今回ちょっと展開が急かもしれんと思っているので何か間に挟み込みたい所存。
まぁ、続きが無い以上、挟むも何も無い……あれ?(デジャヴュ)
「あ゛~~~づがれだんも~~~!!」
一仕事終えた気になっているアトリアはアゼルリシア山脈の人はおろかドワーフでさえも近寄らないような秘境にある崖下、その岩の壁にかけられた隠蔽の魔法で隠された先にある、彼女(彼)だけが知る部屋でぐったりしていた。
ここはかつての彼女(彼)がドワーフに転生した際、生産系の職業を中心に修め、『今後の自分』の為に作った一室であり、時を同じくして作った様々な武器や防具が眠っている他、道具を創造する魔法で作り出した様々な家具が置かれたスイートルームである。
いくら単騎で国一つ滅ぼせる彼等が、そして彼等の情報網が優れているとはいえ、ノーヒントでここを見つけ出すのはほぼ不可能に近いだろう。
それならば何故彼女がここに居るのかというと、彼女が持つ68個のタレントの内の一つ【座標転移】というタレントで移動した為である。
彼女が持つタレントの中でもかなり使用頻度の高いタレントの一つであるこれは、簡単に言えば、【座標を設定し、その座標に転移出来る】というもの。
ただし、一度に設定できる座標は三つまでなのと、1日に使用できる回数が4回までに制限されており、また座標の設定には、五秒間設定したい場所に手を触れる必要があり……更に、普通の転移魔法同様、転移阻害やトラップの影響を受けるといった弱点も存在する。
ただこのタレントの最も優れた点は、再転生した後も、この設定した座標は無くならない事である。
彼女(彼)はこれを利用し、この場所をいつでも利用できる避難所として利用するつもりである。
また先述した通り、ここには彼が作った装備も置かれており、保管庫としての機能もある。
作り上げた装備は剣から槍といったポピュラーな武器から、ハンマーやチェーン、果てはブーメランといったものまで、実にバリエーションに富んでおり、今までの生で試したビルドの際に使われたものから、当時出来た傑作……ルーンを刻んだ本気の装備もそこに仕舞われており、今(アトリアが)持っている身の丈程ある大きなロッドもこの傑作の内の一つである。
それら当時の彼が傑作だと踏んだ装備の強さはなんと伝説級を凌いで神話級に差し迫る程……正確に言えば、神話級>越えられなかった壁>彼の装備>伝説級であり、これはこの異世界産のアイテムとしては破格の強さである。
本来この世界の装備品はルーンなんて刻まれている事はほぼ無く、強い装備と言えば、かつてプレイヤーたちが遺した装備やそのレプリカが殆どである。
その理由は単純明快で、ユグドラシルでは手に入った素材がこの世界では入手不可能である為だ。
当時の彼が装備作りにその一生を捧げようと考えたのもこれが原因である。
ユグドラシルの素材が手に入らないというどうにもならない現実を、ルーンという装備を強化する技術によって、神話級に差し迫るかもしれないというあたりまで性能を底上げする事に成功したのだ。
一度は材料がない事に折れかけたが、ルーンという一縷の望みを胸にルーン技師の職とその派生を全て修め、戦闘に関する一切を捨て、後に、ちょっとしたいざこざに巻き込まれて死ぬ羽目になったが、しかし、結果的に出来た武器は大成功だったと言えるだろう。
ここまでやって尚、レベル100のNPC達が持っている装備と同等かそれ以下、モモンガ本人とは比べるのも烏滸がましいレベルだというのだから、ナザリックの面々との差が思い知らされる。
それでも、この世界で作られた装備である点で見れば、胸を張って、最強であると呼べる装備がそこに保管され、今も使われる時を待っているのである。
また、この自室だが、いざと言う時の為の避難所としても機能しており、直近の事例としては、神殿で孤児として育てられていた際に「あやべ、売られるかも」と危機を感じて逃げ込み、一夜明かした後、次の日には装備を手に冒険者となっていた。
冒険者となり、アダマンタイト級となった後には、王都にかなり高級な一軒家(というよりちょっとした屋敷)を構え、そこを拠点としているが……。
落ち着かないというだけでなく、ここの自分で作ったベッドの方が寝心地が良いという理由で、帰ったフリこそするも、実際に使用する事はほぼ無く、もっぱらこの自室を利用していた。
「……ゴロゴロしてるだけじゃ、流石にマズいよな~……。」
また、彼女(彼)が、いつもの聖女としての自分を忘れ本来の自分に戻れるのもここだけである。
気を抜き、装備を脱ぎ散らかし、パンツ一丁でベッドに寝そべり、片足を投げ出しているその姿は普段の彼女の姿を知る者が見れば絶句するだろう。
