とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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勢いで書き上げました。


Episode00
プロローグ


信用出来るのは自分だけだ。

 

そう信じ生きてきたが早何年経っただろうか。

現実的に考えて少年が生きてきた年数なんてたかが十数年程で世の中の荒波に揉まれたわけでもなく、ただ漠然と親に育ててもらってぬくぬくと成長したと言ってしまえばそこで終わる話だ。

 

 

そんな多感な年頃?に属するであろうオレンジ頭の少年は一般男子にしては艶やかな髪をなびかせながら街中を颯爽と歩く。

目を引くオレンジの頭にワンポイントとばかりにピン留めが付けられているが別にこれはオシャレというやつではない、単に前髪が邪魔だからである。

 

しかしそれなら髪を切ればいい話であって、まぁ要するに少年はめんどくさがりなのだ。

 

 

難しいことを考えているようでその実、大してものを考えていない。

無頓着といえばいいのかなんとも説明しづらい少年。

顔は中の上といったところだがその外見以上に目付きが悪いせいで人が寄ってこない。本人は寄ってないことをむしろ有難いとさえ思っているようであるがそれよりも、だ。

 

 

 

 

「めんどくせぇ」

 

 

嫌というくらい顔に不機嫌の三文字を晒しながら学園都市を彷徨う少年、一藤善鷹(いちふじよだか)はポケットに手を突っ込んで歩いていた。

周りからすればチンピラというのが一番しっくりくる。

現に善鷹の周りには人が近寄ってこない。

だからといって悲しいなんてことはない、人に関わりたくない所謂ぼっちというのが善鷹のポジションだ。

 

たまに複雑な心境になることもあるがそんなのも数秒のこと。

 

次の瞬間にはけろりとした顔でむしろ清々している。

 

 

 

「晩飯なんにするかねぇ」

 

 

いくらこんなチンピラっぽい見た目していようとそこそこには料理が出来たりする。

おかげで隣人の不幸少年には驚かれたりしたのだがムカついたので一発食らわせておいた。

後になって泣きついてきたのが大変鬱陶しかったが放っておくのも面倒なので仕方なく相手をした記憶が新しい。

 

お人好しというのは柄に合っていないのだがどうしてかあの不幸の象徴である上条当麻が関わってくるとどうも上手く対処出来なくなったりする。理由は不明、ああいう良い子ちゃんタイプは苦手なのだがそれも含めて奴の人柄とやらがそうしているのだろうか。

 

「俺には関係ないことだったな」

 

 

良い子ちゃんは仲良くやってればいい。

善鷹は特定の相手と仲良くなろうだなんて気はこれっぽっちもないし手を取り合おうなんて理想主義者でもない。強いて言うなら逆、それをぶち壊す側の人間だ。

他人は他人必要以上に関わらないでいようというのが善鷹の心情だ。

 

つまり一藤善鷹という少年は望んでぼっちを決め込んでいる、あくまで自分自身の為に。

人に極端に近寄らないのも自分と相手との境界線を引く為。おそらくそのことに気付いているのは善鷹自身だけだ。

多くを語らない彼は他人との距離というのに敏感だった。

故に友達なんて呼べる相手は一人もいない。

 

 

 

善鷹はそれを不安に思ったことはないし思い至ることもない、自分の宿命とまではいかなくとも自分が人を頼ることは絶対にない。

 

理由なんてものはとうに忘れた。

 

気付いた時にはすでに頼る相手がいなかった。

両親だろうが友人だろうが、血の繋がった相手にでさえこうなのだから他人なんてもっと関係性が薄くなって当然だ。

 

 

 

「となれば食材買ってとっとと飯にするか」

 

 

鬱陶しい隣人に見つからないうちに。

 

下手をすれば飯をたかられ兼ねない。

隣人というだけでやたらとスキンシップを図ってくる不幸野郎なんざに用意してやる飯はない。

 

第一友達でもない癖にちょろちょろと周りをうろつかれるのにも苛立つ、なんなんだ良い子ちゃんは良い子ちゃん同士で連んでいればいいじゃないか。

自分みたいな半端者なんて放って好きにやれば。

 

 

 

 

「って、考えるだけ無駄か…」

 

 

一気に湧き上がった怒りが沈下していく。

 

どれだけ騒ごうが嘆こうがあの隣人が変わるとは思えない、誰かの為に必死になれる奴に善鷹が何を言っても無駄だ。

むしろ奴の思う壺なんじゃ、とさえ思えてしまう。

 

十中八九あいつにそんなつもりはないのだ。

だからこそ余計に腹が立つ、善鷹を無意識に陥れようとしているあの上条当麻に。

 

構ってほしくないのに、放っておいてほしいのに上条はそれを許そうとしない。

善鷹が一人でいようとしても上条はそれに反抗する。

否が応でも一緒にいようとする、だからこそ上条当麻はお人好しの称号を与えられてしまうのだ。

馬鹿だと思う自分に使えばいい時間を他人の為に使うなんて少なくとも善鷹には理解出来ない行動だった。

 

 

何にしても善鷹には自己犠牲としか映らない。

優しさが全て思った通りに相手に伝わるかといわれたら間違いなくそうだとは断言出来ない。

 

