最終的に〇んだ方がマシなTS聖女   作:政田正彦

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過去編最終回です。
最終回なので、もちろん続きはありません。

いつも誤字脱字の報告やおかしい所のご指摘ありがとうございます。


……?

“いつも”……?






ルーヴィン

63.【探し物の方角が分かる】 - 一度見て、かつその形を記憶している物に限り、それがどこにあるか方角を知ることが出来る。

 

64.【隠密と透明化、変装を見破る】 - 高度なものになると見破れなくなるが、低位なスキルによる透明化や隠密、変装を見破ることが出来る。ただし、見破れる対象は一人だけ。

 

65.【殺気を感じるようになる】 - 第六感ではなく、肌で分かりやすい感覚としてハッキリと殺気を感じる事が出来るようになる。

 

 

~(66)~

 

【毒の扱いに長ける】 - 毒と分類される物の扱いに優れるようになり、毒を使った攻撃、スキル、アイテムの使用において、成功確率が上昇する。

 

 

 とうとう、あの時が近づいてきた。

 

 そう思ったのは、かつて協力関係だったスレイン法国とエルフの王国が、何らかの理由で戦争状態になった時だ。

 

 これは原作では時期こそはっきりと分かっていない戦争だが、原作が開始し、()()()()()()()()()()()だ。

 

 つまり、原作開始までもう100年も無い。

 その上、その戦争ももう始まってから随分経つ。

 

 おそらくだが、もう原作開始まで50年、いや40年も無いだろう。

 

 今世で俺は蜘蛛のモンスターに生まれたが、そう寿命は長くないだろう。

 手に入ったタレントでは毒の扱いに長けるとの事だが……いつかの失敗を思い出して嫌な気分になるし、今目立つわけにはいかないのでとりあえず耐えて、ひっそりと生涯を終える事にした。

 

 問題は来世だ。

 

 次に何を引くかで俺の運命は決まる。

 

 

 今回のようなモンスター、異形種でリザードマンだったら大当たり。

 前者ならそもそも目立つ行動をしなければ平穏な一生を過ごせる。

 後者なら原作でリザードマン編に差し掛かった時、実力を十分に発揮すれば死んでも後で生き返らせてもらえる。

 

 ……いや、やっぱ実力を十分に発揮するのはやめて裏手に回ろう。

 

 考えてみれば俺、死んだ後はすぐ転生するから、自分の死体に蘇生魔法をかけた時にどうなるか知らないんだよな。

 

 効果が無いのか、もしくは俺が二人になるのか。

 ……原作の色んな描写を見るに、効果が無い説が濃厚だな……。

 

 とりあえずこの二つのうちどっちかだったら嬉しいけど……。

 

 

 次点では……帝国の人間とかかな。

 法国はもう嫌な予感しかしないし、王国も死ぬ未来しか見えない。

 

 ……でも、ああ、既に嫌~な予感がするんだよな。

 

 以前、イビルアイが国堕としになるタイミングに、インベリアというドンピシャの場所で生まれたり、十三英雄に仲間入りした後に都合よく人間種に転生したり、冒険者組合設立当初に口を挟める位置に居たりと……。

 

 あまりにも都合が良すぎやしないか?

 誰かの思惑が絡んでいるんじゃないかと疑いたくなる。

 

 そもそも俺はどうしてオバロの世界でこんな何度も何度も死んだり転生したりを繰り返す地獄を味わう羽目になっているのか未だに分からん。

 

 大体……時々ある変なウケ狙ってるみたいなタレント、あれなんだよ?

 【ハゲない】だの【虫に刺されにくくなる】だの【体臭がすこぶるいい匂いになる】だの【性的な交渉において相手に確実に快楽を与える】だの……後者二つに至っては俺に何をさせたいわけ?

 

 

 

 ハッ、さては……貴様、見ているなッ!

 

 

 

 ……つってね。

 

 500年以上連続で俺みたいな奴が生きたり死んだりしてる様見て楽しめる奴がいるとは思えないし……もし居たら相当な邪神だろ。 そんな奴俺の手に負えないのでもし目の前にスマートフォンとか落ちてきても無視しよう。 そうしよう。

 

 ……だが、次の転生先に嫌な予感がするのは確かだ。

 これはタレントとか関係なく、ただの勘だけどな。

 

 

 

 そしてその勘が告げたとおり、出来る事なら他のが良かった、王国で平民として俺は生を受ける事になるのだった。

 

 

======================

 

 

 

 

67.【他人のカルマ値が見える】 - 他人のカルマ値が数値として視界に現れる。(ON/OFFが可能)

 

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国にて、ランポッサⅢ世が国王に即位した翌年に、貧しい農村で彼は生まれた。

