいよな?」
「当然の選択かと。」
「(……ナーベ、ここでは同じチームの冒険者、つまり仲間なのだ。 もっとこう……砕けた感じで接してくれないと怪しまれてしまうぞ。)」
「(……!! も、申し訳ございません! ここでこの首を……)」
「(よ、よせ! ナーベ、これから直せばそれでいい。私はお前の全てを許そう。)」
「(……寛大なお言葉感謝します。)」
この二人、怪しまれないようにする、という気持ちはないのかしら。
とは言えるはずも無く、受付嬢はただ笑顔をひくつかせながらタイミングを見計らって説明を続けた。
……なお、名前とチーム名、希望ランクは文字が読めないので受付嬢に全部書いてもらった。
説明の後、受付を後にした二人と引き継いだ係員は組合の隣にある冒険者の試験用に建てられた広い試験会場へと訪れていた。
「モモンさんは戦士の試験でよろしかったでしょうか?」
「はい。」
「ではモモンさんはあちらの係員の案内に従ってください。ナーベさんは魔法詠唱者でよろしかったでしょうか?」
「……。」
「……あの?」
「ああ、すみません、合っています。 緊張しているのか? そうだよな?」
「……はい。」
「で、ではナーベさんは自分に付いてきてください。」
こうして一時的にナーベとモモンは二手に分かれる事になる。
……最後までナーベはどこか不満げだったが……。
大丈夫だろうか、と一抹の不安を覚えながらモモンは案内に従い会場へと赴く。
そうして着いた会場は、試験会場というより、日本の弓道場を無理矢理この世界基準に落とし込んだような、屋内から直接屋外実力試験場へと繋がっており、傍には試験の為に使うのであろう案山子が複数並べられていた。
見ると、先客が居たようで、彼らもまた上のランクを目指している冒険者のようだ。
「あと10個だぞー!」
「頑張れー!」
「む、無理だ! 間に合う訳ねえよこんなのー!」
案山子に剣を持った青年が切りかかり、ひいひいと息を切らせ、弱音を吐いている事から察するに、あの案山子を時間内に指定数破壊すれば良い、とかそんな感じだろうか。
「私が受けるのはアレと同じ試験ですか?」
「ええ。 違うのは指定数と案山子の強度ですね。」
そう言って係員が指差した先を見ると、準備を始めている係員がえっちらおっちらと案山子を運んでいた。
……いや、あれは案山子というより……。
「(……鉄くずで出来たゴミ人形……?)」
それは案山子と言うより、ずんぐりむっくりした丸い二頭身の人形のような形をしたくず鉄の塊。
「あー……その、最初は廃棄された鉄鎧なんかを再利用してたんですが、コスト削減という事で、最近では使わなくなった鉄を縄で縛ったりくっつけたりして案山子を作る事になったんですよ。」
何とも言えない雰囲気を感じ取ったのか係員が苦笑いしながら事情を説明する。
見れば鉄の案山子を構成する要素は殆ど錆びついた剣や折れ曲がった槍、壊れた窓枠……あれはドアの持ち手か何かだろうか。
見た目は悪いが、これでも普通の案山子の何倍も硬いだろうし、無駄にしないという意味では好感が持てなくは……低コストで済むならそれが一番である。
「では改めて説明させていただきます。 制限時間はこの砂時計で計らせていただきます。 この砂が全て落ちるまでに、用意した全ての案山子を破壊出来たら合格となっています。 破壊に手段は問いません。 武技の使用はもちろん、事前に能力向上等の武技を使用しても構いません。 以上で、何かご質問は?」
「いや、無い。シンプルで分かりやすい。」
「ありがとうございます。 では、準備が出来次第お呼びいたしますので、しばしお待ちください。」
「分かった。」
えっちらおっちら、鉄の人形を運び入れるのを待つ。
……よく見ると、彼らの容姿は役員というより冒険者のようだ……もしかしたらこれも冒険者の仕事の一つなのかもしれない。
数は……30、いやもう少しあるか。
