突如魔術師の襲撃を受けた一藤善鷹とインデックスの二人は身を隠せる場所を求め学園都市の街中をを逃げ回っていた。
インデックスの受けた一撃以降、襲撃者からの攻撃は襲ってこないが油断したところを仕留めるといった方法を選んでくるかもしれない今の状況で楽観的に考えてもいられない。
とにかく今はインデックスの止血しないと。
善鷹は上着を脱ぐとすぐさまインデックスの傷口を縛る。
「一応はこれでいい……おいシスターお前の言ってたとうまってのはツンツン頭の不幸野郎でいいのか?」
勘違いならそれでいい、けれどとうまって名前で脳裏を掠めるのはおめでたお人好し野郎である上条当麻という馬鹿だけだ。
単に俺が知ってる顔触れの中でとうまって名前で該当しそうなのがあいつだったってだけの話だが、なんつーか納得いかねぇ。
なんで気に入らない奴の名前を口に出さなきゃならいんだ、クソッタレが。
「そ、うだよ。よだかはとうまのこと知ってるの……?」
「あぁ良くも悪くもな。あんなのの知り合いだってのを認めたくはないが、」
こういう時には役に立つ奴だ。
特にお前みたいな困ってる奴を助けるのがアイツの本分だろうし、なによりそれが命に関わることならそれを手を拱いて見ていられる程出来た人間でもない。
傷付いたインデックスを抱き上げると動くぞ、と断りを入れてから立ち上がる。
十四、五に見える少女は見た目以上に軽く持ち上げることも容易い。
俺にはコイツがどんなことに苦しんで生きてきたかなんか知らない、けど見て見ぬ振りすることを躊躇ってしまった。それは案にこの少女の人となりに触れてしまったからなのか不似合いな正義感からかは分からない。
けどこれだけは確かだと断言出来る。
この少女の生命の危機を握っているのは自分だ、そして先程交わした口約束を守るなら彼女を生きたまま無事、上条当麻まで送り届ける。
ははっ、似合わない笑みが零れた。
「……似合わねーことはするもんじゃねぇな」
ろくなことがない。
誰かを救う、そんな優しさからかけ離れた自分のことだけしか見ていない少年が今、禁書目録という存在を救うべく立ち上がった。
「だめ、はやく、しないととうまが……っ」
魔術師がどんな力を持っているかは不明だがこのシスターが言うように上条の所にああいう連中が向かっているならはっきり無事とは言い切れない。
下手をすれば命を奪われている可能性もある。
まぁ、アイツの能力なら万が一は免れている可能性も捨てきれないか、
「本当に、本当に不本意だが」
一藤善鷹らしからぬ優しげな手付きで頭を撫で、
「俺はあのお人好しを助けるってのも嫌だし、そんなことしてやる理由もねぇ。けど、」
お前としちまった約束は守ってやる。
お前もあのクソッタレもついでにして守ってやる。
ーーーだから今は黙って休んでろインデックス
善鷹は何をするでもなく弱ったインデックスの瞼を伏せさせる。
今だけは今だけは、彼女に安らぎをーー
神様なんてどうだっていい彼女の小さな願いを聞き入れてやってくれ、そう願わずにはいられなかった。
「あり、がと……」
「俺は礼なんていらねぇっつーの……そんなもんは全部終わった後でたっぷり聞いてやる」
ーーーー
善鷹は脚に集中力を割くと走る速度を早めた。
そのスピードは先程を上回り、異常ともいえる脅威の速度を誇った。
それは目で追える速度を超えていた、
「本当、慣れないことはするもんじゃないな」
善鷹が見上げた先には見慣れた男子寮。
到着にかかった時間は早何分か、もしかしたらもっと最短の時間だったかもしれない。
「さてと」
迷いなく善鷹は学生寮へと足を向ける。
悠長に構えてる時間はない、なんたって善鷹の腕の中にいる少女は刻一刻とその命の灯を弱めているのだ。
とにかく上条の部屋へ行こう、他はそれからだ今のままじゃインデックスにまともな手当てもしてやれない。
エレベーターで目的の場所へ向かう。
電子レンジみたいな音を立ててエレベーターが開くとそこは見慣れた廊下。
あとは上条に会って彼女を引き渡す、それで終わっていたはずの話だった。
部屋の前でインターホンを押す。
ほんのそれだけの簡単な動作を行うことが出来なかった。
善鷹を追う、正確には善鷹の腕の中にいるインデックスを目的にしている魔術師が自分達の背後にいた。
歳は多分インデックスと同じ十四、五。
高い身長はさすが外国人といったところか。
赤い髪は一際目を引く夕焼けを思わせる赤色、服装は教会の神父が着ている漆黒の修道服。
「なんだ最近は新手のストーカーが流行ってるのか?」
「気付いているなら話が早いな早くソレを渡してくれないかな?」
ソレ。
指し示された意味は彼女、禁書目録。
だが善鷹は生憎と少女がどれほど魔術師にとって必要なモノかは分からない、理解しようとも思わない。
聞く意味すらない。
お前みたいなエセ神父に渡すか。
善鷹はさも勝ち誇ったような笑みを浮かべて魔術師相手に相対する。
口の端には煙草が揺れ、右目の瞼の下には目に付くバーコードの形をした
あからさまに不良といった出で立ちの少年に臆することなく善鷹はインデックスを抱え直す。
「お前みたいな奴にこのシスターは任せられねぇな」
「言っちゃあなんだが君にこの子は荷が重すぎると思けどね」
「テメェの天秤で勝手に測ってんじゃねぇよ」
俺は他人に所詮お前はこんなものだと決めつけられるのが一番嫌いなんだ。
一方的な意見の押し付けってのが気に入らないんだわ、どんな腐った人間だろうと相応の権利はあるだろ?それを真っ向から否定されてはい、そうですって納得出来るわけがない。
「魔術師がなんだ?偉いのか?人の権利を奪うほどに賢いのか?」
たった一人の女の子の自由を奪えるほどの権力を持ってるって?