もっとも、その清楚で美しい普段の姿も【演技の鬼才】というタレントによるものであると知ればその者は泡を吹いて倒れるかもしれない。
それはともかくとして、アトリアは「何故今日自分はラナーに呼ばれたのか」について考えるも……結局分からなかったので、それはひとまず置いておくことにして、最重要の重大な壁……ナザリックが時期的にそろそろこの世界に来ることになる事に思考を移した。
『信仰系魔法詠唱者ビルドでモモンガに特効を持っているから、モモンガをぶっ殺して世界平和!』
……なんてのは勿論NO! である。
負けた時のデメリットが「ナザリックのNPC達全員敵に回す」「以降死んでも見つけ出されたら即殺されor実験材料ルートまったなしになる」……と、余りにも大きい上に、そもそも勝算がほぼ無いと言って良いだろう。というか、モモンガの所まで辿り着けるかすら怪しい。
『どうせ死んでも大丈夫だし、バレないうちにもう一回死んで次の生に託す!』
一見とてもいい案に見えるがこれもNO。
何故なら次の生が今よりもマシな転生先(成長が極端に早い亜人等)である確証はどこにも無い為である。
下手をすれば、自分という、回帰してタレントや経験値を次の生へ引き継ぐ存在が居るという事実をナザリックが勘づいた場合、何年かしてでも自分の事を見つけ出す可能性が極めて高い。
そうなるとどうなるか? 拷問or実験or拷問&実験の「救い? ねえよ、んなもん」という夢も希望も神様も居ないコースである。
『帝国に逃げる?』
NO。逃げてどうする、いつかは見つかる。
『このまま全てが終わるまで息を潜める?』
NO。見つかりはしないだろうが、それは拷問とどう違うんだ。
ただの自殺と変わらない、むしろ悪化している。
っていうか全てっていつ終わるんだ。
『シャルティアを洗脳から助けて恩を売る。』
NO。シンプルに侮辱として捉えられて殺されかねないし、失敗した場合プレイヤーまたは敵対勢力と勘違いされかねない。あとそんなリスク犯したくない。
『助けてツアえもん!』
NO。そこまで無しでも無いけども、これで失敗したらいよいよ打つ手が無くなる上に、恐らく、失敗する。
なぜ失敗するかと言えば、ツアーがモモンガやシャルティアと相性良いとはいえ……モモンガ単騎でもワンチャンあるかないかなのに、ナザリックそのものを敵に回すことになってしまった場合、普通に太刀打ちできずに共倒れする未来しか見えない為だ……。
改めてみるとナザリックってほんとチートだなぁ……。
と、ここまで考えて彼女(彼)は、とある結論にたどり着いた。
「(そうか……無理に逃げる方法ばかり考えてたけど、そうじゃない……逆に考えるんだ。
56回目
名前:???
種族:ドワーフ
分類:現地人(転生者)
異名:変わり者
住居:アゼルリシア山脈の岸壁に掘って作った隠れ家
属性:不明
種族レベル:不明
職業レベル:不明(生産職とルーン技師を修めていた)
かつて彼がドワーフだった際の姿。
56回目の一つ前の55回目で、この世界で生産された武器には限界があると悟り、
じゃあいい機会だし自分で作っちゃえばいいじゃないと生産職を習得。
ただ材料がユグドラシルにあるであろう物とは比べ物にならない程粗悪だった為、
断腸の思いで、戦闘に関する職を取らず、全てを生産と、一縷の希望を胸に、ルーン技師とその派生に全振り。
結果、ちょっとしたいざこざで後に死ぬ事になるが、出来た武器は伝説級に差し迫る程の逸品が完成する事となり、保管庫がそのまま今の自室となった。
現在明らかになっている(明らかに出来る)タレント
【自身のステータスを管理し、他者から見えないように出来る】ユグドラシルのゲーム時代のように、ステータスを見たり、管理したり出来るようになる。これによって職業レベルを振る事も可能だが、振り直すにはもう一度死んでリセットする以外にない。また、他人のステータスは弄る事は出来ない。管理したステータスを他者から盗み見る事も出来なくなる。
【早熟】身体的にもレベル的にも成長が早くなる。これにより伝説上で「勇者の魂を継ぐ者=早熟である」という特徴を挙げられ、特定に至る事となってしまった。
【美形】タレントとしていいか微妙だが、特異能力並みの美形になる。これも特定の一因である。
【座標転移】座標を決め、その座標へ転移する事が出来る。ただし、一度に設定できるのは三つまで。なお、再転生後も普通に引き継がれる。現在は王都にある拠点と、アゼルリシア山脈のとある崖の下に隠された自室の二つ。
【鉄の胃袋】何をどれだけ喰っても腹を下さない強靭な胃袋。それ以外に特に効果は無い。ゴミタレントの一つ。