とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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今回もほぼ勢いで書き上げました更新は遅れましたが。
どうにか麦野と絡ませようとしたらこうなった、彼女との詳しい諸々は次回にて。


提案

 

 

 

「何故こんな状況になったのかって、顔ね」

 

さて、なんなんだこれは。

学園都市一学生である一藤善鷹は頭を悩ませた。

目の前の女性、麦野沈利は獲物を狩らんとばかりに挑発的な笑みで善鷹を舐め回すように眺める。

 

何をどうすれば目の前の美人の枠に当て嵌まるであろう麦野に追い詰められるのか。

簡単に説明してやると、あれから不審に思った彼女自身が何を思ったか善鷹に対して興味を持ってしまったのだ。

絹旗の様子がおかしいことに途中で気付いた麦野はその原因がフレンダを散々弄くり回していた善鷹だとすぐに思い当たった。

残念なことにやはり一藤善鷹にはそんなラブコメは訪れない。

 

 

案の定、最悪な一日になってしまいそうである。

 

 

 

「勘弁してくれ……」

 

 

善鷹はこの状況に逃げ場がないことを悟る。

麦野沈利は確か学園都市LEVEL5の第四位だったはずだ、善鷹は特に他人に興味を抱いたりはしないが最低限の知識として彼女を認識していた。

原子崩し(メルトダウナー)』、電子を波と粒子のどちらでもない状態に固定し、自在に操る能力だと記憶している。

そんなトンデモ能力者な麦野沈利と関わり合いになるのはなるべく、本当になるべく避けたかった。

 

 

 

 

「俺なんかの相手をしてる暇がアンタにあるとは思えないんだが?」

 

「そうね、普通ならないわお前が本当に普通だったなら(・・・・・・・)、ね」

 

「おいおいなんだそれは、つまり俺は案に普通じゃないと言いたいのか」

 

「それはアンタ自身が一番よく分かってるだろ?」

 

 

 

ニタリと微笑む麦野に善鷹は震える。

これは恐怖とかそんなモンじゃない、強いて上げるなら非日常に首を突っ込んでしまったが故の武者震いだ。

今までにも何度かLEVEL5を相手にしたことはあるがアレとは全くの別物だろう。

御坂美琴とは全く違う、全身から危険だと察知している。

平穏な日常に身を置いていたからこそ目の前に立つバケモノの恐ろしさを嫌という程痛感した。

 

 

「どうしたモンかねぇこの状況、」

 

 

無事逃げ切ることが出来れば生きて帰れる。

だが捕まれば間違いなく死亡フラグ、今の彼女は謂わば狩人(ハンター)だそう易々と逃がしてくれるとは思っていない。

今更ながら先程まで平穏であったことをつくづく思い知った。

ほんの数分前まではガキンチョの相手をして遊んでいることが出来たというのに世の中というのはなかなかに優しくない。まぁ、だからこそ面白味があるというもの。

 

 

 

「少し遊んでやるから簡単にくたばるなよ?」

 

「ハッ、願い下げだっつーの……」

 

 

 

善鷹は自分を獲物と認識したバケモノを相手にした鬼ごっこが始まった瞬間だった。

 

 

走る、走る、走る。

 

一藤善鷹はいつになく真剣だった。

理由なんて言うまでもないただ無事に無傷で帰る、というのを実行するためには命懸けで逃げ切る。背後からは猛スピードで敵が向かってきているのだ、今はひたすら人混みを掻き分けているがいつ原子崩しをぶっ放してきてもおかしくない。

容赦ない一撃を食らえばその辺にいる民間人もひとたまりもないだろう。

 

 

「面倒なことになりやがった!」

 

今のところ麦野との距離はとれているもののがむしゃらに逃げ回っているだけの善鷹と違って麦野には彼を狩るという目的がある。

何故そんなことをされなければならないのか善鷹には意味不明だが彼女の気に触れるようなことをしてしまったのだろう、だって麦野沈利の目は完全に善鷹を仕留めること一点に決まっているのだ。

 

 

「んでこんなことに…っ」

 

「愚痴ってる場合かよ!そんなに殺して欲しいってんならさっさと寝てろ!!!」

 

 

問答無用で原子崩しを放つ。

流石にあんなのを受けたら善鷹でも無事では済まない、事実周りには悪影響をもたらしている。結果として周囲に悲鳴が響き、人という人が善鷹達から逃れようとしていた。

 

 

「見境なしかよクソが!」

 

「おらおらッ生きたきゃ一秒でも長く逃げ回れ、そしたら少しは寿命が伸びるかもなぁ!!!」

 

ということはだ、

 

この鬼ごっこを死ぬ気で切り抜け、どんな手を使ってでも生き抜かなければ。

フッと善鷹は笑った。

生きて帰る、まさに主人公(ヒーロー)ならではのシーンじゃないか。まぁ脇役でもこの際どっちでもいいが、ピンチを脱するには能力を使うしかない。

あまりLEVEL5相手には見せたくなかったんだが、下手に手を拱いているわけにもいかないし。

 

