最終的に〇んだ方がマシなTS聖女   作:政田正彦

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つ、続きは……続きはないのですか~?
\アリマセンッ!!!!!!!!/

ぶっちゃけREDをキメてしまったせいで今それどころではない(何の話?)


クソデカハムスターって実際ちょっと怖くないですか?

 カルネ村の近隣、そこにトブの大森林の入り口はあった。

 深部まで進むと、人の手が加わっていない事から、昼でも暗くモンスターの巣窟と化し、森に慣れた狩人であったとしても決して油断ならない危険地帯となっているが、入口から入ってすぐ程度なら、何度も人の手が入っている事からそうそう危険なモンスターが出没する事は無い。

 

 ……が、今回用があるのは、その深部に差し掛かった辺り。

 人の手があまり入っていない、つまり、薬草が乱獲されたり荒らされたりしていない、薬草の宝庫である場所へと向かう。

 

 言うまでも無く、薬師垂涎の、可能なら是非とも訪れたい場所である。

 

 しかし、戦闘慣れしているとは口が裂けても言えないンフィーレアが一人で立ち入る事は即ち、自殺行為と言って差し支えない。

 

 そこで、アトリアやモモンという冒険者の出番である。

 やや過剰戦力ではあるが。

 

 入口まで訪れて、ンフィーは口を開く。

 

「ここから森へ入ります。あの……皆さんに、お願いがあるんですが、いいですか?」

 

「聞ける範囲なら、なんでも」

 

「ありがとうございます。まず……ここから先は「森の賢王」という魔獣のテリトリーとなっています」

 

「森の賢王……(それって、確か……)」

 

 モモンは、カルネ村に来るまでにアトリアから聞き出した森の賢王の情報を思い返す。

 

 森の賢王、それは、トブの大森林に住む、銀色の体毛に覆われた巨大な魔獣であり、人語を話し、人知を超えた魔法を駆使する、何百年も前から生きている森の支配者である。

 

 その時は表面上は冷静に説明を聞きながら、内心で「なにそのレアモンスター!? 会いたい!」と一人テンションを上げ「そんなモンスターが居るなら、いつか会ってみたいものですね」と魔獣への興味を示すだけに終わった。

 

「……その森の賢王のテリトリーだから、注意しようという話でしょうか?」

 

「いいえ、それもありますが……その森の賢王のテリトリーには、基本他のモンスターが入ってくることが無いんです。だからこそ……カルネ村は平和で居られた」

 

「……なるほど、つまり、カルネ村はその森の賢王という魔獣のテリトリーに他のモンスターが入ってこない事を利用して平和を維持している、という事ですね?」

 

「その通りです。そこで本題のお願いになるのですが、カルネ村の平和のために……森の賢王に出会ったら、殺さずに追い払うだけにしてほしいんです……身勝手かつ突然こんな事を言って……無理を言っている事は自分でも分かってます! でも……」

 

 そこまで口にしたところで、モモンがンフィーの肩に手を置いて「それ以上は言わなくても大丈夫です」と言った。

 

「その程度の事、造作もありませんとも」

 

「モモンさん……!」

 

「わ、私も頑張りますよ!」

 

 杖を胸元に持ち上げ、負けじと闘志を見せるアトリア。

 そしてそもそも森の賢王とやらにも全く興味を示さず一言も発しないナーベ。

 

 森の賢王……普通なら、そもそも戦いという選択肢すら上がる事は無い。出会ったら諦めるか逃亡かの二択。殺さずに追い払うだけ……というのは、そもそもその魔獣を容易く殺せるだけの実力者でなければ実行不可能……普通なら「無謀だ」と非難されるべきである。

  

 だが……この人達なら大丈夫だと、ンフィーレアはそう確信する。

 

「では私達からも、入る前に少し良いですか?」

 

「はい? なんでしょう」

 

「ナーベと私が、索敵の魔法を使えます。入る前に、モンスターが出没していないか、確認してきても?」

 

「もちろん! よろしくお願いします」

 

「では、私がその間の警備をしておきます。あまり遠くまで行かないで下さいね? 無用の心配でしょうけど」

 

「ええ。すぐ戻ります」

 

 そう言って、モモンとナーベは先行して森の中へと入っていき、程なくして木々や草の影でその姿が見えなくなる。

 彼らが戻るまで待機する事にしたンフィーレアとアトリアは、しばらくの間なんて事の無い会話をしながら時間を潰す事にした。

 

