ははーんさては死にゲーですね?
ある所に、とても平和とは言い難い国と、その国を構成するいつ滅ぶかも分からない……「風が吹いただけで死にそう」と揶揄されるような、可哀想になるくらい弱弱しい種族がおりました。
その種族の名は人間と言い、他の種族にあるような、大きな爪や牙も無ければ、強靭な肉体も無く、熱にも寒さにも弱く、毒や呪いへの耐性も無ければ、成人となるまで早くても16、遅くて20年、あるいはそれ以上はかかり、成人したとて他の種族の捕食対象でしかないという極めて不憫な種族でありました。
そんなクソ雑魚種族である彼等が生存競争に負けて滅びるのは時間の問題でしたが、絶体絶命の危機を迎えた種族に、ある日、六大神と呼ばれる神様達が降臨なされました。
細かい事情は省きますが、かの偉大な神様達は危機に瀕していた人間達を救い、国を作り、人間達を守護してくださいました。
しかしそんな神様達のご加護も永遠には続かず、一人を残して全員がお亡くなりになられてしまいました。
更には、そんな一人ですら、神の出現から100年経ったある時に現れた八欲王に敗れ死亡してしまい、世界は八欲王によって理を歪められてしまいました。
その世界を守護していたドラゴン達はカンカンに怒って八欲王と全面戦争を仕掛けました。
ドラゴン達はほぼ全員が戦いで死んでしまいましたが、その代わり、八欲王を弱らせることに成功し、最後は八欲王は自分達の欲のせいで自滅してしまい、世界に大きな爪痕を残しながらも、その命を散らす事となりました。
その後、彼らが残した魔神達との闘いが各地で繰り広げられたり、そのせいで様々な傷跡が残されることとなるのですが、十三英雄という十三人(十三人とは言ってない)の英雄達の活躍によって、この世界に平和(平和とは言ってない)が訪れたのです!
……はい、こうして皆さんが平和になるまで私は20回程死亡しました。
どうも、転生者です。
突然何を言い出すんだお前はという気持ちも分かりますが、まずは話を聞いてください。
まず、もう一度言いますが、私は転生者です。至って平和な現代日本からこの『オーバーロード』の転移後の世界に転生した者なのですが、なんと転生した時期は、原作の開始からおよそ600年程前。
先に起こる事を知っていた私は「もうダメだ……おしまいだ……」とばかりに、この時代に生み落としやがったであろう、会った事も無い神に中指を立てながら、涙を流していました。その後特にチートだのテンプレだの奇跡だのが起こる事も無くぽろっと死亡。
しかしそこで私という存在が消えてなくなることは無く、なんと次は人間ではなく、亜人の一種として、“経験値と前世のタレントを引き継いだ上で”転生し、そして新たなタレントを得たのです。
そこで私は悟りました。
ははーん……さては死にゲーだな?(雑なサブタイ回収)と。
一度死ぬと手に入れたレベルは一度リセット。ただ、レベルアップに必要だった経験値が還元され蓄積されるようで、次の生からは、“何か”をする度にその経験値があふれ出したかのようにその“何か”に関するレベルが上がる。
要するに、死ぬ度にレベルの振りなおしが出来るわけですね。
剣を手に持てば戦士としてのレベルが、弓を手に持てば弓使い、というように。
傍から見れば一度手に持っただけで歴戦の戦士の実力を発揮したかのように見えたので、天性の才能があるかのように勘違いされたりもしました。
また都合の良い事に、本来200人に1人とされていたタレントでしたが、どの転生でも例外なく何らかのタレント……中には日常生活で役立つ程度のものもありますが……を得る事が出来る事が分かりました。
そうと分かった私は、より良いタレントと経験値を求め、修行、戦い、死亡、新たなタレントゲット、修行……といった感じで生と死を繰り返し……。
転生ガチャ(命一個で一回ガチャとかいうクソ仕様)で手に入れた【自身のステータスの管理、可視化、隠蔽】というタレントを手に入れた際に確認し、ようやく、これまでに20回も死んだんだなあ、と確認出来ました。
