とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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日常的な話です。
上条が関わってくるのもまた日常。


日常

「いい加減にしろこのクソ野郎」

 

 

開口一番呟いた言葉はかつてない程に苛だっていた。

 

一藤善鷹、一見普通の少年に見えるがその実彼には友達がいない。

悩ましいのはその点だけではない、極端に言えば人と口をきくことさえ稀だということ。

いくら必要以上な高スペックを持っていても交友関係、つまり友人関係は皆無と言ってしまってもいい。

 

はっきり断言しよう善鷹には頼る相手がいない。

だからというわけじゃない、誰かに頼れない善鷹の側にはいつも一人いたのだ。

 

そして今日もその人物はそこにいた。

 

 

 

 

「善鷹頼むこの通りだっ!!」

 

 

パンッと両手を合わせ頼みごとをしているのは見慣れつつあるツンツン頭。

事の発端はトラブルメーカーとして善鷹に認識されている上条が部屋まで押しかけてきたことが始まりだった。学園都市最下位であるLEVEL0に位置する上条はそのレベル故に与えられる生活費もかつかつなのだ。

 

それに加え不幸体質というのもあって自販機に一万円を呑まれたり、買った食品をぶちまけたりと数少ない資金も空へ飛んでいってしまうわけで。

 

 

 

「事あるごとに救いの手借りようとしてんじゃねぇ」

 

 

なんでも簡単に助けてもらえるなんてのは甘ちゃんの考えだ。

誰かが都合よく手を貸してくれる場面なんてのはそうそうあるもんじゃない、いつだってその場にいるのは自分自身。

そしてピンチを切り抜くのもまた自分。

しかし意思を揺るがせることが出来ない上条は善鷹の肩をがっちりと押さえじっと見つめる。

まるでお前しかいないんだと言わんばかりに。

 

 

なんだこれ、どこぞのコテコテすぎる恋愛ドラマのワンシーンかなにかか。

学生寮のしかも玄関先で男同士が向き合っている姿はかなり違和感がある。それもそのはず片方は休日にも関わらず学生服で、もう片方は休日というのもあってラフな部屋着を着ている。

 

ここまでならまあ普通の光景だといえる。

問題はここからだ、玄関で部屋の主に詰め寄っている男ーーこの場合上条がかなり切羽詰まった表情で善鷹に詰め寄る形になっているのだが、はっきり言おう距離がハンパなく近い。

 

早朝、とまでは言わなくとも十時を回ったぐらいの休日にいきなり現れ苦手とされる人物が押しかけてくるというのは大変善鷹の機嫌を急降下させる破目になった。

追加して苦手、いいやもう嫌いと言っていいその男がじりじりと距離を詰めてくるのだ。

 

 

 

目的は知らないがなんだこれは。

 

新手の嫌がらせかなにかか?だとしたら今すぐこの扉を閉めさせてほしい本当にこんなおかしな状況を知り合いに見つかったら今後に影響する。

見られたが最後変人のレッテルを貼られ学校へ通うことさえ難しくなるわ外を出歩けば白い目で見られる。

なんとしてもそれだけは回避しなくては。

 

 

 

「頼むよ善鷹!」

 

「(現場を打開するにはまず上条をどうにかするしか)」

 

 

追い込む上条と追い込まれる善鷹、その姿はかなりシュールな絵になっていたことだろう。

善鷹は比較的冷静な方だし熱くなることも滅多にない冷めた人間だ。

だが緊急時とあれば焦ったりもするし失敗したりもするどこにでもいる少年なわけで。

 

 

 

 

 

「いいか、らッさっさとドアを閉めさせろ!」

 

「嫌だっ俺にはもうお前しか頼る奴がいないんですーー!!」

 

「誤解を生むような台詞をサラッと吐いてんじゃねえよこの野郎っ」

 

 

 

如何なる状況にいても対応出来るのが一藤善鷹だ。

ならそれを打ち破った上条当麻はさしずめ突破口を開いた英雄とでもいうのだろうか悪いがそんな良い話的な展開で落ち着いてやるつもりは毛頭ない。

今すぐ上条をはっ倒してでも引き下がらせ平穏な日常を手に入れてみせよう。

 

だが予想外を生み出すのも上条。

いくら善鷹でも対応出来ることとそうでないことがある、たとえ善鷹のスペックが高かろうが上条の持ち前の潜在能力の前では歯が立たない。

 