 

 モモンとナーベは森に入って、ンフィーレアとアトリアが見えなくなり、音も届かないであろう場所まで入った後、ふと立ち止まって周囲を見回した。

 

「この辺りでいいか……さあ、打ち合わせと行こうか!」

 

「という訳で、アタシが来ました!」

 

 頭上から元気な女の子の声がモモンの声に応え、驚いたナーベが頭上へ視線を向けると、そこには木の枝に乗って手を振る、男装した闇妖精(ダークエルフ)の少女の姿があった。

 

「アウラ様!? 驚かさないで下さい……一体いつから……?」

 

「えっ? アインズ様が森に入ってからすぐだよ?」

 

「全く気が付かなかった……」

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。

 

 ナザリックにおいて“階層守護者”という、所謂幹部のような存在のうちの一人であり、ナザリック地下大墳墓の第六階層を守護する闇妖精の女性である。

 

 見た目は活発そうな少女の闇妖精といった感じで、外見年齢相応の人懐っこい人畜無害そうな表情を見せている彼女だが、その実、テイマーとレンジャーとしての実力は一級品であり、群としての強さなら他の守護者を圧倒できる程だと言われている実力者である。

 

 森に入ってからすぐに彼女はアインズ達の目すら盗む形で追従し、呼びかけに答え、木の枝の上で悠々と手を振りながら現れた彼女は、既に一行の会話を聞いていたらしい。

 

「と、いう訳で……アタシが森の賢王なる魔獣を見つけて、アインズ様に嗾ければ良いのですね?」

 

「そうだ、話が早くて助かる。出来るか?」

 

「もちろんです! 森の賢王……多分アイツの事だと思います!」

 

「ではアウラ、任せるぞ?」

 

「はい! お任せを!」

 

 そう言うとアウラは足場にしていた木の枝から跳躍し、木々の間を跳んでどこかへと去っていき、あっという間に姿が見えなくなった。

 

「アインズ様、何をなさるおつもりですか?」

 

「森の賢王と戦う」

 

「……森のオーガとの戦闘で充分では?」

 

「いや、どうやらあの程度ではまだ足りんようだ。見ただろう? アトリアという人間の実力を。アレが最高位の冒険者として求められているスペックなのだとすれば、オーガを一太刀で一刀両断、ぐらいでは話題性に欠ける可能性がある……だが、森の賢王という数百年も生きた魔獣を撃退出来たとあれば、話は変わってくるだろう」

 

「なるほど……」

 

 要するに、アインズがモモンという冒険者に扮して達成すると定めた本来の目的……『アダマンタイト級冒険者として武功を立て、より知名度を獲得し、情報源となる有力者とのパイプを手に入れる』という目的を達成するための足掛かりとして、森の賢王とやらには悪いが戦いの場に出てもらう、という事だった。

 

 なお、この目的はアインズがでっち上げた目的でしかなく、実のところは彼が慣れない事をして感じるはずの無いフラストレーションが日に日に溜まっていくのを感じ、どうしてもこの世界を自分の脚で観て回りたい、そしてリフレッシュしたいというささやかな願望を叶えるのが本当の目的だったりするのだが……。

 

 君らの相手、精神的に疲れるんだよね、一回外出て気晴らしして来るわ。

 ……なんて、言えるはずも無く。

 

 ひとまずアインズはまだ見ぬレアモンスターに、がらんどうとした胸を期待で膨らませつつ、アウラに森の賢王を任せてアトリアとンフィーレアの所まで戻っていった。

 

「(さ~て……森の賢王、一体どんな奴かな?)」

 

 

 

 それから程なくして、合流した一行は早速森の中に入り、薬草採取に励んでいた。   

 そこではモモンとナーベは基本的に周囲の見張りと、ンフィーから時折薬草や毒のあるキノコについて教わる程度で、正直あまり役には立てなかったが、意外と言っていいのかどうか、薬草の採取にはアトリアが役に立つことになった。

 

「アトリアさんって、薬草採取のスキルがあったんですか?」

 

「いえ、薬草は分かりませんが、何といいますか、一度探そうと思った探し物の方角が分かる、というスキルがあるんです」

 

「ほう……(第六位階魔法の物体発見(ロケート・オブジェクト)に似た魔法……下位互換のようなものだろうか? 具体的な場所ではなく、方角が分かるだけのスキルなんて聞いた事が無いが……この世界特有のスキルという事か? 興味深いな)」