このタレントのお陰で蓄積していた経験値を使ってより効率的に職業を選んで取る事が出来るようになったのは本当に助かっています。
なお、この時点で既にこの世界では英雄の領域を飛び越してしまっていますが、まだまだカンストプレイヤーからしたら蟻程度。
幸い幾らでも時間だけはあったので経験値稼ぎに勤しみました。
途中、成長が早くすぐ大人になれる亜人種になれた時はボーナスステージみたいなもんでしたね、調子に乗ってすぐ死にましたが。
なんだかんだ言って死んでばかりではなく、魔神(ただのNPC)が現れた際の戦いに参戦したりだとか、十三英雄(実際には十三人ではなかった)に参加したりだとか、リーダーに殺されたりだとか……いや最後。
ま、まあ、そんな事もありつつ、今回で実に68回目の転生となった今世なんですが……。
実は私……前世(67回目)でやらかしてしまっていまして。
いや、厳密には私のせいではないし、避けられなかった死なのですが……。
というのも、本来ならば67回目の生で原作開始を迎える筈だったのですよ。
流石にそれなりに良いタレントも充実していましたし、レベルもカンスト。
王国で生を受け、一人でアダマンタイト級冒険者チームを相手に出来る程の実力者としてそれなりに名も売れ、一級の冒険者としての立ち位置を確立していました。
王国最強と言えば、戦士長のガゼフか私を差す言葉だった程には。
ちなみに冒険者となった理由は、冒険者ならば、モモンガの配下に悪戯に殺されることも無いし、モモンと接触してもそれなりに好意的に接してさえいれば死なずに済むでしょうと高を括っていたのです。
原作開始時には38歳に成れる予定でした。
そう、予定、でした(過去形)。
いやあ、まさか22という若さで、病でポックリ逝ってしまうとは。
病名なんてハッキリとは分かりませんが、傷でも無ければ毒でもない、本当にただの病魔だったので、治療とか外科の知識が乏しいこの世界では助かりようも無く、誰に看取られる事も無く最後を迎え……。
次の生で目覚めた私は、何の因果か前世と同じ王国に産まれ……しかし前世とは違い、物心ついた時には既に親は無く、神殿で育てられた孤児の一人でした。
前世と比べあまりにハードな生活でしたがなんとか耐え忍び、プリーストとして修業し、本来であればそのまま神官になるはずでしたが、途中同じくらいの年齢の可愛い女の子がコッテコテの悪徳貴族に無理矢理連れて行かれたのを見て全てを察しました。
無理を通して、というか半ば飛び出して家出気味に冒険者に転身。
無論レベルのカンストに必要な経験値はとっくに稼ぎ終わっているので、現在史上最年少、しかもチームも組まずに、15歳でアダマンタイト級冒険者となった
それが私。
名を、アトリアという少女。
……肝心の原作開始時に、まさかのTS美少女になってしまいました。
しかも神殿の教えで戦闘メインではなく後衛職のプリーストや聖に関する魔法ばかりを無理矢理習得させられ、出来上がったのは今までの中でも善性に偏りまくったモモンガの真逆、あるいは天敵とすら言ってもいいビルド……。
これ下手したらこれだけで危険人物扱いされて殺される可能性すらあり得ますね?
いや、流石にレベル100なのですぐには殺されないでしょうし、従順にナザリックしゅごいのお! 至高の御方しゅごい! しゅごい!(思考停止)ってしていれば殺されはしないでしょう、きっと。
というかですね、殺されるならまだいいんですよ!
あいつら「死はナザリックにおいてこれ以上の苦痛を与えられないという慈悲である!」とか言い出すじゃないですか! しかも実際それはその通りで、良くて拷問or実験で廃人化! 悪くてスクロールの材料に永久就職じゃないですか!
最悪、永久に虫の巣(比喩ではない)にさせられたりなんて事も! もっとやばいのは、情報を取る為に、この管を頭にぶっ刺しますね、からの脳クチュあっあっ……なんてされた日には原作知識もぶちまけられて何起こるかわかったもんじゃないです。
下手したらこれのせいで世界滅びかねないじゃないですかヤダァ!!
