最終的に〇んだ方がマシなTS聖女   作:政田正彦

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友達と死ぬ程ギスったゲーム、一人でやるとクッソおもろい
……ので、続きはありません。


謝るから許してくれませんか?

 

 

 

「王都に戻った……?」

 

「はい。“例の件に進展があった、その事を王都に報告しなければならない”との事で……それをモモンさんに伝えて欲しいとだけ言って、すぐに発ちました」

 

 あれから三日経ち、モモンは謎の吸血鬼ホニョペニョコを討伐後、その詳細な報告と、報酬の相談の為に冒険者組合へと立ち寄っていた……そこで、友好関係の構築に成功しつつある……()()()()()()()()アトリアというアダマンタイト級冒険者に会っておこうと考えたのだが、どうやら相手には急ぎの用事が入ってしまったらしい。

 

 例の件とはなんなのか、王都に居る誰に、何を報告するつもりなのか……あるいは、彼女もまた今回の件に関わりがあるのではないか、と考えたが、そうであれば()()()()が気付かない筈も無い。

 

 であるなら、純粋にアダマンタイト級冒険者にしか出来ない仕事、その多忙さ故か、と考え直す。

 

「そうか、伝言ありがとう」

 

「いえ、それでは……組合長を呼んでまいりますので、少々お待ちください」

 

「ああ」

 

 そう言って待合前の椅子に腰かけつつ、今後の方針について、モモンは考えをまとめ始めた。

 

「(しかし、発つ伝言だけ残して行ったという事は……それだけ急を要する話だったか、あるいは、漆黒のモモンが……まだ彼女の期待に応えられる程ではなかったという事でしょうかね? 前者ならともかく後者なら……?)」

 

 もしかすると、()()()()()に関する何かがそこに……とすれば、彼女から辿れば芋づる式にその者に関する情報も引き出せるかもしれない。

 

 見当違いの可能性もあるが、やってみる価値はあるだろう。

 その為には、まず……。

 

「あの女……確かに居なくなれとは常々思っていましたが、我々に断りなく勝手に去るとは、なんと無礼な……やはり殺すしか……」

 

 般若のような顔で彼女への憎悪を露わにしている同僚(ナーベ)を宥めておかねばなるまい。モモンは自身の父の采配に些か疑問を覚えながら、少し遅れてやってきた組合長の顔を見て立ち上がる。

 

「(ひとまず報酬の件が済んだら……ンァアインズ様ッ!! ……に報告しなければ)」

 

 

= = = = = = = = = = =

 

 

 ……と、いう報告があってからすぐ。

 やや自分の作ったNPC(息子)のテンションに精神的な疲弊を感じつつ、目の前の書類に目を通していると、アインズの下にまた伝言(メッセージ)特有の発信音が鳴り響く。

 

「(え~……何か伝え忘れでもあったのか?)……伝言(メッセージ)

 

『失礼致します。定刻になりましたので、現状で分かった事の報告の為、ご連絡させて頂きました』

 

「(ん、なんだ今度はセバスからのメッセージか)うむ、話せ。お前が王都で見たものを」

 

『ハッ……ではまずは……』

 

 セバス。ナザリック地下大墳墓において、階層を持たぬ階層守護者とも呼ぶべき存在であり、戦闘メイドプレアデスを含む全てのメイドの上司であり、見た目は白髪で偉丈夫のナイスミドルであり、ナザリックの中でも珍しい、カルマ値が善寄りのNPCである。

 

 彼は情報収集の為に商人の娘(正体は戦闘メイドプレアデスの一人でありソリュシャン)に仕える執事として王都に潜入していた。

 

 それに加えて今はとある正体不明の()への餌としての役割も持っていた。

 

 

 街道にて盗賊達を、あるいはそうだったモノをナザリックへと送った後、彼はシャルティアと一旦分かれて王都へと先に潜入していた。

 

 だが、その間シャルティアは何者かの襲撃を受け、精神支配の魔法を受けるという異常事態に陥っていたのだ。

 

 シャルティアの種族であるヴァンパイアを含むアンデッドという括りに入る種族の特徴の一つに……“精神的な攻撃に対する完全耐性”を有する、という物がある。

 

 にも関わらず、シャルティアは何者かの手によって精神支配を受けていた……そして、その解除の為に放った最高位の魔法、その更に上、超位魔法と呼ばれるそれによって精神支配の解除を試みた所、それを弾かれてしまうと判明した。

 