男相手にフラグをたてるとは一級フラグ建築士という名は伊達じゃないということか。

 

 

 

 

「テメェの要件に付き合ってやる程俺は暇じゃないんださっさと帰れ!」

 

「断る!上条さんも引くわけにはいかないんです!」

 

「知るかっンなもん!!」

 

 

 

 

学生寮に少年二人の声が響く。

怒声が聞こえているにもかかわらず誰も来ないのが不思議なくらいだ。

 

 

突如、ドサッと物の落ちる音が聞こえて視線をそちらへやれば立っていたのはクラスメイトであるサングラスの少年。

 

 

 

「まさか上やんと一やんがそんな仲だとは思わなかったぜい」

 

 

タイミング悪く現場に居合わせてしまったサングラス少年ーー土御門元春はばっちり善鷹と上条の在らぬ現場を見届けることとなった。

瞬間、善鷹は世界の終わりを見た気がした。

こんな誤解される現場を見られたとなれば今後自分の身の振り方を考え直さなくてはいけなくなる。

 

誰にも覚られずひっそり暮らしたい一藤善鷹にとって最低最悪な現実を突きつけられた。

ドアノブにしがみついていた善鷹も唖然と土御門に見入る。

何故ここに、というのが素直な感想だった。

いくらなんでも都合よく現れすぎじゃあないか?まるで測ったかのように顔を出した土御門にもここぞとばかりに部屋に侵入を図ろうとしている上条にも。

 

 

 

 

「上条お前っ」

 

「善鷹さん?なんでにじり寄ってきてるんです?」

 

「人の部屋に侵入しようとするわ迫ってくるわなんなんだ?何がしたいんだ?死に絶えたいのか?」

 

「ちょっ、待て話せば分かる!!って死に絶えるってなんだ?!」

 

 

 

落ち着こう!と必死に善鷹を止めようと語りかける上条だが非情に無情な一藤善鷹には届かない。

話し合いで解決出来る範囲を超えていると判断された以上やることは一つ。

 

 

 

 

「大丈夫だ…痛くないように捌いてやる」

 

「物騒すぎる!!!」

 

「二人共ホントに仲がいいにゃー」

 

「土御門やめろ、コイツと同列扱いなんて反吐が出る」

 

 

 

今だってただでさえ他人と関わるのが嫌なのに嫌々上条や土御門と口を利いているだけだ。

だから誤解しないでほしいこの馬鹿共とは友達なんかじゃない、一緒になって騒いでいるのも全部周りが絡んでくるのもーー

 

 

 

得体の知れない感情が一藤善鷹を苦しめる。

けれど決して顔には出さない、理由なんて分からないもの。

分からないと胸に刻み込んで逃げている、逃げることこそ自分を保つ唯一の方法。

 

こうありたいだとか変わりたいとは思わない。

振り返ることすら意味を成さない。

 

なんともない顔して騒ぐ一藤善鷹は嘘で形成されているのだ。

 

 

 

「よし殺す、決定な」

 

 

善鷹の軽い一言に上条は震え上がる。

土御門は腹を抱えて笑う、この姿を見て友達同士のじゃれ合いじゃないと思う者が何人いるのか。

きっと世間が思う程善鷹は孤独を望むぼっちには見えないのかもしれない。

 

 

 

「上やん応援してるぜよ」

 

 

まるで他人事のように口にする土御門だが次の瞬間には震え上がる上条と同じ道を辿ることとなる。

上条に向いていた目がいつしか土御門にも向いていたのだ。

玄関先で佇む善鷹は笑っていた。これぞとばかりに獲物を見つけた捕食者の眼をして。

お前も同罪だ、と生憎この場にいるのは善鷹と上条と土御門だけだ。

 

 

「悪く思うな誰も悪くない」

 

 

俺も悪くないただタイミングが悪かったってだけの話だ。

この日、上条当麻と土御門元春は悪魔だと錯覚してしまう存在が身近にいたことを再確認させられることになった。

 

笑いながらひとしきり準備を整える一藤善鷹は普段のやさぐれた姿とはかけ離れていた。

弱者を捕食する強者、まさに弱肉強食という言葉がぴったりだ。

 

口を噤みたくなることを善鷹はやってのけてしまった。

一藤宅に押し込まれた上条と土御門が何をされたかはご想像にお任せするとしよう。




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