ドレイク冒険記   作:里中悠

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第4話

 粗末な布に品物を置いただけの簡易的な露天がいくつも並び、人々の目を楽しませている。天候は晴れといえど夏が終わり、気温も低下しているが人口密度が高いせいか市場はひといきれで熱気に溢れていた。

 アフリカ大陸に匹敵する広大な土地が広がる大陸、テラスティア。その北部にリーゼン地方と呼ばれる地域がある。

 比較的温暖で四季もはっきりとしている。冬はあまり寒くならず、降雪量も少ない。逆に夏は暑くなりがちだが、湿度がさほどではないため日陰にさえ入れば熱気から逃れることは容易だ。

 比較的人が住みやすい地域といえよう。ゆえにリーゼン地方には五つの国がある。

 妖精の国アルフォート王国、竜の城塞デュボール王国、魔法王の遺産ミラボア王国、鉄壁の要塞レガリア王国、暗闇の王国、地底都市タバルジド。

 その五つの国の一つ、竜の城塞デュボール王国が今回の舞台だ。

 リーゼン地方の南西に位置し、この地方で最も大きなな国家、デュボール王国。

 竜の城塞の二つ名が示す通り、この国と竜は密接な関係にある。

 竜騎士、それがデュボール王国で最強を示す言葉だ。レッサードラゴンやドラゴネットを騎竜とし、敵を狩る。その力は一騎当千であり、その中でも国王の騎竜グリュンダルトは齢五百を超え、レッサードラゴン以上の戦闘力を持っている。また、準竜騎士と呼ばれるワイバーンを乗騎とする騎士達で結成された飛竜騎士団も、空中というアドバンテージを活用し、竜騎士にはあ劣るものの非常に強力な戦力となっている。そして、それだけの力を有する理由はちゃんとある。南にあるルデア山脈が蛮族の暮らす領域との境界線であるため、常に蛮族の侵攻に備える必要があるのだ。

 国境が近いため安全という言葉は安くはないが、抑えるための戦力が目に見える形で存在しているデュボール王国には人が集まる。なにせ、火急の時には竜が駆けつけ、すぐさま対応をしてくれるのだ。安心は人がいつくのに最も必要なものだ。

 そして、観光客もまたデュボール王国には多い。竜という存在は、それだけ一般の目に触れることはないということだ。冒険者ですら中々見かけないのだから、それを生業としていないものは言わずもがだろう。加えて、準竜騎士や竜騎士の訓練が見れるのも魅力の一つだ。野生とは違う統率のとれた人竜一体の動きは見る者の、心を震わせる。

 さて、そんな観光客達だが、首都デュボールに宿泊するものは少ない。戦火に巻き込まれる可能性も考え、近郊に宿泊街を設けているのだ。名をイクシアという。

 観光客が集まり、それを目当てにした商人も寄ってくるという好循環で回っている街だ。そのため、冒頭のような熱気に溢れている。

 そんな騎士団のお膝元であり、観光客を危険にさらすなどもっての外であるため、犯罪が起こることは少ない。

 だが、あくまでも、少ないでありゼロではない。犯罪者というものは存在するものだ。そしてそれが、今日であったということだけだ。

 フードをかぶり、頭からつま先までを隠した男が走る。それを追って、プレートメールを着た二人の騎士が駆ける。

 男の方は軽装で身のこなしも軽やかだが、いかんせん人を避けるのに慣れていない。速度で劣るはずの騎士とそう差がついていないところからも、それはうかがえる。

 ぶつかるということはないのだが、そうならないために気を使っているせいで無駄な動きが多く、スピードを殺しているのだ。普通逃亡する際は弾き飛ばすように駆け抜けるものだというのに、弾き飛ばすことを怖がる――それが取り返しのつかないことであるかのように、男は怯えながら逃げていた。

 男――浩一が捕まるのは時間の問題だった。

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