とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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初の4000文字です!
やっぱり原作の話となると文字数が圧倒的に増えますよね、頑張りますはい。


凸凹コンビ

一藤善鷹の頭は冷静だった。

 

隣でインデックスに寄り添っている上条よりも今、この場において一番冷静で、一番の傍観者ーーー

 

 

 

 

「こんな小さな女の子を、寄ってたかって追い回して、血まみれにして。これだけの現実を前に!テメェ、まだ自分の正義を語ることが出来んのかよ!!」

 

「だから血まみれにしたのは僕じゃなくて神裂なんだけどね」

 

 

魔術師と上条の会話がヒートアップする中、善鷹は驚くほどに静かだ。

さっき魔術師を黙らせたのが嘘かのように、沈黙を強いている、それは、何かそうするべき理由があったからなのか、

 

だから魔術師は黙ったままのオレンジ頭の少年を訝しげに見た。

何を考えている、この状況を打開する方法でも模索しているとでもいうのか?そう思わずにはいられず、魔術師は先の一連の作業を進めるべく続ける。

 

 

 

「もっとも、血まみれだろうが血まみれじゃなかろうが、回収するものは回収するけどね」

 

まるで物を相手にしているかのような言葉に上条は絶句する。

そう、魔術師はインデックスのーーー正確には彼女の記憶(あたま)の中にある一○万三○○○冊の魔道書が目的なのだ。

 

 

『完全記憶能力』

 

一度見たものを一瞬で覚えて、一字一句を永遠に記憶し続ける能力。

それがあの少女の中に宿っている力なのだと、眈々とつまらなさそうに告げる魔術師に上条は信じられないといった表情をありありとしてみせた。

 

魔術師は一○万三○○○冊の魔道書が危険な代物だと言った、だからと言って彼女を血濡れにしていい理由にはならない。

いくら保護という名目で行っていたとしても、だ。

 

 

 

 

「要するに、だ」

 

口を噤んでいた少年が動く。

お前はそこに倒れている魔道書に用があるとそういうことでいいんだな?

 

 

「あぁそうだ」

 

「………、なら引き渡してそれで終わりだ」

 

「何言ってんだ善鷹!お前インデックスをこいつに任せようってのかよッ?!」

 

 

そんなの許せるはずがない。

いくら上条の友人である彼の言葉でも見過ごすことは出来ない、それだけは認められない。

上条は今にも善鷹に掴みかかりそうな雰囲気で怒りと焦りを剥き出しにするが落ち着け馬鹿野郎、と促されグッと踏みとどまる。

 

 

 

「誰が渡すなんて言った?俺はお前等の言ってるオカルトについての知識はない、今はその確認をしただけだ」

 

 

 

それに、と少年は言った。

 

落ち着いた声で、でもこの場において支配権を握りかけているのは彼だ、

 

 

 

 

「一○万三○○○冊の魔道書?生憎とそんなモンは知らねーしそれはお前等の中での問題であって俺には全くといって関係ない。俺にとってそのシスターはただの餓鬼だ、ただの無力なな」

 

 

以前、一藤善鷹は言った。

誰にでも手を貸してもらえると思うなと、そしてこうも言ったはずだそういった特権は一握りの選ばれた人間が持つものだとーーー

 

しかし少女、インデックスはそんな権利を勝ち取っていながらこうして魔術師という存在に自分の命を脅かされている。

善鷹にとってインデックスという少女は底なしに明るくて、はらぺこシスターと呼ぶくらいの大食いで、そのくせ他人である善鷹にやたらと関わろうとする、そんな奴だ。

 

 

構うなと振りほどいても気付いたら勝手についてくるよく分からない存在、そんな彼女がどうなろうが別によかった、一藤善鷹には無関係な人間だったから。

 

だが少女と約束してしまった。

今回の騒動の中でおいてはお前を守ることに徹すると、つまりその瞬間からインデックスという存在は外輪側の人間から内輪側の人間に変化したわけで、

 

 

 

 

「そのシスターは今俺にとって守るべきクライアントだ。だから魔術師、お前が何をほざこうが俺のクライアントは俺が守る」

 

 

これは義務じゃない。

正義感に任されたわけでもない、ただ彼なりに答えるなら、

 

 

 

「テメェの一方的な理不尽を見過ごしてやるほど俺は優しくねぇ」

 

 

理不尽に対する怒り。

それが今の一藤善鷹を突き動かしていた。

上条はその頼れる最高の味方の言葉に口元が緩んでいた。あぁ、何を自分は心配していたんだ、目の前の友人は誰よりも何よりも悪を許せない正義感に溢れる奴だったじゃないか。

 

 

「善鷹お前、」

 

「何気色悪い顔してるんだ、それ以上惚けた面見せんならぶっ飛ばすぞ」

 

「あぁ悪い」

 

「チッ」

 

気なんか合いっこない凸凹な足跡コンビだけど上条は今以上に一藤善鷹という親友がこの場にいてくれたことをこんなにも心強いとは思わなかった。

 

 

だが魔術師からしてみれば無力な学生が何人集まろうが大したことはない。

結局彼等はこの場で自分に倒されて終わるからだ。

絶対に禁書目録、インデックスを守ることなんて出来っこない、彼女を地獄(・・)から救うのは自分だ。

 

 

 

 

「ステイル=マグヌスと名乗りたいところだけど、ここはFortis931と言っておこうかな」

 

「敵相手に自己紹介とは殊勝な心がけだな」

 

「そんなことないさ。これは単なる形式上の物だし、何より殺し名だからねーーー」

 

 

 