確かに普通の人間なら、3つも破壊出来れば良い方だろう、これを全てと言って居るのだから、この試験の難易度が伺える。
既に運び終わった冒険者たちはモモンを見て「いや~無理だろ」とモモンを見て笑っているようだ。
しばらく見ていると、案山子を建てていた男たちからいいぞー!と声が上がった。
「モモンさん、準備が出来たようですが、もう開始しても問題ありませんか?」
「はい、いつでも。」
「では、開始位置について下さい。 開始の合図をしますので、その瞬間から試験開始となります。」
開始位置……印が埋め込まれた位置に立つモモン。
二本の大剣を携え、無造作に置かれた案山子(?)を見据え、こんな感じか? と構えを取る。
「始め!」
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ほんの、数分もしない頃、モモンの足元にはバラバラに斬り倒されたくず鉄の案山子が散らばっていた。
「す、すげえ……。」
「あの分厚い鉄で出来た案山子を一撃で真っ二つってマジかよ……。」
「しかも、時間はまだ半分以上残ってるぜ……。」
さっきまで「無理に決まってんだろ」と決めつけ笑っていた男たちの姿はもうそこには無い。
モモンが剣を一振りする度、案山子が真っ二つに切断、または破壊され、一度も歩みを止める事無く次々と破壊されていく。
時間が半分を切った頃には、既に残された案山子は片手で数える程。
「(思った通り簡単だったな……これで終わりだ。)」
当のモモンはこんなものか、と内心で呟きながら、ステータスとレベルに物を言わせた剛腕で適当に、こうすればカッコいいかな~と考えながら剣を振り回す。
もし同じ100レベル台の戦士が居ればその剣捌きは、力任せに振り回しているだけの児戯である、と見抜けたかもしれないが、残念、いや、モモンにとっては幸運なことに、それを見抜ける人物はここには居なかった。
いい加減面倒になってきたモモンは思い切り剣を振りかぶり……全力で投擲した。
「おおっ!?」
尋常ではない、鉄の塊が出すものとは思えない程の、重い風切り音が鳴り響いた。
次に、大剣が直線上に位置していた鉄の案山子が同時に破壊され……最後の一つに深々と突き刺さったところで停止した。
遅れて、残骸がガチャガチャと音を立てながら地面に散らばり、それを見届けると、最後の案山子の元に歩み寄り、突き刺さった大剣を引き抜き、もう片方の大剣で一閃。
「(ホントは今ので全部終わらせる予定だったんだが……ま、いいか。)」
見回して、見逃しがない事を確認した後……大剣二つを背負いなおす。
終わりました、と口を開く前に、周囲から野太い歓声が上がった。
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試験を終え、ナーベと合流したモモンはナーベも試験をそつなくこなしたと知る。
魔法詠唱者だったらどんな試験だったのだろう。
ほんの少しだけ気になったモモンだったが、それを聞くのは後でもいいだろう。
モモンは、組合の受付に戻ってアダマンタイト級冒険者の証である冒険者プレート(首から下げるドッグタグみたいなものだ)を受け取り、まだ日は登っているが、割のいい依頼は既に誰かが受けているらしく、特にアダマンタイト級冒険者が受けるような依頼は今は特にないと受付に言われた。
……それに仮にあったとしても、普通、少しは時間をかけて準備をするものだ。
なので、まずは宿を探すことにした。 黄金の輝き亭、というエ・ランテルで最高峰と言われる宿屋を紹介されたが……そんな金は無いので「既にほかの宿で部屋を取っているから」と誤魔化した。
「(さて、そんなに懐に余裕は無いし……今日は安い宿屋に泊まった方が良さそうだな。)」
そう考えたモモンは調べた中でも一番安いボロ宿で泊まる事にした。
「な、なんでアダマンタイトが……!?」
「どこかと間違えてんじゃねーのか……。」