 完全耐性すら貫通し、超位魔法でも解除が不可能な力……そんなものは、一つしか該当するものが無い。

 

 

 ()()()()()()()()……ユグドラシルにおいて、文字通り世界を変えかねない力を有する規格外のアイテムの力によるものとしか考えられなかった。

 

 

 つまり、()()のだ。

 

 ナザリックと同じようにユグドラシルからやってきた者が。

 ワールドアイテムを有する何者かが。

 あるいはそれに連なる何者かが。

 そして大事な友人の娘にも等しいシャルティアに手をかけた、敵が。

 

 

「……では、お前が王都で活動中、あちらからの動きは何もなかった、と?」

 

『ハイ。シャドウデーモン達にも常に私の周辺を探らせていますが……食い付いた様子は見えません』

 

「(警戒心が強い相手か……単独で居るところを狙うつもりか? いや、こちらが警戒しているという事もあっちは分かっているハズ。だとすれば、次もまた同じ手で来るとも限らない、か。相手がプレイヤーなら尚更だな)……そうか。分かった。しかし、シャルティアと相対した存在の目的が不明である以上はまだ油断するなよ。もしその者だと思われる存在と遭遇した場合、撤退を最優先しろ」

 

『……なんと、寛大なお心遣い感謝します。……そしてもう一つ、とある人物についての報告になるのですが……』

 

「ふむ……?」

 

『その者の名は……ルーヴィン。かつてこの王国に居たアダマンタイト級冒険者であり、今は既に故人となっていると言われている男です』

 

 セバスの調べによると、ルーヴィンという男による影響は強く、その男がまだ生きていたころの王国は、今よりかはまともな国だったらしいという事だった。

 

 その男は優れた暗殺者の職業を修めており、闇夜に紛れて相手を暗殺する技術に加え、この世界基準で見れば超人じみた身体能力を持っていたとされる伝説の男であり……彼が成した偉業、そして悪行は多岐に渡る。

 

 偉業は省略するとして……彼の成した悪行は彼の死後に明らかになった事だが、彼は“誰か”の命令を受けて当時のこの国の貴族を暗殺していた事が判明したのだ。

 

 生前英雄視されていた彼だったが、死後にこのような犯罪が白日の下に晒され、彼の評価は地の底に堕ちる……かと思われたが、実は民衆の中ではその逆、むしろ更に彼への評価が上がり、一部では伝説的な存在ですらあった。

 

 何故か。

 

 その暗殺した貴族の全てが、暗殺の後、裏で犯罪の数々に手を染めていた事が分かったのだ。……例えば手にかけた奴隷達の詳細、例えば倉庫に隠されていた無数の麻薬の袋、例えば突然居なくなった村の子供の変わり果てた姿、例えば……。

 

 つまり、国から見れば、殺されて当然の屑であり貴族と呼ぶ事すら烏滸がましい犯罪者とはいえ、国に住む貴族を大量に虐殺した大罪人でもあり……そのような浮き彫りにならなかった犯罪の温床、そこに発生した膿を正確に摘出した偉人であったのだ。

 

「ふむ……そのルーヴィンという男に裏で指示をしていたのが、プレイヤーである可能性もある、と?」

 

『はい。……そして、そのルーヴィンが居なくなり、彼が貴族を暗殺していた犯人だと判明してしまってから、生き残った貴族達やその子孫は枷を解かれた獣のように、禁制品や奴隷売買に手を出しており、治安が一気に悪化したと見えます』

 

「なるほど……(まあ治安の悪化はどうでもいいとして……その指示を出していたのがプレイヤーだったとするなら、現状の王国を放っておくはずがない……ルーヴィンの後継者を見つけるか、自身の手で何か対策を講じるハズ……いや……待てよ……?)」

 

 

 

――本音を言えば、少し助けてほしい事があったりするんですが。

 

――機密性のある情報を含む依頼内容なので、ひとまずこの話はおいておきましょう。内容を聞いたから手伝ってもらうと言われても、困るでしょう?

