最終的に〇んだ方がマシなTS聖女   作:政田正彦

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続きはあります(エイプリルフール)



仲間になりたく無さそうな目でこちらを見ている!


 

 

 

 

 アトリアが王都に戻って来て、あれから二週間程経過した。

 その間、王都は今までと変わり無く、特に大きな事件が起きる事は無かった。

 

「(そろそろリザードマン編が終わったくらいの頃合いかな?)」

 

 リザードマン編の大きな流れとしては、まず、ナザリックの面々が当面の課題である未知の敵に対する戦力の強化の為、リザードマンを上位アンデッドの素体にする事を目的とした、リザードマンの集落を襲撃する作戦が決行される所から始まる。

 

 このリザードマン達は、ナザリックに抵抗するべくバラバラだった一族をまとめ上げて戦いに挑み、一度は勝利を収めるものの、階層守護者コキュートスに敗北……その後、戦い、そして殺した張本人であるコキュートスが彼らの戦士としての才、ひいては武人としての潜在能力を見抜き、「惜しい」と考え、どうにか彼らを殺さずに済むように考えた結果「いずれ世界を支配したときの為に、恐怖や死に頼らない、種族を統治する際の実験」と称し、彼らを庇護下に置くことを提案。

 

 これをアインズはNPCでありながら自ら考え、成長したコキュートスの姿に感激し、彼の案を採用し、リザードマン達は多少の制限はありつつも、ナザリックの庇護下として繁栄を約束された、というのがこのリザードマン編の結末である。

 

「(羨ましい。俺もリザードマンに産まれたかった。いや、前に一度産まれたけど)」

 

 

 そしてこのリザードマン編……アトリアにとっては自身に全く関係ない話と言わざるを得なかった。

 

 関わろうにも、わざわざ彼らの集落に赴く理由が無い為不審がられるに決まっているし、関わったところで何か利があるかと問われると、特に無い。それどころか、下手に関わってリザードマン編の結末が変わってしまったらリザードマン達に悪い。

 

 故に、アトリアはこの間特に何かをするでもなく、いや、仕事はしていたが……王都でいつもと変わらない冒険者業をしていた。

 

 八本指の件での進捗状況も「今は一斉に摘発する為に証拠を用意している最中である為、下手に動かないで欲しい」とラナー本人、そして蒼の薔薇の面々からも釘を刺されてしまっている。

 

 本人にも言われなければ自分から関わろうとは思っていないのだが、どうも以前の、拠点を丸ごと叩き潰して構成員を生き埋めにし、それを黙っていた、というのが信用を大きく損なう事になってしまったようだ。

 

 ……ちなみに、アトリアがこの大ポカをやらかしたのには、一応理由……というか、原因はある。

 

 

 一つは、拠点襲撃時、アトリアは演技の鬼才を使っていなかったという事。

 

 そしてもう一つは、アトリアは演技の鬼才を使っている際、目立たぬよう、そして怪しまれぬよう、アダマンタイト級冒険者として最低限の力しか使わないようにセーブしており、それを悟られない為の演技をしている。

 

 つまりどういう事かと言うと、彼女が演技している『アダマンタイト級冒険者白雪の硝子のアトリア』は単騎で中規模程度の拠点を叩き潰して構成員を生き埋めになんてしない、否、()()()()のである。

 

 この矛盾が今回のポカの原因。

 

 アトリアにそんな事が出来るはずが無い、だが、キチンと情報を持ち帰ってしまっている以上、出来ないだの知らないだのは通用しない。

 

 ……仕方ないので、忘れていた、という事にした。

 というのが、この不自然な大ポカの全容である。 

 

 そして、こうなると一つ、大きな問題が浮上する。

 

 

「(なんか最近、無茶な依頼押し付けられ始めてる気がする……私の実力、怪しまれてるよな~……)」

 

 

 そう、これでもう、アダマンタイト級冒険者として最低限、という体は成せなくなってしまった。隠していた実力の一端をこうして知られてしまったのだから。

 

 それはアトリアに回ってくる、というか直々に指名で下される依頼の難易度が階段式に上がっていく、という……かつてアダマンタイト級冒険者になる前に見たような流れで試され始めていた。

 