数十、数百年前の「いくら死んでもいい現実なんてぬるすぎるぜ(キリッ)」
とか言ってた自分を張り倒したい。
……張り倒されたから転生してるんですけれども。
こんなに危険なのになんで冒険者になったりしたんだって? なるほど、冒険者になったらモモンさんに目を付けられる可能性があるって言いたいんですよね。
それこそ非戦闘職業でもとって、ンフィーレア君みたいにポーション以外の何かでも作ってれば匿ってもらえたかもしれませんね。
……でもこの68回目の人生では、産まれてすぐに捨てられるわ、おかげで市民権の無い孤児になるわ、拾われた神殿は神殿とは名ばかりの……言ってしまえば孤児のバーゲンセールコーナーでしかありませんでしたね! まぁ今はもう更地にしましたが!
もう少し歳をとっていたら私も売り物にされていたでしょうね!
ともすれば自分で明日の食い扶持を稼ぐしか無かったわけですが、そんなどこで生まれたかも分からない孤児の私に真っ当な仕事先なんてありません! あたりまえだよなあ?
なので無理を通してまで冒険者となって自分の身は自分の力で守る必要があったんですねえ……前世の普通に家があって家族が居た生活が恋しい……結婚は出来ませんでしたが。
っていうかよく考えたら、こんな腐った崩壊寸前の国に居る事自体が間違いでしたね、実力付けた瞬間帝国に高跳びしていればこうはなっていなかったかもしれません。
……ちなみに、最初は目立たぬようにちまちま依頼を受けてモブキャラに徹していたのですが、依頼先でギガントバジリスクとかいう魔物にエンカウントし、しかもうっかり撃退するつもりで首を刎ねてしまったのが運の尽き……。
お前そんなに強かったんか! じゃあこれも行けるよな!
いや、ほんまに行けたん? お前もう一般の冒険者とは呼べへんなわはは!
史上最年少のアダマンタイト級冒険者誕生やで! おめでとさん! 乾杯や! オラッ! 皆もこいつを祭り上げるんだよ!!
およそこんな感じで本人の意思確認も無しに無理矢理アダマンタイト級冒険者にさせられましたね!(ブチギレ)
お陰でどんなに頑張っても最終的にモモンの耳に私の情報が入ることはほぼ確定! そして一級の聖属性魔法詠唱者だと知れれば目をつけられるでしょうね! ええ! ファ〇ク!!(くしゃみ)
畜生……未来の事を考えると胃が痛い……。
モモンガさんと違って私にはちゃんと胃があるんですよ……! 骸骨の身体が羨ましい……!
神様! もう中指立てたりしません! だからお願いです……どうかかの悪魔やモモンガやその他諸々目を付けられるとヤバい人達に目をつけられませんように……!
これフラグとかじゃないんで!!
輪廻転生主人公
0回目:
現代日本に居た学生。道路で轢かれそうになっている猫を見て居眠り転生トラックから猫を救ったが、勢い余ってその先のガードレールに頭から突っ込んで死亡。
1回目:
転生してしばらくしてからようやく自身の種族が絶体絶命の大ピンチだと悟るが、奇跡も魔法も無く死亡。神様なんて居なかったね。
2回目:
あれ?また転生しとるやんけ、てかタレントとかいうどっかで聞いた事のある異能力あるし、なんか経験値っぽいの引き継いでね? てことは……あっ(察死)
タレントと経験値が増えるよ! やったね主人公ちゃん!(おいやめろ)
68回目(現在):
67回目で盤石な状態だったのにうっかり病死してTS美少女になってしまった……。
最終的な目標は、「ナザリックに目を付けられない事」もっと言うと「生け捕りにされたりして、永遠と苦しみ続ける」みたいな地獄を回避する事。
つまり、捕まるくらいなら死んだ方がマシなのだ。
(2020/08/04)
過去編にてインベリアで経験値稼ぎをした事になっているのに1話ではイビルアイが生まれた国で一度死んだと言っていたので、問題箇所を削除しました。
ご指摘ありがとうございます。