何より一方的に言われたまま引き下がる、というのは気に食わない。

 

 

 

「なら、やるしかないよな」

 

「グダグダ言ってる暇なんかねぇぞおおおぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ファミレスに置いてけぼりにされた絹旗最愛、フレンダ=セイヴェルン、滝壺理后の三名は未だテーブルの前に座ったままだった。

 

 

「結局私達置いてけぼりって訳よ……」

 

「仮に一緒に行っても超邪魔になるだけです、第一麦野があの人に興味を持ったところで五体満足で帰ってくることはないでしょうし」

 

「麦野、あの人のこと気にしてた。けど正確には絹旗の様子を気にしてたみたい…」

 

「え?」

 

「…絹旗の様子がおかしかったのを麦野は見抜いてた」

 

 

だから麦野はあの少年を連れて外へ出た。

自分達は暗部側の人間だ、その絹旗に恐怖心を与えるなんて芸当そうそう出来るわけがない。

 

「一番重要なのは絹旗だけに(・・・・・)恐怖心を持たせたってこと」

 

「つまりアイツって結構ヤバイ相手って訳?!」

 

「暗部の私達相手に表の人間が超出来るわけがないことを易々とやってのけた。だから麦野は一人で彼のことを…」

 

 

 

フレンダは焦ったように顔を上げて絹旗と滝壺に告げる。

 

「それって麦野ヤバイんじゃないのっ?!」

 

「麦野が何の策もなく突っ込んで行くわけないです」

 

「で、でも!」

 

「……何かあれば連絡があると思う」

 

 

言い換えれば連絡がなければ麦野に危険はない。

一対一の勝負でプライドの高い彼女が自分達を頼る程に追い込まれることは稀だ、だから安心していた。

 

 

 

ピリリリッ

 

突如絹旗の携帯が鳴り響く。

一同の視線は携帯に集中する、無理もない先程まで話していた不安が現実味を帯びてきたのだから。

 

 

「絹旗、」

 

「超分かってます…」

 

着信画面を確認する。

そこには麦野沈利の名前が表示されていた。

絹旗は恐る恐る携帯のボタンを押した。

 

 

「麦野ですかそっちは超無事っ」

 

「あー、もしもし?」

 

 

電話先で出たのは麦野ではなかった。

絹旗は嫌な予感がして携帯をギュッと握った。

 

 

 

 

「超誰ですか」

 

『あぁその口調から察するにさっきのお嬢さんで間違ってないな、他人の携帯から連絡なんて滅多にしないから間違ってたらどうしようかと思ったぜ』

 

「……その携帯は麦野のです、何故貴方が電話に出てるんですか」

 

『こっちもお前等の同僚に巻き込まれて困ってるんだ』

 

「そんなことはどうでもいいですっ麦野は無事なんですか!?」

 

 

絹旗が電話口に向かって叫ぶ。

異変を感じ取ったのかフレンダと滝壺は絹旗の様子をじっと見つめる。

 

 

 

 

『無事かどうかって?そりゃあ最悪の状態だろうよ』

 

「麦野に何かしたんですかっ?!」

 

『あー…なんつーか現状がな。お前のお友達は今眠ってる命に別状はないから安心しろ』

 

「そんなこと信用出来ません!貴方は麦野に何を…!」

 

 

 

はぁ、と電話の向こう側で深い溜め息が聞こえた。

絹旗は電話でしか状況を確認出来ないため焦りを覚えた、自分の仲間が何者か分からない少年に無防備な状態でいるのだ。

 

『言っとくが俺はお前の同僚に巻き込まれただけだ。さも俺が一方的に悪いみたいな言い方はやめろ』

 

それに、と続けて善鷹は言う。

 

 

 

『これは謂わば正当防衛だ殺されかけてんのに無抵抗なんてのは話が良すぎるだろ』

 

 

だから少し、手を出させてもらった。

大して悪いと思っていないのか堂々と善鷹は言ってのけた。

 

 

 

「それは、」

 

『けど無事だ大して怪我もしてないしな。ただ俺を潰しにきたから気絶させたその辺の理由は言わなくても分かるだろ』

 

 

殺されかけたから抵抗した。

当然の行為だ、ただ無情に命を差し出すくらいなら足掻いた方がマシだ。

それがたとえ無意味だろうとなかろうと、可能性が1パーセントでもある限り行き着く答えは一つーーー

 

理由は大方理解出来たが単純なことを聞けていない。

何故連絡するに至ったのか、

 

一藤善鷹は答える。

要するに麦野沈利には手を出していないから今すぐ自分達の元まで来て、お前等の大事な大事なリーダーを受け取ってほしいと。

やる気を一ミリも感じさせない声で彼は返事を返した。




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