 厄介なのは、直々に指名されている以上、断る事は出来ないという事だ。

 何故なら、演技上のアトリアならこんな時、無理でもNOとは言わないであろうという性格である為。

 

 しかし幸いなのは、同時期に漆黒のモモンが活躍し始めた為、バジリスクがどうとか、伝説の魔獣がどうとか、森を枯らす魔樹がどうとかというレベルの依頼は回ってこず、今の所はその実力の半分も使わないで済んでいるという事だ。

 

 

「(このまま平和で居てくれ……)」

 

 

 そう願いながら、今日もアトリアは冒険者として活動を続ける。

 しかし、この世界は残酷であり、そんなささやかな願いは、叶えられる事は無かった。

 

 

 

 

 別日、王城の一角、兵士の訓練場にて、数名の冒険者達が集っていた。

 蒼の薔薇の面々と、ラナー、そしてクライム、そして、アトリア。

 

 

 ラキュースはその目を輝かせながら、フンスと息巻いてアトリアにこう告げる。

 

「さあ、構えなさいアトリア! 私が勝ったら、蒼の薔薇に入ってもらうわよ!!」

 

 

 対して、本当に、本当に勘弁してほしいと言わんばかりにアトリアは呟いた。

 

「あの~、ラキュース様……やっぱり止めにしませんか……?」

 

 

 どうして、どうしてこうなった……。

 

 

 

 

= = = = = = = = = = = = = = = = =

 

 

 

「やはり、アトリアは蒼の薔薇に入れるべきよ」

 

 不意に、ラキュースがそう切り出した。

 場所はいつものラナーの部屋、八本指への対策会議の為に集い、件の暗号に記されていた貴族達の事であったり、彼らの拠点であったり、黒粉の件であったりを話し合っている最中に、唐突にである。

 

「……突然どうした?」

 

「いや、改めて考えると、むしろなぜ今まで彼女を蒼の薔薇にいれていなかったのか疑問に思って……」

 

 ラキュースとしては、新たな戦力として今のままでも充分ではあるのだが、如何せんまだ連携が取り切れていない現状、本格的にチームの一員になってもらい、より交流を深める事は、戦力のより一層の強化につながると踏んでいた。

 

 むしろ蒼の薔薇に入っていた方が……目が届く場所に置けるというだけでも、以前のような強行を止める事だって出来るし、同じ冒険者として学ぶべき事も、学ばせるべきことも多くあると思っている。

 

「でもよ、ソロで居るのには何か理由があるって話じゃなかったか?」

 

「その理由って何?」

 

 そう問うも、誰一人として口を開けない。

 冒険者として手の内であったり踏み入った事について聞かないのは暗黙の了解であり「どうして一人で居るのか」と聞くのはその踏み入った事、に該当する為、誰もその理由を知らないのである。

 

「知らないけど、推測は出来る。例えば、前に組んでいたチームで何かあったとか」

 

「彼女、まだ冒険者になってからそんなに年月が経ってないんじゃなかったかしら……?」

 

「……じゃあ前に組んでいたチームがあったけど何かあった説、はちょっと厳しい?」

 

 アトリアは、まさに超新星と呼ぶに相応しく、突然現れ突然頭角を現し、突然アダマンタイト級冒険者となっていた。

 

 それだけ短い期間でここまで上り詰めたのは一重に彼女にそれだけの才覚があったから、また、魂を継ぐ者としての能力と強さが有った為だと推測出来る訳だが……。

 

 そうなると、この短い期間の中に「過去に何かあった」の「何か」を挟み込む余地が無くなる訳で、もし仮に「何か」があったのならもう少し期間は伸びていたハズではないか、というのがこの推測に矛盾を生じさせていた。

 

「単に一人のが楽なんじゃねえの?」

 

「それが、そうとも言い切れないみたいよ。……前回彼女がエ・ランテルへと赴いた際の事を覚えてる?」

 

「ああ」

 

「その際、情報を入手し、精査するまでの間の彼女は、表向きは依頼の為にエ・ランテルへやってきた冒険者という形で活動し、その為に、いくつか普通の依頼を受けていたそうなんだけど……その際、今エ・ランテルで話題の新生アダマンタイト級冒険者、漆黒のモモンとナーベという二人組と行動を共にしていた事があったそうよ」