 

 

 助けて欲しい事。

 

 機密性のある情報。

 

 ……そして、エ・ランテルから王都へ帰還するタイミング。

 

 

「(……もしや、アトリアが、()()なのか……? あるいは、ルーヴィンという男の後継者が……)セバス……仕事を増やしてしまってすまんが、もう一つ調べものが出来たぞ」

 

『何なりと、お申し付けくださいませ』

 

 

 

= = = = = = = = = = =

 

 

 

 一方その頃。

 

「へっ……ぷちゃんっ!!(なんかまた寒気が……あ~……休みたい……サボりたい……働きたくない)」

 

「ん? 貴様は……」

 

「(ゲェッ!!)」

 

 アトリアは王都に報告の為に戻り、その後王城にてラナーの所へ向かう途中、ばったりとある人物と遭遇していた。

 

 髭を綺麗に切り揃え、見事な体格をしている偉丈夫であり、その身なりの良さから高貴な出生である事が窺える、が……。

 

「誰かと思えば、アトリアではないか。フン、この俺に会いに来たのか? 事前に言ってくれれば出迎えを寄越したものを……」

 

「いえ、違います」

 

「照れなくともよい! ワッハッハ!!」

 

 頭の方はまるで絵に描いたような“腐敗した王国の王族”……あるいは傀儡、あるいは木偶、あるいは馬鹿王子。

 

 自分は王族である=王族が敬われるのは当然=自分は敬われて当然の存在だと認識しているなんとも残念な人。

 

 

「お目にかかれて光栄です……バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ王子」

 

「うむ。お前も元気そうだな、アトリアよ」

 

 

 この国の第一王子の姿である。これが……。

 

 片や王子、片やアダマンタイト級冒険者、一見面識などなさそうに見える彼らだが、実はお互いに浅い様な深い様な、切ろうとしているのに切ってくれない関係にあった。というのも……。

 

「で、ここに来たという事は……例の件の返事を聞かせてもらえるという事でいいのだな?」

 

「いえ、ですから違います。私はラナー様に用があって来たのです」

 

「……なんだ、また()()()か。あの愚妹め……()()アトリアを断り無く手足に使うとは……」

 

「いえ、私がやりたくてやっている事ですから、お気になさらないでください」

 

「そうか? いやしかし」

 

「お気になさらないでください」

 

「う、うむ」

 

 そう、このバルブロ王子……実はアトリアに並々ならぬ感情を抱いている。

 そもそもの事の発端はアトリアがひたすらに迂闊だったのが原因なのだが……。

 

 というのも、アトリアは戦闘に関わるタレントの他に【美形に育つ】【性的な交渉において相手に確実に快楽を与える】【体臭がすこぶるいい匂いになる】【ハゲない】といった、外見や性的な魅力に対して影響を与えるタレントをいくつか所有している。

 

 そのくせ「顔を隠したりしたらナザリックからあらぬ疑いをかけられたり怪しまれたりするかもしれない」と考え、下手をすれば国で黄金と呼ばれる王女にも並ぶ程の美しさを持つその顔や髪を晒し、すれ違った際に嗅いだことも無い良い匂いがすると来た。

 

 それによってどのような事が起きるか。

 

「だがいつまでも待たせるなよ。私も気が長い方では無いからな」

 

 そう言ってバルブロがアトリアの白銀の横髪を掬うように手で触れると、アトリアの髪が光に反射してキラキラと輝きながら梳けていく。アトリアはそれを表情一つ変えずに手でやんわりと退けて、一歩下がる。

 

「残念ですが待たれたところで私は貴方のモノにはなりませんよ」

 

「なるさ。お前の意志がどうであれ、な」

 

 とまあこのように、アトリアの外見に目をつけた輩が、入れ食い状態で釣れるのである。バルブロは知らない事だが、既にアトリアは貴族のほぼ半数の男やその息子達によって求婚されたり自身の領へ勧誘されたり酷い時には無理矢理誘拐されかけたりする事すらあり……。

 

 更に酷いので言えば、突然アトリアの母親を名乗る人物がアトリアの拠点に押しかけ「あなたの本当の名前は~」「あの時はまだ貧しくてどうしても手放すしか無くて~」「でも今の貴方と私なら領を立ち直らせる事が~」とまくしたて、最終的に「貴女も家族よ」としてきた極まった者も居た。

 

 ……これ以外にもアトリアの拠点として借りている小さな屋敷には連日そういった輩が日替わりでやってくる為、彼女はかつて倉庫扱いしていた場所で住むしかなくなっている。

 

 バルブロもその少し過激な者達の中の一人であり、本当にたまたまアトリアがバルブロとすれ違い……逆に言えばすれ違っただけでここまで執拗に粘着されているというのが事の経緯である。

 

 以降は何度断ってもしつこく自身の愛人になる事を要求、いや、命令し、それでもいう事を聞かないのでなんとかアトリアの弱みを握って言う事を聞かせられないか、と考えている最中。

 

