とあるぼっちの無限支配   作:黒河桔梗

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時間軸とか考えて書きたいです、自分不器用なんで難しいですが。


電撃姫

一藤善鷹は普通の少年だ。

 

しかし上条当麻相手にフラグをたててしまう哀れな少年でもある。

不幸というか不運というか巻き込まれ体質であることは言うまでもないことだ。

 

学生が賑わう学園都市で一人時間を潰していた善鷹。

その手には缶ジュースが握られていた。

今日はめんどくさい輩が絡んでくることはなさそうだし安心して気を緩められそうだ。

 

 

 

ほっと息をつきかけた時。

 

 

「待ちなさい!」

 

 

聞き慣れない少女の声。

半袖の白いブラウスにサマーセーターそれに加えて灰色のプリーツスカート、一藤善鷹の前に現れた少女はお嬢様学校である常盤台中学の制服を着ていた。

言っちゃあなんだが名門中学に通う知り合いなど善鷹にはいないし目をつけられる謂れもない。

 

人違いだろうと無視を決め込んでいると少女は善鷹の腕を掴んだ。

 

 

 

「アンタに言ってんのよ!!」

 

 

どうやら他人だと思っていたこの強気な少女は善鷹のことを知っているらしい。

しかし一方の善鷹にはその記憶がない、正確には少女の顔を覚えていないのである。

会った人間の顔を一々覚えてやる程善鷹は出来た人間ではなかった。

 

 

 

「いきなり話しかけてきたかと思えばなんだ?喧嘩売るなら他所でやってくれ」

 

 

はた迷惑だと言わんばかりに少女を視界に入れた。

そう、たったそれだけのことだ。

それなのに目の前の少女はぷるぷると肩を震わせーー

 

 

 

「私のことを忘れたってのかアンタはーーーッ!!!」

 

 

 

身体中から一斉に放電する。

なんて沸点の低い餓鬼なのだろう、と思いつつ一部始終を()にしてから後方へバックステップ。

特に避ける理由はない、が後々自分の能力を追求されるのも面倒だ。だったら真っ先に考えに至るまでもない除外出来る状況を作ってしまえばいい。

 

 

「っと、危ね!」

 

「なんで避けるのよ!!」

 

「テメェ人めがけて電撃ぶっ放すとか最低限の常識はないのか」

 

 

 

本当にこの常盤台のお嬢様はぶっ飛んでいらっしゃる。

一言だけ言わせてもらうなら一藤善鷹は無能力者だ、学園都市最底辺に位置する落ちこぼれだ。馬鹿にされることも少なからずあるし調子に乗ったスキルアウトに襲われることもある。

だが最低限良い教育を受けているお嬢様がそんな無能力者に電撃をぶっ放すとはどういうことだ。

 

確かに普通の無能力者ではないが放電される程恨まれることをしたつもりはない。

 

 

 

 

「煩いわねアンタが悪いんでしょ!」

 

「あくまで人に罪をなすりつける、かこの電撃は」

 

 

馬鹿にしたつもりはない。

ただぽろっと本音が漏れただけ、でも目の前の少女、御坂美琴にとって善鷹のなんてことない一言が彼女を更に激昂させる。

嫌われることには慣れている、喧嘩を売られることには慣れている、けれど雷撃の槍を撃たれることには慣れてなどいなかった。

 

 

 

 

「私には御坂美琴って名前があんのよ!」

 

 

 

ズドン、と善鷹目掛けで雷撃が落ちる。

本来ならそこには黒焦げになった善鷹がいるはずだった。が、善鷹は何事もなくけろっとした顔で先程と同じように美琴の目の前に立っていた。

 

やたらと目に映るオレンジ頭は平然とつまらなさそうな顔をして美琴を見つめていたのだ。

 

 

 

「アンタ、何したのよ?私の電撃をいとも簡単に…」

 

 

いいや、簡単とかそんな問題じゃない。

存在したはずの電撃の痕は地面はおろかどこにも残っていない。

ならばその痕跡を元から絶ってしまったオレンジ頭の少年に聞くしかない、答えるかは別として。

 

 

 

「さぁな手品とでも思ってくれれば俺は助かる」

 

 

 

余計な説明をしなくて済むし早いところこの電撃少女から解放されたいというのが本心だ。

というかぶっちゃけた話自分の能力を他人に言うという行為は善鷹にとって軽々しく出来ることじゃなかった。

無能力者なら能力を持たないのが当然だ、でも善鷹は善鷹には無能力者ならではあり得ない能力持ちだった。

 

明かすならば彼、一藤善鷹の能力名は無限支配(アンリミテッド)

その場に存在する物質全てを支配し凌駕する力、つまり美琴の電撃の槍を消失させたのも能力によるものだ。

 

 

 

「そんな適当な説明で納得するとでも思ってんの!」

 

「はぁ、面倒な奴だな」

 