「そもそもあのプレート本物か……?」
「お前さん方……申し訳ございませんが他所に当たってくれませんかね。ここじゃアダマンタイト級冒険者をもてなせるもんは何も無いんですよ……。」
「(え、ええ~……。)」
……しかしこの一番安い宿屋にしたのが失敗だったらしい。
昼から飲んだくれていた冒険者達は手を止めてアダマンタイトのプレートを見てざわつき始め、プレートを見た店主はアンタ達が来るべきなのはこんな安宿じゃないだろと笑顔をひくつかせた。
「……設備や接客には何も期待していない、とりあえず一晩部屋を貸してほしい、それだけなんだ。 金も……ほら、これで足りるか?」
「いやいや!多すぎる……ます。 こ、これだけで十分です。 はは……。 ええと、じゃあ、突き当りの右の部屋なら。」
「そうか。 気を遣わせてしまったようですまない。(はぁ……一度転移でナザリックに帰ればよかったかもな……いや、それをするにしても部屋を借りないといけない、か。 ままならんな……。 ……うん?)」
見れば、モモンの進行方向に一人の男が立っていた。
ニヤニヤとした下衆な笑みを浮かべた、明らかに酔っぱらっているであろう、格下も格下の男。
「何か用かな?」
「よお、兄さん、そのプレートぉ……アダマンタイトかあ?」
「ああ。」
「ひゅーっ! すっげえ! 俺ぁ初めて見たぜ! こんな良く出来た
「……偽物?」
「それ以外に何があるんだ? 偽物だろ。 王国のアダマンタイト級冒険者っつったらよ~……蒼の薔薇と……朱の雫……そんで、白雪の硝子……。 その三組しか存在しないんだぜ? そんなことも、ひっぅく。 知らねえのか?」
なるほど、つまりその三組のどの特徴にも合致していないであろうモモン達はアダマンタイト級冒険者ではないという事になる。
まあ、昼間から大分長い時間飲んだくれているだろうこの男が、そう思うのも無理は無いだろう。
漆黒というアダマンタイト級冒険者チームが誕生したのは、ついさっきなのだから。
「そうか。 ではその三組にもう一組追加で覚えていてもらいたいな……漆黒の名を。」
「ハハハハ!! 冗談キツイぜ、そうそうアダマンタイト級冒険者が……?」
そこで冒険者の男……いや、酔っぱらいの男の淀んだ目はふと漆黒の全身鎧を着た男の隣に侍っている黒髪の美女を見つけてしまう。
「……へへ、いや、そうかそうか。 アダマンタイト級冒険者ともなれば良い女とのご縁もあるよなあ? どうだ? 一晩じっくり貸してくれたら信じてやっても……。」
と、言い切る前に酔っぱらいの首にモモンの手が伸び、そのまま酔っぱらいを掴み上げる。
「な、なにしやがっ……。」
「信じてもらう必要は無い。 ただ……薄汚い手で俺の仲間に触れないでもらおうか。」
ゾッとするほど低い声が宿場に響き、一瞬で空気が凍り付いた。
その場で静観していた酔っ払い達(恐らくこの男の仲間)は一斉に席から立ち上がって他人を装い始め、一人はお代を置いて入口から転がるように出て行った。
酔っぱらいもようやく少しは酔いが覚めたのか「ヒイッ」と小さな悲鳴を上げながら目を見開く。
その酔っぱらいの情けない様子に……あるいは精神の抑制が働いたのか、すぐにモモンはその男に興味を失い、そのまま男を軽々と投げ飛ばした。
「申し訳ございません、御身の御手を煩わせ……。」
「いや、いい。 それより……。」
「ギャアアアーーーーー!!!」
ええい今度は何だとその甲高い悲鳴に目を向けると、その悲鳴を上げた本人が「ちょっとちょっとちょっと! 何してくれてんのよアンタ!!」と詰め寄ってくる。
……聞けば、今の男を投げ飛ばした先に、この女の貯金をしてようやく購入したポーションがあったらしく、結果的にはモモンのせいでそのポーションを破壊してしまったらしい。
「あの男に請求したらどうだ。」
「あぁ? ……ノビてるし、そもそもそんな金持ってる訳ないわよ、昼間っからこんなところで飲んだくれてるような奴が。」