 

「……何だとっ!?」

 

 それを聞いて真っ先に反応したのは、意外にもイビルアイであった。

 怒り、驚愕、それらの感情を如実に現した声を上げ、思わず勢いよく立ち上がってラキュースを仮面越しに睨み付ける。

 

 その場の全員が驚いて彼女に視線を向けると、彼女もそれに気づいて「あ、いや……すまん、話を続けてくれ」とバツが悪そうに腰を下ろして「私に構うな」とばかりに腕を組む。

 

「その話、本当?」

 

「ええ。新生のアダマンタイト級冒険者、漆黒の二人の噂を聞いてたら偶然そんな話が聞こえてね。でも、信ぴょう性はあると思う」

 

 この話がこの時点でラキュースの耳にまで届いているのは、本来ならばアダマンタイト級冒険者になるのがホニョペニョコとの戦いの後になるはずが、試験制度を用いた事で最初からアダマンタイト級冒険者としてスタートした事によるものだ。

 

 ただでさえ話題になるアダマンタイト級冒険者が、試験を一発で、それも登録時に、どこから来たかもわからない二人組が突然、ともなると、瞬く間にその噂は広がり、その噂は早くも王都まで届いていたのだ。

 

 ……中には、そのアトリアと美姫ナーベが漆黒の戦士モモンを取り合っているとか、モモンが二人共抱いたとか、実はモモンも女で三人合わせて姦しい感じになってるとかなってないとか、有る事無い事噂されていたりもするのだが……。

 

 しかし、アトリアがモモン達と行動を共にした、というのはその中でも信ぴょう性のある、少なくともこの中では納得のできる話であった。

 

 新生のアダマンタイト級冒険者が生まれたとあっては興味を持ち、一度顔を見せておくぐらいの事はするだろうし、そこから話が進んで共に行動をする事になったとしても違和感は無い。

 

 また、出来れば八本指の構成員に自身が調査の為に赴いた事を悟られない為に、あくまで彼らに会いに来たという形にし、本来の目的を隠す為に利用するのはアトリアにとって都合が良いと言えただろう。

 

 無論、そんな意図は無かったが。

 

 

「……えーと、つまり、彼女は別に一人で活動する事にそこまで深いこだわりがある訳ではないんじゃないか、と思うんだけど」

 

「……まあ、強いて言えば、他の冒険者とは実力差が隔絶し過ぎていて、チームを組む必要性があまりない、どころか、足手まといを抱えることになってむしろデメリットしかない、といった所かもしれんな」

 

 実際、彼女はこれでも抑えている演技をしているつもりだが、アトリアの実力は一人の冒険者としてだけ見るなら頭一つ以上抜けていると言っていいだろう。

 

 蘇生魔法を使えるほどの魔法詠唱者としての腕は保証されているし、蒼の薔薇の面々は彼女が戦っている姿を直接見た事が無い為ハッキリとは分からないが、初対面の時に本人が言っていた聖なる炎とやらを攻撃に使うという戦闘スタイルが確立しているとの事から、戦闘面に関しても期待出来るだろう。

 

 イビルアイの言う通り、これだけの実力があると、下手な相手と組むとかえって邪魔である。

 

 そしてそれはあくまで下手な相手の場合に限る。

 例えば、同じアダマンタイト級冒険者、それも、蒼の薔薇であれば話は変わってくるのではないか。

 

「……ちなみに、皆としてはどう?」

 

「俺はもちろん歓迎だぜ? 回復魔法が打てる奴が居ればラキュースも戦闘に魔力を温存できるだろうしな!」

 

「私は彼女はそうするべきだと思っていた。既にお迎えムード」

 

「私も異論無し、あの凶行を止めてもらう為にも目の届く場所に居て欲しい」

 

「……このチームはお前のチームだ。お前の好きにしろ」

 

「そう……ならやっぱり、彼女の為にも蒼の薔薇に入ってもらうよう勧誘してみましょうか」

 

 

 

= = = = = = = = = = = = = = = = =

 

 

 

 そして後日、場所を同じくして。

 

 

「嫌ですけど……?」

 

「ええーっ!? なんでよっ!?」

 