 

 とはいえ、スキルは当人にとってはゲームでいう手札のようなものだし、聞いて教えてくれるかどうかは……いや、アトリアなら意外と聞いたら教えてくれるのでは……? などと内心で考えるモモン。

 

 しかし、そもそも今アトリアが行使している力はスキルなどではない。

 【探し物の方角が分かる】というタレントである。

 

 彼女は自分のタレントが複数あるという事実を秘匿する為、自身の()()()()()に「自分のタレントは【早熟する】だと思っている」という設定をしているので、それがタレントであるとは言わず、あくまでそういうパッシブスキルであると表現する事になったのだ。

 

「それはどんな探し物でも探すことが出来るのですか?」

 

「え? えっと……分かりません、ただ自分では探し物を見つけられなかった試しが無くて……今までは落とした財布とかにしか使って来なかった特技なので、具体的にどの程度探せるかは分からないです」

 

「そうですか……(もし探せる範囲が俺の思っている以上だったら……なんて、考えすぎだろうか? そもそも、たかがスキルでこんなに見つけられるものか……? 彼女が自分で認識していないだけで、別のスキルを併用している可能性もあるか……? この世界の常識が分かり始めたと思ったんだが、まだ良く分からないな)」

 

 結局好奇心に負けて質問を重ねてみるものの、それの正体やどのようなスキルで、どのくらい有用かはいまいち要領を得ない形で終わった。

 

「わっ!? もうこんなに……! 助かります、これならすぐに必要数集め終わりそうですね」

 

「それなら良かったです! えへへ、こんな形で特技が役立つなん……!」

 

 言葉の途中で、ピクリと何かに反応するように動きを止め、どうかしたか聞こうとしたンフィーレア達にシッと口元に指を立てながら注意を促す。そして、そのまま耳を澄ませるように耳の側に手を当て……。

 

「……これ、は……何……? 何か……大きなモノが……とてつもない勢いで、こちらに向かってくる……?」

 

「えっ……!?」

 

 言いながら、ある方向へと視線を向けるアトリア。【聴覚の強化】というタレントによるものであるため、他の三人は周囲を警戒するも音を察知出来なかったが、次第に彼女の言う音が遠くから鳴り響いているのを感じて警戒度を強める。

 

「……森の賢王、ですか?」

 

「ハイ……間違いないかと。一直線にこちらに向かって来ています」

 

「(アウラだな……どうやら上手くやったらしい)……二人は、下がっていて下さい。ここは私達二人でやります」

 

「そんな!? 危険すぎます! 私も戦います!」

 

「アトリアさん。私達が今から相手にする森の賢王は、恐らくこれまでの相手とは比較にならない程強い。それを踏まえて考えると……私ではンフィーレアさんを守りながら戦うのは難しいかもしれない」

 

「それは……!」

 

「だからアトリアさんにはこれまで通り、ンフィーレアさんを全力で護って……私が戦っている隙を見て、すぐさま彼を連れて逃げる準備をしてほしいのです。依頼人の命が最優先ですから」

 

「……くっ、分かりました……! でも、モモンさんも無理はしないで下さい!」

 

「もちろん。無理を言ってすみません」

 

 アトリアは渋々といった顔で了承し、ンフィーレアの側で防御の魔法を張った。

 

 なお、ここでアトリアが渋々とは言え潔く引き下がったのは、演技の鬼才の効果により、彼女は自身の本来の能力を隠す為、低い実力であるように振る舞っている……要するに弱いフリをしている演技の一環である。

 

 そしてモモンがわざわざ彼女を引き下げて自分とナーベでやる、と言ったのは、純粋に手柄を分散させると元々アダマンタイト級冒険者であるアトリアの功績だと思われてしまいかねないと危惧した為であり、ンフィーレアの身の安全が最優先だ……というのは建前に過ぎない。

 

「(さて……鬼が出るか蛇が出るか……)」

 

 こうして、舞台は整った。

 

 

 少しして、森に四足獣の足音が鳴り響き、段々その大きさが増していく。

 それは、モモン達の方向へと真っすぐに向かっている事を示唆している。

 

 モモンは二本の大剣を構え……ナーベも魔法詠唱の準備をする。

 

 そして、地面が揺れる程の大きな音となって、その姿が現れるかと思われたその瞬間。

 