笑わせるな。
自由はそいつ自身の持ち物であって他人に好き勝手されていいもんじゃねぇだろうが。
決められたルートだけを歩まされるのがどんなに苦しいことかこのクソ野郎は分かっているのか?まぁ分かっていようがいまいが俺には関係ない。
「邪魔なモンは叩き潰すだけだ」
「それはこっちの台詞だよ。泣いて許しを乞うても遅いよ」
僕はただソレを保護するだけだ。
だがそんなのはただのまやかしだ、保護されることで救われるそんな甘ったれた理由で少女を探していたわけじゃないだろう。
引き摺ってでも保護しなければいけない理由があるはずだ。
「まぁ、仮に俺が許してもそこの
「何?」
「インデックスっ!」
善鷹は抱いていたインデックスを地面へとゆっくり下ろす。
現れた
多分善鷹の知らないところで上条とインデックスは出会っていたんだろう。経緯は分からない、それは彼等の問題であって自分は蚊帳の外の人間だ。
深くは聞かない、ただ上条は何故ここに彼女がいるのか分からないといった顔をしている。
「善鷹お前何か知ってるのか!?」
「このシスターはお前の所に用があったんだろ。俺はここまでこの餓鬼を連れてきただけだ」
「じゃあなんでインデックスがこんな怪我してるんだよ!!」
戸惑いと不安。
それが今、上条当麻の中を這いずり回っていた。
彼女を傷付けた者の正体。
善鷹は口を開こうとしたがどうやら目の前の魔術師が全て暴露してくれそうだ。
「あぁそれね、神裂が斬ったって話は聞いたけど……」
あぁ、そうだ。
そしてその現場には俺も居合わせた。
背後からの一撃、目にも留まらぬ早さ、インデックスを傷付けた刃は一瞬だった。
「何で……」
「ここまで戻ってきた理由かな?さぁね、忘れ物でもしたんじゃないのかな。そういえば昨日背中を撃った時点では
ありありと伝わるように答える魔術師に腹が立ってくる。
一度目に背中を狙った時には被り物があった、だが今彼女の頭にはそれがない。
そこから出る答えは簡単だ。
被り物、もしくは服装に何かしら施されていた効力が切れていたせいでインデックスは傷付いた。
「インデックスが戻ってきた理由って、」
「お前に危険があったからだ理由は知らないが」
善鷹に言われ上条の頭は働く。
『歩く教会』は上条の幻想殺しによって破壊されたが被り物自体に上条自身は触れていない、ということはつまり
それを探知して魔術師が追ってくると考えた彼女は危険を冒して戻ってきた。
「……、ばっかやろう」
出会って間もない上条当麻を守るために。
「ーーーーばっかやろうが!!」
あの時、あの瞬間、落としたフードを返せていたなら、
彼女がこの場所に戻ってくることはなかったのに。
「うん?そんな目で見られても困るんだけどね」
魔術師は口元の煙草を揺らしながら、
「ソレを斬ったのは僕じゃないし神裂だってなにも血まみれにするつもりはなかったんじゃないかな」
「ーーお前の意思はこの際どうでもいい、」
善鷹は告げる。
今、現時点で必要なのは傷付けようとした理由でも、言い訳でもない、
ただ言えるのはそうなった事象がある以上申し開きは出来ないというだけの現実。
「ッ?!」
「今は黙ってろ魔術師ーーー」
突き刺すような視線が魔術師目掛けて降り注ぐ。
一藤善鷹の視線は人を殺められると錯覚するくらいに鋭く、息をつく余裕すら与えなかった。
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