「あらあら……」

 

 諸々の説明と共に、勧誘をしてみたラキュースだったが、きっぱりと拒絶されてしまう姿がそこにあった。

 

 なんでと問われるアトリアだったが、アトリアが蒼の薔薇に入らない、入りたくないと思う理由は三つあるが、その内、答えられるものは一つとしてない。

 

 

 一つは、前述にもあった実力面での問題。

 しかし、ここでいう実力面での問題は「蒼の薔薇が弱いから」ではなく「アトリアが強すぎるという事実が他者に漏れる可能性が上がる」というものである。

 

 つい先日の大ポカの件でアトリアは改めて、自身の演技が予想外のアクシデントや設定されていない事に関しては完璧ではない事、また完璧であったとしても、アトリアという演技をしているだけで起こってしまった矛盾に関しては無視できない問題であると自覚していた。

 

 もちろんあれからキャラ設定を練り直し、改善点をいくつか見つけて改善された点はいくつかある。

 

 例えば、拷問や虐待といった弱者が一方的に痛めつけられ尊厳を踏みにじられる行為に対して非常に強い嫌悪感を抱いている、とか。

 

 元々、彼女がかつて亜人だった際に同じような目に遭った時のトラウマがそうさせてしまう点はあったのだが、それをアトリアに反映させるのを失念していたのが、今回のポカの原因ではないか、と踏んだのだ。

 

 『アトリアは孤児として過ごしていた際の記憶から、奴隷や拷問、虐待や迫害に強烈な嫌悪感を覚えている。故に、それらの現場に居合わせた場合、強い怒りを覚える』という設定があれば、仮にそういう状況に置かれた場合、演技していようがいなかろうが同じような対応になるだろう。

 

 要は、演技している時としていない時で違う点があるから矛盾が起こるのだ。

 

 もしその矛盾が無ければ、アトリアは「こんな事があって許せなかったのでこういう事をしました」と素直に報告していたに違いない。

 

 怒りで普段以上の力が出せました、なんて言えば、ある程度の無茶も許されるだろうと言う打算もあったりする。

 

 と、このようにキャラ設定に関しては改善しつつある。

 ……が、まだまだ完璧であるという確信には至れていないのが現状。

 

 そもそも当の本人が「男なのに女」だとか「魔法詠唱者でありながら剣士でもある」とか「過去亜人であったりモンスターだったりした事もあり、色々あって今は人間である」等と言った矛盾に満ちた要素をこれでもかと抱え込んだ存在でもある。

 

 それこそ、タガが外れて全力を出してしまった場合、どこかで見ているかもしれない誰かにその実力がバレてしまう。

 

 それは避けなければならなかった。

 

 

 次に、蒼の薔薇に関わる事で蒼の薔薇関連のイベントが変わってしまうかもしれない、という懸念。

 

 例えばこの後起こるであろう惨劇が起こった際、彼女達は王都で戦う事になる訳だが、この際アトリアという不確定要素があるせいで必要以上に被害が拡大したとか、コキュートスやデミウルゴスあたりがアトリアの実力を見抜いてしまったりだとか、そういった事故が起こると後々どう響くかが分からない。

 

 以前、カルネ村のゴブリンと出会った際、彼らはアトリアの実力を正確に測れていないようだったが……純粋に彼らの、敵の強さを測定するなんらかのスキルの技量が足りていないから測れなかった、というだけの場合。

 

 あるいは、コキュートスや他のナザリック勢の誰かがそれらの技能において、アトリアの実力を正確に看破出来る程に長けていた場合、アトリアはナザリックにとって一番敵という存在に近そうな要警戒人物になること間違いなしである。

 

 もしもこうなったら、諦めるか、全力で媚びてどうにかその庇護下に入る事を許していただくなり、全身全霊で土下座して死を乞う等の選択肢があるが。出来ればどれも勘弁したいものである。

 

 

 三つ目は、自由に動けなくなる、という問題。

 

 現状、【座標を設定し、その座標に転移出来る】というタレントを使用すれば、危機的状況に陥ったとしてもどうにか生還は出来る。

 

 だが、それは演技をしていない時に限る。

 何故なら演技としてのアトリアは設定上そんなタレントを持っていないからだ。

 