本当に伝わっていたなら善鷹は上条と上手くやれていた筈だ、だが実際どうだ?相変わらず友達という枠に嵌ることなく顔見知り程度の関係。

 

 

 

「友達なんざ必要ねぇっつーの」

 

 

すると通りかかった通行人とぶつかる。

 

善鷹はなんてことなさそうな顔でぶつかった相手を見た。視線の先には見るからに武装無能力集団と思わしき連中が善鷹をニヤニヤと笑いながら取り囲んでいた。

 

 

 

「いってぇなぁ!」

 

「これ骨折れたんじゃねぇの」

 

「どうしてくれんだよ、あぁ?」

 

 

 

ああ、どうしてこんなにも世の中は無常なのだろう。

 

誰にも迷惑をかけるつもりなんかないってのに向こうから寄って来るんだからやってられない。

そうだ周囲に関わらないように生きているのに邪魔されなきゃならないんだ、それこそおかしい自分みたいなぼっちに絡むなんて。

 

 

 

「ーーーだ」

 

「なんだって?」

 

 

善鷹の言葉は雑踏の中に掻き消されスキルアウトに届くことはなかった。

 

ーーが、確実に善鷹の唇は言葉を発していた。

 

 

 

「理不尽だ」

 

「何言ってんだコイツ」

 

「何故関わりたくないのにお前等みたいな下等連中に絡まれなきゃならねぇんだ」

 

「ふざけてんのかテメエッ!!」

 

 

 

 

わざと聞こえるように独り言を呟く善鷹に武装無能力集団の怒りは頂点に達した。

だが善鷹の表情は崩れないあくまで無表情で鋭い眼孔が彼等に向けられた。善鷹から感じた雰囲気に説明出来ない恐怖心を植え付けられたようにスキルアウトは動けなくなる。

 

 

 

「そう見えるならテメエ等の目が腐ってるっつーことだ」

 

 

善鷹は運悪くぶつかっただけだ、ただの一般人相手なら謝ってそこで終わるのだろうが残念ながらそうもいかない。なぜなら彼等が自分を見逃してはくれないだろうし善鷹も気分を害されて黙っていられる程出来た人間じゃなかった。

 

 

無意識に口元がにやけるのが分かった。

今おかれている自分の状況があまりにも馬鹿馬鹿しくてそうせずにはいられなかっただけだ。生憎と助けてくれる知人も持ち合わせていない世間で言う負け組に属する善鷹はこの場で誰にも助けてもらえずやりたい放題殴られて終わるのだろうか、と思ってもみないことを考えた。

 

それはそれで笑える話だが理不尽に巻き込まれた自分が何もせずに終わるのは少し頂けない。

 

 

 

でも一方的にやられてしまうのは気に食わないじゃないか。

結局のところ善鷹は逃げるという選択肢を選ぶのが嫌なだけだ。

回避出来る状況であれば極力そう努力するがこういった力に訴えかけなければ解決出来ない事柄には目を背けるわけにもいかない。場合によっては迅速に行動しなくてはならない、たとえ自分が事態にそぐわない人種の人間だとしても。

 

 

 

「好き勝手言いやがってクソがッ」

 

「…全て終わってから文句言うなよこれはあくまで正当防衛だ」

 

 

 

今の状況は多勢に無勢明らかに勝ち目はない、絶体絶命のピンチというやつだ。

それでも口元の笑みは消えることはなかった。

むしろ増した気さえする、だからといってスキルアウトがそれに気付けるわけもなく善鷹の顔面に拳を振るおうとした瞬間ーーー

 

 

「ぐがァ、ッ」

 

「お、おい大丈夫かよ!畜っ生何しやがった!!」

 

「さぁな、種明かししてやる程俺は優しくないんでね」

 

 

 

触れる直前まるで空間を歪めたように見えたが、それだけじゃあ説明にはならない。歪んだと思った瞬間、武装無能力集団の拳が自身目掛けて向かったように見えたのだ、そう普通なら起こり得ない状況を一藤善鷹は作っていた。

 

 

 

 

「うらぁッ!」

 

「馬鹿の一つ覚えって知ってるか?」

 

 

ギリギリまで引きつけたかと思えば善鷹はそれを視界に入れ認識する。

それだけのことでどれだけぶつかっていっても全てのされてしまうのだ。

武装無能力集団はがむしゃらに善鷹へ襲いかかるが次々と倒れていく。

この圧倒的な状況に誰もが震えた。

終わりの見えない一方的な殴り合いにいい加減嫌になってきた善鷹は頭を掻きながら周りを見回す。

 

 

 

「ハァ、これじゃあ俺が悪者になっちまう」

 

 

だからさっさと終わらせよう。

善鷹はこの場に倒れている武装無能力集団全員を視界に入れてから合図とばかりに指を鳴らす。

 

別に彼等がどうなろうが知ったことではないが後々面倒だ 。自分達に関わりたくない一般人も早々に退散したようだしここから離れるとしよう。

 

 

 

 

 

「……そんじゃあ良い夢を」

 

 

 

一言だけ言い残し立ち去る姿はまさに強者。

だが忘れないでほしい彼はあくまで強者以前に世間で言う負け組ーーーぼっちだということを。




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