 

 名はルーヴィン。

 

 

 数百年以上前から存在していた最古にして最新の英雄。

 流転する魂の器。

 67回という魂の転生を繰り返し辿り着いた果ての姿。

 

 それがルーヴィンという青年の正体であった。

 

 

 彼は初め、覚えていた自爆魔法を使い、死んで次の生に託そうと考えていたが、この生を受けた際に家族となった両親達に、息子が突然爆発四散したなどというトラウマを植え付けるのは良心が痛んだ。

 

 そうして過ごしていくうちに、彼は貧村に住む両親に楽をさせてやろうと思うようになっていく。

 

 そうなると、自身の強さを利用し、効率的に金を稼ぐ為にはどうすればいいのかと考えた結果、彼は何度目かの冒険者への道を選ぶことにした。

 

 安定した収入を得るなら他の選択肢もあったが、騎士や兵士ではいざと言う時に自由に動けない可能性があった為だ。

 

 王に仕えている以上、守るべき対象は王城、ひいては王本人に行動を縛られてしまい、戦争にも参加しなければならなくなるだろう。

 

 前者はともかく後者は……死ぬだけならまだしもここで下手に活躍して目をつけられたりしたら溜まったものでは無い。

 

 そして、今のレベルではどんなに手加減しても大活躍が出来てしまうのは目に見えている。

 

 そうして齢17にして貧村を後にしたルーヴィンは、かつての自分が改変した冒険者のシステムを利用し、これまでの転生で培ってきたレベルに物を言わせ、登録当日にアダマンタイト級冒険者になるという偉業を果たし、周囲に「彼は英雄の領域に足を踏み込んだ者である」と強く印象付ける事となった。

 

 彼が急ぎアダマンタイト級冒険者となったのは、なるべく自由に動けるように、そして17歳という年齢で若輩者だと舐められないように、ということ。

 

 そして……いずれ来る死の支配者に対しての生存戦略の為であった。

 

 ついた異名は「紫煙の釘」……由来は彼が生来紫色の髪色であった事と、彼が高度な隠密スキルを所持しており、実際にスキルを使用すると、まるで煙のようにすうっと消え気配が無くなる事から紫煙。

 

 ……そして、消えたかと思えば敵にも気付けぬ内に致死の一撃を正確無比に打ち込む事、一撃を受けた後の敵は透明な釘でも打たれたかのように綺麗な円状に穴が開いているという特徴があった事から由来している。

 

 何故彼が隠密能力の高いビルド方針にしたかと言うと……これもまた、いずれ来る死の支配者対策である。

 

 正確には、“影の悪魔”対策だ。

 

 いずれこの世界に来るであろうあの人(モモンガ)……いや、あの人達(ナザリック)の索敵や諜報や伝達という役目は、“影の悪魔(シャドウデーモン)”と呼ばれるモンスターを使役する事でそれらの多くをこなしている。

 

 彼らは、名前の通り、影に溶け込み隠密に情報を収集する事が出来るという能力を持ち、こういった秘密裏に何かを成すにはこの上ないモンスターなのだが……。

 

 肝心の強さは実はレベル30程度である。

 

 対して、ルーヴィンはレベル100……高等な隠密に重きを置いた戦闘スタイルを可能としたビルドであり……つまりは、彼ら影の悪魔に、隠密状態になったルーヴィンの追跡はほぼ不可能と言って差し支えないだろう。

 

 他にも、物を指定する事でそれがどこにあるかを見る事が出来る魔法であったり、遠視出来る魔道具を使っての索敵で彼を見つけるという事もなかなか難しいだろう。

 

 だからこそ、ナザリックは本来の歴史(原作)であっても、どこかに潜伏しているかもしれない第三者、ひいては敵対的なプレイヤーの影に警戒しながら情報収集を行う事を余儀なくされており、拠点の警備もこれでもかと固めてから事に当たっているのである。

 

 レベル100のプレイヤーが本気で隠れていても見つけ出せるような索敵及び諜報、情報収集能力があるのなら、彼らはあるかどうかも分からない影に警戒して石橋を叩くような真似をする必要も無かったのだ。

 

 尤も、そんなに情報収集能力に長けているのなら、あの人ならもっと別の事……この世界でかつての仲間達を探すことに使うだろうが……。

 

 これでもしもの時に逃げる準備だけは出来ていると言っていいだろう。

 ……まぁ、人外の知略を持つ化け物が居たり、その気になれば願いを何でも叶えることのできる指輪の存在であったり、隠れ、逃げた所で、その時点で彼には自決以外の選択肢が残されていなかったりと……本当に最低限の準備ではあるが。