「(えっそうなの? まぁ確かに金を持ってそうには見えないが……そもそもこの世界ってそんなにポーションが高価なのだろうか? そこまで貯金しないと買えないポーションって、一体……。)」
ともかく、壊してしまったのは事実だし、本人が「実物でもいいからさあ」と言うし、ナーベがここまでのストレスが限界に到達したのか眉間に皺を寄せて殺気を出し始めたので、モモンは咄嗟に自分の持っていたポーションを手渡し、そのまま部屋へと向かった。
この世界には存在しない、赤のポーションを見た女が不思議そうな顔をしているのを知らずに。
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と、まぁモモンとナーベの冒険者デビューは……幸先が良いようで、悪いようで、前途多難のような……長い目で見れば問題は無いような、なんとも言い難いものになった。
プレートそのものの偽装を疑われるとは流石に予想がつかなかったが……あれはそもそもここの治安と、あの男が特別酔っていただけと言えばそれだけなんだろうが。
しかし、アダマンタイト級冒険者が現れた、という情報はそれなりに大きなニュースになっているようで、明日になれば偽装を疑う者は居なくなるだろう、とモモンは高を括った。
……それも間違いだった。
「当日にアダマンタイト級冒険者になるだなんて、あり得ないだろう!」
「どうせ何かイカサマしたんだろう!」
「組合に金でも握らせたんだ! そうに決まってる!」
どうして、こうなった?
翌日になって冒険者組合に訪れた二人は、掲示板を見ようとしたところでひとりの見覚えのない男に掴まれ、大声で怒鳴られた。 内容は最早興味が無いので覚えていないが、言いがかりに過ぎなかったように思う。
昨日の事もあるし、ナーベに「人間とはなるべく敵対しないように」と言っている手前、冷静に対応しようと口を開こうとした、その時には既に、モモンとナーベは周囲の冒険者に囲まれ、ある事無い事言われていた。
ふと見れば実際にあの試験を見ていた者は彼らを止めようとしているようだが……。
しかし、とにかくそんな訳はない、という思考に凝り固まってしまった連中には焼け石に水といった様子で、「お前ら一体いくら掴まされたんだ?」等と言われてしまう始末。
「(……ああ、失敗だ。)」
モモンは自らの失敗を悟った。
やはりナザリックから出るべきでは無かったのかもしれない。
この世界の冒険者という職業に夢がない事も分かっていた。
ただ息抜きがしたい、そんな我儘で始めた事だったが……それで結果がこれでは、失敗を悟らざるを得ないというものだ。
さてさて、どうしたものか……またこの中のどいつかを適当にぶん投げたら落ち着くかな? ああ、でも投げる方向を確認しないとまた昨日みたいな事になるかもしれないし……クソ、いっそ、本当に……。
「止めなさい! 貴方達!」
カツン、と硬質な音と共に少女の声が組合のロビーに鳴り響き、同時に、喧騒がピタリと止む。
その声の方向へ目を向けると、そこには……雪のように白い、切りそろえられた髪、薄水色の僧侶を思わせる装備に身を包んだ、18、あるいは20代前半の……アダマンタイトのプレートを首から下げた少女が、明確な怒りの表情でそこに立っていた。
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「(なにしてんのおおおおおお!?!?)」
いや、彼らはホントに何をしてんだろう。
イカサマ? 組合に賄賂? ああ、まあ、そういう事もあり得るかもしれない。
実際、アダマンタイト級冒険者が突然ポッと現れたら疑いたくなる気持ちも分かるが……それならそれで、もっと上手くやるだろって何故分からない。
……分からないだろうな、分からないから冒険者なのかもしれない。
っていうか、問題はそこではない!