魔術師、ステイル=マグヌスは笑みを崩さないまま口に咥えていた煙草を手に取ると文字通り放り投げた。

金属の手摺りを越え火のついた煙草は隣接していたビルの壁に当たる。

 

 

炎よ(kenaz)ーーー」

 

 

ステイルが呟いた瞬間、轟!と凄まじい音を立てて爆発した。

 

 

「………これはまたびっくり人間ショーの始まりってか?」

 

口元がにやけるのが分かる。

別に笑おうとしたつもりはない、が善鷹はこの状況にそうせずにはいられなかった。超能力者がいるのだから魔術師は存在する。

その紛れもない現実を見せつけられて、平常心を保っていられるはずがない。

認めてやる、インデックスが言っていた通り確かに魔術は存在した。

 

 

燃え盛る炎は姿形を変え次第に一本の炎剣へと変化する。

 

だが一藤善鷹は気分が高揚するのを止められなかった、数メートル離れた場所に自分達の命を脅かす異常がいるというのに、

上条当麻は対応したことのない魔術に自分の幻想殺し(イマジンブレーカー)が通用するのか不安で動けずにいたというのに、

 

それなのに興奮は止まることを知らない。

見たことのない、体験したことのない、実質魔術に無知な少年はソレが何なのか頭の中は興味で埋め尽くされた。

 

 

 

 

「ーーーー巨人に苦痛の贈り物を(PurisazNaupizGebo)

 

 

ステイル=マグヌスは笑いながら灼熱の炎剣を一藤善鷹へと叩き付けた。

 

ステイルも流石にやりすぎたか、と思った。

今の一撃は摂氏三○○○度の炎の地獄だ。

人肉は二○○○度以上の高熱では少年は溶けて人の形を保っていられるはずもなく、金属の手摺りと同じくへしゃげてこびりついていることだろう。

 

 

 

「さて、とあとは君か」

 

あの気味の悪い少年は消えたあとはお前だけだ。

ステイルは真っ直ぐ上条当麻へと歩いていく。邪魔になる障害は全て消し去る、たとえどんなことをしても、

 

 

「っ畜生!」

 

あとはアレを処理すればあの子の元に行ける。

炎の魔術師ステイル=マグヌスは目的達成のためならどんなことでもする、インデックス、あの子を助けられるならばーーー

 

 

 

「案外魔術ってのも扱えるモンだな」

 

 

瞬間。

目に付くオレンジが視界に入る。

何故だ?何故、一瞬で魔術師の動きが停止する。

無理もない、だってそこにはもういないはずの一藤善鷹がそこで平然と立っていたのだから。

彼の周囲にはさっきまで扱っていたステイル=マグヌスの炎の残骸を子供が遊ぶようにその手で操っていた(・・・・・・・・・)のだ、

 

 

「馬鹿なッ」

 

あり得ない。

そんなことあってたまるか、あの一撃を食らって無傷でいられるはずがない少なくとも大怪我を負っていなければならないレベルの攻撃だ。

 

 

 

「上条、今の見ればお前でも分かるだろ俺の無限支配(アンリミテッド)が作用するってことは即ち、お前の能力でも十分機能するってことだ」

 

「そうだな。何をビビってんだ俺はーーー」

 

 

インデックスの『歩く教会』を破壊したのだってこの右手だ。

どんな仕様で能力が働いているのかなんて上条に分からないし半分も理解出来ない。

けど上条にでも一つだけ分かった。

 

 

所詮はただの『異能の力』

 

それが分かれば対処法だって見つかる。

物理的に作り出されたものじゃなければ幻想殺しは十分過ぎるくらいに機能してくれる、それもあの炎が摂氏三○○○度の魔術の炎であろうがそこに魔術という直結した異能の力が働いているなら上条は十分戦える。

 

 

ジリジリと燃え続ける魔術の炎は上条の右手に触れた瞬間、一瞬にして全ての炎が消し飛ぶ。

魔術師は目に見えてうろたえていた。

そうだこれは人間だ。相手は殴れば痛みを感じるただの人間なのだ。

 

もう恐怖で足が震えたり、体が動かなくなるなんてこともない。

いつものように手足は動く。

 

 

「面倒かけさせやがってその分倍は働いてもらうからな上条」

 

「ああ、任せてくれ!」

 

「ーーーーーーー、な、」

 

 

 

一方でステイルは目の前で起きた理解不能な現象の数々に一歩下がりかけた。

いくらなんでもあの一撃が不発だったとは考えられない、しかしオレンジ頭の少年が自分の炎をまるで己の手足を扱うように操っている様は理解出来ない。

それにもう一人の少年についてもだ、あれだけの炎が周囲に回っていたにも関わらず右手一つで打ち消した。

 

ステイルは右手を水平に振るい生み出した炎剣を同じように勢いよく叩きつける。

が、上条は変わらず佇んでいる。

 

だが上条はそんな気も知らずステイルへと向かっていく。

 

何度目か炎剣を叩いた瞬間、ガラスが粉々に砕け散るように炎剣はその姿を消した。

三○○○度の炎の剣を何も施していない生身の右手で叩き砕く。

 

 

「さて、まだまだこんなモンじゃ終わらねぇだろ魔術師」

 

 

勝負はこれからだろ?

そうニヤリと悪どい笑みで笑う一藤善鷹は限りなく悪党に近いものがあった。

いいやたとえ上条当麻という主人公(ヒーロー)が側にいても一藤善鷹の本質が変わり得ることは絶対にない。どんなに足掻こうが彼は悪党のままだ。

 

魔術師を捉えた悪党の瞳がギラリと光る。

もっと遊ぼうぜ、そう笑う死神が魔術師に笑いかけた。




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