 タレントはそもそも持っているだけで希少であり、かつ、一人につき一つが原則である。

 

 この原則に該当しないアトリアは、タレントを複数持っている事は出来れば隠しておきたい。

 

 しかしタレントの中でも【早熟する】というタレントだけはどうにも隠す事が出来なかったから、アトリアは設定上はそのタレントだけを認識している事になっている。でないと不自然極まりない為だ。

 

 演技をしていない状態ならばこれらの問題は解決するのだが、問題は、チームで動く以上どうしても演技は必要であるという事。

 

 転移の魔法であると誤魔化すという手もあるが、転移の魔法は実は最低でも第五位階の魔法であり、当然だが、蘇生や回復の魔法とは全くの別系統。

 

 既に第五位階の蘇生魔法が使える事を知られてしまっている以上、その上系統が全く別の第五位階魔法まで使えるとなると、それは最早人間の域を超えてしまっている。普通に英雄の領域である。

 

 系統が違うのにポンポン色々な魔法を使っている方がおかしいのである。

 

 

 

 要点をまとめると。

 

 ①「私が強すぎる事がバレる可能性を上げたくない」

 ②「不意にイベントが変わったりふとした拍子にステータスバレそう」

 ③「転移が自由に使えなくなるのが困る」

 

 といった具合な訳だが。

 

 

「ねえ、どうしてなの? 貴女にとっても悪い話じゃないと思うのだけど……」

 

「そ、それは……(言える訳ねえ~どれもこれも!)」

 

 しかし、理由は言えない、で納得してもらえるとは思えない。

 ねばれば諦めてもらえるかもしれないが……ここでハッキリと断ってしまった方がお互いにとって良い結果になるのは目に見えている。

 

 そうしてアダマンタイト級冒険者、白雪の硝子のアトリアが苦し紛れに呟いた一言は、ラキュースを、そしてアトリア本人を訓練場へと駆り立てた。 

 

「実力、に……差があり過ぎるから、嫌、です……」

 

 

 

 ラキュースは激怒した、必ず、目の前の後輩に自分の強さを理解(わか)らせねばならぬと決意した。ラキュースには彼女がどれほど強いのか分からぬ。けれども邪悪に対しては、人一倍敏感であった。ラキュースにとって自身の研鑽や積み上げてきた物を頭ごなしに否定されるのは悪と言って差し支えなかった。

 

「そこまで言うなら私と勝負しなさい! 私が勝ったら、青の薔薇に入ってもらうわ!」

 

「え、ちがっ! 私が弱すぎるから問題って話で!」

 

 

 ラキュースは激怒した、必ず、目の前の後輩に自身の強さを理解(わか)らせねばならぬと決意した。ラキュースには彼女が今までどれほど研鑽を積んできたか分からぬ。けれども、彼女が同じアダマンタイト級冒険者として立っている以上、過ぎた謙遜は悪である。ラキュースは邪悪に対して人一倍敏感であった。

 

「貴女は弱くなんかない! 私がそれを証明してあげるから、本気でかかってきなさい!」

 

「あっダ~メだこの人お話が通じないや」

 

 

 

 アトリアは周囲に助けを求めるように視線を送るも……。

 

「アダマンタイト級冒険者同士の一騎打ち……! これは、なかなか見られるものじゃないぞ……!」

「二人共、怪我はしないようにしてくださいね?」

 

 クライムとラナーは、クライムが目を輝かせながら、この戦いの一瞬でも見逃すまいかと息巻いている隣で、犬が庭で走り回っているのを眺めるかのような目で止める気はさらさら無さそうなラナー。

 

「(ああなったらもう止められねえな)」

「(ガンバ)」

「(武運を祈ってる)」

「(……お前が悪いんだからな)」

 

 と、言葉を発する事無く言外に「諦めろ」という表情の蒼の薔薇の面々。

 約一名、言いようのない負のオーラを纏っている者が居たりもするが、全員止める気は無いようなのは同じなようだ。

 

 かくして、蒼の薔薇のラキュース対白の硝子のアトリア、仲間入りを賭けた戦いが今始まろうとしていた。







ラキュースってこんなだっけ
まあいっか(いいのか?)
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