 

 ともあれ何も対策が無いよりかはいいだろう。

 ルーヴィンはそう考えた。

 

 そして、彼はこれらの対策以外にも、積極的に活動を続け世界に名を残す事で自身の影響力を高めようとした。

 

 そうする事で如何に彼らであっても即座に消そうとは思わなくなる……かもしれない……いや、多分そんなことは無いだろうが……自分を利用しようと考えてくれたらいいなあという一握りの希望に賭けて、あわよくば協力者として、ダメだったら情報源として……その対価にその身が自由である事を許す、みたいな展開になれば最高だと考えたのだ。

 

 これといってデメリットらしいデメリットも無かったのも大きい。

 

 とりあえず彼は思いつく範囲、出来る範囲で名を上げることを考えた。

 

 まず彼が遺した武勇で一番最初に語られるのは、「単独での万病治療薬の素の採取に成功」という功績だろう。

 

 ……なお、この万病治療薬の素というのは、トブの大森林の奥地に封印されていた魔樹、ザイトルクワエの事であり、この魔樹の頭にボコボコした部分があり、そこに万病に効くと言われる薬草が生えているのだが……。

 

 ザイトルクワエは、かつて彼が“フィテオルシラ”と呼ばれていた頃に触手を数本焼き尽くし、その後、生まれ変わった彼が経験値目的で戦いを挑み、これに勝利している。

 

 この際薬草だけ引き抜いて、フィテオルシラだった頃に知り合っていたとある森精霊(ドライアード)に管理を任せ、自身の拠点が出来てからは持ち帰って自分用に保存までしていたのだ。

 

 ……なので、他者からは単独では絶対に達成できるはずのない偉業を成し遂げた伝説扱いされているが、実際には過去手に入れたものを、探しに行くフリだけして数週間後に適度にボロボロの恰好になった後、さも相当な試練と苦労を乗り越えたかのように自分が手に入れた薬草を納品するだけというなんとも姑息な事をしている。

 

 もっとも、そんな姑息な事ばかりしていたわけではなく、ある時は遺跡を占拠して小さな都市を滅ぼそうと目論んでいた死の秘密結社ズーラーノーンの野望を阻止し、幹部の何人かを討伐する事に成功していたり、他にも様々な武功を上げている。

 

 だが、彼の人生は誰もが……本人ですら予想していなかった形で幕を下ろす事になる。

 

 

 ルーヴィン、当時22歳。

 

 死因は“突然死”である。

  

 病名は不明。

 

 

 もし、これが外科手術といった概念が存在する、医療の発達した世界だったなら、彼の病の前兆に気付けたかもしれないし、防げていたかもしれない。

 

 ……あるいは、この武功を挙げるにあたって身体に多少無理を働いたが、若い身体がこれまでの無茶に耐えうる程強く産まれていなかった事が原因だったかもしれない。

 

 タレントの中には命を削って全ての能力値を向上させる、といった内容のものも存在する。

 

 それの副作用が祟ったのでは……。

 

 

 ……残念ながらこの世界には外科手術をはじめとした医療という概念は存在しないし、そうであったとして、彼自身すら分からなかった病の前兆に気付ける人物が居ただろうか? パーティーすら組んでいない彼の周囲に。

 

 無論、多少の無理を働いた事や、命を削るタレントの事を知る人物も、彼以外のどこにも存在しない。

 

 避ける事のできなかった死。

 

 それは、これから数々の武功と栄光を欲しいままにするハズだった英雄の、突然であまりにも早すぎる死としてしか認識されず、当時の人々の理解の範疇を完全に超えた、超常的な何かのせいで死んだ……としか考えられなかった。

 

 強力な呪い説、神に召された説、実は元から病弱だった説、自殺説、秘密組織による陰謀説、実は生きている説……等々、様々な憶測ばかりが飛び交い、やがて、誰も彼の死について触れることは無くなり……。

 

 残ったのは、彼が遺した数々の武功の記録。

 

 かつて冒険者最強と呼ばれた男の伝説だけだった。

 

 

 

 

 

「どうして……何故逝ってしまったんだッ!!」 

 

 ……それに納得が出来ない……いや、納得こそすれ、感情に整理のつかない人物が一人。

 

 名を、ガゼフ・ストロノーフ。

 当時まだ20代の若者であり、王国最強の異名を冠する前の、戦士として成熟する前の青年である。

 

 彼は……年代で言えばルーヴィンとほぼ同年代の男であり、自分とそんなに変わらない歳でありながらここまでの武功を挙げた彼の強さに強く惹かれていた男の一人である。

 