 突如、モモンへ向かって、緑色の鞭のような物が勢い良く飛び出し、それを奇跡的な反応速度で対応したモモンが、大剣をクロスさせる形で受け止める。受け止めた大剣から衝撃が走り、生き物の身体の一部と、金属で出来た剣がぶつかり合ったとは思えない程硬質的な音が鳴り響く。

 

「ヌッ! グッ……!」

 

「モモンさん!」

 

 モモンが力任せにその鞭のようなものを跳ね退けると、鞭のようなものはまるでそれ自体が生き物であるかのようにスルスルと影へと消えて行く。

 

 次いで、追撃を警戒するモモン達に対し、どこからともなく声が届く。

 

――ほう、今のを受け止めるとは……やるでござるな。

 

「……ござる?」

 

――しかし、マグレで一回受け止めた程度で良い気になってもらっては困るでござる。某の領域に侵入した以上、その命、必ずもらい受けるでござるよ!

 

「……ほう、随分な物言いだが……姿が見えないな? ひょっとして森の賢王は臆病者なのか?」

 

――……言うではござらんか。我が一撃を受け流した褒美に、その安い挑発、乗ってやるでござるよ! この威容を前に恐怖するがいいでござる!

 

 そう言うと、モモン達の前方に、大きな影が現れた。

 その影は段々明瞭になっていき、やがてその姿の全容が明らかになる。

 

「なんと……!?」

 

「ククク……そのヘルムの下から、驚愕と畏怖を感じるでござるよ!」

 

「……」

 

「ククク……恐怖で言葉も出ないでござるか? まあそれも致し方無い事でござる。恥じる事は無いでござるよ」

 

「お……」

 

「お?」

 

 

「お前の種族名、もしかして、ジャンガリアンハムスターとか言わないか……?」

 

 その魔獣の姿は、確かに……確かに、光の当たり方によってはその毛色、銀色に見えなくもない。それに巨大だし、聞いての通り人語も話している。人知を超えた魔法を駆使するとか、何百年も前から生きているとかはちょっと疑わしいが……。

 

 しかし、それをモモンが住んでいた世界の言葉で正しく形容するとすれば、全く別の物となる。

 

 

 バカみたいにデカいハムスター、それがモモンから見た森の賢王であった。

 

 

「……なんと!? 某の種族を知っているでござるか!?」

 

「知っている……というか……俺のかつての仲間が、同じような生き物を飼っていた」

 

 森の賢王から、なんと! という驚愕と歓喜の声が。ナーベから、おお、という感嘆の声が。アトリアとンフィーレアから、ええ!? という驚愕の声がそれぞれ同時に上げられた。

 

「そ、そんな……!? あんな恐ろしい魔獣を、事もあろうに、飼っていたって……!? 一体どんな人物ならアレを手懐けられるっていうの……?」

 

「えっ……?」

 

「そんな事って……いや、そんな……でも、モモンさんの知り合いならあり得る、のか……?」

 

「(アレェ!? 何言ってんのこの二人!? お、恐ろしい魔獣!? これがか!? どう見てもただデカいだけのハムスターなんだが!?)」

 

「そ、その種族は今どこにいるでござるか!? 某、長年独り身故、同族を探しているのでござる! 子を成し繁栄させなければ、生物として失格でござるが故に!」

 

「ああいや、それは……すまん……俺も今その仲間を探している最中なのだよ。もうその同族とやらも、生きているのか死んでいるのかさえ分からん」

 

 咄嗟に、モモンは嘘をでっち上げた。

 

 既に「かつての仲間が飼っていた」と発言してしまっている以上……それを「いや実はサイズ感はこんぐらいで」と訂正して、折角出来たこの「モモンのかつての仲間は、森の賢王の同族を飼いならす程の猛者である」という認識をわざわざ正す必要も無いと考えた為だ。

 

「そうだったでござるか……」

 

「すまんな、俺では役に立てそうにない」

 

「いいでござるよ、どこかに同族が居る、そう分かっただけでも充分でござる!」

 

「(うん、まぁ……どっかには居るんじゃないかな? 多分。知らないけど)」

 

「それじゃあお互い探し人が見つかるといいでござ……じゃなかった! 忘れるところでござった……情報は感謝するでござるが、それはそれ、これはこれでござる! さあ! 命の奪い合いをするでござるよ!」

 