 ……もっとも、孤児院代わりの神殿によって育てられ、今やその神殿は孤児を悪徳貴族に売り払っていたという悪行が露呈して潰れてしまい、天涯孤独の身となったアトリアに弱みらしい弱みも無く、もういっそ強引にでも襲ってしまおうか、などと考えている。

 

 まあ、バルブロがアトリアを襲う、なんて事はレベル差的にどう足掻いても実現しないし、アトリアがアダマンタイト級冒険者である事も知っているが、バルブロの頭では「アダマンタイト級冒険者? うるせえ知らねえ! こんな華奢な女が俺より強い訳ねえだろ!」という認識である。

 

 一方のアトリアは……。

 

 

「(なんの罰ゲームでこの後すぐ死ぬ頭残念馬鹿王子の愛人にならねーといけねえんだよ?)」

 

 

 ……と、最早目の前の男に「早く死なないかなぁなんならその方がコイツの為だしなぁ」等と考えている始末であった。

 

「では私はそろそろ行きますね」

 

「待て待て、茶でもどうだ? いい菓子もあるぞ?」

 

「それは大変申し訳ございませんがこちらも急いでおりますのでまたの機会にお願いします(またの機会があればだがな)」

 

「むう……」

 

 にべもなくスタスタ歩き去るアトリアの後ろ姿を見ながら、バルブロは唸り声を上げ、次に「ツレない態度も悪くないな……」等と思いながらそれを見送った。

 

 

= = = = = = = = = = =

 

 

「ラナー様、蒼の薔薇の皆様、アトリア様がお越しになりました」

 

「通してくれる?」

 

「ハッ」

 

 ややひと悶着ありながら、ラナーの部屋に訪れたアトリア。扉が開けられると同時に頭を下げ、恭しい挨拶をした後室内の様子を確認すれば、前回同様ラナーと蒼の薔薇の者が座ってアトリアを待っていた。ただし前回と少し違い、蒼の薔薇のメンバーがラキュースとティナの二人だけだった。

 

 彼女達は元々多忙の身のアダマンタイト級冒険者である。恐らくは今は別の用で出払っているのだろう。

 

「それで、どうでした? エ・ランテルでの調査は……と、聞くまでも無いですけど」

 

「その件に関しましてはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」

 

 

 アトリアがエ・ランテルで行った調査の結果……八本指の麻薬部門、その末端であり、エ・ランテルで活動していたグループのほぼ全ての摘発に成功し、重要な情報の回収にも成功した。

 

 ……そう、調()()の結果がこれである。

 

「……ってどう見てもただの調査でこうなる訳無いわよねえ」

 

「す、すみません……」

 

 そう、今回の件、上手く行ったから良いものの、経緯だけ見ればアトリアの独断専行、しかもたった一人で八本指に喧嘩を売る行為であり、エ・ランテルで活動中だった八本指の構成員……の上司である麻薬部門の者達は今頃突然ごっそり構成員が摘発されて混乱中であるハズだ。

 

 これでもし一人でも逃そうものなら、アトリアは完全に八本指にマークされ、今後の活動に支障が出ていたかもしれない。

 

 ……いや、既にそういった攻撃があった事で、八本指の麻薬部門の者達は警戒し始めており、支障は既に出始めている。

 

 だが、捕まった者達がならず者から集められた下っ端の構成員に過ぎない事や、繋がっているであろう貴族達の力も有限である事から、彼らが釈放されて組織にアトリアの情報が洩れるという事は無い。

 

 また、八本指の幹部達も一枚岩ではなく、もし他の幹部に自身の部下達がごっそり減らされ、エ・ランテルから手を引かざるを得なくなったなどと言う情報が知れれば組織内での自分の立場が弱くなる事から、この事を知っているのは八本指でもそうは居ない。

 

 このため、今の所は幸い大きな支障は出なかったと言えるだろう。

 

「本当にすみません、以後気を付けます……」

 

「気を付けて欲しい。貴女のせいでこちらまで被害を被るのは勘弁」

 

「ちょっとティナ……いいじゃない、上手く行ったんだし。それに、アトリアちゃんが思った以上に優秀だったのは嬉しい誤算だわ」

 

「そうですね……今回蒼の薔薇の皆さんとアトリアさんが持ち帰ってくれた情報を照らし合わせれば、もしかしたら何か分かるかもしれません」

 

 そう言いながらラナーが視線を落とした先には、ラキュース達が手に入れた八本指の構成員が所有していた暗号のようなものが書かれた紙と、アトリアが手に入れた書類の山のような物。

 