 冒険者組合が国から独立した機関であり、国の政治や戦争には加担しない規約がある以上、既に国に仕えている身だったガゼフは下手に自分から会う事が出来なかったが、それでも、彼の武功だけはガゼフの耳にも入る程だった。

 

 彼の武功……特に先述したズーラーノーンという悪の組織と単騎で戦い、都市を守り抜いて勝利を収めたという彼の活躍はまさに、まだ平民だった彼が思い描いた「弱者の為に剣を振るう正義の戦士」そのものであった。

 

 故に……追い付こうと、いや、その強さの一端に手が届くくらいに強くなれれば……と、名前と特徴しか知らぬ彼を密かに目標にしていたのだ。

 

 当時はガゼフだけでなく……男なら、いや、女でも、老若男女問わず、誰もがその圧倒的な強さに憧れを抱いたのだ。

 

 故に、現代の英雄とも呼べるルーヴィンの死はガゼフの心にも少なくない影響を与えた。

 

 いや、ガゼフだけではない。

 

 元農夫で負け知らずの青年。

 将来優秀になる女戦士……になる少女。

 十三英雄に名を連ねていた吸血姫の少女。

 身体に獣を宿すモンクの男。

 帝国で活躍することになる見習い騎士。

 将来、不敗の天才剣士として名を挙げる少年。

 

 当時彼に憧れを抱いていた全ての人物の心に刻まれた「どんな英雄でも、ふとした瞬間唐突に死が訪れる事がある」という事実や、ルーヴィンの死という、目指す先を失ったという意味での喪失は計り知れないものがあった。

 

 

 

==================

 

 

 

 そして、何の因果か、この広い世界であろうことか同じ王国に、数ある種族の中であろうことか人間種で……ルーヴィンという英雄が失われた悲しみの渦中で産声を上げたのが、68回目の転生によって生まれた、現在の英雄。最近になって存在がうっすらと噂され始めた“勇者の魂を継ぐ者”……その68回目の継承者。

 

 

「ほぎゃあ!ほぎゃあ!」

 

 

 寒空の下、酒と借金に溺れ蒸発した両親に置き去りにされた赤ん坊。

 内心で「は?え?死んだ?なんで?嘘やろ?……夢なら覚めてくれえええええ!!」と絶叫しているこの赤子こそ、家名も無ければ貴族としての名も無い、ただのアトリア、その人である。

 

 

 

 

 

 

68.【100レベルの時のみ、現在所有する経験値の半分を消費する事で、たった一度だけ、5つの選択肢の内どれか一つだけ叶えることが出来る。】 - 5つの選択肢は発動するまで本人にも分からない。

 

 

 

 




補足①:

 一撃を受けた後の敵は透明な釘でも打たれたかのように綺麗な円状に穴が開いているという特徴があった。
 →こんな特徴的な殺し方をしているのは、後にもし誰か(腐った貴族とか)を暗殺するとなった際に、自分とはかけ離れた方法で暗殺する事で標的を逸らそうとしたのだが、死んでしまったので無意味となった。

補足②:
 死んだルーヴィンの装備品やアイテムは回収できておらず、何者かによって奪われて以降散逸してしまっている。現在は誰かの手に渡っているかもしれない。
 死体は王都の墓地で葬られており、後にある者によって蘇生を試されたが、失敗に終わっている。
 
補足③:
68回目のタレントに「たった一度だけ」とあるが、それが輪廻転生も含めてたった一回なのか、転生すればまた使えるかは不明。
また、経験値をストックするタレントを持っているので、そこから消費する事も出来るが、その場合現在保有する経験値の半分の量をストックしていなければならない。

補足④:
総タレント数は67個ではないのか?
→小説のあらすじには「これを繰り返し、原作開始時には、レベルはカンスト、総タレント数は67個という化け物になり、色々あって死亡。」とある。
つまり67個というのはルーヴィンまでの総タレント数で、色々あって死亡、からの聖女になってからの総タレント数は68個。



過去編でやったことまとめ:

1.十三英雄に仲間入りしてリーダーの闇堕ち阻止。
2.ザイトルクワエはひっそりと経験値稼ぎの犠牲になったのだ……。
3.武器と防具いっぱい作った。
4.冒険者組合設立の際に横から口挟んで階級ごとに試験を設けてクリアしたら昇格するというシステムを組み込ませ、自分の財布からお金を出して設備も豪華にしたった。
5.ズーラーノーンが無意味(名声稼ぎ)に大打撃くらった。
6.ルーヴィン=伝説の冒険者として名を残した。これによってどんな事が起こるかって? んまあ、そう……良く分かんないね。
7.死んだことで色んな人(特にかかわって無い奴も含め)に喪失感を遺していった。傍迷惑な……。
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