「えっ、まだやるんですか……」

 

 当然でござる! とばかりに森の賢王はふんすふんすと鼻息を荒くして長い尻尾を躍らせ、闘志を露わにしている、が……対してモモンはすっかり闘志を……というか興味を削がれていた。

 

「(森の賢王とか言うから期待したのになあ……)」

 

 結果はハズレ……と言いたいところだが、どうもアトリアやンフィーレアの反応を見るに、この世界の住人である彼女らの目には、この馬鹿デカいだけのハムスターが、恐ろしく、かつ強大な魔獣に映っているらしい。

 

 であるならば、一概にハズレとも言い難いのがまた厄介な所。

 正直言って二人の目が無かったら、適当にスキルを使ってハイ終わりにしてさっさと帰りたいところだ。

 

「……今ならまだその命までは取らないでおいてやるが?」

 

「怖気づいたでござるか? 闘いとは、命のやり取りとは、つまるところどちらかが死ぬまで続くもの! 一度始めてしまったのなら尚更、引くわけにも逃すわけにもいかぬでござる!」

 

「あっそう。……では、始めるとするか!」

 

 そうして無理矢理自分を鼓舞し、大剣を構え直したモモンと、それを見て両手に雷を纏い、放つ準備をするナーベ。

 

 ……とは言え。

 

 

「でやぁぁぁっ!!」

 

「ふんっ」

 

「おりゃあああっ!!」

 

「せいっ」

 

「どりゃあああっ!!」

 

「……」

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

「はぁ……」

 

 

 その力の殆どを自ら封じているとはいえ、そのステータスはレベル100。

 そして、森の賢王のレベルは……せいぜい30レベル強といったところ。

 普通に戦っては勝負になるはずもなく、モモンは途中からナーベには少し離れて「隙を見つけたら魔法を打て」と指示し「如何に真剣な戦いっぽく魅せられるか」という点でしばし苦戦しつつ……。

 

「……そろそろ終わらせるか」

 

「何を!? まだまだ勝負はここからでござ……」

 

「ヌウンッ!!」

 

 戦いが始まってからものの数分で、もう充分だろうと感じたモモンが、戦闘におけるやり取りを一切合切無視し、野球のようなフォームで森の賢王の腹に大剣を叩きつけ、その膂力に物を言わせてそのまま真後ろの巨木まで吹き飛ばす。

 

 ハムスターみたいな見た目の癖に蛙を踏み潰したような声を上げた後、ずるずると巨木からずり落ち、最終的に地面に倒れる形で動かなくなった森の賢王は、そのままの体勢で情けない声でこう告げる。

 

「……こ、降参でござる。い、命だけは……!」

 

「(ええ~……)」

 

 命の奪い合いとか、どちらかが死ぬまで終わらない、とはなんだったのか……。

 どうやらもう一歩も動けないらしい。というより、実力の差をようやっと理解した、といった所だろうか……。

 

 いっそ殺してしまおうか? という考えがモモンの脳裏をよぎった途中で、ンフィーレアとの「殺さずに撃退するだけに留めて欲しい」という約束を思い出せたのは、お互いに、主に森の賢王にとって僥倖だったと言えるだろう。

 

 しかし、その後……。

 

「負けたからには、拙者、殿に付き従い、その仲間とやらを見つける手伝いをするでござるよ! そうすれば拙者の同族についても分かるかもしれぬし!」

 

「ええ……(どうするか……?)」

 

「も、森の賢王を屈服させ、従わせるなんて……! 流石です、モモンさん!」

 

「モモンさんはやっぱり、英雄の中の英雄だったんだ……!」

 

「……フッ」

 

 チラ、と後ろの三人を見れば……アトリアとンフィーレアは「伝説を目にした!」とばかりに瞳を輝かせ、そんな二人の様子を見てさしものナーベもこれにはニッコリである。

 

「(なんかもう後に引けなくないか、これ……?)」

 

 結局、モモンは森の賢王を手懐けた、と言った方が名も上がるか……と自分を納得させ、森の賢王を自分のペットとして従える事にしたのだった。

 






森の賢王「いつか殿の仲間のじゃんがりあんはむすたあ?なる種族に会える日が来ると良いでござるなあ!」
モモン「(今更、実は大きさ的に無理とは言いづらいな……)」


そこのお前ッ!8月は、31日まであるんだぜ!
……予約投稿設定間違えちった……。
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