「まずこっちは……変え文字式暗号ですね」

 

「読めるのですか?」

 

「そんなに難しいものでは無さそうです。そしてアトリアさんの持ってきたこちらは……ずらし暗号、こちらもそう難しくは無いですね……うーん……ちょっと考えてみます」

 

 そう言いながら思考の海へと入り、ブツブツと呟きながら自室に向かうラナー。

 そしてその後ろ姿を、信じられない物を見た目で見送っていたのは、元盗賊だったティナである。

 

「……信じられない、一目見ただけでどんな暗号か分かるなんて」

 

 彼女は元盗賊と言うだけあり、暗号文への理解も長けている。だが、それでも一目見ただけではそれがどのような暗号なのかまでは理解出来ない。

 

「ええ、彼女は私の知る中で最も天才の二文字が似合う人よ」

 

「凄いですね……」

 

 そうして少し待つと、紙とペンを手に笑顔のラナーが当たり前のように「解けました」と言って戻ってくる。

 

「まずラキュースの方だけど、こちらは指令書とかではなく、建物や村の名前が記されていたわ。王都内では7か所あるわね」

 

「……これが黒粉の保管庫って事?」

 

「いえ、恐らくは囮……他の部門の重要拠点等でしょうね」

 

「まさか……仲間を売って自分達から注意を逸らそうって事ですか?」

 

「恐らくは」

 

「なんて下劣な……」

 

「そしてもう片方、アトリアさんが持ってきた書類には、貴族の名前が書かれていました」

 

「貴族の!? それって……まさか、八本指と繋がっている貴族の名前って事!?」

 

「恐らくは……しかしそうなると、何故エ・ランテルで、それも構成員に過ぎないはずの彼らが、それも麻薬部門のハズであるにも関わらず、どうしてこの情報を持っていたのか、という疑問が残ります」

 

「…………あっ」

 

「……アトリアさん?」

 

「あ、あ~……え~……っと……その……あの……実はぁ……」

 

 

 

 

 

 

妖精(フェアリー)を奴隷にしようとしていた場所を戦闘の余波で構成員ごと生き埋めにした!? なんでこんな大事な事黙ってたの!?」

 

「……ドジっ子?」

 

「す、すみません~~~っ!! あ、あまりに見た光景がショック過ぎて記憶から消してました~~~っ!!」

 

「……つまり、本来麻薬部門であった彼らは、より大きな利益を求め、奴隷部門に断り無く妖精を貴族のペットとして売り込もうとし、このリストはそんな彼らが客として目星をつけていた者達、という事になりますね……恐らくは奴隷部門から麻薬部門の彼らがこの情報を盗み出したか独自に調べ上げた物だと思いますので、信用性はありますね」

 

「良い? これから先、重要な情報は何があってもまず真っ先に私かラナーに言いなさい! 良いわね!?」

 

「はひぃ~~~っ!! もちろんですっ!!」

 

「他にも隠している事があったりするんじゃないでしょうね……?」

 

「無い……無いですよ……?」

 

「……あるのね!?」

 

「無いですう……!!」

 

「宙づりにして、激しく揺すってみる。何かがポロリと落ちるかも」

 

「やめて……やめて……!」

 

 アトリアはこの後半刻程ラキュースとティナに絞られ、とうとうめそめそ泣き始めた辺りでようやっと解放された。いくら不愉快でもそれが重要な情報に繋がるかもしれなかったなら、黙っているのは良くないと散々口を酸っぱくして言い渡され、色々と隠し事の多いアトリアは肩身がきゅっと狭くなるのを感じた。

 

 

 

 ……これは、もしもの、例えばの話だが……その少女のあまりにもあんまりな姿を見て、実はアトリアがレベル100かそれ以上の強者であり、重要な秘密を握っているキーとなる人物であると看破する者が果たしているだろうか。

 

 

「(……アトリア、アダマンタイト級冒険者……仲間に詰め寄られて涙目、強さ、感じない……シロ、と……さて、セバス様やデミウルゴス様に報告しに戻らなければ)」

 

 

 人知れず、その部屋のテーブルの影の中で何かが蠢いたが、気付く者は誰も居なかった。

 

 

 







バルブロ王子「お前は俺のものだ……」
デーモン「(この国の王子の姿か?これが……)」

アトリア「ひんっ、ご、ごめんなさい……!」
デーモン「(アダマンタイト級冒険者アトリアの姿か?これが……)」




お気に入り一万突破ありがとうだ()~~~!(天竜人)


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