「何ですって!?」

 

 

 

今にも掴みかかりそうな雰囲気にも善鷹は動揺する気配はない。

優位に立つという意味では間違いなく善鷹の方に分があった。こういう会話で怒りを露わにした方が負けだということを善鷹はよく理解していた。

感情的になりすぎるというのは相手の思う壺だ。

 

指摘するように視線を美琴にやる。

 

 

 

 

「能力名は無限支配(アンリミテッド)、自在に能力を支配する力だ。これでいいか?」

 

 

隠すことを諦めたのか善鷹は事実を伝えた。

ここで仮に何も答えなければ今度は更なる電撃が善鷹に降り注ぐことになる可能性も出てくる。下手に能力を見せて迫られるよりかはごく一部の事実を織り交ぜることにより回避出来るならそれにあたる。

 

嫌々だがこれも必要以上に関わらない為。

 

 

 

 

 

「満足か?なら話はここまででいいな」

 

「ちょっと待ちなさい!!」

 

「断る。お前の聞きたいことには答えた」

 

 

 

だからこれ以上俺に関わるなと善鷹は言った。

強烈な視線を美琴に突きつけると少女は動けなくなった。

何故この目の前に立つ少年はこれ程にも冷たい眼が出来るのだろう?何故こんなにも頑なに心を閉ざしているのか。

 

 

 

「アンタなんで…」

 

「お嬢様は精々お嬢様らしくやってろ」

 

 

くれぐれも電撃を人に向けて使うな、という善鷹なりの常識を諭したつもりだ。

態々赤の他人のためにやってやる程の仲になった覚えはないがこれも被害を拡大させない為と考えれば彼女の為に見えなくもない。

本心を打ち明けない善鷹だけになんとも断言は出来ないが。

 

 

「テメーはテメーのことだけ考えてりゃいいんだからな」

 

 

不要な会話は無用だ。

他人の内に抱えてる物に興味を持っている間にもやらなければならないことの一つや二つあるはずだ。

第一自分の面倒も見れないお子様なんぞに語ってやるだけの秘密も持ち合わせていない。

彼の秘密はあくまで彼だけのもの。

 

 

 

「名前…」

 

「あ?」

 

「アンタの名前教えなさい!!」

 

「何様のつもりだお前」

 

「い、いいから答えなさいっての!」

 

 

 

このお嬢様はとことん足を突っ込みたがるらしい。

早々にここで別れて二度と会わないことを願いたいがこういう一度啖呵を切ったからには引き下がらないタイプは頷かない限り延々相手を追い回す。

一藤善鷹にとって苦手な部類に違いなかった。

溜息を吐き美琴に向き直る。

 

 

 

「一藤善鷹だ」

 

「思ったよりすんなり答えるのね」

 

「これ以上追い回されるのはごめんなんでな」

 

「やっぱ腹立つわアンタ」

 

「それはこっちの台詞だお嬢様」

 

 

 

能力持ちの無能力者と学園都市第三位が交わった瞬間だった。

さてこんな軽いやり取りをしている彼等だが傍目から見たらどんな印象に映っているのだろう。

年下の少女に常識を教えてやる優しい少年?それとも喧嘩もとい掴みかかってくる少女から逃げる脱走少年?どれもあまりピンとこないが間違いなく言えることはお互いがお互いを意識しているということ。

 

意識と言っても二人がそんなピンクい色恋沙汰な話にはならないから安心してほしい。

ただ片方が一方的に興味、気になる存在になりつつあるのは仕方ないしどうにもならないことだ。

 

 

「ま、精々最低限の教養はつけてくれよ」

 

 

 

名門中学のお嬢様であろうがなかろうと最低限の常識がなければただの子供だ。

つまり善鷹にとってどれだけ美琴が能力者として格上の相手だろうとただの年頃のマセ餓鬼としてしか映らない。

 

実際、少女は少年を意識していた。

だが少年は少女に対してなんとも思っていなかった。

少女は少年の顔を、声を、覚えていた。出会ったのはなんてことのない街中だった。とある不幸な少年をきっかけに顔見知りになった、でも少年は彼女を視ることはなかった。

興味以前の問題だったのだから。

 

 

 

「余計なお世話よ」

 

 

せめてもの反論と悪態をつく。

しかし少年にとってそんなのはたかがしれたこと、結局反論は無意味に終わった。

善鷹にとって御坂美琴という少女は平穏の象徴。努力すればいずれは報われる、そんな平和そのものである考え方をする超能力者に無能力者は。

 

 

 

「あっそ」

 

 

実につまらなさそうであった。

彼女の考え方が悪い訳じゃない、一藤善鷹という人格の問題でしかない。

美琴は素っ気ない態度で対応する善鷹に何も言うことが出来ないまま黙って見ているしかなかった。

やはり美琴は一藤善鷹の興味の対象になることが出来ないまま、時間だけが過ぎ去った。




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