「(モモンガさんの冒険者への心証が悪くなんだろうがぁッ!!)」
冒険者の心証が悪くなるという事はつまり、冒険者であるアトリアの心証も悪くなるという事だ。
アトリアの心証が悪くなるという事はつまり、これからの計画に支障をきたす可能性が上がるという事。
「(馬鹿か? いや、馬鹿だろう、ふざけるな、冗談ではない、マジでやめろ。 今すぐにやめろ。 やめてくださいお願いします。)」
「あ、あれは……!」
「王国のアダマンタイト級冒険者……白雪の硝子、アトリア!?」
ざわざわとロビーがざわめく。
が、先ほどの怒鳴り声やあちこちから鳴り響いていた声は今は無い。
何故、どうして、という困惑の声が殆どだ。
「話は大体聞いていました。」
そう言いながら、カツカツと硬質な音を立てながら、騒ぎの中心へと歩み寄るアトリア。
「イカサマ……賄賂……どちらもあり得ません。 そして、もしあり得たとしても……アダマンタイト級冒険者は、偽物に務まる程安くない。」
じっとモモンとナーベを怒鳴り立てていた冒険者達を睨み付ける。
本来なら……こんな少女に言われたところで説得力のあるようなセリフではない。
アダマンタイト級冒険者は偽物に務まる程安くないと言うが、お前のような若輩者がたった一人でもなれるものじゃないか。
……本人の迫力を前にそう言える人物は、ここには居ない。
「散りなさい。」
ピシャリと告げる。
すると迫力に負けた冒険者達がすごすごと立ち去って行った。
中にはまだ納得して居なさそうな人物も居たが……そんな奴は無視だ。
「……お節介……でしたか?」
「いえ、とんでもない、ありがとうございました。」
「モモン様……!」
お節介かけられた……という事実が気に食わないのだろうか。
ナーベはこちらに殺気すら向けて睨むが、モモンに手で制されると押し黙る。
しかし制しているモモンも、アトリアを警戒していた。
あれだけの影響力を持つのもそうだが、アダマンタイト級冒険者が、どうしてここに……このタイミングで現れる?
タイミングが出来すぎてはいないだろうか。
それを感じ取ったのか、アトリアは眉をハの字にしてこう提案する。
「……あの、こんな事があった後で申し訳ないのですが……もう少しだけお時間を頂けませんか? 場所を変えて。 ……実は、貴方達に用があって来たんです。」
「(やはりな……しかしどうする? 用がどんなものかは分からないが、ひとまず、敵対する意思は無いと見ていいんだろうか……まだ分からないが……)……ええ、いいでしょう。」
モモンは少しだけ思案した後……用、というのが気になったので了承した。
すると、アトリアはパァッと花を咲かせたような笑顔になり、肩から不自然な力を抜いた。
「良かった! ええと、ここの二階に会議に使える部屋があります。 そこで話しましょう。」
「ええ。」
そして、三人が二階へ上がると、二階から騒ぎを見ていた四人の冒険者達とすれ違う。
四人は、英雄の領域に足を踏み込んだ存在である、憧れのアダマンタイト級冒険者を一気に三人も見たことで、興奮しながら彼らを目で追い……扉に入った後で、誰からともなく顔を見合わせた。
「あれが、白雪の硝子……。」
「たった一人でアダマンタイト級冒険者にまで上り詰めた少女、であるか……。」
「なんというか、こう……世界が違う、って感じでしたね……。」
「まさに絶世の美少女だったな!……ま、俺はあのナーベっていう黒髪の娘の方が好みだけど!」
「ちょ、馬鹿! 聞こえたらどうするんだ!?」
興奮冷めやらぬ、そんな様子で四人はひとしきり騒いだ後……ひと時の非日常を終え、いつもの日常へと戻っていった。
アダマンタイト級冒険者の実力って実際どんなもんなんだろう……試験でやった事くらいは出来るよね? うーん……出来るって事にしてくれると助かります。
ただ、どこかにこれぐらいの事は出来る出来ないというソースがあったら教えてください。鉄の塊くらい破壊出来るよね?(純粋な眼)
今更(投稿から1年以上過ぎてる)なんですけど漆黒の剣はこれ以降は登場せず、どこか別の所で幸せになってもらいます。漆黒の剣が好きな人達には申し訳ないですがこれも一つの救済という事で一つ。